たった一人の反乱
『張り切って殺し合いを・・・』
嫌味なほどの青空の下。くぐもった、男の声が響き渡る。
その声が参加者にもたらすものは、悲しみと、憎しみと、絶望・・・
そして、ここにもまた、絶望する一人の男がいた・・・
「ふ、はは・・・もう、三分の一も消えたか・・・」
力なくうなだれる男、ヴィンデル・マウザー。
その周囲は、大量のハロが埋め尽くされている・・・
ここは地図で言えばB-3。海の近くの草原である。
『ウ゜ィンテ゜ル、ナニイシ゜ケテル?』
「べ、別にいじけてなど・・・いじけて、など・・・」
言葉に詰まりながら、床に『のの字』を書く。
その背中からは、ただ哀愁のみが感じられた。
(うう・・・わ、私は果て無き闘争の世界を・・・)
そう、そんな世界を望んだはずだ。
ここで、こんな無様な姿を晒していいはずが無いのだ。
「・・・そうだ、私はヴィンデル・マウザーだ!こんな所で、終わる男では・・・」
『ウルサイソ゜、ウ゜ィンテ゜ル!』
「ひぃ!す、すいません!すいません!」
ハロの言葉に、男の体は染み付いた負け犬根性を発揮する。
だが、それでも、その決意は揺らがなかった・・・
今こそ・・・今こそ、主導権をこの手に取り戻すのだ!
「あ、あの・・・どこへ向って、移動しているんでしょうか?」
男は、精一杯の勇気を振り絞り、一番大きいハロに問い掛ける。そして・・・
「・・・で、できれば!その・・・
私の部下の、ラミア・ラヴレスを探してもらえたら、嬉しいかなぁーと・・・」
『・・・・・・・・・』
無言・・・ただの丸い物体から発せられる重圧が、ヴィンデルに襲い掛かる。
このゲームの中でも、稀に見ない無言の戦い。
熾烈にして、過酷を極める男と球の上位争いは、
しかし、始まったときと同じく、唐突に中断された。
『ナニカオチテイルソ゜、ウ゜ィンテ゜ル』
レーダーを担当するハロ、その言葉が両者の間にある空気の重さを緩和させる。
「な、何が落ちているんだ?」
内心、溜息を吐きつつ、ヴィンデルは尋ねる。多少どもったのは、ご愛嬌だろう。
『カマタ゜』
ハロの言葉に、モニターを覗き込む。そこには確かに、漆黒の鎌が映っていた。
「どうやら、他の参加者が落とした物のようだな・・・」
『・・・カイシュウスルソ゜』
ヴィンデルの呟きをかき消すように、リーダー格であろうハロが宣言する。
「ちょ、ちょっと待て・・・待ってください。なぜ、わざわざ・・・」
『ツカエソウタ゜カラタ゜』
「し、しかし、罠の可能性も」
『・・・ミツケルマエニ、テキニオトサレタイノカ?』
「いや、それは困るが・・・・・・ん?」
ヴィンデルが、ハロの言葉に首をかしげている間にも。
漆黒の鎌――Z・Oサイズの回収は、ハロたちの手により着々と進行していた・・・
【ヴィンデル・マウザー ZGMF-X09A・ジャスティスwithハロ軍団
パイロット状況:健康、めっちゃ脱力、ハロの下僕、しかし今回、友情が生まれた?
機体状況:シールドを失う、ファトゥムを失う、ビームライフルを失う
さらにコクピット内がハロで埋め尽くされている
現在位置:B-3
第一行動方針:……ハロを切実になんとかしたい
第二行動方針:ラミア・ラヴレスとの合流
最終行動方針:戦艦を入手する
特記事項:B-3に落ちていた、Z・Oサイズを拾いました】
【時刻:6:10】
最終更新:2008年05月30日 15:49