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利根13日目・No.1

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私のやんごとなき王子様












13日目






「おっはよー!」


 校門を過ぎた所で後ろから元気に声をかけられた。


「おはよ、さなぎ」


 声の主は勿論さなぎ。その表情はにこにこしていて、何だかとても楽しそうだ。


「ついについについに~! 演劇祭本っ番っ! だねぇ~」


 大げさに手を振り上げながら言うさなぎを見て、思わず私の顔も綻ぶ。


「うん、今日で高校生活最後の演劇祭がついに終わっちゃうんだもんね。気合い入れて頑張らないと!」

「うんうん! 美羽なんて、あんなに悩んで悩んで悩み抜いて決めた担当だもんね! 10日間お疲れ様!」

「あはは! まだ終わってないよ。でも有難う、さなぎ」


 今から10日前――どこの担当に入るかを悩みに悩んでいた、あの感情が蘇ってくる。

 あの頃は自分がこんな風に人を恋するだなんて、思いもしなかった――


「さーて、それじゃ後数時間後には本番! 気合い入れていきますか~」

「うん! さなぎも頑張ってね!」

「了解です!」


 元気にお互いを励まし合って、私達はそれぞれの担当場所へと向かった。
















「うわあ……すごい人」


 私は出演者に衣装を着せ、準備を整えてからホールの客席へと回って来ていた。

 学園内に併設されているこの演劇場は、休日には海外のバレエ団や交響楽団なんかが来て使う事もある本格的な劇場だ。

 もちろん学園所有の物で、建設を進めたのは理事長らしい。

 客席は全部で1000席もあるなかなか大きな劇場だ。

 学園の父兄はもちろん一般のお客さんやマスコミも合わせると、その1000もある座席は立ち見が出る程満杯だった。

 こんなにたくさんの人が、私達が作り上げた劇を見るんだ。

 去年、一昨年と同じようにやって来たはずなのに、今年は緊張感が違った。それはやはりこれが高校生活最後だからかもしれない。


「小日向さん」


 声をかけられ振り向くと、利根君がすぐ隣りへとやって来た。


「良かった、探してたんだ」

「何かあったの?」


 自分の仕事は終わったはずだ。後は舞台が終わって片付けるまでここから劇を見物するつもりでいたのだ。


「何かあった時の為に舞台裏で俺と一緒に待機しておいて欲しいんだけど」

「え? それって……」


 他の人の仕事じゃないの? と言いかけてやめた。その他の人が水原さんだったからだ。


「うん、分かった」


 素直に従い、利根君と一緒に舞台裏へと急いだ。







 廊下を歩きながら、私は無意識のうちにため息を吐いていた。

 ホールを埋め尽くしたお客さんの多さに、無事に劇が終わって欲しいと、出演する訳でもないのに緊張したからだ。


「緊張、してるの?」

「えっ……」


 利根君は私のため息に気付いたらしく、優し気に微笑んだ。


「あ、うん……無事に終わって欲しいなって」

「大丈夫だよ。皆あんなに一生懸命頑張ったんだから、きっと成功する」

「――そうだよね」


 利根君の言葉は静かなのにとても心強かった。

 私はギュッと拳を握りしめ、隣りを歩く利根君を見上げて笑った。










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