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チェンジ・ザ・ワールド☆
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歯車.6

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streetpoint

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歯車










 たくさんの人で活気溢れる大学構内。そして琉夏に群がる女子大生達。


「ねえねえ、何学部?」

「今まで見かけた事ない気がするけど、うちの学生じゃないの?」

「名前なんて言うの?」

「えっとぉ……」

「あれ〜!? もしかして琉夏君じゃない〜!?」


 とうとう高校の同級生にも見つかってしまった。


「ちょっと、琉夏君どうしてここに!?」

「やだ、相変わらずカッコいいねー!」

「いや、ゴメン、ちょっと……」


 逃げ出そうにもすっかり囲まれてしまって、ただただ苦笑いをするばかりだ。

 と、携帯の着信音が鳴り、琉夏は急いで携帯をズボンのポケットから取り出した。


「もしもし」

『後ろ』

「何?」

『ちょっと近づけなさそうだから、後ろ向いて』


 電話の相手は海野で、琉夏は言われた通り後ろを振り返った。


『どうしたの? 来るなら連絡してって言ったじゃない』

「ーーーいや、ていうか、助けてくんないワケ?」

『助けて欲しいの?』

「うん。お願い」

『分かった』


 プツリと電話が切れると、人垣の向こうにいた海野が見事な笑顔を作り、手を振りながら走ってきた。


「琉夏〜! お待たせ〜!!」


 それに驚いたのは琉夏だけではない。その場にいて琉夏を取り囲んでいた女性陣全員が驚いて海野へ一斉に視線を向ける。


「やだ、ちょっと、あの子……」

「嘘、じゃあ、この人って、あの子の彼、氏? ……行こっか」

「うん、行こ」


 耳障りなセリフを残し、女生徒達は一人また一人と琉夏から離れて行った。


「もう、来るなら連絡してくれればいいのに。さ、行こう?」


 海野は琉夏の腕を取って笑う。


「ねえ琉夏君、海野さんと付き合ってるの?」


 同級生だった女の子が険しい表情で尋ねた。


「え?」

「気を付けた方がいいよ。海野さん、自分の家に色んな男の人連れ込んでやらしいこと色々やってるって噂だから……」

「は?」


 そう、ボソリと言うと、その子もいなくなってしまった。

 残された琉夏と海野はその場で互いを見つめ合う。なんとも言えない気持ちの悪い空気が周囲に漂い、琉夏が何か言おうと口を開いた時だった。


「ごめんね、私の所為で余計に嫌な目に遭わせちゃって」


 あはは、と笑う海野に、琉夏は胸が締め付けられた。


「さっきのあいつの言ってた事、なんだよ? 変な噂立てられてんのに怒らないのか?」

「噂じゃないかもしれないでしょ?」

「ーーー嘘だ」

「どうして分かるの? 私の事知らないじゃない。それに前に言ったでしょ? 私のあだ名、“変人”だって」

「確かに俺はあんたのこと知らない。SRXに乗ってて、一流大学の理Ⅰの1年生で、すっげー美人のくせに男っ気がなくて、初対面の俺にも優しくしてくれて、話してて楽しくて、料理が上手くて、一昨年からずっと一人で寂しい時間を過ごしてきたってことしか知らない。でもな、あんたがそんな嘘吐く人間じゃないってことくらい分かる」


 気づけば琉夏は海野の手首を強く握っていた。


「桜井君のことを誘惑するための演技かも知れないじゃない」


 強く握られた腕に動じる事無く、海野が反論する。


「……じゃあ、なんでそんな辛そうな顔してんだ? あんたさ、前に俺に言ったよな? 『無理してるんだね』ってさ。あれ、俺もあんたに対して思ったよ。あんたと俺は似てるんだ……」

「桜井君……」


 俺は一体何を言っているんだ? だいたいなんで海野が知らない奴らに悪口言われたってだけでこんなに腹立ってんだ?


「あ〜〜〜!!!」


 ぐしゃぐしゃぐしゃっ! 

 と頭を掻き回し、琉夏は自分の両頬を手で叩いた。

 パンッ!

 その様子に驚いた海野は、先ほどの悲しい顔では無くなった。


「違う違う! こんな事言う為に来たんじゃねえんだ。あんたに会いに来たんだ」

「私、に?」

「そうだよ、他にないだろ?」

「そうなの? 大学の講義受けに来たんでしょ?」

「それもあるけど、それだけじゃないの! ーーーあっと……ゴメン、さっきは言い過ぎた」

「……ううん、私のほうこそ、ごめんね……琉夏君には、分かるんだね。私が無理して取り繕ってるの」


 お互いに自分の幸福を自ら捨てている。なんとも滑稽だ。

 ギシギシとまた歯車が軋む。


「嫌ならさ、嫌って言えばいいじゃん。言えないんなら、俺が手伝ってやる」

「いいよ。桜井君だけでも分かってくれれば……あ、あと若王子先生は分かってくれてるけどね」

「あの人、いい人だよな」

「そうだね」

「えっとさ、せっかくだから講義受けて行ってもいい?」

「うん、次物理の講義だから一緒に行こうか」

「やった。これで俺も大学生気分だ」


 キャンパス内を歩いていると、2人を遠巻きに見ている人の中にまた海野の陰口を叩いている人間がちらほらいた。一体何をすればこんなに悪い噂が大学中に立つのだろう。

 琉夏の視線に気づいたらしい海野が、チラリと琉夏を見上げる。


「気になる?」

「ま、そりゃあ、多少は……」

「大学に入ってすぐにね、告白されたのーーー」


 海野の話しによると、海野に告白してきたのは大学でもカッコいいと人気の先輩で、良く知らないからという理由であっさり振った海野に恨みを持ったその先輩とやらが、振られた事を知られない為に根も葉もない嘘を流したのだと言う。

 元々友達がいなかった海野には庇ってくれる人もなく、別に変な噂を立てられた所で勉強に支障がある訳ではないと放ったらかしていたのがさらに災いし、堪えない海野を苦しめる為にその先輩はさらに酷い噂を広めたそうだ。

 それが、先ほどの男を家に連れ込んでうんぬん。というやつらしい。


「じゃあ、俺がその先輩ぶん殴ってやる」

「駄目だよ。暴力を振るったって解決なんてしないよ」

「ーーーそっか。じゃあ、我慢する」


 あいつと同じで、あんたも暴力が嫌いなんだな。


「でも、その気持ちだけで嬉しいよ」


 そう言って笑った海野の顔は、今までで一番綺麗だった。








                                続く…






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