チェンジ・ザ・ワールド☆
歯車.3
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歯車
若王子の家に遊びに行って以来、バイトが休みの日にアパートにたまに顔を出すようになっていた。
海野比奈に若王子のアパートで会う事はなかったが、たまに来ているらしい。そしてやはり若王子との会話は楽しかった。
今日も昼に若王子の所に顔を出して家に帰る途中、軽快にバイクを走らせていた。
「そういやコウがバイクの雑誌買って来いって言ってたな」
ふと、今朝仕事に行く時にどうせ暇なら本屋に行っておけと言っていた強面の兄の顔を思い出す。仕方なく琉夏は本屋に寄る事にした。
駐輪場にバイクを止めると、見覚えのあるバイクが止まっていた。
「あ……」
間違いなく、そのバイクは海野のSRXで、琉夏は妙に胸が騒いだ。
本屋に入り、辺りを見回す。と、すぐに目当ての人物を発見した。そっと後ろから近づき声をかける。
「バイクの雑誌?」
「え? あ、桜井君」
少し驚いた顔をした海野に微笑みかけ、海野が持っていた雑誌を取り上げる。
「兄貴がこれ買って来いって言うからさ。もしかして海野も買うの?」
「ううん、私そこまでバイクオタクじゃないし」
「くくっ、SRX乗ってるのに?」
「あれは譲り受けたの。そろそろメンテナンスしなきゃと思ってるんだけどね」
「ふうん……俺がみよっか?」
「桜井君、メンテ出来るの?」
「まあね」
「へえ、じゃあお願いしようかな。簡単なメンテナンスなら私も出来るんだけど、最近ちょっとエンジンの調子が悪くって」
「あれ、それって俺で大丈夫かな?」
「ふふっ、それならバイク屋さんに頼むからいいよ」
「あっ、ウソウソ。大丈夫だって」
「本当に大丈夫~?」
楽しそうに笑う海野の顔に、琉夏は再び歯車の軋む音を聴いた。
あんなに好きだった少女への気持ちを深く封印したはずなのに、どうして今頃になってその気持ちが動き出そうとするのだろうか。
苦しいーーー
「大丈夫?」
「えっ?」
急に静かになった琉夏を心配して、海野が顔を覗きこむ。
「えっと、何が?」
「無理してるんだね」
「は?」
「ううん、何でもない。それじゃあ、お願いしようかな。あ! そういえば連絡先聞いてなかった」
「そういやそうだ。教えて? おねーさん」
「ふふ、いいですよ? おにーさん」
携帯のアドレスに追加された『海野比奈』という名前を見ながら、琉夏は小さくため息を吐いた。
さっき、海野は琉夏に「無理をしている」と言った。海野には琉夏が感情を押し込めている事が分かるのだ。海野なら分かってくれるだろうか? この、どうしようもない苦しい感情を。
続く…
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