エネルギー問題における解決策 ◆wti0SzBUfE
「すでに、ゲームは開始しているのか」
静かなる中条こと中条静夫は目の前の光景に息をのむ。
くすぶる煙、鼻をつく臭い、大破したロボット。おそらくパイロットは生きてはいないだろう。
自分が連れてこられた場所からそう遠くはない場所ですでに戦闘が起こり、ひとつの命が消えた。
その事実が中条の胸に重くのしかかる。
そしてそのパイロットの冥福を静かに祈り、黙祷をささげ、再び大破したロボットに目を向ける。
そこにあるべきものが、無い。
「シズマドライブ」その名が示す通りシズマ博士を中心に開発された、完全リサイクル・絶対無公害の画期的エネルギーだ。
ライターから電気機器、乗り物、果てはBF団の怪ロボットまで、あらゆる場所で使われるそれは、世界のほぼ全てのエネルギーに置き換えられた。
そして、二度にわたる大災害を引き起こす原因にもなったのだが――
その痕跡が無い。
自分が乗るダイモスにはシズマドライブの代わりに「ダイモライト」という未知のエネルギーが使われているらしい。
そしてこの大破したロボットにもシズマドライブが使われていた形跡がないのだ。
ほぼ丸のまま残された右腕から推測されるロボットの大きさから考えて、大型のシズマが複数本は必要だろう。
いくら爆発、大破してしまったとはいえそれらの残骸が全く見当たらないはずは無い。
このシズマドライブ全盛時代に、ジャイアントロボ以外にシズマドライブを使わないロボットが、それも立て続けに2体も目の前に現れるだろうか?それもエネルギー停止現象が終息した後に。
「呉先生ならば、何かわかったかもしれないな……いや」
思わず口にしてしまった友の名を打ち消す。
彼はここにはいない、ましてやこのような異常事態に巻き込まれるのは自分一人で十分だ。
■
不要なエネルギーの消耗を防ぐため、ダイモスをトランザーへと変形させた中条は、E-5地区に架かる橋を南に下る。
目指すはG-6地区方面の基地施設。
遠回りになるが、接近戦を得意とするダイモスにとっては起伏の少ない平地を行くのがいいだろう。
「……」
周囲を警戒しながらも、ともすれば脳裏をよぎる先程の光景。
知らず知らずのうちに口元に伸びる手に、自嘲気味につぶやく。
「我々をこの舞台に集めたのがどんな能力かは知らないが、できるならば私のパイプも支給して欲しかったものだな」
【静かなる中条 搭乗機体:ダイモス(闘将ダイモス)
パイロット状況:良好、シズマの存在しない世界に違和感
機体状況:良好(トランザー状態)
マグネットコーティング済み
(関節部の他、変形機構にも施されています。変形にかかる時間が若干減少)
現在位置:E-5
第一行動方針:G-6地区の基地へ向かう
第二行動方針:信頼できる仲間を作る
最終行動方針:バトルロワイアルからの脱出】
【時刻:07:30】
最終更新:2010年02月21日 22:12