週刊少年サンデーバトルロワイアル内検索 / 「とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ」で検索した結果
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とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ
とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 御神苗優の首輪をしばらく眺めてからリュックサックに収納し、紅麗は阿紫花のほうを向く。 怪訝な表情を浮かべた阿紫花ではなく、グリモルディに付属している球体を指でさす。 「魔道具は、貴様のような一介の極道が所持していいものではない。渡せ」 言い終えるよりも前に、紅麗の右腕が炎を纏う。 先ほどのジャバウォックとの戦闘を思い返し、阿紫花は息を呑む。 トリックは分からないが、紅麗は激しい炎を放出することができる。 阿紫花とて殺し屋としてそれなりに修羅場は潜ってきているが、あくまで人間同士の騒動しか知らない。 人形破壊者(しろがね)と自動人形(オートマータ)の戦争に巻き込まれかけたものの、本格的に戦場に飛び込む前にこのプログラムに呼び出されているのだ。 ... -
現地調達品
...クの爪×3 人間~とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえにおける戦闘において、ジャバウォック本体から切り落とされた右腕から紅麗が調達。 性能は支給品(ARMS)の欄のジャバウォックの爪と同様。 ひょっとこ面 ギイ・クリストフ・レッシュがD-4の田邊骨董店から拝借した。 口をすぼめた男性の顔をかたどったお面。 田楽などでは、道化役がこれを被って登場する。 白兎の耳 「虹」にて、ホワイトラビット本体から切り離された片耳。ジャン・ジャックモンドが回収。 巴武士が繭から目覚めた直後の参戦であったので、アリスの意思も宿っている。 車椅子 ヴィンセント・バリーが見つけてきた。 C-2にある中学校の備品である。 肘掛にあるボタンで操作とかできないし、ふかふかで座り心地抜群だったりしない。 自力で車輪を回転させて進むタイプのよくあるフツーの車椅子。 -
SSタイトル元ネタ
...の同名楽曲 027 とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ ロックシンガー『スネオヘアー』の楽曲『ワルツ』の一節『あぁ、とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ』 029 ナゾナゾ博士と植木の法則 漫画『うえきの法則』では毎回タイトルが『~の法則』となっている 033 It s like a 自問自答 ロックバンド『ZAZEN BOYS』の楽曲『自問自答』の一節 036 遥場 ~Through the Tulgey wood~ ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』のナンセンス詩『ジャバウォックの詩』ゲーム『ラスト レムナント』のBGM『Through the Tulgey wood(タルジイの森を抜けて/ジャバウォックの詩の引用)』 038 レッツゴーレッカマン 烈火の炎作中にてヒロインの佐古下柳が書いた絵本『ファイヤースターレッカマン』特撮映画『レッツゴー仮面ライダー』 040 振り放けて... -
◆hqLsjDR84w
...26 人間 027 とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ 033 It s like a 自問自答 034 銀の意志/銀の遺志 038 レッツゴーレッカマン 040 振り放けて三日月見れば一目見し 044 ひとりじゃない 047 重い荷物の担ぎ方 049 ガキじゃいられない 050 歯車が噛み合わない 052 ワンダーランド 054 ミッドナイト・クラクション・ベイビー 056 妖語(バケモノガタリ) 057 現在位置~Fly! You can be Free Bird~ 059 ナビ 064 ぎゅっと握って 066 ばかやろう節(1) ばかやろう節(2) ばかやろう節(3) 069 モーニングティーを飲みに行こう 072 神をも恐れぬ父 073 第一放送(六時間経過) 074 鉄風鋭くなって 080 Merry-Go-Round 081 ノイズキャンセリング 084 らでぃかる・ぐ... -
追跡表(烈火の炎)
...、御神苗優 027 とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ ◆hqLsjDR84w 阿紫花英良、紅麗 067 日常――変わらぬ朝 ◆6LcvawFfJA 阿紫花英良、紅麗 093 思索――自分達の現在位置 ◆6LcvawFfJA 阿紫花英良、紅麗、加藤鳴海、高槻涼 100 100話到達記念企画、首輪の謎に迫る! ◆hqLsjDR84w 秋葉流、阿紫花英良、おキヌ、朧、加藤鳴海、紅麗、才賀勝、ゼオン・ベル、高槻涼 112 若者のすべて ◆hqLsjDR84w 阿紫花英良、紅麗、加藤鳴海、高槻涼、キース・グリーン ▲ 【INDEX】 からくりサーカス ARMS 金色のガッシュ!! 金剛番長 うしおととら 烈火の炎 うえきの法則 GS美神極楽大作戦!! スプリガン YAIBA 主催者 ▲ -
第一放送までの本編SS(投下順)
...、御神苗優 027 とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ 阿紫花英良、紅麗 028 虹 ◆d4asqdtPw2 巴武士、ゼオン・ベル、ジャン・ジャックモンド 029 ナゾナゾ博士と植木の法則 ◆I2LrcbxxNg ナゾナゾ博士、植木耕助 030 悪魔~デモン~ ◆xrS1C1q/DM 金剛猛(日本番長)、チェリッシュ、鉄刃、水鏡凍季也 031 ホームラン ◆d4asqdtPw2 パウルマン&アンゼルムス、金剛晄(金剛番長) 032 守りたいもの(前編)守りたいもの(後編) ◆AJINORI1nM ルシオラ、レイラ、アル・ボーエン 033 It s like a 自問自答 ◆hqLsjDR84w 小金井薫、シルベストリ、才賀エレオノール、ロベルト・ハイドン 034 銀の意志/銀の遺志 ◆hqLsjDR84w キース・シルバー 035 エクストリーム自殺 アシュ様編 ◆xrS1C1q... -
第一放送までの本編SS(時系列順)
...、御神苗優 027 とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ 阿紫花英良、紅麗 028 虹 ◆d4asqdtPw2 巴武士、ゼオン・ベル、ジャン・ジャックモンド 029 ナゾナゾ博士と植木の法則 ◆I2LrcbxxNg ナゾナゾ博士、植木耕助 031 ホームラン ◆d4asqdtPw2 パウルマン&アンゼルムス、金剛晄(金剛番長) 033 It s like a 自問自答 ◆hqLsjDR84w 小金井薫、シルベストリ、才賀エレオノール、ロベルト・ハイドン 034 銀の意志/銀の遺志 ◆hqLsjDR84w キース・シルバー 036 遥場 ~Through the Tulgey wood~ ◆vorpaLEJrs キース・グリーン、コウ・カルナギ 037 ヘルダイバー ◆d4asqdtPw2 金剛猛(日本番長)、秋葉流、ユーゴー・ギルバート、チェリッシュ、鉄刃 038 レッツゴーレッカ... -
人間
...は―― 戻る 次へ:とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ 時系列順で読む 前へ:魔王と英雄の消失 戻る 次へ:とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ キャラを追って読む 000 OP『胎動~インディケイション~』 高槻涼 051 チェイン GAME START 加藤鳴海 GAME START 阿紫花英良 027 とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ GAME START 紅麗 GAME START 御神苗優 GAME OVER ▲ -
日常――変わらぬ朝
...って読む 027 とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ 阿紫花英良 093:思索――自分達の現在位置 紅麗 ▲ -
追跡表(からくりサーカス)
...、御神苗優 027 とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ ◆hqLsjDR84w 阿紫花英良、紅麗 067 日常――変わらぬ朝 ◆6LcvawFfJA 阿紫花英良、紅麗 093 思索――自分達の現在位置 ◆6LcvawFfJA 阿紫花英良、紅麗、加藤鳴海、高槻涼 100 100話到達記念企画、首輪の謎に迫る! ◆hqLsjDR84w 秋葉流、阿紫花英良、おキヌ、朧、加藤鳴海、紅麗、才賀勝、ゼオン・ベル、高槻涼 112 若者のすべて ◆hqLsjDR84w 阿紫花英良、紅麗、加藤鳴海、高槻涼、キース・グリーン 【フェイスレス:6】 006 『太陽の人形芝居』 ◆jwqtetXMG2 才賀正二、フェイスレス、ガッシュ・ベル 043 雷人具太陽(ライジングサン) 前編雷人具太陽(ライジングサン) 後編 ◆AJINORI1nM フェイスレス、ジャン・ジャックモンド、美神令子 050 歯... -
虹
...下順で読む 前へ:とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ 戻る 次へ:ナゾナゾ博士と植木の法則 時系列順で読む 前へ:とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ 戻る 次へ:ナゾナゾ博士と植木の法則 キャラを追って読む GAME START ジャン・ジャックモンド 043 雷人具太陽(ライジングサン) 前編 GAME START ゼオン・ベル 060-a:どじふんじゃった!(前編) GAME START 巴武士 GAME OVER ▲ -
非戦闘生命
非戦闘生命 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ エリアC-4の河原では、二つの戦闘が繰り広げられている。 その片方――二メートルほどの長身の老人と、それ以上の巨躯を誇る高校生。 すなわちドクターカオスと金剛晄の戦闘は、両者のスペックからは想像できぬ展開を見せていた。 使いなれぬ道具を武器としているカオスが、間違いなく戦闘力で勝っている金剛を攻め続けているのだ。 ドクターカオスが武器として用いているのは、純白のマリオネット。 オリンピアという名を持つそれは、六本の腕や内蔵した注射機などの武器で戦うトリッキーな懸糸傀儡だ。 とはいえ現状では、まだドクターカオスはオリンピアの性能をすべて引き出せているとは言い難い。 説明書こそ付属していたが、内蔵武器などについて記すばかりでその操作方法についての奇妙は大してなかったのだ。 十指すべてを用い... -
フロムダスク・ティルドーン
フロムダスク・ティルドーン ◆PbH8Onsw.o よろしい、それでは前説の名手たるピエロ殿の後を継ぎ、ここに選ばれた一つの悲劇をご覧あれかし。 ★ ★ ★ 夜はいまだ悠々と横たわっていた。 光り輝く月も、やや傾きかけたとはいえ我が物顔で夜空に留まってはばからない。 その月光を受けて流れる雲は、夜空よりもさらに色濃く浮かび上がっている。 まるで質量をもつかのごとくフィールド上に満ち足りた闇の中では、木々が葉をざわめかせている。まるで輪唱のように、途絶えることなく。 雑木林に守られるように、高台にある寺はひっそり閑としてただそこに在り。 朝靄はまだ弱々しく、夜の裾をようやく浸し始めたばかりだ。 と、ここで木々の合唱を邪魔するものがあった。 老人と幼い子供の、争うような声。 「とぼけるでない!」 ... -
流と耕助
流と耕助 ◆c8fjjCyRkM 植木耕助は、歩き続けていた。 溢れる涙によって視界がにじみ、足元さえかすんで見える。 いかに十つ星天界人といえど、前が見えなければ足取りは覚束なくなってしまう。 だというのに、植木は涙を拭こうともしなかった。 それをするためには、抱えているものを手放さねばならないからだ。 少しずつ冷たくなっていく老人、ナゾナゾ博士をもう放置することはできない。 植木が彼を置いて行った為に、彼は死んでしまったのだ。 もう二度と仲間から目を離さないと、植木は誓った。 ほとんど霞がかった視界のまま、ひたすら歩く。 「そこの緑髪ボウズ」 不意に声を浴びせられ、植木はそちらを振り向いた。 ぼんやりと見えたのは、人影が二つ。 一人は短い茶髪で、もう一人は長い金髪。 体型からしてどちらも大人のようだ。 その程度しか、植木には分からなかった。... -
振り放けて三日月見れば一目見し
振り放けて三日月見れば一目見し ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 振り放けて 三日月見れば 一目見し 人の眉引き 思ほゆるかも―― ◇ ◇ ◇ 真上にあった満月はだいぶ西側に傾いている。 とはいえ空はまったく白んでおらず、朝が来るにはまだ時間を要するようだ。 通常ならばしんと静まり返っているはずの深夜の山中では、草木が激しく揺れる音が響いていた。 風はほとんど吹いておらず、夜行性の動物が駆け回っているワケでもない。 一人の少年が、足早に山頂へと進んでいるのだ。 和服の上に学ランを羽織った彼は、桐雨刀也。 桐雨流居合術を学び、師から皆伝の証たる秘剣を託された熟練者である。 そして自身のスジの通らぬ思想を打ち砕いた金剛番長のためならば、命を捨てる覚悟を持... -
世界最強の男、世界の広さを思い知る
世界最強の男、世界の広さを思い知る ◆c8fjjCyRkM ボー・ブランシェは走っていた。 脇目も振らず、ただひたすらに。 共に闘った仲間が、その命を賭けて逃亡の機会を作り出した。何としても鬼丸から遠ざからねばならない。 足を止める暇はおろか、たとえ山道でも速度を緩める余裕すらない。 傾斜であろうと関係なく、全速力で山を下っていく。 草土のせいで足場は安定しないし、枝が肌に突き刺さるが、無視を決め込む。 多少足を取られた程度で転ぶほど、戦場に慣れていないはずがない。 多少枝が刺さったくらいで痛みを感じてしまうほど、ヤワな鍛え方はしていない。 溢れていた涙も、大分前に拭い取った。視界はもはや明瞭だ。 人間の限界をはみ出しつつあるボーの全速力ゆえ、山を下り切るのに大した時間はかからなかった。 平地に到達しても、ボーは減速しない。 「ボウズは……、テッドはまだ戦... -
遥場 ~Through the Tulgey wood~
遥場 ~Through the Tulgey wood~ ◆vorpaLEJrs 開かない部屋に光が差した。 汗にぬるむ金属の臭いと、蜘蛛の巣に似た陥没の跡が、外界にさらされた。 それが彼と、彼の敗北のはじまりであった。 ◇◆◇ 山中へと続く歩道に、斜面の縁から土がこぼれた。 ささやかに崩れた泥砂を受けることなど、これまで幾度もあったのだろう。年季の入ったアスファルトのくすみは、蒸れた土の乾いた色と近似している。 そこに跳び下りたキース、グリーンのカラーネームを戴く少年は、足許に広がる諸々を顧みることなく歩みを再開していた。纏った体躯を大きく見せるダブル・スーツにボタンダウンのドレスシャツ、背伸びをしていることを隠そうとした跡がみられる出で立ちに上下動の余韻はない。視界に影を落とした髪のひと房を撫で付ける仕草につれて、光を透かしたロー・... -
その他現実出展の支給品
その他現実出展の支給品 参加者レーダー@オリジナル 才賀アンジェリーナに支給された。 付近にいる参加者の反応を探知して、ディスプレイに光点を表示する。 広域表示と狭域表示の切り替えが可能だが、極限まで広域表示にしても自分のいるエリア内しか表示されない。 サイズは、縦約25センチ、横約20センチ、厚さ約1.5センチ。ようはiPadみたいなイメージで。 いったい、参加者の何に、どのようにして、反応しているのかは不明。以降に任せます。 鍋の蓋@現実 蒼月紫暮に支給された。 原作でも支給された鍋の蓋。 参加者名簿入り携帯端末@出典不明 秋山優(卑怯番長)に支給された。 参加者のデータが入った携帯端末。 写真と特徴、特殊な能力の簡単な説明がなされている。 一部の者には死因の情報も記されている。 ハンディカラオケ@現実 横島忠夫に支給された。 5... -
貫くということ
貫くということ◆WMyP5RHbA6 殺す。 霧沢風子の頭にある思考はそれだけだった。 目の前で血と臓物を撒き散らしながら動かない仲間を見て。 風子の世界は音を失くした。 「あ、ああっ」 殺し合い。集められた五人の仲間。 全員が全員ただで殺られるようなヘタレ野郎じゃない。 今回もいつも通り、ボロボロになりながらも無事にハッピーエンドを勝ち取るはずだった。 「何でだよ……何でっ!」 ハッピーエンドはもう叶わない。一緒に生きて帰りたい仲間が早くも二人消えてしまった。 何やってんだ、烈火、みーちゃん。殺しても死なないゴキブリみたいなお前等がどうして死んじゃうんだよ。 流れだした放送を口では否定したが、心の奥底ではとっくに理解できていたはずだ。 烈火も水鏡も、死んでしまったんだって。 「残して、いくな。置いていかないでっ」 ... -
らでぃかる・ぐっど・すぴーど
らでぃかる・ぐっど・すぴーど ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 「――というワケです」 いまユーゴー・ギルバートが告げたのは、彼女の知るキース・ブラックの目的すべてである。 どういうことだか分からないが、この殺し合いプログラムの舞台では彼女のテレパス能力に妨害がかけられているらしい。 となればいくら世界最高峰のテレパシストのユーゴーであろうと、いつ不意を打たれて殺されてしまうか分からない。 そのことを考慮すれば、話す時間のあるうちにブラックの思惑を伝えておかねばなるまい。 とはいえ、このプログラムはユーゴーの把握していたブラックの目的とはかけ離れているのだが、それでも真の狙いを見定めるための鍵にはなりうるだろう。 ゆえに、ユーゴーは少し時間をかけてゆっくりと詳細に説明したのだが―― 「うん。よく分かんねえ。 まあでも、つまりその... -
自動人形の法則
自動人形の法則 ◆CFbjQX2oDg 殺し合いの舞台で初めて出会った中学生二人は今後の方針として仲間との合流を目指すことにした。 ヒデヨシの知り合いはいないらしいので清磨の知り合いを中心に殺し合いを是としない人を探す。 神の席争奪戦、魔界の王を決める戦い。 殺人とまでは行かないが他者を蹴落とす戦いに参加していた二人。 殺し合いを否定するものは以前の戦いでも確かにいた。 きっと、ガッシュたち以外にも同じ考えのものがいるはずだ。 例えば学ランの大男。 例えば外国人の中年男性。 例えば高槻と言われた少年。 彼らに出会うことが出来ればきっと仲間になれる。 うまく言葉に出来ないが信じられる。 だが、行くあては特に無い。 ガッシュたちがどこを目指すのかを推察するにもここには思い出が多すぎる。 そこでとりあえず中央を目指して移動することにした。 中央には人... -
撤収――天秤にかけた結果
撤収――天秤にかけた結果 ◆6LcvawFfJA ゴーストスイーパーという職業に必要なのは、霊力の強さや霊能に関する知識のみではない。 無限に湧いて出る物ではない霊力をここぞという時に温存する為には、純粋な身体能力も不可欠。 そして霊の溜まり場とは大抵がそこにいるだけで体力を奪い取っていくので、スタミナも必須。 しかし、それらよりも重要な要素が存在する。 それは、状況を冷静に認識し的確な一手を導き出す知力である。 その他の全てを兼ね備えていたところで、これが無くては二流止まり。 故に、一流のゴーストスイーパーの中でもさらに頂点にいる美神令子は、類稀なる知力を持ち合わせているのである。 “超一流”の、“日本屈指”の、“世界最高クラス”の、“S級”の、ゴーストスイーパーであるのだから。 その頭脳で以って、美神令子は現状を打破する方法を模索する……! ... -
悪魔~デモン~
悪魔~デモン~ ◆xrS1C1q/DM 殺し合え、か。下らない。 僕はそんな遊びに付き合っている暇はないんだ。 森光蘭が天堂地獄を完成させてしまうのを阻止する必要がある。 そう、やつの永遠の命などという野望を止めなくては。 柳さんをあんなヤツのために死なせてやる気はない。 天堂地獄に囚われたあの人々の魂も開放してやらなければならない。 だから僕は、僕たちは一刻も早く元の世界に帰る。 思い返してみれば、やるべきことがまだ残っているんだ。 森光蘭の野望を止めるだけではない。 我が師、巡狂座に姉さんの事も聞かなくてはならないし。 戒の事も伝えなくては。 そもそも、こんな事がさせたければ戦いや殺しが好きな連中を集めればいい。 おあつらえ向きの人間は何人も知ってるしな。 キース・ブラックには忠告しといてやろう、『次からは人選を考えることだな』と。 けどヤ... -
エンカウント
エンカウント ◆c8fjjCyRkM 3の禁止エリアの後に、16の死者。 それだけ伝えると、キース・ブラックによる放送は終わった。 口を閉ざしたのは放送を聞く為だというのに、鉄刃とチェリッシュの会話が即座に再開することはなかった。 二人の間に数分静寂が広がってから、ようやく刃が口を開いた。 「は! はは! あのやろー、ふざけやがって!」 言葉の内容に反して、刃の口元は震えている。 浮かべた笑顔はぎこちなく、乱雑にかき上げられた髪の根元からは汗が伝っている。 「まだ全然時間経ってねーってのに、そんなに死ぬはずねーだろ! 嘘に決まってんじゃねーか!」 口の痙攣に伴い、ところどころで声が裏返ってしまう。 刃自身、自らの発言に無理があることは分かっていた。 キース・ブラックが上げた16人の死者には、刃の仲間である3人も含まれている。 仲間達が死ん... -
さよなら旧い自分
さよなら旧い自分 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 「……さて」 もうすっかり昇りきった日の下で、憲兵番長こと伊崎剣司が誰にともなく呟く。 河原に向かったギイとシルベストリを見送ってから、とうに十分ばかし経過している。 その間、いったいなにをしていたのかといえば、ひとえに『仕込み』をしていたのである。 彼は人を斬る音色を愉しむことこそ最上の快楽としているが、しかしあくまで最上であって唯一ではない。 単に人体に刃を滑り通せればそれでよいのではなく、むしろその過程をも堪能するべく趣向を凝らすタイプなのだ。 その憲兵番長の視線の先には、地べたの上で横たわる少女――魔物の子・チェリッシュ。 すぐ横で一人の命が奪われた事実も知らずに、未だ意識を取り戻す素振りすら見せていない。 眠ったままの彼女に雷神剣の刃を突き刺してやるというのも、決し... -
疎通――少年さとり
疎通――少年さとり ◆6LcvawFfJA 危うく声を上げてしまいそうになり、バロウ・エシャロットは慌てて両手で口を押えた。 山を抜けてきた男目掛けて放った銃弾が、いとも容易く回避されてしまったのだ。 完全に不意を突いたはずなのに。 しかし周囲には樹木が生い茂っている。それらに隠れれば、再び奇襲を仕掛けることができる。 戦闘が長引くほどに“過去放った自らの攻撃を再び現実にできる”バロウは、優位に立てるのだ。 その考えから忍び足で移動しようとして、今度こそバロウは驚愕の声を漏らしてしまった。 「馬鹿なッ!」 男が、握っていた三日月型の剣を投擲したのである。 “バロウが身を潜めようとしていた樹木”目掛けて。 山の麓に現れた人影を発見し、微塵もこちらを警戒していない様子であったのを確認してからバロウは攻撃を仕掛けた。 にもかかわらず、既に自分の存在を... -
はじめの一歩
はじめの一歩 ◆xrS1C1q/DM 「嘘……だろ……? 李崩! ……ヒデヨシッ!」 キース・ホワイトによる放送が終わり、室内を満たしていた静寂を破るのは、愕然とした表情を浮かべたテンコの半ば叫ぶような声。 しかし、テンコの悲痛な声にキース・ブルーもヴィンセント・バリーも応えることはなく、再び部屋を沈黙が包み込む。 彼らのこの反応が、否が応でも現実を突きつける。 二人の死という結果が真実であると。 テンコにはまだ楽観視している部分があった。 神を決めるために行われた戦いが結果的には無事に終わったから。 死者が出る可能性を常に孕みながらも、最後には皆が笑って終了を迎えることが出来たから。 想定しきれていなかった。 近しいものを失ってしまうという、現実を。 「すまねぇ……少し外で風浴びてくるわ……」 黒い羽を力なく動かし、今にも墜落してしまい... -
重い荷物の担ぎ方
重い荷物の担ぎ方 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 「ここまで来れば、ひとまず大丈夫……かな。 わざわざ移動した僕たちを探すとも思えないし、あまり体力を使いすぎてしまっても本末転倒だからね」 後ろをついて来ているおキヌさんに告げて、足を止めた。 いきなり反応しきれなかったらしいおキヌさんが、僕の三メートルほど前まで行って停止した。 お爺ちゃんの記憶が溶け込んだ『生命の水』を飲んだ才賀勝――つまり僕は、このくらいの運動で疲れてしまうことはない。 だけど幽霊であるおキヌさんは、どうなのだろう。 そう、おキヌさんは幽霊なのだ。 一見ただの高校生に見える巫女服を着た長い黒髪の彼女は、もう命を落としている。 それも、三百年も前に亡くなったのだという。 僕のなかにあるフェイスレスの記憶よりも、さらに百年も昔だ。 「はぁー……くたび... -
明暗
明暗 ◆6LcvawFfJA <登場人物紹介> 一人目……夢を抱く少年。 二人目……夢を抱くのを止めた青年。 三人目……夢を抱く事を許されなかった青年。 ○ 「……は?」 ガッシュ・ベルの口から零れ落ちたのは、ひどく気の抜けた声。 現状を認識出来ずにいながら、吐息と共に自然に漏れてしまった物だ。 先程までの射抜くような視線は鳴りを潜め、目を見開いたまま放心している。 その眼前で、ジャン・ジャックモンドは正二の所持品を回収する。 人形をアタッシュケースに戻して蔵王に入れ、正二のリュックサックに収納する。 終始口を利こうともせず、ジャンは幾つものリュックサックを手にガッシュの傍らを横切っていく。 ジャンの長い金髪が、ガッシュの頬をほんの僅かに擦った。 そのくすぐったい感触が、ガッシュを我に返す。 ... -
禁句
禁句 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 公園内にいる四人の獲物から一瞬たりとも視線を外さず、キース・シルバーはゆっくりと近付いていく。 歩みを進めつつ、シルバーは纏っているゆったりとした軍用ロングコートから右腕だけを外に出した。 その右腕はすでに人体のそれではなく、鉱物のように強固な体表と獣のように鋭利な爪を誇るARMSのそれと変質している。 蜂の羽ばたきじみた音を立てて、異形の右腕を青白い電撃が覆う。 これこそが、シルバーの肉体に移植されしアドバンストARMS『帽子屋(マッドハッター)』の能力。 移植者の体内で荷電粒子を生み出し、外界へと放出することができるのだ。 応用すれば、掌に荷電粒子を集束させ一筋のレーザー光線として放つことも可能となる。 そんなキース・シルバー必殺の荷電粒子砲『ブリューナクの槍』を知っていながら、アル・ボーエンはず... -
横島忠夫、清麿と出会う(後編)
横島忠夫、清麿と出会う(後編) ◆n0WqfobHTU ドットーレにとってこの戦い、清麿に負けて欲しくはなかった。 守ろうとした人間を殺し、不幸を呪い嘆く清麿が見たかっただけなのだから、あの人間にはむしろ適当な所でさくっと死んで欲しかった。 しかし、まるで意味が不明な執着から清麿を狙う彼は、なかなかに愉快な人材であると思いなおし始めていた。 自分の命を優先し、他者を踏みつけ被害者顔を隠そうともしない。実に、ドットーレの知る人間らしい人間であったのだ。 ドットーレの経験上、こういう人間は彼の振るタクトに合わせ、面白いように踊ってくれるものだ。 そこでドットーレは、不覚を取ったかと校庭の方へと目をやる。 校舎内の戦闘に注視しつつ、流された放送の事を考えていた為、ふらふらと歩み寄って来る人間に気付くのが遅れてしまった。 校庭脇、校舎側の鉄棒の上にぴょんとドット... -
ワンダーランド2
ワンダーランド2 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ ふーふー。 ふーふー。 ずるずる。 はふはふ。 ずるずる。 はふはふ。 ずるずる。 ずるずる。 ずるずる。 ずずずず。 ずずずず。 「……ふう」 一拍の間を空けて、ため息が一つ。 それがはたして誰のものであったのか、高嶺清麿の頭脳をもってしても分からなかった。 カップラーメンをすする三人を静かに見守っていた、食事を必要としないマシン番長ではないだろう。 しかしそこからさらに、他の三人のうち誰だったのかを搾り出すことはできない。 霧沢風子かもしれないし、横島忠夫かもしれないし、清麿自身が無意識のうちに吐いていたのかもしれない。 「…………っ」 プログラムに巻き込まれてか... -
歯車が噛み合わない
歯車が噛み合わない ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 「これも欲しいかな。ああ、それもあるだけ入れておいて。あとあれもお願いね」 思い上がった声を浴びせられ、紅煉は何度目になるか分からない舌打ちを鳴らす。 同時に、夜の闇より黒く艶のある体毛が僅かに逆立ち、血のように赤い瞳が鈍く輝く。 紅煉の計画では、すでに五人は殺して喰らっているはずであった。 殺し合いの会場が広く他の参加者と出会いづらいものの、それは人間の場合である。 妖(バケモノ)に人間のルールは適用されない。 夜中でも昼間と同じように視界は開けているし、人間の臭いを辿ることも可能だ。また、そもそもの移動速度自体が人間とは比べ物にならない。 だから、いまごろ満腹とまでは行かずとも腹八分目程度までは満たされている――つもりだった。 「ああ、ごめんごめん。二つ下の階にあったチ... -
既知との遭遇
既知との遭遇 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 淡く輝いていた満月が西の彼方に沈み、代わりに顔を出した太陽が地上を照らし出したころ。 超天才少年アル・ボーエンくん御一行は、まだエリアE-2の公園に留まっていた。 というのも、アルとレイラが自身の持つ情報を仲間たちに提供したところで、もう放送まで僅かな時間しか残されていなかったのだ。 たとえ移動中であろうと内容を聞き逃すつもりはなかったが、それでも落ち着いて耳を傾けられる状況のほうがよりいいには違いない。 だいたいどうせ放送中は立ち止まることになるので、多少歩いたとしても大した足しにはならない。 これに対し仲間たちの反論はなく、アルは少しばかり拍子抜けするハメになった。 三人ともそれぞれ合流したい相手がいると言っていた割に、随分とあっさり頷いたものだ。 アルはそれだけ相手を信頼しているのかと胸... -
魔王と英雄の消失
魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM サバイバルの基本は敵に見つからない事。 迷彩服に身を包んだ少女は身を低くし、音を立てないよう細心の注意を払いながら闇の中を移動する。 頭には、支給品である暗視ゴーグルを装着している。 彼女の名はマリリン・キャリー。 幼少の頃より厳しい戦闘訓練を積み、中学生でありながら高い戦闘能力を身に付けた、美しい金髪が特徴の可憐な少女である。 月明かりが照らす林の中を移動しながら、彼女は思考する。 (殺し合い……ですか。これも神を決める戦いなんでしょうか。それとも、別のトラブルに巻き込まれたと考えるべきでしょうか……) 彼女は次の神を決めるために開かれた、中学生バトルの参加者である。 その戦いにおいて、その高い戦闘能力で仲間と共に勝ち進み、三次選考へと駒を進めたはずであった。 しかし、い... -
現在位置~Where do we come from? Where are we going?~
現在位置~Where do we come from? Where are we going?~ ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 「悪いな、待たせてしまった。 と言ったものの、これでも予定よりはだいぶ早いんだけどね。 細かい説明を求めようともせず、シルバーはやるべきことを理解してくれた。 ……さてバイオレット、次は君だ。すでにその資料には目を通し終えたかな?」 「ええ。もう済ませてあるわ、ブラック兄さん。 けれど、まず最初に一つだけ訊かせてもらうわ。 この状況は、いったいどういうことなのかしら?」 「ふふ、質問に答えてあげたいのはやまやまなんだけどね。 すでにプログラムは始まりつつある。とにかく時間がないのさ」 「プログラム……」 「そう、渡しておいた資料に記しておいた『プログラム・バトルロ... -
死出の誘蛾灯
死出の誘蛾灯 ◆xrS1C1q/DM 花菱烈火が上げた開戦の狼煙。 一瞬で弾け、散っていった空の花。 艶やかな光と火薬の炸裂音。 異様な空気と静寂に包まれた街の中で自分の存在を全力で主張した一発。 その光は複数の参加者の目に飛び込み、その音は鼓膜を揺らす。 しかし、花菱烈火以外に火薬の芸術を楽しんだ者が何人いるだろうか。 殺し合いという異常な状況下において、不特定多数に自分の所在を教える行為。 味方を探しているのだろうか、参加者を集めて一網打尽にしようとしているのだろうか、それとも他に何か意図があるのだろうか。 打ち上げたものの真意が分からない中、呑気に楽しむ余裕を持っているものはほぼいないだろう。 近寄るか、避けるか。 この二択に生死がかかっていると言っても過言ではない。 そんな中、古の剣豪、宮本武蔵は前者を選択した。 味方になってくれそうな人物... -
『太陽の人形芝居』2(前編)
『太陽の人形芝居』2(前編) ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 告げられた放送の内容に、ジャン・ジャックモンドの思考は停止した。 十六名もの参加者がすでに死したことには、大して驚いていない。 被害者が出るのを止められなかったのはもちろん歯がゆいが、あくまで予想の範疇内だ。 アーカム財団直属のS級特殊工作員・スプリガンとして様々な修羅場を潜り抜けてきたからこそ、人間が案外簡単に死んでしまうものだとよく知っている。 また、巴武士が呼ばれ、ゼオン・ベルは呼ばれなかった。 こちらも意外ではなかった。薄々、察しがついていた。 だが――御神苗優。 彼の名が呼ばれるとは、まったく考えていなかった。 巴武士のように甘ちゃんであるのは、誰よりもよく分かっていたはずなのにだ。 なかなか力をつけてきたとはいえ、ゼオンのような優の力を上回る相手... -
ぎゅっと握って
ぎゅっと握って ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 才賀勝は、おキヌが外した首輪をひとまずリュックサックに仕舞い込んだ。 機械を分解する知識があるとはいえ、いま現在手元に工具がない。 構造をよく知っている自動人形(オートマータ)ならばともかく、初めて見た首輪を素手で分解するのは不可能だろう。 まだ暗いのもあってか、首輪の裏側にあるであろう継ぎ目もよく見えない。楽観的に行動すべきではあるまい。 キース・ブラックは、わざわざ幽霊を殺し合いに参加させているのだ。 幽霊に首輪を外されるところまでか、その首輪の中身を覗かれてしまうところまでか、はたまたその上で幽霊以外の参加者が首輪を外すところまでか。 どこまでかは不明だが、ある程度までは予想されていて当然だ。 予想しているのならば対策を取っているはずである。 首輪が手元にあるのに釣られてさっそく... -
最強候補の一角、植木耕介
最強候補の一角、植木耕介 ◆n0WqfobHTU 「耕介君、この先の西の端には何があると思う?」 「んー、崖になって先にいけないよーになってるとか」 「恐らくはだが……この殺し合いを仕掛けた奴等の謎が隠されていると私は思っている」 「そうなの!?」 「ウ・ソ」 肌がつやっつやに見える程活き活きしてるナゾナゾ博士は、植木耕介を伴って地図の西端へと辿り着いた。 『会場外へ近付いています。会場外へ近付いています。これ以上進むのは危険です。今すぐ引き返してください。繰り返します。会場外へ近付いています──』 そんな警告音が首輪より鳴り出すと、ナゾナゾ博士はやはりかと頷きながら足を止める。 しかし、全然何も考えていなさそうで実際あまり物を考えない植木は、何の気無しにすたすたと歩を進める。 「ちょ、耕介く……」 直後、ばっこーん、ともの凄い音を立... -
夢の花
夢の花 ◆hqLsjDR84w 河原で、二人の男が見合っていた。 どちらも纏うのは、黒い中華服。 短髪のほうは腰を低く落としているのに対し、長髪のほうは立ち尽くしている。 すぐ横の川は絶えず流れ、足元の草は風に揺られているというのに、彼らは十メートルほど距離を取ったまま一向に動かない。 (隙がない、ある……っ) 李崩が腰を落とした姿勢を保ちつつ、胸中で呟く。 視線の先にいる朧と名乗った男は、素人目にはただ立っているように見えるだろう。 しかし中国拳法の道を突き進んできた李崩は、そうでないことを見抜く。 一見無防備なようで、そうではない。 李崩のいる前方だけでなく、背後。それどころか上下や川のなか。 どこから攻められたとしても反応するべく、あえて自然な状態を維持しているのだ。 何せ、行われているのは試合なので... -
ばかやろう節(3)
ばかやろう節(3) ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 商店街を抜けたらしく、周囲に立ち並ぶ建築物が民家ばかりになる。 もうだいぶ移動したことになるが、石島土門は速度を緩めようとしない。 相手は、土門が勝てた試しのない花菱烈火を追い詰めるような連中だ。 少しでも止まってしまえばすぐに追いつかれてしまう、そんな気がした。 「まあ花菱、そんなんなっちまったけど安心しろよ。 あんだけいろいろあんだから、義手や義足の魔道具くれーあるに決まってんだ。 なかったらなかったで、虚空のジジィに出てきてもらって作らしゃあいいじゃねえか。 お前使ってねーけどスゲーんだぜ、魔道具。むしろ前よりかっちょいい身体になっちまうかもしんねえ!」 自分自身にも言い聞かせるように、土門は明るく振る舞う。 それに対し、背負われている烈火は短く「そうだな」とだけ... -
誘雷
誘雷 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 蒼月潮の腕のなかで、キース・バイオレットが崩れていく。 ものの喩えなどではなく――文字通りに、そのままの意味で。 彼女の全身に亀裂が走っていたのは、彼女を抱きかかえていた潮にはよく分かっていた。 その亀裂が次第に深くなっていることもだ。 にもかかわらず、バイオレットは言葉を紡ぎ続けた。 制そうとした潮の声を遮りながら、言い聞かすような口調で。 「……バイオレット姉ちゃん……」 瞳に涙を溜めながら、潮は知らず両手に籠める力を強くする。 その分だけ、バイオレットの身体が崩れる感触が伝わってきた。 砂場で作った城に触れているような、そんな感覚だ。 さらさらと、服の下にある体組織がこぼれ落ちていく。 相棒・とらと妖(バケモノ)退治の日々を送ってきた潮だからこそ、考え... -
バグ
バグ ◆d4asqdtPw2 「Dr.鍵宮」 誰もいない虚空に向かって呼びかける。 博士に連絡し、今後の行動についての指示を仰ぐために。 しかし、彼の躯体内に搭載されている通信ユニットには一切の反応はない。 装置は問題なく動作しているはずなのに。 「Dr.鍵宮。異常ガ発生シマシタ。応答ヲ」 彼が何度呼びかけても博士は応答しない。 それどころか、東京都文京区にある鍵宮研究室との交信自体が途絶えてしまっている。 どうやら、彼が立っているこの場所が専用無線通信の有効範囲外であるか、または何者かによって通信電波が妨害されているらしい。 「…………交信不能。自律モードニ移行スル」 銀髪にやや面長な、西洋風の綺麗な顔立ち。 ボタンを全開にした学ラン姿も、ワインレッドの眼鏡も、かなり様になっていた。 海外の映画俳優かと... -
ワンダーランド
ワンダーランド ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ This wonderland is not dream . ◇ ◇ ◇ 眼前に広がる光景に、高嶺清麿は言葉を失う。 『自動人形(オートマータ)』と名乗った襲撃者を追う気力は完全に抜け落ち、弱々しくへたり込んでしまう。 清麿が到着したころには、何もかもが遅かった。 ともに殺し合いを否定していた宗谷ヒデヨシは、変わり果てた姿となっていた。 全身を部位ごとに解体されて――死体と化して、転がっている。 「……う、ぇ…………」 立ち上がろうとした清麿だったが、口元を抑えて力なくくずおれる。 ヒデヨシの両瞳と目が合ってしまったのだ。 言葉など発するはずのない口元が動いたように、清麿は見えた。 お前の指示に従ったばっかりに――と。 ... -
守りたいもの(前編)
守りたいもの(前編) ◆AJINORI1nM 深夜、植物園。 照明は点いておらず、ガラス張りの天井から月明かりが差し込んでいる。 植物達に囲まれた芝生の上。 支給品の確認を終えたレイラがそこに居た。 小学校低学年だろうか。 美しい青紫色の髪を持つ、幼い少女だ。 髪の毛と同じ色の服を着ており、胸には月の模様が描かれている。 奇妙なことに、彼女の頭からは二本の小さな角が生えていた。 (どうして私はまだ人間界に居るのかしら……) 彼女は、千年に一度行われる、魔界の王を決める戦いに参加する魔物の子の一人だ。 と言っても、彼女の戦いは千年前に終わっている。 千年前の戦いで、ゴーゴンという魔物の子に敗北してしまったからだ。 敗北の原因はゴーゴンの放った術、『ディオガ・ゴルゴジオ』。 この術は魔物の子を魔本に閉じ込め... -
『太陽の人形芝居』
『太陽の人形芝居』 ◆jwqtetXMG2 おとぎ話のストーリーとはなんともまあ、上手く出来たものだと思いませんか。 人と人、動物と動物、挙句の果てには太陽や風、海に山、全てのものに生命の息吹が吹き込まれていきます。 そして生まれるのは滑稽な喜劇、救いのない悲劇。 読者はそれを読み、笑い、泣き、怒り、そしてまた笑う。 見る者が変われば、見る物を変えれば、そこで生まれる『感情』はなんと多いことでしょう。 それはさながら陽気な動物園、走り回るやんちゃ坊主たちの饗宴でございます。 そうして生まれた感情は次なる町を目指し、パレードを続け、また感情が生まれるのです。 さてさて、そろそろお客さまも焦れるころ合いでしょう。ならばいざ行かん、今回の物語の中へ――― 真夜中に浮かんでいるのはまん丸お月さま。 黄金色に輝く宝石はスポットライトのように... -
選択
選択 ◆6LcvawFfJA “ライカ”によって会場の西端に到着した植木耕助とユーゴー・ギルバート。 彼等は言葉を失っていた。 「……何だよ、これ」 ようやく植木耕助から零れた声は、震えを帯びていた。 それほどまでに凄惨な光景が、眼前には広がっている。 辺り一帯に散らばっている無数の木片。 それが単なる木片でないのは、木蓮と交戦した植木には分かる。 木蓮が用いていたのは、その肉体を樹木に変質させる能力。 であるならば、この木片は肉片と見るべきだ。 その仮説を裏付けるように、木片の中に服の切れ端と首輪が落ちていた。 つまりこれは、 「死んじまってる……」 植木の思考は、全てユーゴーに流れ込む。 散らばる木片から木蓮が死んだという考えも、誰が行ったのかという想像も。 しかしたとえ思考が流れ込んでこなくとも、すぐに考えを知る事となってい... -
能力者CO/価値観の不一致
能力者CO/価値観の不一致 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 美神令子は空飛ぶホウキ・青きイナズマに乗って、空の旅を満喫していた。 地上よりも青空に近い位置で身体に風を受けるというのは、なかなかに清々しいものである。 下手に目立ってアシュタロスに見つかれば大変なので高度を上げられないのが、残念と言えば残念だった。 この間に自分が逃亡したせいで神社周辺で惨劇が繰り広げられているなど知るはずもないが、そういう可能性がないとも思っていなかった。 別に、彼女は他人が傷つこうが死のうがどうでもいいなどとは考えていない。 むしろそのような光景を目の当たりすれば虫酸が走るし、可能であれば助けてもやる。もちろん、その後お代はきっちり請求するが。 ともあれ、彼女は決して他人が殺されても知ったことでないといった冷血な人間ではない。 もしそうであれば、このプログ... -
ばかやろう節(1)
ばかやろう節(1) ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 「……むう」 アシュタロスは誰にともなく呟くと、緩やかに進めていた足を止めた。 進んでいたのとは異なるほうを向いて、そちらを見やる。 南より接近してくる霊力を感じ取ったのだ。 常人の域からはみ出た速度で北上してきている。 それも一つではなく、二つ。 あごに手を当てて黙考したのち、アシュタロスは意識を集中させた。 肩まで伸びた紫色の毛髪が、重力に反して浮かび上がる。 抑え込んでいた魔神としての力を、ほんの少しだけ外界へと解放したのだ。 溢れ出した魔力に勘付いたのか、二つの霊力は加速した。 その動きを捉えて、アシュタロスは口元を緩める。 アシュタロスは、すべてのGS(ゴーストスイーパー)にとって倒すべき敵である。 その力を察知すれば、近付いてくるであろうと目論んだのだ... - @wiki全体から「とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ」で調べる