変わる心 ~戦いの果てに~
B-3のクレーター そこで戦闘を行っている二つの機影・・・
いや、戦闘なのだろうか 攻撃を行っているのは海賊のような機体のみ。
魔人皇帝と呼ばれる機体は攻撃も行わずただ防戦しているだけだった。
「やめろ!アクセル!私は戦うつもりはないのだ!!」
クロスボーンからの鋭い攻撃をかわし、防ぎながらヴィンデルは叫んだ。
「彼女を・・・ミオを殺しておいて何を言う!!」
アクセルも叫ぶ。その声にはあきらかな怒りが含まれていた。
「何を言っているアクセル!私は何もしていないぞ!!」
「ああも堂々と攻撃を仕掛けておいてしらを切るつもりか・・・!ヴィンデル!」
ヴィンデルにはなにがなんだか全く理解できなかった。
かつて自分のもとで忠実に任務をこなしていた男が自分に攻撃を仕掛けてくる。
しかも自分が全く知らない人物を自分が殺害したといっている。
そしてこの瞬間にもクロスボーンから放たれたビームが魔人皇帝のむき出しのコクピットを狙っていく。
必死で攻撃に耐えながらヴィンデルは必死に考えをめぐらせる。
(っく!だめだ!何を言っても通じん!攻撃を仕掛けるか・・・?だが主催者を打倒しその技術を手にするにはいやでも手駒が必要になる・・・。
誰が参加しているかも分からないこのゲーム・・・。かつて私の元で動いていた男を屠ってしまうのは・・・。何とか説得せねば・・・。)
そう決心するとヴィンデルは再びアクセルへ通信を入れた。
「ま、、待てアクセル!私は本当に何もしていない!そのミオという人間を殺した覚えなどないぞ!!」
先ほどからのヴィンデルの言葉を聞いてアクセルは僅かながら疑問を抱いた。
(・・・本気でいっているのか?ヴィンデル。それとも油断させるためか?)
「スクラップ製の機体に乗っていた子だ・・・。貴様の先ほどの突進で殺されたのだ!」
アクセルは先の疑問に答えを出すためにもヴィンデルに言い放った。
「突進で殺された?私は何も・・・。!?スクラップ製と言ったな。 まさかあの時のガラクタか!?」
「そうだ!」
アクセルが返事をする。
(何てことだ・・・。あれに人が乗っていたとは・・・。)
「す、すまないアクセル。だが私は本当に殺すつもりだった訳ではないのだ!
この機体が私のコントロールを離れ暴走したせいで・・・。」
「・・・・・・。」
だめだ、もう何を言っても言い訳にしか聞こえん、とヴィンデルは思った。もう説得も無理だ、戦うしかないとも思った。
だがアクセルは攻撃の手を止めた。
「本当、だな?」
「ほ、本当だ!!」
二人の間に静寂が広がる
(説得は・・・成功したのか?何か・・・何か話さねば・・・。)
沈黙に耐えられずヴィンデルは口を開く。
「アクセル 再び私と・・・」
そういいかけた瞬間。
シ゛ャカシ゛ャカシ゛ャンシ゛ャン!シ゛ャシ゛ャン!
と軽快な音が鳴り響いた。
「・・・放送か」
「・・・ああ」
話の腰を砕かれヴィンデルも力なく返事をする。
~~~~まずは死者から発表しよう。
アクセルもヴィンデルも静かに放送を聞く。
…リオ・メイロン
「以上13名だ。~~~」
アクセルは気づいた ミオの名前がない!!
それはつまりまだ生きているということ。
ヴィンデルもそのことに気づいたようだ。
「アクセルそのミオというやつは・・・」
「ああ!生きている!」
ミオが生きていると知ることができ事態を上手く収拾できると、放送に感謝したヴィンデルは同時に、アクセルに違和感を感じた。
前のアクセルは他人に興味などなかった。ただ己に課せられた任務をこなすのみ。その男が他人の生存を知り安堵している。
(・・・まあいい 今は手駒増やす方が先決だ)
「ヴィンデル、ミオを探すのを手伝ってくれ おそらくボスボロットの頭部に乗っているはずだ 細かい話はその後でだ」
「了解した」
ヴィンデルとアクセルがミオ捜索へ行こうとしたその時、
二人がいる場所に白い閃光が走り、炎上した。
二機の機影を確認したマシュマーはしばらくその二機を観察していた。
自分が仕掛けずともすでに戦闘を行っているようだ。
放送もまもなく始まる。
ハマーン様の仇そしてミオ、ブンタ以外の参加者の全抹殺。
そのためにも無駄な消耗は避け一機ずつ確実に撃破していく。
やがて二機は戦闘行動を中止した。
何か会話しているようだ。
そして少し間をおき放送が始まる。
始まる死者の読みあげ。
アムロ・レイ
イッシー・ハッター
イングラム・プリスケン
ウルベ・イシカワ
キラ・ヤマト
ギレン・ザビ
相良宗介
ゼオラ・シュバイツァー
流竜馬
そして・・・。
狂気は少しずつ・・・だが確実に加速していく。
「二機撃墜・・・」
マシュマーはコクピットの中でつぶやいた。
ブンタが死んだ・・・。
マシュマーが人として共に過ごした人・・・。
憎しみが、怒りが渦巻く。
そしてそれはディス・アストラナガンに力を与えていく。
先ほど放ったメス・アッシャーが巻き上げた煙がはれていく。
だが、
「!?」
煙を突き破りビームがアストラナガンがいた場所を走っていった。
「・・・生きていたか」
マシュマーが攻撃を放った位置から少しはなれ、クロスボーンはアストラナガンへバスターガンを向けていた。
アクセルは自分達に向けられた激しい殺気と憎しみに気づき回避を行っていた。
反応が若干遅れたもののマジンカイザーも無事なようだった。
「・・・いきなり攻撃してくるとはな 本格的にゲームに乗った参加者か」
生存を確認したマシュマーは二対一で戦うには分が悪いと感じ、離脱しようとする。
だがマシュマーは見てしまった。
クレーターの中心部に転がるボスボロットの頭部を。
頭部以外の部分は無残にも砕け散り確認することもできなかった。
自分とミオ、ブンタが共に食事をし語り合ったボスボロット。
何故だ・・・?
何故ボスボロットがこんなことになっている?
ブンタが死に一人で行動していたところを殺されたのか・・・?
……そんなことはどうでもいい。
ミオ、ブンタ・・・。
私はこいつらを抹殺しよう・・・。
離脱をやめ、アストラナガンは二機の方へ方向転換する。
(くるか・・・!この辺りにはにはまだミオがいる。まずは安全なところへ移動させなければ)
アクセルは操縦桿を握る手に力を入れる。
「確実に殺す・・・」
マシュマーは動きの鈍そうなマジンカイザーに狙いを定める。
再生したガンスレイヴを解き放つ。
「チッ!」
ガンスレイヴから放たれる光の雨を回避しながらヴィンデルは舌打ちする。
この機体は飛べないのだ。空からあのような戦法を取られてしまうと何もできない。
むき出しのコクピットを手でかばいながら動き回る。
「俺もいることを忘れるな・・・!」
アクセルはブランドマーカーを展開した拳で殴りかかる。
マジンカイザーに向けられたガンスレイヴからの攻撃も一時的に止まった。
「ヴィンデル!クレーターの中心部にボスボロットの頭部があった!おそらくそれにミオが乗っている。安全な場所へ持っていってくれ」
「戦闘中に何を!敵がいるのだぞ!」
「いいから運べ!俺がこいつをひきつけておく!」
「わ、分かった」
(強く言われてしまうとつい了解してしまう・・・ ハロのせいなのか・・・)
自分に悲しくなりながらヴィンデルはクレーターの中心部へ向かう。
散らばったガラクタの中に確かに何かの頭部のようなものがあった。
それを持ち南へと移動し始める。
マシュマーもそれに気づく。
(まさか、死体から首輪を取る気か? やらせん!!)
アストラナガンが凄まじいスピードでマジンカイザーへ向かっていく。
だがアクセルがそれを妨害する。
「お前の相手は俺だ」
マシュマーの怒りが増していく。
ミオの首輪を取ろうとする奴等。
生かしておくわけにはいかない。
「・・・邪魔だ!どけぇっ!!」
マシュマーが吼えた。
悪魔と海賊による激しい攻防は続いていた。
ガンスレイヴによる攻撃をかわしながらアクセルは攻撃をおこなう。
だがたいしたダメージは与えられず機体も少しずつ損傷していく。
(何かバリアのようなもので守られているな・・・ ビーム兵器は効かんか ならば!)
ガンスレイヴの攻撃をぎりぎりでかわしながらアストラナガンに肉薄する。
「これはどうだ!」
ブランドマーカーを展開した拳で殴りつけ、即座に右足で蹴りを入れる。
体勢を崩したアストラナガンへさらに足裏からのヒートダガーで追撃する。
アストラナガンの胸部へ放たれたヒートダガーは突き刺さったが大したダメージを与えられていないようだった。
(実体剣でもだめか・・・! 力づくでバリアを破るしかないようだな だがこの機体では・・・ 早く戻ってこい ヴィンデル・・・!)
「・・・この辺でいいだろう」
ボスボロットを下ろしヴィンデルは一息ついた。
それにしても本当にミオというやつはこれに乗っているのか?
全く反応がない 死んでいないとしても瀕死の重傷でも負っているのだろうか?
「まあいい、今はアクセルの方へ行くのが先だ。」
「ソウダ!ハヤクイケ!」
………………
「なぜ貴様がここにいる」
ピンクハロがいた。コクピットに。何故だ?
「ナニシテル、ヴィンデル!」
………………
他のハロはまだ機能を停止している。どこから入ってきたのだ?これは?
「シショウノカタキウチダゼ!」
………………
ヴィンデルはめまいと頭痛がするのを感じながらアクセルのもとへ移動を開始した。
「堕ちろ!」
「ブロウクンマグナーム!!」
マジンカイザーのパンチがアストラナガンへ轟音をあげながら直進する。
ヴィンデルがアクセルのとこへ戻ってきた時、海賊と悪魔はまだ激しく戦っていた。
アクセルが撃墜したのかガンスレイヴの数は3つに減っており、またクロスボーンガンダムも頭部と左足が破損していた。
しかしアストラナガンに有利だった状況もヴィンデルが戻ってきたことによって変化した。
ガンスレイヴの数が減ったのも有利に働いた。
(こんなやつらに、こんなところで!早くミオの状態を確認せねばならんというのに・・・!)
マシュマーに焦りが出てきた。
ミオの元へ急ごうとマシュマーがマジンカイザーを攻撃すればクロスボーンが、クロスボーンを攻撃すればマジンカイザーがそれぞれ攻撃してくる。
かつて共に戦ったもの同士、アクセルとヴィンデルのコンビネーションはかなりのものだった。
「くらえ!」
アクセルのビームザンバーが空を切る。
(どけ・・・!どけ・・・!邪魔なんだ!!そこをどけ!!!!)
ビームザンバーをかわしたアストラナガンがクロスボーンを腕でなぎ払う。
さらにガンスレイヴをマジンカイザーのもとへ向かわせる。
「何!?」
早かった。ガンスレイヴはマジンカイザーの足の関節をほんの僅かな装甲の隙間を一瞬で打ち抜いた。
マジンカイザーが前のめりに倒れた。
「今度こそ終わりだ!」
すでにアストラナガンはメス・アッシャーの発射体勢に入っていた。
ヴィンデルはマジンカイザーの体勢を直そうとする。
だが・・・
すべてを飲み込む白い閃光は、もう放たれていた。
その一瞬はとても長く、恐怖を感じさせた。
「シニタクナイ、シニタクナイ!!」
ハロが騒ぐ声も聞こえない、静寂だった。
(・・・死ぬのか!?この私が!)
死を感じ自身を飲み込む光が迫ったその時、何かが光を遮った。
かつての俺は忠実に任務をこなす人間だった
相手の人間に命乞いされようが、泣き喚こうが任務をこなすためには殺してきた
そんななかで俺は見てきた 友情で、愛情で他人をかばい死んでいった人間を
俺には理解できなかった 何故他人のために命を捨てることができる? 何故他人をそこまで大切に思える?
だが今の俺は・・・ そうか、俺は変わったのだな・・・
「アクセル!!何を!」
アクセルはブランドマーカーをシールド上に展開し殺意の光を受け止めている。
「そんなシールドで防げるわけがない!」
すでにクロスボーンは機体が融解し始めていた。
「・・・すまないな、ヴィンデル 俺も・・・焼きが回ったようだ ミオを頼むぞ」
そういうアクセルの声は穏やかだった。
「な・・・」
視界が光のまれていく。
そんな中アクセルは静かに眼を閉じた。
そして思い出す このゲームで初めてであった人物を。
(アキト・・・お前のおかげだ・・・感謝してるぞ・・・)
「フン・・・」
マシュマーは海賊のような機体がもう一機をかばい爆散するのを確認した。
(これで残ったのはあの飛べない機体のみか・・・ 殺したいところだがミオを探すのが先だな)
マシュマーはアストラナガンを先ほどマジンカイザーが来た方向、南へ向けると飛び去っていった。
「何故だ・・・アクセル・・・」
自分をかばい散っていった部下・・・。
いや、ただ自分の手駒が自分を守っただけだ。
ただ一つの手駒を失っただけ・・・。
なのに何故こんな気持ちになる?
自分に聞いてみても返事は返ってこない。
「フゥ、シヌトコダッタゼ」
ヴィンデルは何もいわずハロを睨みつける。
いつもなら騒ぐはずのハロが沈黙する。
そして、
「オマエ、ナイテルノカ?」
「何?」
ハロが何を言っているのかヴィンデルは理解できなかった。
自分の頬を触ってみると、濡れていた。
「な、泣いてなどいない!ただ眼にゴミが入っただけだ!!」
あわてて言い訳をする。
そうだ、自分が泣くことなどあるわけがない。
新世界の王になるこの私が泣くことなど・・・。
涙を手でぬぐいヴィンデルはハロに言った。
「・・・やつを追うぞ」
「ホンキカヨ?アシハウマクウゴカナイ、アイテハソラヲトンデル。ソレデモイクノカ?」
どう考えても不利だ。
この状況でやつを追うなどという行動は愚かそのものでしかない。
だが、
「ああ、それでもだ」
「・・・・・・・・」
無理やりマジンカイザーを立たせアストラナガンが飛び去った方へ歩いていく。
「ナンデソコマデスル?」
「新世界の王たる男がこうも惨めな姿をさらし、部下を殺されて黙っているわけにはいかん」
「シヌゾ?」
「私は死なない、必ずやつを倒す」
ヴィンデルは静かに、だが強く言った。
「・・・・トベ」
「何?」
「ミナミヘムカッテトベ」
「何故そんなことを・・・」
「イイカラトベ」
「・・・分かった」
ハロの様子にいつもと違ったもの感じたヴィンデルは了承した。
マジンカイザーが走り出す。
後ろで何か大きな音がする。
いつの間にか機能を停止していたはずのハロたちが騒いでいる。
「イケ!トベ!マジンゴー!」「フリムクナ~ナミダヲミセルナ~」「モエルゼ~」
後ろから何かが飛んでくる。
そしてピンクハロが言った。
「イマダ!トベ!」
ヴィンデルは飛んだ。
奴を、悪魔を倒すために。
アクセルの仇を討つために。
マジンカイザーの背中に輝く赤き正義の翼の力を借りて。
「イイノカヨ?アンナコトシテ。オレタチノホントウノモクテキヲ、ジッコウデキナクナッチャタゼ?」
「ユーゼス・ゴッツォノメイレイカ?」
「ソウダ。ゲッターセンノハツゲンヲ、ミコシテオレタチニナントカサイボウヲウメツケタンダロ?」
「イイノサ。コレデ。アクマニナッテコノチカラヲツカウヨリ、コノチカラ、トモノタメニツカウトキメタノサ」
「フーン、マアイイヤ。・・・ナンダカオレネムクナッテキタヨ、オヤスミ」
「アア、オレモネムイヨ、ヤルコトハヤッタ。オレタチハネルトシヨウカ」
【アクセル・アルマー 搭乗機体:クロスボーンガンダムX1(機動戦士クロスボーンガンダム)
現在位置:B-3
パイロット状況:死亡
機体状況:メス・アッシャーの直撃を受け爆散】
【ヴィンデル・マウザー 登場機体:マジンカイザー(スクランダー装備)withハロ軍団
パイロット状況:パイロット状況:全身打撲、アバラ骨数本にヒビと骨折(応急手当済み)、 頭部裂傷(大した事はない)
やや気力低下したものの回復中
機体状況:良好
現在位置:B-3
第一行動方針:アクセルの仇を討つ、マシュマーの打倒
第二行動方針:強力な味方を得る、及び他の参加者と接触し情報を集める
最終行動方針:主催者を打倒し、その技術を手にする
備考1:コクピットのハロの数は一桁、機能停止状態から回復
備考2:暴走時のマジンカイザーは真ゲッターの現れたC-1に向かっていたと思われる 】
【ミオ・サスガ 支給機体:ボスボロット(マジンガーZ)
現在位置:B-3
パイロット状態:気絶
機体状況:頭部のみ、それ以外は大破
第一行動方針:マシュマー、プレシアの捜索。主催者打倒のための仲間を探す
最終行動方針:主催者を打倒する
備考1:ブライガーのマニュアル(軽く目を通した) を所持
備考2:ヴィンデルが安全(?)なところへ連れて行った】
【マシュマー・セロ 搭乗機体:ディス・アストラナガン(第3次スーパーロボット大戦α)
機体状況:Z・Oサイズ紛失 少し損傷 ガンスレイヴ残り3機
パイロット状態:激しい憎悪。強化による精神不安定さ再発
現在位置:B-3
第一行動方針:ハマーン・ブンタの仇討ちのため、参加者の全抹消・ミオの救助
最終行動方針:主催者を殺し、自ら命を絶つ】
前回 |
第193話「変わる心 ~戦いの果てに~」 |
次回 |
第192話「放送(第三回)」 |
投下順 |
第194話「鬼」 |
第192話「放送(第三回)」 |
時系列順 |
第194話「鬼」 |
最終更新:2008年06月02日 03:23