チェンジ・ザ・ワールド☆
歯車.4
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歯車
海野との約束通り、数日後、琉夏はバイクのメンテナンスをするために海野の家へやってきた。
海岸が近くに見える住宅街の端に、海野の家はあった。以前、琉夏と琥一が住んでいたWEST BEACHからは離れているが、沿岸道路沿いに走ると10分ほどの距離だ。
「お邪魔します」
「どうぞ、何のお構いも出来ませんが」
ナチュラルなカットソーにGパン姿の海野に、琉夏は笑顔になる。
「海野、そのカッコ、いい」
「え? 服のこと? ーーーありがと」
照れたように笑う海野の様子に、琉夏は嬉しくなった。
ガレージに案内され、琉夏は海野のバイクSRXの前に仁王立ちする。
「よし、今からお前を俺が元気にしてやるからな」
「よろしくお願いします。あ、ちょっと待って。ここ座って」
「何?」
「いいから」
気合いを入れた所に水をさされ、琉夏は少し膨れて海野に言われたここ、ひっくり返されたビールケースに座る。
ふと髪がかきあげられる。
「おっ」
「髪の毛、邪魔になるでしょ? それに汚れるし…… はい、出来た」
海野がゴムで髪をまとめてくれたのだ。
「ん、サンキュ」
「私も手伝うから、工具とかいるもの言ってね」
「よし、それじゃあまずはレンチからだ!」
「はいっ」
思ったより軽症だったバイクは、琉夏でもきちんとメンテナンスすることが出来た。
「良かった、もっと酷かったらすぐにバイク屋行きだった」
「本当にありがとう。これからたまにお願いしようかな」
「いいよ。これくらい」
「冗談よ! そんなにお世話にばっかりなれないよ」
「別にいいじゃん。こんな事でもないとあんたと会う機会ないし」
「あ……うん。そっか、ーーーうん。そうだね、じゃあ、また、お願いしてもいい?」
「ーーー両手を前で組んで?」
「え?」
「いいから」
「こう?」
「うん。で、首をちょっと傾げて」
「? ーーーこう?」
「そ、で、可愛く“お願い”って言って」
「っ!? や、やだっ! 何やらせるのよっ」
真っ赤になった海野は、すぐに琉夏に背を向けた。
その様子に思わず笑ってしまう。
「くくっ、残念。もうちょっとだったのに」
「もう、からかうのはやめてよね。あ、そうだ」
ちょっとだけ拗ねたように頬を膨らませた海野に、琉夏はまた胸が躍った。
「どした?」
「今日、時間ある?」
「あるけど」
「晩ご飯、食べて行かない?」
「えっ? いいの?」
「うん、桜井君が良ければ……。一人じゃ味気ないし、たまには誰かと食べたいから」
「え……」
ガレージから家へと続くドアに手を掛けた所で、先を行く海野の言葉に思わず顔を上げる。
少し寂しそうにこちらを向くと、海野はリビングへと入って行った。それをすぐに追う。
「私の両親、いないんだ。一昨年事故で死んじゃって……」
「そっか……」
「隣町に叔母がいて、高校卒業するまではしょっちゅうここに来て私の世話をしてくれてたんだ。養女にならないかって言われたこともあったけど、もう自立出来る年齢だったしね。ーーーという訳で、いつも一人でご飯を食べている私の食事の相手をしてください」
ペコリと頭を下げる海野に、琉夏は頷いた。
「おっけー。じゃあ、俺の好きな物リクエストしてもいい?」
「うん、いいよ。今日のお礼に何でも作る」
「やった。んじゃあ和食! 俺、和食がいい」
「ーーーすごい範囲が広すぎるけど、和食ならなんでもいいの?」
「おにぎりが入ってたら何でもいい」
「おにぎりって、和食? なのかな?」
「和食だって。ねえ、材料あんの? 買い物行こ」
「あ、うん」
海野も自分と同じように、両親を事故で亡くしている。しかも、ずっと一人でこの家に住んでいるのだ。
一人で食べる食事が寂しいなんて、琉夏は味わった事がない。親は早くに亡くしてしまったが、その分琥一や両親がいてくれた。その家族から離れる為にWEST BEACHに住む事にしたのだが、結局琥一も着いてきたから、一人で寂しい事など無かった。
自分の喜びの為に人を犠牲にしてはいけないと思い続けていたが、海野に比べればまだまだ甘かった。
歯車の軋む音が段々大きくなって行く。
苦しい、苦しいーーー
幸せって、何だ?
続く…
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