この拳は最後の武器だ ◆TPFuJ3C1xI
セントアーバーエーに大怪球が迫る。
国際警察機構・九大天王の一人、静かなる中条。
彼は一人、大怪球の前に立ち塞がる。
自分の命と引き換えに繰り出す禁断の技――ビッグバンパンチを放つ。
「だが今日こそはそれを打とう。なぜなら諸刃の刃は私だけではない。
そう、銀鈴君も、戴宗君も、楊志君も、それに大作君も、皆自分との戦いだった。
だが私は長官として誰一人として救えなかった 友として何もしてやれなかった そんな自分に! 腹が立つ!!」
中条は足から火花を散らし、大怪球へと飛ぶ。
――記憶はそこで途切れている。
自分が今ここで生きていると言うことはビッグバンパンチは不発に終わったということだろう。
確かに手応えを感じなかったのは確かである。
中条には大怪球を倒せなかった。
だがこのような事態が起きているならば、少なくとも最悪の事態は避けられたようだ。
呉学人、村雨健二、銀鈴、国際警察機構の好漢達、そして草間大作。
おそらくは彼らの活躍によってBF団の作戦は食い止められたのだろう。
彼らは無事で居てくれるだろうか。
結局自分は何も出来なかったのだと思うと悔しさがこみ上げてくる。
「すまない。不甲斐無い私のおかげで……。どうか、どうか無事で居てくれ」
目を閉じ、心の中で彼らの無事を祈る。
今はまだ帰ることは出来ない。
そう。目の前に起きた悪魔のようなこの所業を収めねばならない。
まずは信頼できる仲間を集め、一人でも多くここへ連れてこられた人々を救う。
知り合いの少ないこの状況であっても当てはある。
ヴィンデル・マウザーへと挑んだロム・ストールという青年。
行方不明になっていたBF団幹部の衝撃のアルベルト。
敵対する組織の一員ではあるが、無意味な殺し合いを良しとはしないであろう。
易々と協力するとは思えない。が、交渉してみる価値はある。
まずはこの二人との合流を目指す。
考えを纏めると中条はそれまで閉じていた目を見開き、前を見据える。
ダイモスのコクピットの中、ファイティングポーズの姿勢をとり、シャドーボクシングを行う。
本来の搭乗者、竜崎一矢の使う空手とは違う格闘技ではあっても、
そして超人的とも言える中条のストレートの速度にも、寸分違わぬ動きでダイモスはそれをトレースする。
――マグネットコーティング――
ダイモスのある世界とは別の世界の技術ではあるが、各関節に施されたこの改良によって中条の動きにも対応することが出来るのだ。
「これならば、問題は無い」
中条は一通りの動作確認を終えると、腰のベルト部分から三竜棍を取り出す。
いかににダイモスが中条の動きをトレースできても、この拳は今は封印しておかねばならない。
仲間と共に協力してこの窮地を脱するには、ビッグバンパンチはあまりにも威力が高すぎる。
だからといって戦うことを拒否することなど殊更出来はしないのだ。
不得手でも武器を使って戦わなければならない。
それでもビッグバンパンチを使う覚悟を胸に、静かなる中条は行く。
【静かなる中条 搭乗機体:ダイモス(闘将ダイモス)
パイロット状況:良好
機体状況:良好
現在位置:E-4 荒地
第一行動方針:信頼できる仲間を作る
最終行動方針:バトルロワイアルからの脱出】
【時刻:06:30】
最終更新:2010年02月21日 17:21