「もうすぐ都庁につくよ。それにしても、そこらじゅう焼野原で馬鹿でかい穴まで開いてるって、何があったんだい……」
「カ~カッカッカ! だが見たところ、もう戦闘は終わってるみたいだな」
新たな仲間、超人達と震えるベジータを連れ、拠点としていた都庁へと戻る影薄組。
セルベリア達との激戦を繰り広げた彼女達であるが、途中現れた天子の言葉によればそれは陽動。
そして戻ってきた都庁周辺の大惨事を見れば、地上でとてつもない戦闘があったのは間違いないだろう。
「た、大変だよ! 世界樹が削れちゃってるよ!?」
あかりが思わず叫び指す方向を見れば、再生こそしているようだが何かに抉り取られたかのような世界樹の姿。
ぶらさがり続けていた謎の紫色の珍生物もいなくなっている。
いや、大規模な戦闘があったにしてはあまりにも世界樹そのものが静か過ぎた。
「何か妙だぞ。こまっちゃん、急いだ方がよさそうだ」
「フ、ハハ……な、なんだ、おも、思ったよりも都庁、怖くないじゃないか。金髪もいないしな……」
「そう思うんなら早く歩くっすよM字さん!」
「正直な所、僕たち以上に足が遅いのはどうかと思いますよベジータさん。というかまず自分の足で歩いてくださいよ」
震え笑いするベジータの背中を押して強引に進ませるのは高校生二人。
王子のプライドは崩壊寸前だが、今はそれよりも安心感の方が大きかった。
あれだけ恐ろしい場所と思っていた都庁が、実はそれほどでもなかったのだから、嬉しいに決まっている。
それはすなわち、今までへたれ続けていたベジータに活力が戻るというわけで――
「……あら、いらっしゃい冒険者さん」
「ひぃぃぃ!?」
無くなりかけた恐怖心は、都庁の入り口に咲いていた巨大な花……否、巨大な花と一体化した少女の声で一気にふき上がってきた。
「あ、あんたは確か……そうだ、みんなで集まった時にちょっと見ただけだけど、アルルーナ……だっけ」
「ええ、そうよ。長いことこの世界樹の上の方で待機してたから、他の魔物と比べたら馴染みは少ないでしょうけど。
あなた達には、おかえりなさいね。……欠けた人もいないようだし、あなた達だけでも無事でよかったわ」
小町の問いに対して、花の少女アルルーナは小さく笑みを返す。
しかし続く言葉に、誰もが疑問を抱く。
「あなた達……だけ?」
「ええ。落ち着いて聞いて頂戴ね?
雷竜様、それに裁断者と骨竜……誰よりも先にこの都庁、世界樹を奪還してくれた勇敢な彼らが亡くなったわ。
それだけじゃない。地下で呉島貴虎と魔王マーラが暴虐の限りを尽くして第六階層の魔物はほぼ全滅。
討伐隊のみんなもどんどんやられて、最終的に巫女様が倒してくれたそうだけど……
現時点での被害報告では、生存者の9割も重傷以上。壊滅的な損害もいいところよ……」
「――ッ?!」
悲痛な面持ちで告げられたアルルーナの言葉に、影薄達は誰もが絶句してしまう。
自分たちが地下に閉じ込められている間に、何があったのか。
事情はわからないが、とにかく突き付けられたのは、大量の仲間達の死であった。
「お、おい。都庁には、お、恐ろしい金髪共がいただろう。そいつらはどうしたんだ?」
「……サクヤちゃんは巫女様を庇って戦死。巫女様の救援に向かったレストさんも瀕死の重傷。
戦力的にも、無傷のダオスさんが残った最後の砦よ」
ベジータは心の中で小さくガッツポーズをとった。
あのブロリーっぽい奴の情報がここで出てこないということは奴は既に死んでおり、今しがた残りの金髪も死ぬか瀕死に陥ったのだ。
自分に恐怖の感情を植え付けた、気に食わない金髪連中が軒並み死んだ。所詮連中は超サイヤ人もどきにすぎなかったということだ。
だが、そうは思えども口にすることはなかった。影薄たちの反応、そして目の前にアルルーナがいるのにそんな真似はできなかった。
「どう……して……」
絞り出すようなあかりの声が、嫌に響く。
ベジータだけでなく、普段はうるさい超人達もまた無言であった。
ピーンポーンパーンポーン♪
そんな空気を、場違いな音が掻き乱す。
定時放送だ。
同時にそれは、絶望の追い討ちでもあった。
◆ ◆ ◆
「嘘っすよね……先輩……?」
「ひっ……くぅ……ぅぅぅっ……!」
「……」
放送終了後、そこには更に多くの涙が流されていた。
敬愛していた先輩の死を知らされたステルスモモはただただ愕然とし、未だに現実を受け止めきれていない様子だ。
都庁の仲間に次いで親友の死まで聞かされたあかりは、必死に涙を堪えようともするが、悲しみの感情を抑えきれていない。
そんな少女達の傍で、黒子は静かに、無言のまま緑間の死を受け入れていた。
自分達のような、ただのバスケ選手がこんな魔の殺し合いで長生きができるはずがなかったのだと、自分は運がよかっただけなのだと。
冷静にそう判断し、悲しみの感情を極力排除する。今は自分よりも、きっと仲間の少女達のほうが傷ついているのだから。
まさか緑間が大量殺戮マシーンと化していたとは夢にも思わず、彼は相変わらず冷静であり続けた。
「そんな、ニンジャだけでなく、あいつらまで逝っちまったってのか……?」
「カ~カッカッカッカッカッ! だが、主催連中も死んでいるということは、あいつらは立派にやり遂げたのだ!」
それに反するように、超人は大いに泣き、笑い、散って行った同胞の健闘を称えた。
彼らはしっかりと主催者連中を道連れにし、地獄へ叩き落としたのだ。ならば、残された自分たちも続かなくてどうする。
消えた山に乗っていたであろう残りの主催者を自分達の手で始末する決心を改めて固め、闘志を滾らせた。
そんな中。
この中では冷静であったソルジャー、日之影、小町の三名はそれぞれ悲しみの感情以上に放送への疑問が大きかった。
(安倍晋三だと……どうなっているんだ!? そして死国に何があったというのだ!?)
(くそ、仲間や後輩をこうも助けられないなんて先代生徒会長として恥ずべきだが……
都庁の中で見せてもらった主催者側の名簿にあった連中の多くも死んで、普通に考えりゃもうすぐ殺し合いは終わると言いたいとこだが……)
(いくらなんでもさっきの新総理の様子は妙だ。あの風見幽香が死んだってだけでも驚きなのに、バーダックまで死んでるとはね。
それでいて、他の参加者と同じように淡々と名前を読み上げるなんて、まるであいつらが死んだことを問題にも思っていないような……)
これが以前と同じくダース・ベイダーによる放送であればここまで彼らは混乱しなかっただろう。
しかしながら放送を行ったのは、“新”内閣総理大臣を名乗る安倍晋三という男。
彼に関する情報は、九州ロボに直接奇襲をしかけた超人達も、はやて達狸組から情報提供された都庁の者達も、誰も知らないのだ。
一体何者なのか。少なくとも放送の様子から察するに、主催幹部の多くが死んでも微塵も動揺していないことは確からしい。
(新たな強敵ってことかい? でも、戦うにしてもこの状況じゃ……)
小町は落ち込む影薄の仲間達を見やる。しばらくはそっとしておいたほうがいいだろう。
それに同盟を組んだ都庁の魔物達も心配である。
あれだけの大戦力、この眼で確かに見た強大な力を持つ龍の一体がやられ、残りも重傷だという。
呉島貴虎と先程言われていた
マーラ様の名が呼ばれていたことから、一応は勝利したことになるのだろう。
しかし多くの仲間の名を呼ばれ、加えて自分の名が呼ばれていないためにセルベリアが再度
リベンジでこちらを襲撃してくる危険性もある。
半壊……いや壊滅状態まで追い込まれた都庁の戦力で、あの無限沸きに近い狂信者を止められるだろうか。
超人達の戦闘力がどれほどかはわからないが、しばらくは彼らにも手伝ってもらう必要性もありそうだ。
「改めて死を告げられると、やっぱり悲しいわね。ほら、あなた達も辛いでしょうけど、そろそろ世界樹の中に入って。
そしてよければ……亡くなった同胞たちを弔ってあげて。カヲル君が、歌ってくれるみたいだしね……」
「は、はいっす……」
「そうだな……」
沈んだ表情のまま、影薄達はアルルーナに促されるまま、世界樹の中へと戻っていく。
仲間や友の死、新たな主催者の出現、思うところは色々とある。
だがこれから先も戦うのであれば、冷静に戦況を判断しなくてはならない。
まずは、何故こうも世界樹が致命的な損害を受けてしまったのかなどを、生き残った仲間から聞くべきだろう。
「それでは、我々もお邪魔させてもらうとしよう」
「あら――いつ、誰があなた達も通すなんて、言ったかしら?」
ソルジャー達が足を世界樹内部に踏み入れようとした、まさにその瞬間であった。
あれほど沈み込んだ表情であった少女の顔が、一気に冷徹な笑みに変わっていた。
「死になさい」
「カッ!?」
凍えるような笑み、フロストスマイルを浮かべたアルルーナから放たれたのは、本当に身を刺し貫く冷気の塊であった。
冷気はアシュラマンを貫き絶命させるだけに留まらず、後ろにいたバッファローマンにさえ突き刺さった。
「き、貴様ッ!」
「きゃあっ!?」
だが、バッファローマン突き刺さったそれを握り潰し、猛然とアルルーナへとぶつかっていった。
対話だとか、そういった思考は彼から一切切り捨てられていた。目の前の少女のフリをした化物は、こちらを油断させ、そして今まさにアシュラマンを殺害したのだ。
ハリケーンミキサーでバラバラにしてやらねば、気が済まない。
「ぐぅぅ……! パ、パワーはあるみたいだけど、私の蔓も負けてないでしょう?
これでも私は龍種を除けば樹海最強の生物を自負してるの……舐めないで頂戴っ!」
「う、うおおおおおぉぉぉぉぉ!?」
絡み付いたアルルーナの触手のような蔓が、あのバッファローマンの巨体を強引に持ち上げる。
アルルーナの言葉通り、彼女は樹海において樹海守護獣や飛龍以上の戦闘力を有している、三竜に次ぐ実力者。
先程の冷気だけでなく炎に稲妻さえ操り、触手のような蔓を振り回し、太古の呪粉すら撒き散らすその姿はさながら小型のフォレストセルだ。
「逞しい身体……あなたの精気で、この傷も治させてもらうわ」
「な、なにを――んむぅ?!」
言うや否や、アルルーナはバッファローマンの唇を奪う。
突然の行為に抵抗するバッファローマンだが、どんどんと力が抜けていく。
やがて彼は気がつく。己のあれだけ逞しかった腕が、足が、身体が、枯木のように干からびていく様子に。
――ヴァンパイアキス。アルルーナは無慈悲な吸精鬼でもあるのだ。
「ふぅ、ごちそうさま」
やがて完全に吸いつくされたそれは無造作に投げ捨てられ、アシュラマンの遺体の上に重なった。
「――ッ!」
あまりに突然の惨劇。
外見に反した恐ろしい魔物に仲間を殺されたソルジャーは、一瞬だけ我を忘れかけた。
だが彼はこれまで、冷静で的確な判断力で生き延びてきた。
【都庁を訪ねる】という判断ミスさえ除けば、その判断力は未だ健在であった。
アルルーナにとびかかろうとする寸前で、彼は咄嗟にバックステップをとった。
「神樹――ライオットランス」
直後、ソルジャーの頭上から赤い鉄槌。
あのまま激情に身を任せ飛び込んでいれば、この一撃で粉々にされていたことだろう。
「お姉さま、助かりましたわ!」
「アルルーナ、お下がりなさい。貴女でもこの殿方は手強い相手でしょう。ここは私と神樹が引き継ぎますわ」
ソルジャーは敵に目をやる。
今まさに鋭く尖った蕾を叩きつけてきた、黒い怪物。その太い蔓の一つに乗って降りてきたのは、一人の人間の少女であった。
都庁軍に属している様子ではあるが、影薄達は彼女の存在を知らない。
見知らぬ少女が仲間となった筈の超人の命をいきなり奪ったのだから、彼女たちも黙っているわけにはいかない。
「な、なんなんだいアンタ!? いきなりこんな真似をして、一体どういうつもりさ!」
「初めまして、ですわね。タマムシジムのジムリーダーを務めていましたエリカと申します。そしてこちらは神樹。
恐ろしい敵に敗れ、瀕死であったところをこちらの美樹さやかさん達に助けて頂いたのです。
受けた恩は返すのが道理。地下での戦闘では手助けができず、多大な犠牲を許してしまいましたが、せめて地上ぐらいは死守いたします」
優雅におじぎをするエリカに対して小町は勢いを削がれてしまうが、このエリカが只者ではないことは理解できた。
横にそびえ立つ神樹とよばれた怪物も、そしてアルルーナも、どうやら彼女の配下となっているらしい。
そしてその配下に、躊躇いもなく超人達を殺させたのだ。その辺のお嬢様というわけではないだろう。
「あんたが都庁、こっち側の協力者ってのはわかった。だが、なんで超人達を攻撃する?
俺たちは狂信者の攻撃で地下に閉じ込められていたんだが、それを助けてくれたのはこのソルジャー達だ!」
「神樹と共に警戒にあたる際、小鳥さんより危険人物の情報は既に聞かされていますわ。
超人血盟軍、表向きは対主催組織のようですが、最悪の破壊集団である拳王連合への協力者でもあり……
野球の試合で何故かクロスボンバーで対戦相手の首を吹っ飛ばすという、彼ら自身も危険な存在。排して然るべきではないでしょうか?」
「いやあれは――」
「野球とクロスボンバーの関係性を述べられるなら、どうぞ」
僅かに汗をかいたソルジャーだが、彼は弁明の言葉が捻りだせなかった。
見れば、本当なのかとステルスモモ達もスマホで動画確認中だ。
動画に映るは、桜色クロスボンバーで首をもがれた(故)コルド大王。
カオスロワ式野球だから! これカオスロワ式野球だから死者も出るの!
こう弁明したいところなのだが、かつての
イチローチームと大正義巨人軍の試合と大きく違うのは、野球のボールとかが一切関係ない点だ。
逃げるコルド大王への仕置きにしては、桜色クロスボンバーはあまりにもえげつない。
しかもガチレズ二人が、ちょっと冷静にみれば結構怖い外見のコルド大王の首を嬉々としてもいでいるのだ。
これでは誤解を招いても仕方がないだろう。もっと言えば、結構フェイスフラッシュに頼りすぎて怪我人も多い。主に仲間のベジータだが。
「で、でもあかり達を助けてくれたよ?」
「……油断しないで。そうやって恩を売って世界樹内部に侵入して、内部から破壊する作戦かもしれないわ。
ラージャンとデスマンティスの件もあるし、よほど信用がおける存在じゃない限り、これ以上世界樹に誰かを招くのは危険よ」
アルルーナの言葉を受けて、あかりも黙ってしまう。
「拳王連合に脅されてるって可能性はないんっすか? って……っ!?」
なおも超人達の肩を持とうとスマホをいじっていたステルスモモの表情が一気に崩れていく。
言葉に詰まり、何も言えなくなってしまった彼女の様子が気になった小町が思わず後ろから覗きこんだ。
「――っ!」
そして、小町もまた言葉を失ってしまった。
情報を確認する中、彼女が見つけてしまったのは大阪の拳王連合の略奪から逃れた避難民の助けを求める書き込みや動画。
その中の一つに、それはあった。
『む、もう映っているのか? 私は加治木ゆみ。
少し前に大阪をジプシー・デンジャーの脅威から救ってくれた小野塚小町さんに、救援を求める書き込みをした者だ。
恥ずかしながら、私は凡人でね。雀力を戦闘力に変えてもたかが知れている……故に助けを求めた。
だが勝手ながら――もう救援の必要はない。もしこちらに戻ってきてくれていても、引き返してくれて構わない。
身勝手な女だと思われても仕方がないだろう。だが、これを見てくれ……』
動画に映っていたのは、ステルスモモが敬愛する先輩であった。
だが彼女がカメラの向きを変えた瞬間に、それは映った。
――破壊の化身、バスターガンダム――
『誰かは知らないが、ロードビヤーキーを駆り我々を守ろうとする者が現れてはくれたものの、見ての通りだ。
まるでその想いを踏み躙るように、奴らは我々の避難先を次々に砲撃してきている。ここも……時間の問題だろう。
もし、この動画を見てくれた者がいれば、小町さんに限らず皆大阪から離れて欲しい。
拳王連合軍は、恐ろしく強く……そして赦されざる存在だ。今無策で我々を助けようとして、このような渦中に巻き込まれてはならない。
今はまだ……だがいつか、機が訪れたその時でいい。どうか、拳王連合軍を止めて――』
最後まで言い切る前に、轟音と共に無数の瓦礫が降り注ぐ。
バスターガンダムの砲撃が、とうとうこの避難場所にも命中したのだ。
崩壊の音にほとんど掻き消されたが、敬愛していた先輩が最期に自分の名を呼んでくれたことを、ステルスモモは確かに聞いた。
「うぇ…っく…せん、ぱい……っ!」
スマホの画面に、大粒の涙が零れ落ちて滲ませる。
日之影も、小町も、友を失い辛いはずの黒子もあかりも、かける言葉が出てこなかった。
「……」
エリカは静かに首を横に振った後、アルルーナへ目配せをした。
「……弁明の余地無しです。野球と称した虐殺だけに飽き足らず、無差別砲撃で罪もない人々の命を奪うなど、許すことはできません」
「私たち魔物も、確かに命を奪うわ。でもそれは自然の摂理であるし、生きるためには必要なこと。ここまで無差別な殺戮はしない。
そしてね、貴方たちにたとえどんな事情があっても――多くの大地を破壊した罪――は、消えないの。
――拳王連合及びそれに協力する者は皆殺し――これは雷竜様の遺志にして、私たち魔物の総意……」
ソルジャーが、僅かに後ずさる。
もはや説得をする時間も残されていなければ、聞く耳すらもってくれていない。
そもそもバスターガンダムの無差別攻撃そのものも、彼には疑問が尽きなかった。
「ベジータ……ベジータ?」
そして何故か、ずっと黙り続け地面に両手をつきつづけていたベジータに対しても。
まさかここにきて、またへタレ病が再発したというのか。
一度はこちらの話を聞いてくれた影薄も、バスターガンダムの動画があっては少なからず警戒されてしまうだろう。
交戦不可避。だがそれは本意ではないし、この状況はいかにソルジャーと言えども危険すぎた。
「エリカを甘くみねーことだな。こいつはやる時はやる女だぞ? やるは勿論殺す方のやるだからな」
「私を見るなりいきなり捕獲しにかかってきたお姉さま……そんな強引なところにも惹かれちゃう!」
「こほん! 以前倒したマーダーのお二人も、あなた方も、明らかに平穏を乱すような方々であれば、私は攻撃に一切の手心はしないつもりです。
未来に控えている破滅を皆で協力して回避するためにも、虐殺をよしとする危険な芽は摘ませて頂きます」
ゆっくりとエリカの手が動くと同時に、漆黒の大樹と妖艶な花がそれぞれ攻撃体勢に入る。
「神樹、アルルーナ――」
「っ!」
その刹那ソルジャーが下した判断は、ベジータを抱えての逃走であった。
二体の植物が苛烈な攻撃を仕掛けてくる前に、既にベジータは脇に抱えている。
敵は圧倒的な力を持っているが、根という存在がある以上移動速度はそれほどでもないだろう。
初撃をかわしさえすれば、後は逃げおおせることができる。
それは実に冷静かつ、的確な判断力であった。
◆ ◆ ◆
「ち、これ以上は蕾が届かねェ。メギドフレイムとかならまだ届くが、どうする?」
「お止めなさい神樹。深追いして返り討ちにされては意味がありません。今はとにかく、ここを守ることを優先しましょう」
「……まあ、あの糞オカマとの再戦に備えて、無駄な力は使わないに越したことはないか」
しゅるしゅると、神樹の蕾と鈎爪がソルジャーの追跡を諦めて定位置へと戻る。
アルルーナの蔓も同じくだ。
「……ふぅ。とりあえずはなんとかなって何よりね。少なくともさやかちゃんがみんなの治療を終えるまでは、持ち堪えないと」
「本当に超人さん達、悪い人だったのかな……」
「忘れないで頂戴? 私たちがあなた達と同盟を組んでいるのは、あなた達が私たちに理解を示し、環境に対しての考えも改めてくれそうだからよ?
あの超人達はそこをはき違えた。ただ主催者と敵対しているだけでここに入れるなら、拳王連合軍まで入ってきちゃうじゃない……」
「だ、ダメっすよそんなの! だって拳王連合軍は、先輩を……ただ怖くて隠れてた人たちを、あんな、あんなに……!」
ステルスモモの両肩が震える。
悲しみの感情以上に、バスターガンダムへの、拳王連合軍への怒りの感情が勝っていた。
「……モモ、一回中に入るよ。超人や拳王連合軍のことはとりあえず保留だ。今はまず、状況を把握しないといけない。
さっきの放送が、あたいにゃどうも引っかかるんだよ」
「引っかかるといえばエリカさん、先程は未来に控えている破滅と言っていましたが、それはどういう意味です?」
改めて影薄達が世界樹に入っていくなか、ふと黒子が疑問を口にする。
そしてそれを聞いたエリカと神樹は、そうだったと言わんばかりに表情を変えた。
「す、すみません。こちらに来てから忙しくてまだ皆さんにもお話していなかったのですが――この世界はこのままでは滅んでしまうのです」
「俺達は、それを食い止めるために色々調べている最中だったんだ。さっきこのそばでなのはっぽい奴らの姿も見かけたし……
ああなのはってのは俺達のチームのリーダーだった奴だ。そいつが、大災害による世界の滅亡を教えてくれたんだよ」
「「え゛?!」」
「驚きです」
そして投下されるエリカ達の爆弾発言。
悲しみに暮れる間もなく世界樹に集った者には、まだまだ安息が訪れそうにない。
【影薄組】
【小野塚小町@東方Project】
【状態】健康、首輪解除、混乱
【装備】斬魄刀『神鎗』@BLEACH
【道具】舟
【思考】基本:もう仲間を誰も失わない為にカオスロワを終わらせる
0:え゛?!
1:殺し合い打破のためにも都庁には協力する
2:もう二度と仲間を置いて行こうとしない
3:幽香及びバーダックの名が放送で呼ばれたことに疑問
4:変なの(セルベリア)に因縁つけられちまったね
5:超人達からの情報を鵜呑みにはしないが、一応ダオス達に伝える
※飛竜たちと情報交換して、主催達が九州ロボにいることを知りました。
※ダオスとの情報交換で、カオスロワちゃんねるの信憑性に疑問を持っています(フェイ・イェンにもたらされた情報より、少なくとも都庁の悪評は
天魔王軍による仕業だと理解しました)
【日之影空洞@めだかボックス】
【状態】健康、首輪解除、混乱
【装備】己の拳
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者を倒す
0:え゛?!
1:仲間を守る
2:
混沌の騎士が遺した謎を解く
3:↑の全部やらなくちゃあならないのが先代生徒会長の辛いとこだな。
【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】健康、首輪解除、深い悲しみと怒り、混乱
【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世、野球のユニフォーム
【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具
【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる
0:え゛?!
1:加治木先輩を殺した拳王連合は絶対に許さない
2:時間があればスマホを使ってネットで情報を探る
3:DMCファンだけど信者の暴動にはドン引き
【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【状態】健康、首輪解除、冷静
【装備】ウィンチェスターM1912
【道具】死出の羽衣@幽々白書
【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる
0:世界の滅亡ですか……流石に驚きました
1:友人たちと生き残るためにも、都庁に協力する
2:空気中に漂う物質への対処法を考える(世界樹が有力?)
3:狂信者には絶対に負けません
【赤座あかり@ゆるゆり】
【状態】健康、首輪解除、深い悲しみ、混乱
【装備】エンシェントソード@Minecraft
【道具】マムルの肉@風来のシレン
【思考】基本:仲間と一緒にカオスロワを終わらせて主人公らしく大活躍!
0:え゛?!
1:混沌の騎士、亡くなった友人達の分も頑張る
2:まどかと同じく、人間と魔物の共存に賛成
3:オオナズチ以外の都庁のモンスターの背中に乗りたい
【エリカ@ポケットモンスター】
【状態】健康、歪みし豊穣の神樹及びアルルーナのトレーナー
【装備】モジャンボ、キノガッサ、他不明
【道具】基本支給品一式、モンスターボール×2(神樹とアルルーナ)
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:世界樹に集まっている人にも世界滅亡の未来を伝える
1:ポケモンと一緒に生き残る
2:珍しい植物タイプはゲットしておく
3:世界樹の軍勢を手助けする
【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】
【状態】健康、蕾増加、エリカのポケモン
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:フォレストセル達が戻り世界樹が立て直すまで入り口を死守
1:なのは達、尻がどうのこうの何言ってんだ……?
※都庁近辺にいる
なのは組達を既に視認しています
【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【状態】ダメージ(小)、深い悲しみ、エリカのポケモン
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明品
【思考】基本:雷竜達の遺志を継ぎ、世界樹を守る
0:神樹と共に入り口を死守する
1:お姉さま、世界の滅亡って私も聞いてないです……
2:拳王連合及びその協力者は皆殺し
※世界樹の魔物の一人です
※三竜や協力者を除き、彼女より強い魔物はもう世界樹内部には残っていません
「はぁ……はぁ……」
ソルジャーは神樹とアルルーナの攻撃をかわし、どこかに身を潜めていた。
たった一度の判断ミスで、かけがえのない仲間を殺されてしまい、逃げ出した主催者を探すこともより困難となってしまった。
だが彼には、それを悔いる余裕もなかった。
「ブルマ……ブルマ……」
脇に抱えていたベジータは、まるで幽霊か何かのように力ない声で、ひたすらにその名を呼んでいた。
そう、バスターガンダムの攻撃はベジータの妻の命も奪っており、その名はつい先ほどの放送でよばれた。
友情を築き上げつつあったアシュラマン達の死にすら反応がなかったのは、これが原因である。
「ベジータ~~~~っ!」
「ブルマ……どうして……」
前ならしゃんと背筋を伸ばしたソルジャーの一喝もまるで効果がない。
そしてソルジャーは、同時に理解していた。ここでまた判断を誤ると、さらに取り返しがつかなくなるということに。
ソルジャー――キン肉アタルは、再び冷静で的確な判断力を取り戻せるのか?
【二日目・11時20分/東京都・どこか】
【超人血盟軍】
【ベジータ@ドラゴンボール】
【状態】健康、金髪恐怖症(小)、首輪解除、深い絶望
【装備】野球のユニフォーム
【道具】支給品一式、ノートパソコン
【思考】基本:死にたくないので野球をする
0:???
※何度も瀕死状態から回復したので戦闘力が上がりました。
※心に穴が空いている状態です。クラウザーさんの歌を聞いた場合、洗脳される危険性がでてきました
【キン肉アタル@キン肉マン】
【状態】健康、首輪解除、傷心、僅かな焦り
【装備】キン肉マンソルジャーのマスク、飛竜が書いた九州ロボの地図
【道具】不明
【思考】
基本:殺し合いを止める
0:まずはベジータに的確に対処
【アシュラマン@キン肉マン】 死亡確認
【バッファローマン@キン肉マン】 死亡確認
最終更新:2016年09月30日 12:26