482 :普通の日常:2008/09/15(月) 22:07:16 ID:TbeJO+ot

高杜学園の裏サイトって知ってるか?」

「なんです、急に」

探偵事務所を経営する知人に休日の朝一番に呼び出され、『マクガフィン』に辿りついた松田五郎は
聞き覚えのない単語に眉をしかめそっけなく返答する、額に汗を浮かべたスーツ姿の探偵は
コーヒーを一息に飲み干すと更に言葉を続けた。

「いやな、ウチの事務所で小耳に挟んだんだけどよ……」

「噂話ですか? そういえば『学園の七不思議』でもそういうの聞きますねぇ」

「お、興味出てきたか?」

「やーこれと言って特に……」

五郎が運ばれてきたクラブハウスサンドイッチに齧りつくと、探偵も皿に並べられたサンドイッチを手に取り、
互いに競うように腹の中へと納めていく、探偵がソフト帽を浅くかぶり直し一息入れると次に五郎の口が開いた。

「最近景気どうです?」

「今のところ、事件らしい事件ってのはおこらねぇなぁ、
せいぜいここ最近で失踪事件の捜索依頼が増えたってことくらいか?」

「失踪?」

「あぁ、どこの街でも夏場は行方不明者が増えるからな、ゆきずりとかそういう場合もあるんだろうが、
特に今年にはいってからその手の事件が多いらしいぜ」

会計を済ませると、探偵から頼んでいたレポートを受け取り、謝礼金を渡す。
学生という身分である五郎にとって知りえない情報、何より本職の探偵が靴をすり減らして得た情報の得る価値は高い。
いつもの公園のベンチに腰かけ、資料の一枚を引き出す、まず藤木と例の教師との関係についての調査結果に目を通す。

(まぁ、予想通りといったところか)

軽く全文に目を通した後に続いて『学園長』に関する資料を手に取る、
予測と推測が混じる報告資料に五郎が頭をひねらせると、高杜学園の経営状況に対する報告資料にも目を通す。
幅広く他県からの生徒を受け入れ、数多の部活動、同好会の数、施設の管理維持費、無尽蔵に支出を垂れ流しながらも、
高杜学園の赤字を補填する収入源については不透明なままだ。

「学園の存在そのものが謎だな」

「あら、松田さん、おはようございます、またここでお会いするなんて奇遇ですね」

「……」

「もぅ、無視しないでください」

「おはよーさんでございます」

ここ最近、奇遇の回数が増えつつある芳乃に五郎が軽く会釈すると、芳乃はいそいそと五郎の隣に座り、
マスコットキャラの絵柄がついた水筒から紅茶を注ぐと、五郎の手元に差し出し
ニコニコと微笑みながら五郎が飲む姿を見つめた。

(の、飲みづら……)

「今日は紅茶が美味しく入ったんですよ、それに甘味処小掠(こがすみ)屋の大福」

「竹さん、あまりお気を使わなくても、なんだか申し訳ないんで……」

「いいえ、私が好きでやっていることですから」

頬を桜色に染め、芳乃がうつむいて目をそむけると、紙袋から取り出した大福を手渡す。
世話好きなのか、それ以上に好意があってのことなのかは判断しかねるが、
五郎にとっては神経の磨り減る状況である。

「しかしまぁ、この大福美味いですね」

「えぇ、私もこの大福大好物なんです」

「ん……? 雨か」

「あら?」

ぱらぱらと降り始めた雨粒が五郎の持っていた紅茶に波紋を立てると、
いそいそと近くの木に雨宿りする二人を待つまえに本格的に降り始め、たちまち周囲の雨音が鳴り響いた。
五郎は着ていた上着を脱ぎ芳乃の頭から被せ、木々から漏れてくる雨粒から守ると
憎々しげに空を見上げながら鼻をかいた。

「まいったなこりゃ、通り雨ならいいんだが、
これだから、天気予報ってあてにならないんだよなぁ」

「……」

「冷たくないですか?」

「はい」

雨音で車と人波の音がかき消され、2人の立てる衣擦れの音がくっきりと周囲に響く、
芳野は僅かに身を寄せ、五郎の肩に顔を寄せゆっくりと息をついた。

「やっぱり、少し……寒いです」

「なに、すぐに止みますよ」

「そうですね」


数十分程度の気まずい沈黙の中、雨が止みあがるまで2人はそこで立ち尽くしていた。
次第に雨の勢いが弱まり雲の隙間から青空が覗くと、晴れ間から差し込んでくる光が周囲を照らす。
耳まで紅潮し頬を染めた芳乃は別れを告げる五郎の声に喉元から声を絞り出すように答えた。

「じゃぁ、また明日」

「はぃ……」

五郎は雨に濡れた上着を肩にかけ、ぎこちない動きで頭を下げ公園を後にした。











484 :普通の日常:2008/09/15(月) 22:09:06 ID:TbeJO+ot
投下終了です、設定つくりまんた

松田五郎
高杜学園二年 身長172㎝ 体重65㎏ 帰宅部
性格は冷淡 興味を示さない物事には無関心 最大の関心事は「高杜学園」に隠された謎
愛煙している銘柄は「ゴールデンバット」

竹井芳乃
高杜学園二年 身長161㎝ 体重43㎏ 茶道部
性格は温和 清楚な外見とは裏腹にのんきもの 父親に似ている五郎に惹かれている
中央市街の旧家に住む

長岡梅子
高杜学園二年 身長166㎝ 体重47㎏ 帰宅部
性格は勝気 友達は意外に多い暴れもの 音頭を取るのが得意なムードメーカー

甘味処『小掠屋』
(こがすみや)と読む、中央市街にある和菓子専門店。
人気商品は小豆のぎっしり詰まった豆大福、趣のある店内では純和風の雰囲気で食事が楽しめる。
一通りの和菓子を取り揃え、白い椿の花を象った銘菓白椿などがある。


485 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 22:12:51 ID:TbeJO+ot
あと>>37さんの探偵をお借りしました






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最終更新:2008年09月16日 15:16