芥辺境藩国@wiki

E98 防御SS・2

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takanashi

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容赦ない敵の攻撃が続く。
「なかなか相手さんの攻撃が終わらないねぇ。いつまで続くんだか。」
樹の陰に隠れている如月一司がぼやく。
「おまけに、こうも出鱈目に攻撃が来るとまともに撃ち返すこともできやしねえ。」
辺りには防御のために打ち出された煙幕弾により白い靄で包まれている。
相手からこちらの姿は見えないため、手当たり次第攻撃してきている。
そのためどこから相手の攻撃が来るのか分からず数分前に反撃しようとし樹から身を乗り出したところ、弾が目の前を飛んでいき慌てて身を伏せたところであった。
「しっかし、発煙弾や閃光弾ばら撒いておいたからやっこさんも狙いを定め切れていないけど、そうでなかったら……。」
嫌な考えが浮かび上がりぶるっと身を震えさせる。
いやいやほんと洒落にならなかったね、と思いつつ先程浮かんだ嫌な考えを消すために頭を振る。

 

「おっと、そろそろこの樹も持たなくなってきたな……。どこか身を隠すところはっと……。」
気づけば樹はぼろぼろになっており、今にも砕けてしまいそうであった。
近くの樹を見ても今隠れている木と大して変わらず、身を隠すには不十分であった。
樹はバキッ、ミシッ、と音を立てており、その音も大きくなりつつある。
「おいおいおい……、どこか身を隠すところはねえのかよ……。」
冷や汗をかきながら必死に身を隠せるところを探す。
見つけた。2時方向。塹壕。
「ちょっと距離があるかな……、って暢気に言っている場合じゃねぇ!!」
慌てて身を低くしながら駆け出す。その直後、今まで隠れていた樹は盛大な音を立てて壊れ、如月一司がいたところを弾が通り過ぎていった。
「うおおおおおおーーーーーー……!!」
全速力で駆ける。弾が身を掠め、近くに着弾する。
塹壕しか目には入らず、ひたすら駆けていく。
5m……、4、3、2、1……。
「でえぃ!!」
ジャンプして塹壕に飛び込む。九死に一生を得た気分であった。


塹壕の中を見渡すと先客がいた。松林ぼたんであった。
「如月さん。数十分ぶりです。」
「松林さん、数十分ぶりで。どうしてここに?」
息も絶え絶えに尋ねてみる。
「相手を切りつけてきて身を隠しているところなんです。如月さんは……?」
この人この弾丸の嵐の中接近戦挑んできたのかよ。相変わらずただもんじゃねぇ、と慄きつつ、隠れていた場所が壊れそうであったから慌てて逃げてきたことを説明する。
「それであんなにすごい顔をしていたんですね。」
松林ぼたんがクスクスと笑う。
「そんなにすごい顔でした?」
「それはもう。写真にとって藩国の皆さんに見せたかったぐらいです。」
「うわぁ……。」
俺そんなにすごい顔していたのか。というかそんな顔写真に撮られていたら死ねる。精神的に死ねる。
ごろごろと身を悶えたかったが戦闘の真っ只中、そういうわけにもいかず、心の中で身を悶えさせる。
「クスクスクス……。まあ、如月さんが顔を真っ赤にしていることも後で言いふらすとして。そろそろ相手も息切れしてきたみたいですよ。」
「後で言いふらすんっすか!! ……って本当ですね。」
塹壕から少し身を乗り出し確認してみる。相手の弾数が目に見えて減っている。
「これならいけそうですね。」
「えっ!?」
「それじゃまた後で。如月さんも頑張ってくださいね。」
そう言い残して松林ぼたんがするりと塹壕から抜け出していく。
「あの人また接近戦仕掛けに行くのかよ……。マジでありえねえ。」

その度胸と行動力に感嘆しつつ銃を構える。
「それじゃ、ちょっくら援護しますかね……。」
誰に聞かせるわけでもなく呟きつつ、引き金を引く。
無線からも攻撃の命令が聞こえてきた。
反撃は緩やかに、しかし確かに始まっていた。

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