求めていた夢 ◆W89SZVs8q.


「クソッ、いったいどうなってるんだ!!!!!」
怒号を上げるのは、コウ・ウラキ。彼は連邦軍の士官であり、この殺し合いの舞台に呼び出されるまでは戦場にいた。
情けをかけられた自分のふがいなさと闘いを邪魔した味方に対しての怒りに駆られ、
分離したステイメンのビームライフルの銃口を、遠方に確認できた連邦軍の艦に向けた瞬間であった。
彼の視界は暗転し、気づけばこの殺し合いに巻き込まれ、今は見慣れぬ機体のコックピットの中にいる。
「こんなくだらないことをするために俺は生かされたっていうのか…」
コウはホールでの出来事を思い出し、無意識のうちに首輪へと手を伸ばす。
自分たちは安全な場所にいて、勝手に人の命をもてあそぶような真似を許せるわけが無い。自衛のためならばまだしも,進んで殺し合いに乗るなどもってのほかだと思った。
だが反抗するにもそんな奴らが反抗を可能にする機体など支給するだろうか?
支給していたとしても、爆薬が全機につけられている可能性すらある。
そう考えると現実的ではない気がした。せめて首輪を外せる人間がいてくれれば、事情は違うのだが…。
善良な人までも殺さねば生きて帰ることすら絶望的である状況に立たされていると認識し、うなだれると、脇においてあった主催者からの支給品が目に入った。
見てみると食料、機体のマニュアル、専用のパイロットスーツ、名簿、地図があった。コウはまず手元にあった名簿を手に取る。そして、かの宿敵の名を見た。
「貴様もいるのか…ここに!」
あの男の気性から考えてあの後,まず生きてはいないだろうと思われたが、まさか共にここにつれてこられているとは。
問題はあれど自分のすべき行動はここでも何も変わらない。コウはそう考えると決めた。
「ガトー! 俺は決着をつけるまで、お前を追い続ける!」

名簿を見続けると自分の名前の後に、死んだはずの隊長の名前があった。
「バニング大尉…」
あの時、確かに大尉は死んだはずであった。ならばこれは同姓同名の人間が連れてこられたとでもいうのだろうか。
考えることは山ほどあるが、とにかく,このサウス・バニングに会わなければならない。会って、もしも大尉の名前を騙るような奴であれば,自分が倒さなければならない。

次に彼はマニュアルを手に取る。機体の把握と使いこなす必要、加えて自分が今閉じ込められている機体に対しての興味からだ。
「それにしてもこんなMS見たことが無い…」
主催者の計り知れない技術に加えて彼が驚いたことは、彼の中にあったMSという技術の結晶を遥かに凌駕するMSである。
全体的に白を基調としたそれは1年戦争時にアムロ・レイが搭乗していたRX-78-2に酷似していて、だが髭がついた愛嬌のある顔をしていた。
元の世界でもガンダムタイプを扱っていたコウにとっては、同系列の機体と分かり安心するところがあった。
マニュアルによると、フルバーニアンが可愛く思えるほどのジェネレーターの出力,彼の時代ではMAで無ければ実現不可能であったIフィールドをMSのまま搭載していて、コアファイターが胴体内部ではなく腰部前部に装着している。
推進器は下半身に集中しており、重力下でも有る程度の飛行が可能となっていて,装甲はナノスキン,などと未知の要素がコウの好奇心を刺激した。
武装はサーベル、ライフル、ビーム・ドライブ・ユニット、ハンマー、そして…
「核だと…」
彼は知らない.そのMSが彼の生きた証に留まらず,文明すら破壊しつくした事を.

【コウ・ウラキ 搭乗機体:∀ガンダム(∀ガンダム)
 パイロット状態:良好
 機体状態:良好  核装備(2/2)
 現在位置:B-1
 第一行動方針: ガトーに会って…
 第二行動方針:バニング大尉を探す
第三行動方針:核の扱いについて考える
第四行動方針:ニナのことは考えない
第五行動方針:向かってくる奴は倒す
最終行動方針: 殺し合いには乗らない
※マニュアルには月光蝶システムに関して記載されていません.
【一日目 06:30】


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008:倒す決意 投下順 010:この拳は最後の武器だ
006:シ者と奏者 時系列順 010:この拳は最後の武器だ

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コウ・ウラキ 042:破滅を望む者、破滅を呼ぶ物




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最終更新:2010年02月21日 17:20