チェンジ・ザ・ワールド☆
act.2(御影山)
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就職難民 黙って俺についてこい!
昨日の映像をリピートしているようなロビーでのやりとりを見ながら、私は社長と一緒にエレベーターに乗り込んだ。
はあ……
もう私ってば社長の奴隷のようなものね。
心の中でため息吐いてないと、きっとまたバカにされるから何度も心の中でため息を吐き出す。
社長の手伝いなんて、全然想像つかないや。コピーしてこいとか、お茶入れろとか? あれ買って来いとか書類持って来いとか? ーーーあれ? なんか出来そうじゃない? もしかして営業や写真や制作よりもむしろラッキー!?
「お前、今社長の仕事が営業とかより楽、と思っただろう」
「えっ!?」
呆れたような口調で社長が言う。
何で分かったの!? 私口に出したの、もしかして!?
「どうでもいいが、お前、あまり顔に出さないように気をつけろ。もし社外でライバル社の人間に会ったら顔だけで色々バレそうだ」
「き、気を付けます」
顔に出てたのね。なんか恥ずかしい……
決まりが悪くて床を見つめていると、最上階に到着した。
「こっちだ」
「はい」
言われるままフロアに降り、社長の後に付いて行く。そう言えば社長室は昨日回らなかったな。なんだかすごくフロアが静か。
「ここが俺の仕事場だ」
重厚なドアを躊躇無く開けると、入ってすぐ入り口に道を作るよう向かい合って机が並び、直ぐさま女性が二人立ち上がった。
「おはようございます、社長」
「ああ、おはよう。川島は来ているか?」
「はい、隣りです」
社長の問いに答えた女性が、私を不審そうに見た。それに気づいた社長がふっと笑う。
「こいつは葉月水那だ。先日話していたやつだ。今日から俺の手伝いをさせることになった、よろしく頼む」
「よろしくお願いします!」
社長に頭を押され、私は慌てて挨拶をする。それに苦笑するように女性がよろしくと答えた。
「おい、こっちだ」
次は腕を引っ張られ、次のドアへと入る。
「あ」
そこには昨日私を案内してくれた社長秘書の男性が座っていて、すぐに立ち上がると頭を下げた。
「おはようございます、社長。と、葉月さん」
「おはようございます、川島さん」
「川島、今日から葉月はここで働く。お前が色々とサポートしてくれ」
「はい、分かりました」
川島さんは細身の男性で、昨日案内してくれた時に話した印象は大人しい感じ。正直こんな大人しい人で御影山社長の秘書がよく務まるな、なんて思った。
でも美星堂の社長秘書って言ったら、きっとものすごいやり手なんだろうな。
「さっきの部屋にいたのは川島の秘書だ。俺への電話取り次ぎや書類の整理を担当している。川島は俺のスケジュール管理や代理で仕事に出る事もある」
「はあ」
なんだか良く分からない。社長秘書は川島さんで、その川島さんの秘書がさっきの女の人2人? 社長より秘書が多いってどういうことなんだろ?
「それで、お前の一番最初の仕事だが……」
「あ、はいっ!」
秘書が3人もいるんだもん、私は雑用よね。
そう思って元気に返事をすると、川島さんからファイルを渡された。
「今度発売する新製品について書かれた書類をまとめてある。今日、その新製品についての会議が行なわれる。お前も出席しろ」
「えっ!? 私も、ですか?」
「当たり前だろう。曲がりなりにも社長付きなんだ、そのお前が新製品の事を把握してなくてどうする。出来ないというなら、今日からでも掃除をしてもらって構わないんだぞ」
「いえっ! やります! しっかり頭に叩き込みます!」
私は慌ててファイルを胸に抱くと、肩にめいいっぱい力を込めた。
「よし、今日中にお前の机を用意させる。取りあえずは隣りの応接室を使え」
そう言って社長は入って来たのとは別のドアを親指で示した。
応接室は別にあるんだ……目の前にも立派な来客用のソファーと机があるのに。
「葉月さん。こちらへどうぞ」
「ありがとうございます」
川島さんは優しく微笑むと、隣室へ案内してくれた。
「会議までまだ時間があります。今日は商品のおおまかな内容を把握して、これからしっかり勉強していけばいいんですよ」
ああ、地獄で仏とはきっと川島さんの事ね。あの社長とは正反対。良かった、いじめられるばっかりじゃないわ!
「ありがとうございます。本当に何をしたらいいのか分からないので、色々と教えて下さい」
ぺこりと頭を下げる。
「こちらこそ、よろしくお願いします。あんな社長ですが、本当は優しい方なんですよ」
そう言い残して川島さんは部屋を出て行った。
優しい? あの御影山社長が? 川島さん、こき使われ過ぎてきっと脳みそが疲れてるのね。可哀想。ーーーっと、仕事仕事。
とにかく今は社長に言われた通りに仕事をして、何が何でもこの新製品を大ヒットさせるんだから!!
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