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Sinking girl

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歩く。
大抵の健康な人間ならばほぼ全ての人間が、歩く事が出来る。
それは当り前の話だ。
だが、その『当たり前』は、本当は多大なる奇跡にも似た何かの上に存在しているものだ。



真鍋和は、歩いていた。
だが、その足取りは異様に重い。
まるで巨大な足枷がその両の細い足に繋がれているかのように、重い。
額にはじんわりと汗がにじみ、呼吸は徐々に荒くなっていく。
まるでゴールの全く見えない長距離マラソンをしているかのような、そんな錯覚すら和は感じていた。
しかしながら、和の歩いてきた道程は距離にすればさほど長い距離ではない。
そのさほど長くはない距離が、和には異様に長く感じられてしまっている。
では、なぜ和はそのように感じてしまっているのだろうか?



それは、彼女がここにくるまでに人を一人殺しているから。



引き金を引くのは、簡単なことだった。
ほんの少し、ほんの少しだけ指先に力を込めれば良い。
だがそのほんの少しの力で、和は人を殺した。
それも、自分を助けようとしてくれた、見ず知らずの少女の命を、和は奪った。

――――守りたい、人がいたから。

放たれた小さな弾丸は、呆気なく少女の命を奪った。
私はもう、戻ることはできないんだ。
あの楽しかった日常にも、守りたい、あの笑顔にも、もうどこにも戻ることなどできはしない。
溢れそうになる涙は、少女の死体へと向けられた4発の銃弾と共に消えた。



そうして、守るために彼女は立ちあがったはずなのに。
唯のために、殺そうと決意したはずなのに。
彼女の足は、重い。
一歩足を踏み出すごとに、その足はより一層、重くなる。
だがそれでも、和は前に進まなければならない。
そう、固く決意したんだ。

――――唯のために。



一方、時を少し戻して。
地図で言うところのH-7。島のほぼ最南端にある灯台の、狭くはないが狭く見えてしまう一室の中に一人の大男がいた。
はち切れんばかりに隆々と鍛え上げられた筋肉。
ボリュームのあるパーマのかかった髪。
そしてその髪の間から突き出た二本のロングホーン。
男の名はバッファローマン
1千万パワーというケタ外れの超人強度を誇る、7人の悪魔超人のリーダーだった。
彼は灯台の一室の中で、この状況を理解しようと何が起こったかを思い出していた。



正義超人の、キン肉マンと自分は戦っていたのではなかったのか。
アイドル超人達の全滅を目指し、戦っていたはずなのに。
気がついたらわけのわからない事態に巻き込まれていた。

「……殺し合え、か。」

宇宙人のような面妖な外見の男の言う事に素直に従うほど、バッファローマンは従順ではない。
だがあの場にはつい先ほどまで戦っていたキン肉マンがいた。
アトランティスに殺されたはずのロビンマスクがいた。
魔雲天を倒したテリーマンもいた。
テリーマンはあの鳩山とか言う男に殺されてしまったが、この場には間違いなくアイドル超人がいる。
ならばまずは、そいつらを血祭りに上げる必要がある。
その後どういう行動方針を取るかは、奴らを血祭りに上げてからでも遅くはない。
それにあの場に死んだはずのロビンマスクがいたと言う事は、もしかしたら倒されていった7人の悪魔超人の仲間達がいる可能性だって十分に考えられる。

「…よし。」

どのように動こうか決めたバッファローマンの耳に、銃声が飛び込んだ。



眩しい朝日は、やがて上空へと昇っていく。
それに伴って、じりじりと焼けつくような日差しが大地に降り注いでいた。
決して真夏のような激しい日差しではなかったものの、今の和には、全てを焼き尽くす砂漠の日差しのようにも感じられる。

「……どこかで、一旦休もうかな……」

そう呟いては見たものの、周りに日差しから見を守れそうな場所は見当たらない。
西の方に向かう橋を渡るのは、目立ってしまうから避けたのだが、それは失敗だったのかもしれない。
目の前に広がるのはただ一本の大きな道の他には何もない。
こんな何もない道を歩かなければならないのか。
だが今更引き返すわけにはいかない。
和は支給されていたペットボトルから水を少し口に含むと、また重い足を前に運んだ。
肉体的、精神的両方の疲労も重なってはいるが、それでも和は前にあるかねばならなかった。

と、その時和は後方から嫌な予感を感じた。



後ろを振り返ると、巨大な何かがこちらに向かって走ってくる。
ブルドーザー?違う。
10トントラック?違う。
戦車?違う。

あれは――――


暴れ牛!?


「おうおう、やっと追い付いたぜ。」

バッファローマンは銃声を聞くとすぐに灯台から飛び出し、銃声のした方へと向かった。
少し探索して見ると、そこにはもう既に物言わぬ亡骸となっていた少女の躯が転がっているだけだった。
安心したような、それでいて悲しそうな顔。
亡骸のその表情から、バッファローマンはすぐに彼女は殺し合いには乗っていない参加者だと言うことを理解できた。
今まで悪魔超人として戦って来た超人人生の経験上、戦わないものの表情と戦うものの表情が違うことは十分理解していたからこそ、そう判断できた。
そしてその亡骸に残された体温や弾痕の状況、更には近くにあった足跡などの痕跡から、バッファローマンは彼女を殺した犯人がまだそう遠くにいない事を推測した。
推測すると彼はその自慢の脚力を活かし、その犯人を追うことにしたのだった。

そして、すぐにその犯人を視界にとらえ――今に至る。



例えば、足が竦んでしまうような高い所から落ちたら、人は確実に死ぬ。
それ故に、高い所に上がる事を恐れる人は多い。
そんな高所恐怖症にも似た感情を、真鍋和は現在嫌というほどに味わっていた。

突如、後ろから和を追いかけてきた謎の巨大な牛人間。
人間の倍はあろうかという巨体は、相手を威圧するのに十分すぎる。
一般男性の腰回りぐらいの太さを誇るその腕にかかれば、和の身体を投げ飛ばしてしまうのは朝飯前だろう。
その頭から生えている大きな二本の鋭い角に貫かれたら、どんな人間でもひとたまりもないだろう。

「…い、嫌……!!」



和の全身を、恐怖の感情が電撃のように駆け巡る。
眼前の巨体からは、殺気や悪意といったものがにじみ出ている。
いや、和の目から見れば、その巨体こそが悪意そのものだった。
目の前の悪魔は、全てを殺さんとしている。

――死ぬのか?
殺されてしまうのか?

体中を駆け廻る恐怖が、最高潮に達したその瞬間、目の前の悪魔が一歩こちらに踏み込んだ。
それが、文字通り『引き金』となった。

「うわああああああああああああああ!!」



バン、と。
銃声が響いた。



バッファローマンは、一つ失念していた。
鳩山ユキヲが、この殺し合いを行う上で『能力の仕分け』をしていた事を。
『仕分け』られたバッファローマンの能力は、元の世界にいた時よりもはるかに低くなっていた。
攻撃力も、俊敏性も、判断力も、耐久力も。

それゆえに、本来ならば通じない攻撃も、バッファローマンには通用してしまう。
和の撃った銃弾は、吸い込まれるようにバッファローマンの巨体に突き進み――

がくり、と力が抜けた膝が地に突き刺さる。
銃弾によって穿たれた腹部の穴からは鮮血が迸る。
焼けた火箸を押し込まれたような熱が、全身を駆け廻る。

「ぐっ……!?てめ、え……!!」

油断していた。
慢心していた。
超人でない、ただの人間に過ぎない目の前の少女の銃弾が、まさか自分に通用するなど、バッファローマンは思ってすらいなかった。
しかし、その油断がバッファローマンの膝を地につかせ、苦しめている。
激しい後悔と憤怒が、バッファローマンの身体を焦がしていた。
だがその激情は、和の恐怖を加速させ、暴走させる。

「来ないで!!来ないでったら!!」

バン、バン、バン。

次々と放たれる銃弾が、的確にバッファローマンの巨体に穴を穿つ。
それでも、バッファローマンは倒れない。
悪魔超人であるという自負と誇り。
それでいながら、こんなただの人間に過ぎない少女の銃で瀕死に追い込まれている自身への怒り。
それらがぐちゃぐちゃに混ざり合った、バッファローマン自身にもよく分からない感情だけが彼を動かしていた。



バン、バン。
カチッ、カチカチッ。

「え……嘘!?弾切れ!?」

6発の弾倉に込められた弾が尽きてしまった。
無論、予備弾は大量にあったのだが、それを入れ替えている余裕など和にはない。
目の前の悪魔は恐ろしい憤怒の表情をこちらに向けたまま、未だに倒れない。
このままでは、悪魔に殺されてしまう。

その太い角で刺し殺されるのだろうか?
その太い腕で捻り殺されてしまうのだろうか?
その太い足で踏み潰されてしまうのだろうか?

――――そんなのは、嫌だ。



和は慌てて一歩下がると、持っていた支給品の中から何か無いか必死に探した。
銃でも、剣でも、爆弾でも何でもいい。
あの悪魔を殺す事が出来るものが、欲しかった。

その想いが通じたのだろうか。
それとも、ただの偶然なのだろうか。

和は『それ』を見つけた。

取り出したものは、先端が鋭くとがった、例えるならば『角』。
伝説の生物、ユニコーンの角にも似た、鋭くとがった小さなただの杖。
それでも、藁にもすがりたい和にとっては頼りたい『武器』であった。

「そんな……ちっぽけな角で……ロングホーンを超えられると思ったのかあーっ!!」

6発の銃弾を浴びながら、力を振り絞ってバッファローマンが和に突進してきた。
バッファローマン最大の必殺技、ハリケーンミキサー。
過去何人もの超人の命を奪って来た、この技が真鍋和という一人の少女に向けられている。
ロングホーンの照準は、和の心臓に定められた。
このままバッファローマンが突き進んでいけば、和の命はそこで終わる。
万に一つも、和に逃げる道などない。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」



激しい光が、辺りに走った。



真鍋和は、歩く。
真鍋和は、歩いて行く。
さっきよりも、その足取りは重い。
全身を駆け廻る疲労感は、数分前の比ではない。
だがそれでも、歩かなければならない。



「……やらなきゃ。」



右手には銃を、左手には先程自分を救ってくれた炎を出す杖――アノアロの杖を持ち、真鍋和は、歩く。
その瞳には、何が映っているのだろうか。
その足は、どこへと向かおうとしているのか。
彼女は何を考えているのか。

それは、彼女自身にも分からない事であった。



G-7の路上に、全身を焼かれたバッファローマンが倒れていた。
先程、バッファローマンは真鍋和にハリケーンミキサーをぶちかまそうとしていた。
だが、あと一歩で当たると思ったその瞬間、真鍋和の持っていた杖が突然、猛烈な炎を吹きだしたのだ。
バッファローマンの巨体はなすすべなくその炎に包まれ、元々銃撃で弱っていた体力は一瞬で奪われ――
1千万パワーを誇る悪魔超人は、ここに斃れることになった。

(こん、な……とこ、ろ、で………)

最後に伸ばした手は、空を攫むと、どさりと地面に落ちた。





【バッファローマン@キン肉マン 死亡】



【G-8/道路/一日目-朝】
【真鍋和@けいおん!】
[参戦時期]:後続にお任せ
[状態]:疲労(中)、精神不安定
[装備]:RSAF エンフィールドNo.2(0/6 予備弾49発)、アノアロの杖@キン肉マン
[道具]:基本支給品*2、不明支給品(1~4)
[スタンス]:奉仕マーダー(唯)
[思考]
基本:……やらなきゃ。

注1:ショックで色々忘れている事がある可能性があります。
注2:バッファローマンの支給品とバッファローマンの死体はG-7の路上に放置されています。
注3:バッファローマンの参戦時期は7人の悪魔超人編、キン肉マンと戦う直前からでした。何故かロングホーンは2本ともあります。

【支給品情報】

【アノアロの杖@キン肉マン】
ロビン家に代々伝わる杖。炎を自在に操る事が出来るほか、ロビンマスクのマスクに装着することでユニコーンヘッドとなる。




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Hideaway ―逃亡者― 真鍋和

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