放送(第四回)
シ゛ャカシ゛ャカシ゛ャンシ゛ャン!シ゛ャシ゛ャン!
朝日と共に、軽快にして残酷な葬送曲が四度響き渡る。
それは生存者達にとっては、もはやある意味聞き慣れた音。
新たな絶望を運ぶ、死の鐘。
「おはよう、諸君。ご機嫌はいかがかな?
今朝の天候も、雲一つない快晴…まさしく、絶好の殺人日和といったところか。
皆、清々しい朝を迎えて、己の生をかみ締めてくれたまえ。
ではまず、今回は先に、禁止エリアの発表から行わせてもらおう。
E-2とE-5だ。
二時間後に、この2つのエリアが禁止エリアとなる。
十分に気をつけてくれたまえ。ここまで生き延びながら、つまらぬ死に方をしてくれるなよ。
さて…それではお待ちかねの、死亡者の発表を行う。
心して聞きたまえ…
……アクセル・アルマー
……碇シンジ
……イサム・ダイソン
……ガルド・ゴア・ボーマン
……司馬遷次郎
……ジョシュア・ラドクリフ
……惣流・アスカ・ラングレー
……セレーナ・レシタール
……タシロ・タツミ
……チーフ
……剣鉄也
……東方不敗
……トウマ・カノウ
……ヒイロ・ユイ
……副長
……ベターマン・ラミア
……マシュマー・セロ
……ミオ・サスガ
……ヤザン・ゲーブル
……リュウセイ・ダテ
……リョウト・ヒカワ
……ロイ・フォッカー
以上、22名だ…
ククク…素晴らしい…!
正直、私も皆の予想外の戦果に驚いているよ。
ここに来て、飛躍的なまでのペースの上昇…大したものだ。
お前達の闘争本能には、全くもって脱帽させられる!
今回の死亡者の中には、愚かしくもこの私に反抗を企てようとした者達も多数含まれている。
だが、現実はこの有様だ。皆、実に惨めな死を遂げてくれた。
憎み合い、疑い合い、そして殺し合い…
託された希望が儚く消えゆくさまは、本当に私を楽しませてくれたよ。
前の放送で、コメディやピエロは不要だと述べたが…少なからず、考えを改めねばならんな。
彼らには、この場を借りて礼を言わせてもらおう。
ククク…そうだ。どれだけ正義を掲げようが、綺麗事を並べようが…
これが現実だ。これが、お前達…ヒトという名の野蛮な劣悪種の、真の姿だ…!
さて、どうやら今もなお、私に刃向かうことを考える愚者がいるようだな。
…結構なことだ。健闘を期待しよう。
そしてこの私に、更なる悦楽を提供してくれたまえ。
足掻いて、足掻いて、足掻き抜いて…
その果てに、己の無力さを存分に痛感して、絶望の中で死を迎えるがいい。
無論、本気で生き延びたいと思うのであれば…
見果てぬ夢想などに逃げ込むよりも、隣人の頭を撃ち抜く術を考えるほうが遥かに現実的だ。
今、お前のすぐ傍にいる者が味方であるという保障は、どこにもないのだからな。
残るは8名。そう、当初67名の参加者が、今や僅か8名だ。
ゲームは終局に近づきつつある…さあ、お前達はどんな選択肢を選ぶ?
お前達の最後の奮闘を、私はじっくりと拝見させてもらうとしよう。
フ、フフフ…フハハハハ……!!」
その一言一言はいつものユーゼス以上にどこか興奮しており、焦っているように聞こえた。
そしてそれを隠蔽するかのような、どこか不自然な高笑いが響く。
放送を終え、マイクを置いたユーゼスはモニターに目を向ける。
そこに表示された一本のゲージが、見る間に上昇していく。
そのゲージが示すもの。
それは――怒り、嘆き、憎しみ、悲しみ、そして絶望――
このヘルモーズに収集される、生存者達の果てしない負の波動。
「それでいい。お前達の抱く絶望…それこそが、私の求める一番の感情…!
ヒトの心に負の感情が渦巻く限り…
我が計画は、我が野望は…我が遊戯は、潰えることはないのだ…!」
負の波動は、これまでにない勢いで収集されていく。
予想以上の収穫――しかし。
「だが、まだだ…このままでは、まだ足りぬ…!」
そう呟き、ユーゼスは部屋を出た。
そしてヘルモーズの機動兵器の格納庫へと足を進める。
(W17の働きにもよるが…最悪の場合、私自らが出撃する必要も出てくるかもしれぬな。
生存者達の負の波動を、直接採取するために…)
彼は覚悟を決めていた。彼自らがゲームの舞台に降り立つ覚悟を。
それは、最悪の事態を想定したが故の覚悟であった。
ゼストの完全復活の望みを数少ない生き残りに賭けねばならなくなったユーゼスもまた、
ある意味追い詰められていたのかもしれない。
だがそれでも、もう後戻りはできない。
「ゼストは必ず臨ろす。私が高みへと昇るために…
どんな手段を用いても、必ず…!」
まるで何かに取り憑かれたかのように呟きながら、廊下を歩いていく。
己の野望を叶える為に、ただそれだけの為に歩いていく。
行き着く先に待つものが何なのかもまだ知らずに。
──そう、ユーゼスは気付いていなかった。
己がゲームの参加者として地に降り立つ可能性をも考慮しての機体の整備、
それは同時に彼の主催者としての仕事を疎かにしてしまうことだと。
故に彼はまだ知らない。
己の野望の生贄に捧げた少女が、まだ生きていることを。
その少女が
ゲッター線と接触し、全てを知ったことを。
木原マサキが首輪を解除したのとほぼ同時に、その少女もまた首輪を外すことに成功していたことを。
その少女こそがこのゲームの命運を…
そして、全ての
『鍵』を握っているのかもしれないということを。
「最後に笑う者はこの私だ。
この遊戯の真の勝利者は、私であるべきなのだ…」
神を超えんとする愚かな道化師は、その仮面の奥に不気味な笑みを浮かべ、
静かに宣言した。
「そう…私は全てを超える。
神を、運命を、そしてウルトラマンを…
全てを超越した、全能なる調停者――
それも、私だ――!」
最終更新:2008年06月02日 18:46