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チェンジ・ザ・ワールド☆
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チェンジ・ザ・ワールド☆

可能性

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streetpoint

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 女の子は大好きだ。

 柔らかくっていい匂いがして、とにかく可愛い。

 男みたいにごつごつしてないし、声も高いし、首を傾げて「お願い」なんて言われると、何でも聞いてあげたくなる。

 だけど、俺が好きな女の子はちょっと違う。

 ……いや、確かに可愛いし、いい匂いもする。と思う。

 だけど、違うんだ。















可能性















 いつもの様に千石が仲の良い女の子達と一緒に中庭で昼食を摂っていると、一人の女の子があっと小さく声を上げた。


「どうしたの?」


 誰かが尋ねる。


「え? うん……今さっきそこの渡り廊下を汐屋さんと南君が通ったんだけど、なんか手繋いで歩いてるみたいに見えた……」

「汐屋さんと南君?」 


 その名前に全員が顔を見合わせ、次に爆笑した。


「あっははは! ないないっ! だって汐屋さんだよっ!?」

「そうだよ~っ! 南君の好きなタイプって違くない?」

「そーそー。笑顔が可愛い子って言ってたもん。確かに汐屋さんって顔はまあまあ可愛いけど、鉄面皮じゃん!」

「ね、千石君?」

「え?」


 急に話題を振られ、千石は微妙な笑顔で返事をする。


「あ、そうかな。うん、そうかも」

「千石君汐屋さんと同じクラスでしょ?」

「ああ、うん」

「いっつもあんな感じで無表情なの?」

「はは。そうだね~」

「笑ったことあんのかな?」

「どうだろうね?」


 適当に答えながら、千石は一度だけ見た事のある彼女の笑顔を思い出していた。


 あれは高校の入学式の日の朝だった。




 千石が朝早く日課のロードワークに出て土手を走っていた時、大きな犬を散歩させながら向こう側から走って来る少女を見かけた。

 女の子は華奢で連れている犬の方が重そうなくらいだったが、風を切るように走っていた少女のその姿に見蕩れた。

 額に薄らとかいた汗と華奢なその少女がミスマッチで、それが何故かすごく印象的だったのだ。

 少女の方に気が行っていた千石は犬が自分に向かってジャンプしたのに気付かず、危ないという少女の声と同時に思いきり押し倒されて、見事に犬と一緒に土手を転がり落ちた。

 女の子は驚いてすぐに駆け寄ってきて、千石を助け起こしてから何度も頭を下げて謝った。

 呆然としていた千石はしばらく謝る少女の姿を見つめていた。

 そして尻尾を振って自分の手を舐め回す犬の頭を撫でながら、あんまり必死に謝るその少女の姿にとうとう我慢できなくなって吹き出した。

 それに少女はびっくりした顔をして、次に笑った。


 ごめんなさいと謝りながら、すごく可愛いらしい顔で。


 その時千石はものすごく心臓がバクバクと鳴ってるのに気付いて照れた。

 少女の笑顔に一目惚れをしたのだ。


 あれから2年。

 あの時偶然出会った少女は千石と同じ高校で、汐屋雪緒という名前だった。

 すぐに再会出来て嬉しかったが、何かが違った。

 それは、あの時見せてくれた笑顔を、一度も学校では見せなかったのだ。

 おかげで今千石の目の前でしゃべってる子や他の連中にも「鉄面皮」という不名誉な渾名をつけられている。

 1、2年の時は違うクラスだったが3年になって同じクラスになり、千石はすごく嬉しかった。話すチャンスがいくらでも出来るし、もしかしたら一緒に帰ったり出来るかもしれないと思っていたのだが、現実はそんなに甘くない。

 汐屋は人と壁を作っているみたいで、誰かと仲良くしゃべってる姿を千石は一度も見た事がなかった。

 1年の時からずっと話しかけるタイミングを探し続けて、結局出来ずに月日だけが過ぎて行った。

 そんな彼女が、千石の友人でテニス部の仲間でもある南と手を繋いで歩いていたなどと聞かされて、ショックを受けないはずがない。


「あ、そろそろ休み時間終わっちゃう~」


 女の子の声で回想に浸っていた千石は現実に引き戻された。


「教室戻ろうか?」

「じゃあ、千石君また放課後ね! テニス部の練習見に行くから!」

「うん、ありがとう」


 そう言って女の子達と別れた。


 南と汐屋さんが……


 本当に手を繋いでいたのだろうか?

 一体どういう関係なのだろうか?

 どうしてもそれを確かめたかった。














 「どうしたんだよ、もうすぐ部活始まるぜ?」


 千石の目の前で南が不思議そうな顔をしている。

 千石は一瞬視線を泳がせ、人差し指でこめかみをかいた。


「あ~。あのさ、お前、今日の昼休みに汐屋さんと一緒に歩いてなかったか?」


 その質問に南は一瞬眉を寄せた。


「……歩いてたけど?」


 なんとなく歯切れの悪い言い方に聞こえた。

 千石はまさかと思いながら、質問を再開する。


「ーーー付き合ってるのか?」

「はあっ? まさかっ! って、何で一緒に歩いてただけで付き合ってる事になるんだよ? 意味分かんねえ!」


 急に慌てる南に、千石は顔をしかめた。


「本当に?」

「本当だよっ! ってか、何でお前にそんな事言わないといけないんだよ!」

「汐屋さんの事が、好きだから」

「ーーーは?」


 南の動きが止まった。

 千石は南を睨み、もう一度言った。


「俺、汐屋さんの事が好きなんだよ」

「……ぷっ! あっはははははは! ああそう! はいはい。分かった分かった」


 急に笑い出した南は、なかなか収まりそうにない。


「なんでそこで笑うんだよ?」

「あはははっ! いや、悪ぃ。だってお前……ははっ!」

「だからなんだよ?」

「だってお前、世界中の女の子が皆大好きじゃないか」


 笑いすぎた南に涙目で言われ、千石は少し傷ついた。

 確かにそうだけど、そうじゃない。汐屋さんは別なんだ。

 笑っている南を見ていると段々と腹が立って来た。


「本当に本気で好きなんだ!」


 とうとう声を荒げた千石に、南が水を掛けられたように笑いを引っ込める。


「ーーーは? え? 嘘。お前……マジ?」

「だから好きだって言ってるだろ?」


 南は目を丸くさせ、じっと千石の顔を見つめる。

 しばらく何か考えるような仕草をすると、ため息を吐いた。


「ふうん。そっか……うん。まあ、100万分の1でも可能性がない訳ではないかもしれないしな……頑張れよ」

「なんだよ、それ」


 ポンと千石の肩を叩くと、南は歩き出した。


「おい、話終わってないぞ?」

「俺には別に話す事ないし」

「だから、何で汐屋さんと一緒に歩いてたんだよ? しかも手繋いでたの、友達が見たんだぞ? だから、付き合ってるのかと思ったんだ」

「ーーー手ぇ繋いでたあっ!? 俺が? 汐屋と?」


 これにまた南が驚く。


「まさかっ! いくら何でもそんなことするかよっ! 見間違いだ、見間違いっ!」


 怒って否定する南を見ていると嘘は吐いていなさそうだが、やはり納得のいく答えが欲しい。


「じゃあ何で歩いてたんだよ、クラス違うじゃないか」

「お前には関係ねー」

「だからあるって言ってるだろ? 俺は汐屋さんの事が好きなんだから」


 食い下がる千石に、南は呆れたように言った。


「あーもー。お前汐屋と同じクラスなら知ってるだろ? あいつと俺、図書委員で一緒なんだよ」

「……あ」

「昼休みに図書委員の仕事で呼ばれて行ってたんだ。その帰りだな、一緒に歩いてたのを見られてたとしたら」

「なんだ、そっか……」


 早とちりをしていた自分が情けない。

 そう言えばそうだった。汐屋さんは図書委員だった。

 と思い出す。


「ごめん、南。お前の事怒って」

「別にいいけどさ。でもお前、本当に汐屋の事好きなのか?」


 コクリと頷く。


「へえ……お前たちがしゃべってるの見た事ねーけど」

「だってしゃべったのって1年の時に一回だけだから」

「……はあ!? 嘘だろ、お前……おいおい、一回だけってーーーちょっとおかしいぞ?」


 千石もそう思う。

 ろくに話した事もない、一目惚れをした女の子の事を馬鹿みたいに二年以上好きで居続けるなど、正気の沙汰じゃない。

 だが気がついたら彼女の姿を探しているし、廊下ですれ違ったりしたらそれだけで一日幸せな気分になるし、声が聞けたりしたら、またあの時みたいに笑ってくれないかな。などと思ってしまうのだ。

 女の子は皆大好きな千石が、汐屋の事になると全然駄目なのだ。

 黙った千石に、南は言い過ぎたと思ったんだろう。小さくため息を吐いて笑った。


「お前がねえ……でも、あいつ手強いぜ?」

「何で知ってるんだよ?」

「ーーー俺、この間フラれたから」

「えっ!?」


 にやっと笑う南に、千石は開いた口が塞がらなかった。

 ぽかんと口を開けたまま南の顔を見ること数秒。


「他の奴よりかは結構話してくれてたからいけると思ったけど、駄目だった」


 ふと南がそう言って苦笑した。


「そう、なのか……」

「なんかさ、好きな奴いるんだってさ」

「え?」


 ドキッとした。

 汐屋の好きな奴。

 誰なのかすごく気になる。

 まさか自分ではないよな、と視線を上に向ける。

 どう考えても自分ではないだろう。だって接点が犬に飛びかかられた時しかないのだから。

 ぐるぐると考え事をしていると、南が笑った。


「そう言う訳で、お前も振られる可能性大だが。ま、せいぜい頑張れよ」

「友達ならもう少し励ましてくれてもいいだろ?」

「女ったらしのお前にエールを送るなんてもったいなさすぎる」

「ひどいなあ」

「ま、フラれたらそん時は慰めてやるよ。ほら、部活行くぞ?」

「ちぇっ……」


 歩き出した南の後ろを着いて行きながら、千石はあの日の汐屋の笑顔を思い出していた。



 例え可能性が100万分の1だろうと、これからせめて100分の1ぐらいにまで確率を上げてやる。

 そしてもう一度、あの笑顔を俺の前で見せてもらうんだ。



 翌日から千石は、積極的に汐屋に話しかけるようになった。

 告白をするのは、まだ当分先のお話。







                            END 






あとがき

おおう!千石君!女の子が大好きってところしかイメージが湧かなかった(笑)
とまあ、恋愛でもなんでもないお話しになってしまった訳ですが、どうもすみませんでした。。
この男、浮気ばっかりしそうですよね。
しかも趣味が占い……私、占い大嫌いなので、男でしかも占いが好きな奴なんて実際に目の前にいたら説教もんです(笑)
でも千石カッコいいからそこさえ目をつぶれば・・・・って上からだな、オイ!
これのお題は「100分の1の可能性」だったんですが、100分の1の可能性なら確率高いよね?
っつーことで、100万分の1にしたんですけど。
笑顔の可愛い子って、本当に見てて癒されますよねー☆(オヤジでごめん…)
それでは、読んでくださってありがとうございました。



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