時刻は
第五回放送前の9時50分まで遡る。
そこは千葉県の某遊園地。
かつてそこにはガンダムエピオンを駆るゼクスを中心とした対主催グループがいた。
彼らはその約一時間前には遊園地を発っていた。
今、その上空にいるのは8人と三匹の野球選手達、そして一匹の黒いドラゴンとそれに寄生した触手ヒゲオヤジである。
ナッパを除く
イチローチームと、オシリスの天空竜・白光炎隼神ホルス、イドゥン達によるドラゴンズの片割れが
テラカオス候補者であるサーシェスと彼に触手で寄生されたホルスの黒炎竜に追われていた。
「い、いくら神と言えどもそろそろスタミナがやべえぞ……」
「オシリスさん、頑張って!」
「体感的にそろそろ10時ホル! それまで踏ん張るホル!」
8時30分から一時間以上もサーシェス達に追跡され、飛びっぱなしだったドラゴン達のスタミナも限界が近づいていた。
「もうドラゴン達が持たないぞ」
「ゼロォ! まだなのか?」
『待ってくれ、変身に必要な力が戻ってきているのは確かなんだ……あと10分で良い! 持ちこたえてくれ』
オシリスの背の上で
イチローとDAIGOはウルティメイトブレスレットの中にいるウルトラマンゼロに呼びかける。
彼らの作戦ではDAIGOがゼロに変身して、ゼロの持つルナミラクルによる浄化の力で闇の力を持つサーシェスの手から黒炎竜を解放し、黒炎竜を救い出す計画なのだ。
そのためには変身が可能になる10時まで逃げ続けなくてはいけない。
「チッ、なかなか追いつけねぇな……」
「先輩達を舐めるなっていうwwww」
一方のサーシェスも大変苛立っていた。
獲物達を捕捉しておきながら、追いつけないことに。
黒炎竜の体を使って全速力で追いかけているのだが、向こうも全力で飛んでいるので距離は一向に縮まらない。
敵が戦わずに逃げ続けるので、大好きな戦争ができないのだ。
「クソッ、せめてこいつの射程距離がもっとあれば……」
飛び道具には黒炎竜のブレス「ブラック・メガフレイム」があるが、二つのチームを狙うには射程外である。
自分の望んだ戦争ができない苛立ちにサーシェスは黒炎竜にブレスを放たせる。
無論、届くわけがないので、ただのヤケクソであるが。
「もがもがもーががー!wwwもがががwwwww
(届くわけねーだろー!www諦めろよwwwww)」
「うるせえ!」
炎を吐き出されながらも、胸に張り付いているサーシェス相手にウザイ煽りをする黒炎竜。
黒炎竜には確信があった。
オシリス達は自分を助ける策があるのではないかと。
どのような手段で自分を救うのかはわからないが、追いかけているオシリスの背中を見ればわかる。
「助けるから待ってろ」……語らずともそんな思いが伝わってくるから黒炎竜は寄生されている今でも安心して草を生やすことができた。
「待ちやがれ! 俺に戦争をさせろ!」
「もががっががwww
(無駄だってばwww)」
ピキッ
「お?」
「がww?」
その時である。
黒い炎を吐き続ける黒炎竜の下顎に縦一本の亀裂が入ったのは。そして。
ビキッ……ビキビキビキッ!!
「がああああああああああ!! もがもががあーーーッw!!
(ぎゃあああああああああ!! 俺のアゴがあーーーッw!!)」
黒炎竜の下顎が、亀裂に沿ってパックリと左右に開いて変形したのだ。
それだけではなく、吐き出され続けていた炎が縮まっていき……それはやがて細く収縮していく。
ブラック・メガフレイムのエネルギーを一点集中させるとどうなるか?
炎は科学的に一定以上の出力を持つと光線が出る……つまり炎がレーザー化するのだ。
そして、黒いレーザーが空を切り裂いた。
レーザーは速度、射程距離、殺傷力、全てが黒炎を上回っていた。
そのレーザーの向かう先は……ホルスとその背中に乗る三人の
イチローチームの選手達。
「ホル!?」
「な!?」
「Holy shit!」
「かわせホルス、かわせーーーッ!」
一定の距離を離していれば、黒炎竜のブレスの射程距離には入らない……そのように油断していたとホルス、6/、ラミレス、ダイゴの四人は意表を完全に付かれていた。
ホルスはダイゴの支持によりレーザーを緊急回避しようとする。
しかし、その判断は虚を突かれたことも重なって遅いものであり、ホルスの回避も虚しく誰かに命中し肉塊と二つの血しぶきが空を舞った。
レーザーの餌食になったのは……
「ぐうううう、やられたホル……」
「AIEEEEEEEEEE! 足ガ! 足ガアーーーーッ!!」
「ホルス! しっかりしろ!」
「ラミレーーース!」
レーザーは直撃こそしなかったもののホルスの脇腹を掠めて肉体の一部を抉っていた。
その前に彼の背中に乗っていたラミレスの右足を切断したのである。
「ホルスと6/達が攻撃された!
オシリス、黒炎竜がレーザーを出せるなんて聞いてないぞ!」
「
イチロー、おまえと違ってホルスの黒炎竜は口から炎と草は出せてもレーザーなんか出せねえよ!」
「なに……!?」
「あれはきっと……胸についているクソキモ触手オヤジの能力だ。
あの野郎、黒炎竜の体になんかしやがったな!」
オシリスの推察通り、サーシェスは
テラカオス化の恩恵で新たに産まれた『寄生対象を生体改造させる』特殊能力を使っていた。
結果、黒炎竜の口は炎ではなくレーザーを吐き出す照射装置に置き換えられたのだ。
「『触手で寄生』『宿主に自分のダメージを伝播させる』『宿主を改造させる』
いくつ能力を持ってるんだあいつは!!」
底が見えないサーシェスの能力の数々に蛮を始め、他のメンバーも戦慄する。
「それよりもあれを見て!」
「激ヤバっス!
ホルスのスピードがどんどん落ちてるっス!」
萃香とDAIGOは示した先では、ホルスが飛行速度を落としオシリスやイドゥンから徐々に遠ざかっている姿が見えた。
今しがた受けた傷の痛みが原因でスピードが出せないのだ。
そしてホルスの背後からどんどん近づいてくるは、一行の死に神と化したサーシェスと黒炎竜である。
このままでは四人共々サーシェスに捕まって殺されてしまう。
「このままではやられてしまう!」
DAIGO、ウルトラマンはまだなのか!?」
「ゼロはあと五分、あと五分は持たせて欲しいって」
「そんなに待てるか! その前にホルス達が殺されちまう!」
チームメイトと戦友であるライバルチームの危機に
イチローとオシリスは大いに焦る。
だが頼みの綱のウルトラマンゼロはあと五分待たないと変身できない。
このままでは仲間を見殺しにする羽目になるだろう。
援護しようにも
イチローらの攻撃では威力が高すぎて黒炎竜まで殺してしまう危険があり、、そして迂闊に近づけばレーザーの攻撃を受ける。
特に巨体のオシリスでは弾速の早いレーザーを躱すのは至難の技であった。
「僕が……いや、僕達がいく」
そこで前に出たのはロイとイドゥンのコンビであった。
「ロイ、イドゥン、しかし……」
「オシリス、仲間を黙って見殺しにするわけにはいかない! 君だってそうだろ!」
「それに私はオシリスさんよりは小柄で機動力も上、敵を迎撃するには私達二人が適任かと」
「確かにそうだが!」
「何も触手のモンスターを倒す必要はない。
ウルトラマンが出てこれる、たったの五分だけ時間を稼げればいいんだ」
「私もロイ様を危険に晒したくはありませんが、私もロイ様の意志と同じくホルスさんや黒炎竜さんを救いたい気持ちは同じです、どうか私達をあちらに行かせてください」
仲間を死地に向かわせたくない気持ちからオシリスは選択を渋ったが、ホルスらを見殺しにしたくない気持ちも強かった。
何よりロイとイドゥンの固い信念から、二人を信じてみたいと思うようになる。
「……ロイ、何か策はあるのか?」
「ああ、イドゥンに君が持っている野球ボールを貸してくれ」
「わかった、お前たちを信じる。
ホルス達を助けてくれ、そして死ぬなよ」
オシリスは二人を送り出すことを決め、野球ボールをイドゥンに渡した。
そしてロイの「任せてくれ」の頼もしい一言と共に、彼を背に乗せたイドゥンは最大速でホルス達の下へ向かっていった。
「来るな! 来るな!」
「クッソーッ! クルミボール番外技!!
クルミバルカン、クルミバルカン、クルミバルカァン!!」
「効いてねよ、ハハハハハハハハ!」
ホルスの背中に乗っている6/とダイゴが敵を近づけまいとクルミ連射や銃で迎撃するも、サーシェス相手にはほとんど牽制にもなっていなかった。
ホルスの黒炎竜の守備力は1800、デュエルモンスターとしては高い方ではないが、それでも豆鉄砲や威力を落としたクルミ程度は簡単に弾いてしまう。
それでもやろうと思えば、クルミボールやメタグロスでサーシェスを殺すことはできるかもしれないが、その場合触手で繋がっている黒炎竜も死ぬことになるので、威力を抑えた手加減同然の攻撃をするしかなかった。
しかし、このままではサーシェスの手によって全滅必至である。
そうこうしている内にサーシェスはホルスに接近し、二射目のレーザーを黒炎竜の口を使って放とうとしていた。
「ホ、ホルスサン、モットスピードヲ……」
「やってるホル! だけど、これ以上は……」
ホルスは必死に羽をばたつかせて、攻撃を逃れようとするが傷のせいで速度が出ない。
次の攻撃を躱せる機動力はホルスにはなく、間違いなくレーザーの直撃は避けられないだろう。
「いつの日か殺した女レポーターの時みたく、プチッと殺してやるぜ!」
「そうは!」「させません!」
そこへ救世主のようにイドゥンとロイが現れる。
そしてホルスへのレーザーの射線を塞ぐように中間地点に割って入る。
「死ににきたか!」
「死ぬ気はないさ!」
サーシェスはレーザーを撃つ対象を逃げるホルスから、割り込んできたロイとイドゥンに変える。
そして二射目のレーザーが黒炎竜の口から放たれた。
「準備はいいか! イドゥン!」
「はい! ロイ様!」
ロイ達はこのレーザーを避け……ようとしない。
避けてしまえば後ろのホルス達に直撃するからだ。
しかしそれではイドゥンに命中し、魔竜と言えど直撃すれば致命傷である。
なのでロイとイドゥンはこれを『迎え撃つ』ことにした。
「必殺魔球! 【闇のブレス】!!」
イドゥンの腕から野球ボールが投げられた。
先の大魔神軍との試合でも投げられた、イドゥンの竜のブレスにも匹敵する握力によって生み出された剛速球だ。
ロイはレーザー攻撃に対し、イドゥンの魔球をぶつけて打ち勝つようつもりなのだ。
そして剛速球がレーザーと衝突する。
ブレスの名を冠した一球がレーザーの威力を削っていく。
「おお……」
「このままいけるか!?」
魔球がレーザーとか競り合っている瞬間を見て、オシリスと
イチローも思わず息を飲んだ。
このままいけば、レーザーに魔球が打ち勝ち、もしくは相殺できそうな雰囲気を見せていた。
「チッ、俺を舐めるんじゃねえ!」
「もががーーーーーーーーーーッ!!」
が……サーシェスもこれで終わらなかった。
黒炎竜から吐き出させるレーザーの出力を一気に上げ、威力が増大させる。
その結果、魔球は炭となり、殺しきれなかったレーザーのエネルギーが二人を襲う!
「打ち負けた!?」
自分の一球入魂した闇のブレスが負けたことに衝撃を受けるイドゥン。
「くっ……だが、まだだ!」
ロイはマスターソードを取り出した。
彼は闇のブレスがレーザーに負けた、万が一の時の対策も用意していたのだ。
それは大正義巨人軍との試合でも見せたスマブラ流のカウンターを応用した凌ぎ技でレーザーを打ち返そうというものだ。
そして火を纏ったマスターソードと黒いレーザーがぶつかった。
「ぐっ……おおおおおおお!」
ロイの腕に、レーザーの重さがのしかかる。
イドゥンの投球によってだいぶ磨り減っているとはいえ、その威力はかなりのもの。
いつの日か乱闘で戦ったサムスのチャージショットの何十倍もの威力の光がロイを殺さんとしている。
マスターソードすらあまりの威力を前に刀身にヒビが入り始めている。
一瞬でも気を抜けばイドゥン諸共消し炭になるだろう。
「おおおおおおお、負けてたまるかーーーっ!!!」
だがロイは最大限の気力と渾身の力でこれを打ち払った。
打たれたレーザーが誰もいない空の彼方に飛んでいく。
「やりましたねロイ様!」
「ああ……これで――」
ロイとイドゥンはサーシェスのレーザー攻撃に打ち勝てた。
サーシェスがもう一度レーザーを撃ってこようとも、魔球とカウンターのコンボで防げるだろう。
もちろん、疲労などを考えると何度も防げるわけはなかろうが、あと数分耐えればウルトラマンゼロが顕現しルナミラクルの力によってサーシェスは浄化されるだろう。
そうなれば黒炎竜を救われて自分達の勝利になる。
このままいけば、二人にとっての勝利と言えた。
このままいけば――
「ところがギッチョン!!!」
「「!?」」
サーシェスは次のレーザーを黒炎竜に撃たせようとする。
同時に今度はサーシェスの下顎まで左右に開いたのだ。
驚くロイとイドゥン。
この時、ロイの脳裏にギムレーの言葉が反芻する。
『――寄生している奴自身も、宿主の能力を得られるんじゃ?』
(しまった……敵の能力の読みが浅かった!)
サーシェスは宿主の能力を使える。
それをロイは黒炎竜の魔法無力化能力だけを使えるだけだと思っていた。
しかし、それだけでなくサーシェスは黒炎竜の技を、しかも自分が改造した部分を込みで使える可能性を、ロイは考慮していなかったのだ。
黒炎竜とサーシェスの口から放たれた二条のレーザーは二人に向かう途中で合体し、極大のレーザーになった。
「や、【闇のブレス】!!」
イドゥンは二球目の闇のブレスを放つ。
だが今度は、二倍以上の威力になったレーザーの前に、球は一瞬で消滅してしまった。
ロイのカウンター……はできない、レーザーが太すぎて弾き返しきれないのだ。
もはやこれまでと思ったイドゥンは咄嗟に身を翻し、ロイを守るように両翼で包み込んだ。
「イドゥン!?――」
「ロイ様!!――」
そしてレーザーはイドゥンの背中に直撃し、大爆発を起こした。
「MSパイロットにもよくいるんだわ。
初撃を躱しただけで油断するアホ。
敵の実力や武装を見誤るマヌケ。
助けられない味方を救いに行くバカ。
そういった奴から墜ちるんだよ、戦場では」
愉悦の笑みを浮かべながら、サーシェスは直下の遊園地に墜ちていく黒焦げになった魔竜を見つめていた。
「ロイとイドゥンがやられた!!」
「……俺達を助けようとしたばっかりに」
「Son of a bitch!!」
「ヤバいホル! 超ヤバいホル!!」
ロイとイドゥンがやられたことに、、怒りと悲しみと焦りに駆られる6/、ダイゴ、ラミレス、ホルス。
だがサーシェスは彼らの感情すらスパイスにするかのように笑顔を向ける。
次の獲物は三人と一匹。
ロイとイドゥンという後ろ盾がなくなった以上、ホルス達はもうサーシェスの手からは逃げられない。
そして、黒炎竜とサーシェスの下顎が開き、今度こそホルス達に向けてレーザーが発射されようとしていた。
溢れ出てくる絶望感からホルスは思わず泣き言をあげる。
そこへ救いの手が差し伸べられた。
眩い光とハープに似た音がすると同時に、青き巨人がホルスを守るように現れ、レーザー攻撃をバリアで防いだ。
突然の巨人の出現に驚くサーシェスと黒炎竜。
「なんだこいつは!?」
「頼もしい奴がキタ━(゚∀゚)━!wwww」
時刻は10時過ぎ。
ここ埼玉の上空に光の国の巨人が現れた。
(ロイ……イドゥン、間に合わなくて
ごめんな……)
『だがお前達が時間稼ぎをしてくれたおかげでホルス達は助かり、俺も変身することができた。
後はこのウルトラマンゼロ・ルナミラクルに任せるんだ』
通常のゼロと違い、カラーリングに父親であるセブンから引き継いだ赤色部分がなくなって青系一色となり、口調もいつもより穏やかになったゼロ。
これはコスモスの浄化の力『ルナ』とダイナの超能力『ミラクル』を受け継いだ『守り抜く力』を具現化したルナミラクル形態である。
この姿ならば黒炎竜を傷つけずに救うことが可能……まさに
イチローチームと
ドラゴンズの待ち望んだ姿であった。
『待たせたな、黒炎竜。今助けるぞ!』
そしてゼロは黒炎竜の周りを高速で旋回する。
ゼロの突然の行動にいつでもレーザーを発射できるように身構えるサーシェス。
「何をするつもりだ!」
『世界の歪み……そうとしか思えない力と意志を持つおまえを浄化し、黒炎竜を救うつもりさ』
ゼロがサーシェスにそう言うと、ゼロの手から温かい光が放たれた。
『フルムーンウェーブ!』
フルムーンウェーブ……コスモス(ルナモード)のフルムーンレクトのゼロ版とも言うべき浄化技。
凶暴になっていた怪獣をもおとなしくさせる技であるが、破壊力は持ち合わせておらず、光を浴びせられた黒炎竜にとっては無害だった。
「とてもwwwあったかいナリぃ……www」
逆に黒炎竜に張り付いていたサーシェスは悲鳴を上げる。
「ぐわああああああああああああ!!!」
テラカオス化によって存在自体が混沌になりつつあるサーシェスにとっては、混沌の力を祓う光の力は有害であった。
ホルスの黒炎竜と共有している魔法無効化能力も、強い光の力の前では貫通し、サーシェスにのみダメージを与える。
サーシェスの力が急速に弱まっていく様を本人はもちろん、黒炎竜やゼロ達にも
読み取っていた。
(効いてる効いてる!)
『よし、このまま一気に浄化するぞ!』
黒炎竜を救うため、ゼロとDAIGOはフルムーンウェーブを浴びせ続けた。
混沌の力を持つ以上、抗体とも言える光や秩序の属性を持つ攻撃には弱く、効果的だ。
黒炎竜のサーシェスからの侵食率が急速に落ちていく……
侵食率78%
侵食率45%
侵食率36%
侵食率21%
侵食率14%
侵食率15%
侵食率16%
侵食率23%
侵食率37%!?
(あれ? 力が戻っている!?)
『なんだと!?』
失われていくだけだったサーシェスの力が急速に戻りつつあることに、ゼロとDAIGOは焦りだす。
闇の力は強い光の力には弱い……そのハズなのに一体どうして力が戻ってきている!?
その疑問はこの場の誰にもわからなかった。サーシェス本人でさえ。
「何が何だかわからねえが、とにかくおまえらの光攻撃は効かなくなったみたいだな」
「ウッソだろオイwwwwwwwいや冗談抜きで……」
ゼロは諦めずにフルムーンウェーブをかけ続けるがサーシェス相手にはまるで効果がなくなってしまっていた。
それでほくそ笑むのはサーシェス一人。
「さっきの光……かなり痛かったぞ。きっちりお返しさせてもらうからなあ!!!」
『うおわあ!!』
サーシェスは旋回を続けるゼロに向けて口からレーザーを発射し、ゼロに命中させる。
攻撃が直撃したことでゼロのフルムーンウェーブが中断されてしまった。
やや離れた位置にいる
イチロー達もこの様子を見ていたため、大いに焦っていた。
「まさか……」
「嘘だろ!?」
黒炎竜救出の唯一の手段であったルナミラクルの浄化技が敗れた……衝撃を受けないわけがなかった。
「あの触手男の持つ闇の力には光は有効だって言ってたじゃないか!
それがどうして急に効かなくなったんだ?!
ついさっきまではしっかり効いてたのに」
萃香が言ったとおり、ゼロの説明では闇の力は光の力が効果的だと伝えられた。
しかしサーシェスには最初は確かに効いていたものの、突然効かなくなってしまっていたのだ。
これはどういうことか?
少なくともホルスの黒炎竜の魔法無効化能力だけではこうはならないハズである。
「そうか……そういうことか!」
ただ一人、サーシェスの隠された力を理解した者がいた。蛮である。
隣にいた
イチローは蛮に問いかける。
「そういうことってどういうことなんだ?」
「奴の能力について俺達はとんでもない勘違いをしていた。
『触手で寄生』『宿主に自分のダメージを伝播』『宿主を改造』……これが奴の能力とばかり思っていた」
「違うのか?」
「それらをひっくるめて一つの能力、いや、一つの能力から全部生まれたというべきか」
蛮の口から告げられるサーシェスが
テラカオス化することで得られた能力とは?
「奴の能力はおそらく……
『環境に合わせて新たな能力を作り出す能力』だ!」
「なんだって!」
蛮の考察の答えは「大正解」である。
『イビキが爆発のエフェクトになる能力』『髭が触手になり、粘液が出る能力』『髭触手で寄生し、寄生した相手の能力と己のダメージを共有する能力』『寄生相手を改造』……今までサーシェスの軌跡を追ってきたものは、
テラカオス化の影響でサーシェスが短期間の間に様々な能力に目覚めていたことを目にしただろう。
そこで気づくべきだったのかもしれない。
他の
テラカオス候補者は捕食や融合などによる能力獲得を除き、一人につきに1~2つの能力しか持っていなかったことに。
それに比べてサーシェスは運命の神に贔屓されてるのかと思うくらい、能力を増やし続けていたことに……
そう、サーシェスの
テラカオス化で得た能力とは『能力を生み出す能力』だったのだ。
それも安心院のように無駄に能力を作るブックメイカーと違い、こちらは環境や相対する敵に合わせて最適な能力が生み出されるので無駄がない。
『イビキが爆発のエフェクトになる能力』……一見無駄に見えるが都庁同盟軍や
DMC狂信者、仮面ライダーすら騙すほぼ完璧な擬態。爆発がただのエフェクトであると気づいたベクター以外は破裂引火したガス管か何かだと思って最後まで誰にも気付かれなかった。
『髭が触手になり、粘液が出る能力』……いずれくる攻撃の前の防御力拡大。これに高級羽毛布団による防御力が合わさればダオス達の攻撃すら死に至らしめることはできなかった。
『髭触手で寄生し、寄生した宿主の能力と己のダメージを共有する能力』……相手の能力と命を共有。能力を奪えるだけでなく、人質を手に入れることによって高い実力を持つ者でも安易に攻撃させられなくなった。
『宿主を改造』……黒炎竜の場合は長射程のレーザーを吐かせることが可能になり、逃げる
イチロー達を追い詰めることができるようになった。
そして……
「環境に合わせるってことはゼロの光の力も……」
「おそらく奴は『光に対する抵抗力』をも作り出した。
もう、光の巨人であるウルトラマンの攻撃は効かないだろうな」
「もしそうなら最悪だ……まるで進化じゃないか!」
その場にいた全員が戦慄した。
ウルトラマンの技が効かないとあればもう、誰も黒炎竜を救い出すことができない。
それだけに留まらず、短時間であらゆる攻撃に対抗できる能力を手に入れれば、触手男……サーシェスは最強のマーダーになれる存在であった。
事実、光や秩序の攻撃すら効果がないということは、拳王連合軍のハクメンですらサーシェスの討伐は困難だろう。
(
イチローさん達が言ってることが本当なら……)
『それは厄介だぞ。下手するとベリアルより危険な存在になりかねん。
……しかし、それだけ危険な能力を持っているのなら首輪で制限されてもいいハズだが』
レーザー攻撃をバリアで凌ぎながら、ゼロは疑問に思う。
あまりにも強力すぎる能力を持つ者は、首輪にある制限装置で能力を制限されてもおかしくないハズだ。
実際、チート過ぎる能力を持ったゼロやギムレーは一度の変身につき半日は変身できない仕様になっており、もし変身し放題だったら、強すぎる者がバランスブレイカーとなってカオスロワは殺し合いとして成り立たなくなる。
あまりにも危険すぎる能力は制限して然りなのだ。
しかし……
ピーーー ガチャッ
「お?」
「え……ええwwwッ!?」
『首輪が一人でに外れただと!?』
(MDA(マジでありえねえ)!!)
サーシェスの首輪が電子音と共に外れて地上に落ちていく光景をゼロとDAIGOは目の当たりにし、驚愕した。
ユウキ=テルミのような例外を除いた参加者は知らないが、五大幹部の殺し合いの目的は
テラカオスを作り出し強化することにある
よって、
テラカオスが誕生した時に首輪があると制限が成長の妨げになり、首輪爆破という余計な弱点もできてしまう。
そのために首輪には参加者が
テラカオス化すると自動で外れる機能がついていた。
風鳴翼を寄り代にして生まれたテラカオス・ディーヴァに首輪がないのもそのためである。
……すなわち、サーシェスは「なってしまった」のである。
始まりはクルルの作ったナノマシン入り飲料水を飲み、闘争心と殺戮衝動を刺激されたことがきっかけだった。
心身ともに高い
テラカオス化への適正。
いつ死んでもおかしくないカオスロワという過酷な環境。
そんな殺し合いの中で彼の中の
テラカオス因子は育まれ、成長を急促進された。
そして人という殻を破り捨てて新生したのだ。
歌姫と安倍に次ぐ、この殺し合い三番目の
テラカオスにして、それでいて先の二人とは別方向から進化を果たした驚異の存在……
……闘争と混沌の神、『テラカオス・サーシェス』に。
「なんだかわからねえが、体が超軽いぜ!」
『そんな馬鹿な……なぜ首輪が勝手に!』
「あ、そうなんだ。 で? それが何か問題?
……まあやるんなら本気でやろうか!そっちのほうが楽しいだろ!?ハハハッ!!」
驚くゼロに構わず、サーシェスの口から何度目かになるレーザーが放たれた。
いままでの攻撃はゼロのウルトラバリアで防げていた。
しかし、首輪がなくなった結果、威力と成長に制限がかけられなくなったため、今度の攻撃はバリアを易々と貫いてゼロにダメージを与えた。
『ぐああああああああああ!』
「あぁぁいしてるんだぁぁぁぁ君たちをぉぉぉぉ! ハハハハハ!!」
その後は一方的に蹂躙するようにサーシェスは高笑いを上げながらゼロを攻撃し続けた。
「……もうダメだ……殺すしかない」
「オシリス!?」
離れた位置からゼロとサーシェスの戦いを見ていたオシリス。
だが一方的に追い詰められるゼロを見ていられなくなったオシリスはサーシェスに寄生された黒炎竜ごと消し飛ばすべく、口から神の一撃である超電導波サンダー・フォースの発射準備に入っていた。
それを必死で止めるようとするのは
イチローである。
「やめるんだオシリス!
そんなのを撃ち込んだら黒炎竜も死んでしまうぞ!」
おそらく、ではあるがサーシェスは攻撃力はともかく防御面ではそこまで進化していない。
オシリスの最大限の一撃なら確実に仕留められるだろう。
……そんなことをすればダメージ伝播で寄生された黒炎竜も間違いなく死んでしまうが。
「止めるな
イチロー!
もうゼロでは……俺達では黒炎竜を救えない!
だが今のうちなら殺すことはできる!」
「君の後輩だろ!」
「後輩だからこそだ! おまえにはわからないのか? あいつが悲しんでいることを!」
オシリスにはわかっていた。
黒炎竜は台詞に常時草原を生やすウザイ喋り方をしながらも、心の中では悲しんでいることを。
寄生されていたとはいえ、これまででファーマルハウト、霊夢、ロイ、イドゥンを自分の手にかけてしまった。
さらにゼロによる救助が不可能だとわかってからは、その目には「いっそ殺してくて」という感情が見えていた。
その感情をオシリスは遠目から汲み取ったのだ。
「あのウザイ言葉じゃわかりづらいが、あいつはな……身も心ももう限界なんだよ」
「オシリス!!」
「それにあの触手野郎を野放しにすれば、もっともっと進化して多くの参加者とロリを死に至らしめる。
それどころか、ここにいる俺達でさえやつ一人の前に全滅の危険すらある。
だから、その前に……」
後輩を自分の手で討たねばならないことを、オシリスが悲しんでいないわけではない。
だが、後輩を犠牲してでもサーシェスを殺らねば、自分達を含めた参加者に未来はない。
他の仲間に仲間に殺しの罪は着せたくないので自分の手でやる必要がある。
そう思い、感情を押し殺してサンダー・フォースを放たんとする。
「やめろオシリス! こんなの絶対間違ってる!」
「方法は何かあるはずだ!」
「そうだそうだ!」
「蛮、萃香!」
イチローに同調した蛮と萃香も高い握力と怪力でオシリスの顎を押さえ込み、必死で止めようとする。
「あがががが、オイやめろ! 邪魔すんな!!」
「チームメイトがチームメイトを殺すなんてあっちゃいけないんだ!」
イチローチームの面子に妨害されて攻撃できなくなるオシリス。
仲間が仲間を殺す悲劇を回避するために
イチロー達も頑なに撃たせまいとする。
だがそれも一時しのぎであって解決策とは言えない。
無尽蔵に進化し続けるサーシェスを仕留めるには今しか無いのも事実であり、この期を逃せばチャンスはないだろう。
どちらが正しく、どちらも正しくない、諍いが発生していた。
その諍いの果てに、転機は向こうから訪れた。
「もういいよ、先輩、
イチロー。
仲間同士喧嘩すんなってw自分でやるからw」
その台詞を吐いたのは、サーシェスを胸に張り付けた黒炎竜であった。
言葉に草を生やしているハズなのに、どこか重い。
『黒炎竜……?』
「……ありがとうゼロ、おまえのおかげでほんのちょっとだけ体の自由が効くようになったっていうw」
ゼロによる浄化技の効果はまだ黒炎竜の体に残っていた。
それでも侵食率は90%以上。ごく僅かな部位しか動かせない。
「動かせんのは首だけか……まあ十分だなw」
しかし黒炎竜は笑っていた。
唯一動かせる首を動かし、下を見る。
「あ?」
下を見てすぐ目に入ったのは、胸にこびりついている触手男だった。
「あいつ何をするつも……まさか!?」
動かせる首、触手男を見つめる黒炎竜。
それが指し示す符号をこの場で誰よりも早くわかったオシリスは焦燥する。
「やれやれ今期も軽いノリで行きたかったのに、どうしてこうなったしwww
でもまあ、これで仲間殺しとか重いものを背負わなくて済むし、トラウマなラオウと戦わなくて済むし、何よりメンドくせー野球もしなくて済むwww
……やっほう!www考えたらいいことづくめじゃねーかwwww」
黒炎竜のアギトが開く。
その口からブラック・メガフレイムが発射されようとし、それを見て慌てふためくサーシェスと、それを嘲笑うかのように草を生やす黒炎竜。
「ちょ、ちょっと待て!! そんなことすればおまえも……!」
「つーわけで先輩www! 面倒くさいこと全部丸投げで俺は消えますわwww無責任な後輩で悪いけどwww恨まないでちょwwwバイバイキーンwwwww」
そして黒炎竜から必殺の黒い炎が放たれた。
いくら触手の粘液に守られても、何らかの追加防御手段がない限り攻撃力3000の零距離直撃をサーシェスが耐えられる道理はない。
「俺はまだ戦争を楽しみたりな……ぐああああああああああああああ!!!」
黒い炎の中で絶叫を上げながら、サーシェスは爆散した。
……それと同時にサーシェスの能力により、宿主へダメージが伝播する。
それによって黒炎竜にも全身にヒビが入り、そして爆散した。
爆炎が消え去った後に千葉県遊園地に木霊するは、遠くからでも聞こえるオシリスの悲鳴であった。
【アリー・アル・サーシェス@機動戦士ガンダム00 死亡確認】
【ホルスの黒炎竜Lv8@遊戯王 死亡確認】
最終更新:2018年03月30日 15:00