チェンジ・ザ・ワールド☆
その執事、傍観
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その執事、傍観
ベッドの上でセバスチャンを睨むシエル。
その主人を見て薄笑いを浮かべるセバスチャン。
そんな二人のやりとりが終わるのを、部屋の前の廊下で静かに待つレイン。
カチャリ
ドアが開き、セバスチャンがシエルの寝間着であるシルクのシャツをレインに手渡す。
最上級のシルクの感触を手に取り、レインはセバスチャンを見上げた。
「何か言いたそうですね」
微笑むセバスチャンにふと目を伏せる。
「……犯人を捕まえに行くんですか?」
「もちろんです。それが坊ちゃんの望みですから」
「そう、ですね……」
言葉を詰まらせるレインに、セバスチャンはクスリと笑う。
「あなたも行きますか?」
「足手まといになりますから」
「そうですか」
「ーーー相変わらず悪趣味ですね」
「そんなことはありません。私はあくまで、執事ですから」
美しいその微笑を回避し、レインは逃げるようにセバスチャンの前から立ち去った。
廊下を進んで洗濯室へと向かう途中、ふと足を止めて窓の外を見る。
美しい庭園の向こう、重たい雲が空を暗く染め上げていた。
曇り空でもないのに。
断末魔の悲鳴と共に駆け出したその先に、おびただしいほどの深紅の液体。
シエルはあまりの光景に言葉を失った。
セバスチャンに目を塞がれ、数メートル後方へ下がる。
ふらりと暗闇から現れた男は、グレル・サトクリフ。
彼の正体は、死神という異質なモノだったのだ。
その狂った死神の後方にある暗闇から現れたもう一人の影。
あか、赤、紅、アカーーーーー
全てが不気味なまでに美しく赤いその人は、シエルのたった一人の肉親、マダムレッドだった。
憎しみと悲しみを吐き捨て、己の不幸を呪いながら、マダムレッドはシエルに銃口を向ける。
グレルと激しい戦いを繰り広げていたセバスチャンがシエルを助けるために手を伸ばす。
一瞬ためらいを見せたマダムレッドからシエルを救い出すと、顔を覆ってくずおれたマダムレッドをグレルが仰々しい得物で手にかけた。
大きく一度体を仰け反らせ息絶えたマダムを目の前に、シエルはセバスチャンに向かってグレルの始末を命令する。
「あなたはこんな所で何をなさっているんです?」
その恐ろしくも悲しい出来事を少し離れた建物の屋根から見下ろす影に、突然月夜の空に現れた眼鏡の男が尋ねる。
「ーーー何も」
神経質そうなその男を振り返りもせず、傍観していた影が答える。
「あんなものを見ても、驚かないのですね」
「ーーーー」
影は答えない。
「人間ではないと、お分かりでしょう。レイン・スタンフォーバーグ……」
黒い分厚い手帳のページをめくり男がそう言うと、レインは小さく笑った。
「悪魔と死神……ですか」
「ええ、私は派遣協会の者です。グレル・サトクリフを捕獲しに来たのですが……あなたは?」
眼鏡を長い柄のはさみのようなもので持ち上げながらそう言うと、男はレインの隣りに歩み寄った。
「先ほども言ったでしょう。何もしていない、と」
「傍観、ですか」
「私はただの使用人ですからーーーただ……確かめたいことがあるんです……彼らと、あなた達の事を」
ジロリと睨み上げられ、男は再び眼鏡の位置を直してふわりと宙に飛んだ。
「確かめたい事? ……まあ、あなたの事は今はいいでしょう。仕事をやってしまわなければいけませんからねーーーやれやれ、面倒な事をしてくれたものです。残業代も出ないというのに……それでは失礼しますよ。また、お会いする事もあるでしょう。レイン・スタンフォーバーグ」
そして男は長い柄のはさみを、グレルに向かって優雅な動きで投げつけた。
レインはそこまで見届けると、静かにその場を離れた。
翌日、マダムレッドの葬儀が執り行われた。
夕暮れの刻、墓の前に佇むシエルは、一体何を思うのか。
セバスチャンがシエルの前に跪くのを少し離れた所で見つめ、レインは風が吹き抜ける木々を振り返った。
END
=あとがき=
お読み頂きありがとうございます。
いやあ、この回はショッキングなお話でしたねー。
実際の切り裂きジャックは結局未解決ですけどねえ。
レインって何者? って思ってくだされば嬉しいです(笑)
それではまたお会いしましょう~。
いやあ、この回はショッキングなお話でしたねー。
実際の切り裂きジャックは結局未解決ですけどねえ。
レインって何者? って思ってくだされば嬉しいです(笑)
それではまたお会いしましょう~。
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