ファイナルジャッジメント『世界は美しくなんかない。そしてそれ故に,美しい』

ASD20XX.08.31
~母艦ベームベース~

アポロニウス&ボルケーノ&ラメイル「『コズミック・スペル』発動!!」

三人の決闘者の持つカードから放たれた光が,宇宙空間から飛来する”それ”をなぎ倒してく。
しかし何百,何千という”それ”は次から次へと地球を目指し飛び交っていた。

ラメイル「尋常ではない数です,いくらでも沸いてくるんじゃないでしょうか」
ボルケーノ「まったく大会が終わったと思ったらすぐこれだ!!」
アポロニウス「防ぐ,必ず防ぎきってみせる!!」

母艦ベームベースは今,地上を離れ成層圏を浮遊する。
そして彼らは母艦の最上部から宇宙空間に向けて攻撃をしているのだ。
ここが最前線。地球を守る最終防衛ラインなのである。

メサイア「マザー,僕たちがなんとしても”あいつら”を撃退するっていったでしょ?あなたは地上に残って地球人たちと待っててくれればよかったのに・・・」
マザーエーリアン「何を言いますか。あなたたちが闘うというのに私が何もせずとはいられません」
マザーエーリアン「地上は瑠奈に任せてあります。今までも,これからも・・・」

ASD20XX.08.21
~3ON3大会の最中~

何か様子がおかしい。
いつも笑顔を欠かすことの無かった先生が・・・
天真爛漫で壊れたおもちゃのように騒がしかったイワオが・・・

かもめ「われこそはじゅんぜんたるあくいいんばーすじゃーくってやるー」
イワオ「やるー」

かもめ「・・・ちょっとふざけすぎましたねイワオ」
イワオ「・・・うんー!!」

ライトニング「も、もう悪ふざけにもほどがありますよ,ねぇレイ?」
兄を見返すライトニングであったが,その兄の顔は険しいままだった。
ライトレイ「いるんだろ?純然たる悪意InV!!」

かもめ「隠してもだめなようね,さすがだわライトレイ」
かもめ「でも安心なさい。【InV】は私の力で抑えていますから」
かもめ「【天帝】・・・でね」

果倉部かもめは【天帝】のSPECを持つ。
大宇宙が誕生した気の遠くなる時間の奥底で発現した『三天のSPEC』のひとつ。
【天帝】は生物の”器”を自在に操る。

かもめ「私は自分自身にも【天帝】をかけている」
かもめ「この肉体は決して劣化せず,全てのダメージが無効となる」
かもめ「いわゆる不老不死ってやつよ」

ライトニング「肉体を操作する・・・そんなことが」
ライトレイ「ある!!」
ライトニング「え?」

ライトレイ「・・・先生,イワオは知っているんですか?」
かもめ「・・・今日はやけに鋭いじゃない?いえ,あなたは飄々としていながら常に本質を見ているんでしたね」
かもめ「そうよ,イワオは【天帝】によって擬似的に生きているわ」

黄の使い魔の依り代は,人間ではなかった。
天十也の髪の毛から得られた遺伝子データを元に造られた人造人間。(ちなみに緑の使い魔の依り代はロボットなのだ!!)
姿かたちは人間そのもの。

ただひとつ違うのは・・・
人造人間には”魂”が無いということ。
人間の手で作ることができるのは”器”までだったのである。

かもめ「使い魔の支配が解けた後,この子の中身は空っぽになっていた」
かもめ「人間によって作り出された存在・・・虚ろな器・・・【天帝】では命を与えることはできない・・・」
かもめ「だから【天命】を見つけ出し,命を与えさせると決めたの!!」

ライトニング「マザーの話では【天命】は消滅したんじゃ・・・」
かもめ「たしかに今のマザーには【天命】は備わっていないようね」
かもめ「でもね,この地球に【天命】の一部が存在しているのよ」

かもめ「TEAM5D’sの元に現れる赤き竜の力なら,イワオを救うことができる」
かもめ「強引な方法は使いたくないの。決闘で勝てば彼らも文句無いでしょう」
かもめ「だから私は負けられない。たとえ相手があなたたちであったとしても」

ライトニングは混乱していた。自分がどうすればいいのか,唐突な話を前にして思考がとまりかけていた。
ライトレイ「トニー!!」

ライトレイ「難しく考えるな。今は楽しい決闘の時間だ!」
落ち着きを取り戻し,ライトニングはこう告げる。
ライトニング「まったくあなたってひとは・・・先生,全力で行きますよ」

ライト兄弟VSかもめ&イワオ「決闘!!」


決闘★開始


-ターン03-
ライトレイ「ジャッジメントドラグーンを召喚。効果発動!!」
かもめ「・・・そう,過去を乗り越えたのね。あなたたち兄弟が受けついだライト・レイ・ロード!!」
ライトニング「火の国にこられて本当によかったです。伝統は失ってはいけないんです」

ライトレイ「すまねぇな,イワオ。これでしまいだ!!」
イワオ「うわー」


決闘★終了


実況者「さぁエンジョイデュエルだ!!次は師弟対決のはじまりだぁあぁ」


決闘★開始
ライトレイのLIFEは3000からスタート。

-ターン03-
ライトレイ「ジャッジメントドラグーンを召喚。効果発動!!」
かもめの場が空っぽになり,ダイレクトアタックが通る準備が整ってしまった。
ライトレイ「まだだぜ先生。俺はジャッジメントドラグーンでダイレクトアタック!!」

かもめ「さすがですライトレイ。ですが・・・」

-ターン04-
かもめ「このターンで終わりです。残念ですがライトニングとはまた今度,ですね」
ライトニング「え?何を言ってるんですか先生。3ON3のルールではチームメンバーが3人に満たない場合はライフを継続して決闘を行うはずです」
ライトレイ「仮に俺が負けてもトニーが控えてるんだ。そして先生はその少ないライフを継続して戦わなければならないんすよ」

かもめ「それでも・・・私の勝利は揺るがない」
かもめ「私は古のルールを発動。ブラックマジシャンを特殊召喚」
かもめ「千本ナイフ・ブラックバーニング!!」

先ほどとは打って変わり,ライトレイの場が空になる。そう,ダイレクトアタックの準備が整ったのだ。

かもめ「私は速攻魔法『天帝の奇蹟』を発動。場のマジシャンをリリースしてデッキから同名のマジシャンを守備表示で特殊召喚」
かもめ「さらに黙する死者でブラックマジシャンを特殊召喚するわ」

ライトレイ「ブラックマジシャンが3体・・・しかし」

かもめ「全て守備表示で攻撃できないって言いたいんでしょう?確かにそうね,でも・・・」
ライトニング「先生のエクストラには融合モンスターしかいない・・・わけじゃなかったんですね」

かもめ「3体のレベル7魔法使いでエクシーズ!!」
かもめ「ランク777 伝説黒魔術師マドラノーチェ!!」
かもめ「マドラノーチェはあらゆる破壊を無効とする。そして直接攻撃が通ったとき」

かもめ「私は3勝を得る」

実況者「え・・・え~と,マッチ勝利効果ですね・・・ルール的にはどうなんでしょう・・・・・・裁定が出ました。マッチ勝利効果は有効です」

ライトレイ「ネクロガードナーもいない・・・防ぐ手立てが無い」
ライトニング「私に出番が回ってくれば・・・」

かもめ「うん,私の,私たちの勝ちね」
イワオ「やったー」

決闘★終了



ASD20XX.08.31
~母艦ベームベース~

にろく「『コズミックスペル』発動!!」
バシュー

ナル「『コズミックスペル』発動!!」
ボボシュー

シャーク「おい,お前ら」
にろく「なんだよ」
シャーク「・・・死なない程度にやれよ」

ディックは・・・『星の力』を使えないため留守番。
ディック「こんなとき,まんが的展開とすれば・・・」
ディック「『コズミックスペル』発動!!」
シーーーーーーーーーーーン

ディック「ですよねw」



『星の力』を持つメサイア勢,契約決闘者,そしてシャークが中心となり,侵略をもくろむ地球外生命体の敵意をはじき返していく。
そして,『宇宙呪文』を詠唱するエーリアンの姿が。
D・Eの影響下から開放され浄化されたエーリアンの中には,D・Eへの耐性を身につけ『星の力』を使えるものが現れたのだ。

マザーエーリアン「元はといえば私たちが助けを求めたのが元凶です。微力ながら応戦します」
母艦ベームベースの周囲の”目”が開かれ,波動砲が発射される。
ズババアバー

しかしそれでもなお・・・外星からの侵略はやむことが無い。
いやむしろ,その絶対数は増え続けている。
超官「これでは間に合いません・・・あまりに数が多すぎる・・・私たちに残された方法は無いのでしょうか・・・」

(あきらめてはいけません)

どこからとも無く声が聞こえる。
その声に導かれるように,決闘者たちはおもむろにカードを空へと向け,みな一様にこう唱えた。



決闘者「『コズミックスペル』発動!!」



ASD20XX.08.31
~戦いから離れた傍らで~

ライトニング「先生!!」
ライトレイ「あぁなんてことだ。先生,しっかりしてください!!」
倒れこむかもめを囲み,ライト兄弟は悲鳴を上げている。

かもめ「ゴフッ・・・もういいのです。私は長く生きすぎました・・・」
かもめ「【天帝】によって全ての決闘者に一度きりの「星の力」を与えました」
かもめ「安心して下さい。代償は全て私が受け止めます」

メサイア勢やシャークなど特別にD・E耐性が強くない者は,「星の力」を使うために魂を代償としなくてはならない。
「星の力」を一度だけ使う分には魂の劣化はほとんど微小だが,こと全ての決闘者の代償をとなれば話は別である。
いくら【天帝】といっても,魂は凡人となんら変わりないのだから。

かもめ「ライト兄弟・・・いままでありがとう」
かもめ「いつまでも・・・笑顔を忘れないでくださいね・・・」
ライト兄弟「先生!!」

【天帝】により,肉体は劣化しない。
それまでと変わらないその姿のまま,果倉部かもめの身体から,魂が静かに離れて消えていく。
【天帝】によって擬似的に生きていたイワオもまた,【天帝】の消滅と同時にばたりと動きを止めた。

決闘者たちが放った「星の力」によって外星からの侵略者たちは,すべてなぎ払われた。
これだけの力を持つのだ。今後地球を侵略しようとするものなどいないだろう。
小さな命と引き換えに。



ASD20XX.09.01
~外星からの侵略を退けたその後で~

遊星「俺たちは赤き竜の力を放棄する」
ジャック「赤き竜などすでに俺たちには必要の無いものだ」
クロウ「もっとこの力を必要とする人がいるんなら,そっちで使ってくれたほうがいいからな」

地縛神が封印され長きに渡るシグナー同士の戦いに終止符が打たれた今,TEAM5D’sの英断によって,彼らはシグナーであることを放棄した。

赤き竜「バオオオオオオオオオオオオオオ」

大きくほえた後,竜の姿はしだいに赤い光球へと変わっていく。

ゼータ(【天命】の全てを受け取ることはできませんが・・・あなたが受け取りなさい・・・マザー・・・)
マザー「・・・【天命】・・・」

マザーエーリアンの身体に”赤き竜だったものの光”が消えていく。

マザー「人間よ,一度きりです」
マザー「今の私には【天命】は一度きりしか使えません」
マザー「どなたに”命”を与えますか?」

眼前に倒れる二人を前にして・・・
・・・かもめ・・・
・・・イワオ・・・

だれも答えない。
だれも答えられない。
本来は選択肢すらないのだ。

ライトレイ「・・・」
ライトニング「・・・」

人の命に上下など無い。
それを人が決められるはずなど無い。
静寂が漂う中,兄弟は答えの無い問題を突きつけられていた。


【純然たる悪意InV】は,これまでかもめの【天帝】によって封じ込められてきた。
仮に【InV】発現したとしても,その力はかなり制限されたものとなっていたのである。
彼女がいなければ,これからは【InV】の侵攻がはびこることになるだろう。

満月が浮かぶ夜。
終わりは始まりなのか,始まりは終わりなのか。
月は0から1へ,そして1から0へと姿を変え続けるのだった。

~~

一月の間に2度昇る満月を「BLUEMOON」と呼ぶ。
BLUEMOONが昇るこの8月に,人類と地球外生命体とが出会ったのは見えざる宇宙の意思によるものだったのかもしれない。

InVと出会ってしまった人類が歩みを止めない限り,InVは消えてなくならない。
それでも彼らは進み続けるだろう。
その先にどんな未来であるとしても。

ソラノキセキ編 ここに 終幕


最終更新:2012年10月22日 23:02