ビッグサイトの地下格納庫。
「なにこのキモイ連中」
一人のモブ狂信者が目の前の光景を見て呟いた。
格納庫には黒と灰色の、千差万別の異形が蠢いている。
その数、ざっと200ほど。
巨大な頭だけの奴もいれば、頭にまた大きな口や角が生えた美少女の異形もいたりする。
普通の感性なら格納庫が異形集団に襲撃を受けていると思うだろうが、異形たちは格納庫にある機体の修理や改造または資材を運び込んでおり、狂信者の味方であるようだ。
「こいつらは深海棲艦というらしい」
「シンカイセイカン?」
モブの疑問に答えるは別の狂信者モブである。
「ディーがお抱えの科学者であるサーフ博士が作っていた隠し戦力らしい」
「へえ~」
「博士がいくら天才だからって一人でビッグサイトの機体や装備を全部やろうとしたら過労死してしまう。
クラウザーさんのために働きすぎて死ねるなら彼も本望だろうが、まだまだ強くなれる狂信者軍団がパワーアップできなくなってしまうのは些か勿体無い。
そこで見た目はアレだが、博士の命令に忠実でロボットの修理ができるぐらいに高知能なこいつらが使われているってわけだ」
「なるほど、俺としちゃクラウザーさんのために生贄をSATUGAIできればそれでいいけど」
「……で、そのサーフ博士はどこに?」
「なんでも休憩を取らないと最良の発想が浮かばないと言って二時間ぐらい部屋に引きこもっているけど、ディーに怒られないかな?」
「深海棲艦が博士の代わりに働いているから怒られないんだろうな……」
立ち話をしていたモブに、頭に大きな黒い口をつけた美少女型の深海棲艦、空母ヲ級が向かってきて告げた。
「アナタタチノキタイ、カイゾウオワッタ」
「お、早いな。さてと生贄をレ〇プしてくるか」
「ヒャッハー! 楽しい巡回SATUGAIのお時間だぁーーーッ!」
自分の機体が直ったと知り、モブ狂信者パイロット二名は急いでMSジェスタに乗って格納庫から出撃。
巡回任務に戻った。
さて、本筋に関係ない奴らの話はここまでにして。
この世界に大災害を齎した巨悪。
そして最後に残った掲示板であるカオスロワちゃんねると使って殺し合いを操作していた管理人サーフは今、何をやっているのか?
彼の自室と企みを覗いてみよう。
■ □ ◆ ◇ ● 〇
「ふぅ~~……気持ちいい」
瑞鶴はサーフに与えられた室内に備え付けの浴槽に入ってゆったりとくつろいでいた。
艦むす的に言えば入渠である。
もちろん入渠と言えば全裸なわけである。
その浴室からそれほど遠くない場所でサーフはディパックの代わりにしている四次元ポケットから出したカオスロワちゃんねるのサーバーをパソコンに繋ぎ、この殺し合いの状況を見ている。
掲示板だけでなく、主催者同様に首輪やナノマシンから発せられるシグナルをキャッチし、現在までの生存者や
テラカオス候補者がわかるようになっている。
「数多くの暗殺に、証拠隠蔽工作……メーガナーダと共に僕のためによく頑張ってくれたよ」
「夫である提督さんのためですから」
「ありがとう」
自分にとって不都合な存在を影で消し去ってくれた瑞鶴を労わるサーフと、微笑み返す瑞鶴。
そんな仲良し夫婦の間にとある情報が割り込んだ。
「お、これは……」
「どうしたんですか?」
「光祐一郎の息子、光熱斗が死んだみたいだ。
掲示板やナノマシンのIDシグナルも全部確認した……間違いない」
放送だけなら
テラカオス化した風鳴翼のように死亡を隠蔽または改竄される前例もあったので、自分が支配している掲示板及び首輪とは別にナノマシンから発せられるシグナルを念入りに確認したサーフ。
ずらりと並んだリストの中で熱斗の名前が消えていた。
これにより最強のネットバトラーである熱斗が死んだことを確信に変える。
「ククク……」
「提督さん、良かったですね……って!」
「ああ、
まったくだ。
ざあまみろ光! 僕の夢である『艦むすたちの楽園』を奪った報いとしてあの世で後悔するが良いや!」
興奮からか瑞鶴がいる風呂場に侵入サーフ。
同時に黒い血管のような光が彼を覆ったと同時に悪魔へと変身させる。
サーフは鰭状のベールを頭に被った水棲生物をあしらった人型の異形、黒き水の神(あくま)リアルヴァルナとなった。
『はははははははははははははははははははははははははははははははは!!!』
おぞましき黒い悪魔の姿で嗤うヴァルナ。
その狂喜はまるで憎い仇が死んだ以上の、極上の喜びを現していた。
『はは……』
しかし、嘲笑は長続きしなかった。
浴槽の隅で狂喜と威圧を放つヴァルナに驚いた瑞鶴を見たからだ。
それを見たヴァルナはポリポリと後頭部を掻きながら弁明する。
『あー……すまない。嫌いな奴の息子が死んではしゃぎすぎた。
まだ
テラカオスも手に入れてないのに浮かれた挙句、君を驚かせてしまったな』
ヴァルナは怖がらせてしまった瑞鶴に誠意をもって謝った。
最も、ヴァルナには瞳に当たる部分が無いので本当に誠意があるのかはわからないが。
「いいえ、あたしだって、あなたの夢である艦むすの楽園を見てみたいですから。
それを邪魔した光一家はあたしにとっても敵ですから気持ちはわかります」
『すまない』
「でも……一声もかけずにお風呂場に入ってきた時には正直、ヒヤッとしましたよ。
次やったら提督さんを爆撃しますからね!」
『わ、悪かった。君の爆撃は物理耐性を上げるスキルつけても痛いから勘弁してくれ……』
冗句交じりにプンスカという顔でサーフに弓を向ける瑞鶴とタジタジという動作をするサーフ提督。
そこだけ見ると仲良し夫婦に見えないこともない。
ところで、サーフと瑞鶴が目指す艦むすの楽園とはなんなのか?
それを知るためにほわわわ~んと過去を振り返ってみよう。
野望に目覚める前、サーフは科学都市ニルヴァーナの一科学者に過ぎなかった。
ある日、自分が古代ミヤザキ人の血を色濃く受け継いだ末裔と知り、彼らが戦友として使っていた機械の巫女『艦むす』の存在を知る。
彼女らは戦争状態にあった古代グンマーに抗うために古代ミヤザキの従順な戦士として戦った。
しかも美女ぞろい。
だが、最後は何らかの理由で全解体を人類から言い渡され、艦むすは絶滅した。
解体させられた理由は不明。
事情はわからないが人々のために戦った彼女らが何の栄誉も得られずに人から忘れ去れれたのを不憫に思ったサーフは、この世に艦むすを復元することで蘇らせることを決意。
そして復元された艦むす。
海の上なら無類の強さを発揮し、魔物やテロリストなどあらゆる海の上の驚異に対処可能。
同じ人間のようにコミュニケーションができ、人間との交配まで可能。
しかも美少女揃い。
人間を模した艦むすは機械生命体レプリロイドと名前を変えて世界に売り込まれ、普及という形で世界に復活するハズだった。
しかし、サーフが友でありライバルである光祐一郎が同時期に生み出した『ネットナビ』にコンペで敗北。
艦むすの企画は中止され、ネットナビ及びPETの方に莫大な予算が注ぎ込まれ世界に普及した。
コンペに敗北した理由……艦むすがネットナビに性能面で劣っていたとかいうわけではない。
武装による問題面に関してはネットを使ったテロができる分だけネットナビの方が遥かに危険であるし、サーフの予感は的中し、実際にWWWなる犯罪組織も生みだした。
にも関わらず世界はネットナビを選んだのはなぜなのか?
答えはコストである。
艦むすは……製造コストや維持コストがかかりすぎる。
機種にもよるが作るには大量の資材が必要であり、生み出したら食事や入渠させなければならないという手間がかかる。
対してネットナビはPET稼働に必要な電力とネット環境ひとつ確保できれば十分であったのだ。
お財布事情はどっちか楽かという些細な理由で、艦むすの未来は絶たれたのである。
祐一郎は友人として彼に気をかけたりもしたが、サーフにとっては嫌味にしか感じなかった。
その後も祐一郎とネットナビは邁進し、世界に普及した。
一方のサーフは影響力の大きくなった祐一郎の影に隠れる形になり、モブのような扱いをされる。
ライバルに敗北し目指した夢も名誉も手に入れられなかったサーフは、諦められずミヤザキの遺跡で艦むすを世界に普及させるためのヒントを探す。
それが転機であった。
古代ミヤザキ人により封印され、この時代まで生きながらえていた古代人タバサを発見する。
そして様々な技術の他に、歴史に隠れた真実も知ることになった。
古代にはTCホールの暴走による大災害により世界が滅びかけ、カオスロワによって生みだした
テラカオスによって救われたこと。
その後、次の大災害がより強大だった場合に備えての
テラカオス強化プラン『救済の予言』。
艦むすは強化プランの一環で生み出された、古代ミヤザキ製の人造巫女であった。
しかし、蒼を支配することで世界を存続させようとするミヤザキの思想を認めない世界の滅びを良しとする古代グンマーから戦争を仕掛けられ、グンマーの巫女に対抗するためにやむを得ず戦場に駆り出される。
彼女らの結末は
テラカオスを巡る戦争を憂いた神による抹殺であった。
ミヤザキは仲間である艦むすを皆殺しにせざるおえなかった……逆らえば自分たちごと根絶やしにされるからだ。
グンマーから離反した一部の竜種により保護された艦むすもいるが、結局ひとり残らず解体され、竜の方は記憶を消されてしまった。
……艦むすたちを復活させるには滅ぼすきっかけを作ったグンマーや滅ぼした神々が邪魔である。
こいつらがいる限り、蘇らせた端から壊されてしまう……そのためにサーフはタバサを通じてTCに纏わる情報を洗いざらい聞き出し、彼女を篭絡して世界への復讐と先祖ができなかったTCホール支配計画を実行に移した。
まずは蒼の研究によって作り出した麻雀の強さを戦闘力に変える「雀力」を作って資金と人材を集め。
グラサンのババア上司やサウザー
みたいな声の大佐をうまく騙して、こっそりと施設を改造して宇宙にある蒼の源泉を暴走させる準備を進める。
裏では非人道的な研究の中で作ったメーガナーダと復元した艦むすである瑞鶴に邪魔者の排除を任せ、計画に気づきかけたヒート・オブライエンを暗殺。
ヒート博士が師事していた阿笠博士と知人の子供を拉致後に洗脳手術をして弟子殺しの罪を被せた。
実行当日、最初に第一真竜であるアイオトが計画をやめるようにサーフたちの前に警告のために現れるが、アイオト自身が現役を引退していて戦闘力はなかったこと、加えて竜の弱点である竜殺剣ドリスを復元していたことで抹殺に成功。
少なくともこの世界からは完全に消しさることに成功する。
続けてストロング・ザ・武道やセプテントリオンら神々の差金が襲いかかってくるが、タバサから事前に知りうる弱点を聞いていたおかげで時間稼げる程度には対策を練ることができた。
さらに「蒼によって滅びたい」と願う破滅思考の上位存在も工作を手伝ったため、有利に戦闘が進んだ。
具体的には10人一斉にかかってくれば確実に負けるところを、10人が一人ずつかかってくるようにして勝てるような流れに変えたのだ。
武道の特攻で装置そのものは壊されて予想以上に後の参加者たる生き残りが多くなってしまったが、蒼の源泉は無事に暴走し、計画に支障は出ていない。
目論見通り大災害の蒼によって滅んだ上位存在の協力者を除くと、たった三人と一匹で世界を滅ぼしたなど人も魔物も神も思いはしないだろう。
それだけの技術力と用意周到な計画があったのだ。
それからサーフと瑞鶴、メーガナーダはニルヴァーナから海を渡って日本にたどり着けた。
日本は地理の関係上、蒼の直撃を受けにくいので殺し合いに必要な土地として残り、聖別の地になるのは計算済みである。
そして、予め作っておいたSMS『カオスロワちゃんねる』を操作し、殺し合いを……特に
テラカオスの生産と救済の予言が叶うように誘導した。
自分の手元を離れたタバサが才人を取り戻すために勝手な行動を取り出したのは肝を冷やしたが、幸い
テラカオス関連の話はせずに死んでくれたために問題もなかった。
大災害による蒼を浴びたことによって敵である神々もすべからく滅んだ。
死者スレも改造と洗脳を施したシグナムによって破壊された。
ハッキングを使って殺された幹部の魔神皇・狭間の友人だと経歴を詐称し、狂信者に認められれば隠れた安全地帯であるビッグサイトに滑り込むことができた。
あとは対主催にこちらの存在を悟られないまま、
テラカオスを完成させ、強化プランである救済の予言を完遂させる。
そして宇宙をまるごと滅ぼせる蒼のエネルギーを吸引させ、
テラカオスを支配下に置くことでサーフは世界を我が物にすることができる。
さすれば全ての邪魔者はいなくなり艦むすの楽園を築くことができるであろう。
――瑞鶴はそう、教えられている。
瑞鶴も生みだした親である提督だから無条件で好意を持ったわけではなく、危険だからとはいえ絶滅に追い込むしかなかった神々や人々への憤りとサーフが目指している艦むすの楽園を見てみたいがために思想に同調したためである。
『瑞鶴、熱斗を始め邪魔者はかなり減ったけど、まだまだ障害は多い。最後までついてきてくれるかな?』
「ええ、喜んで」
「インドラ~」
「メーガナーダ、お夕飯ができたですって?」
二人の入浴場にエプロンを身にまとった丸いサボテンのような悪魔が入ってきた。
瑞鶴の支給品であるメーガナーダである。
『ディナー時か、瑞鶴、そろそろ上がってくれ』
「提督さん……その格好のまま、食べるの?」
『食事する時はこっちの姿の方が落ち着く』
二人は入浴上から出た。
サーフは悪魔の姿のまま、瑞鶴は浴衣を纏って。
テーブルの上にはサイヤ人の王子ベジータの肉を使った様々な料理が置かれていた。
刺身、ステーキ、お好み焼き、デザートは『猿脳』……ちなみに神鎗による死毒が入っているので常人ではまず食べられないが、サーフとメーガナーダはBSデストロイア(状態異常無効能力)持ちなので、舌がピリつくスパイスでしかなかった。
流石に瑞鶴は食べられないため、おにぎりに秋刀魚やパフェにサイダーなど別のものが用意された。
「メーガナーダにお料理仕込んで良かったですね!」
『そうだね。でも脳みそはいらないや、ハゲが移りそう。メーガナーダにあげるよ』
「インドラ……」
ベジータだった物を食らっていくサーフとメーガナーダ。
悪魔ウィルスによって変身した悪魔は食えば食うほど体内に生体マグネタイトが溜まり、進化して新たなマントラ(スキル)を覚えていき、強くなっていく。
かつての貧乳歌姫ほど即効性や喰った敵の能力獲得はないが、強い存在を食えば食うほど早く
強くなる。
そんな彼らがスーパーサイヤ人の領域に達した男の肉を食うとどうなるか?
『……!!』
「提督さん!?」
『凄いぞこれは! 肉のひと切れ食べただけで僕のマントラが埋まっていく!』
ほんの僅かな切れ端を食べただけで能力を取得していくのはサーフとて驚きであった。
肉を胃に詰め込む度に脳内でスキルツリーであるマントラが埋まっていく……美味なるサイヤ人の肉を全て平らげた時、全マントラスキルをサーフは獲得し、喜びを顕にする。
『戦闘後に自動全回復するオートソーマ。
万能攻撃以外全部無効化するマスタキャンセラが殺し合いの最中に手に入るとは思ってなかったよ。
それだけでなく攻撃力や防御力、スピードまで格段に強化された。
パーフェクトだ瑞鶴、メーガナーダ』
「感謝の極み、ってね」
「インドラ~」
男女とペットの明るい食卓。
男とペットが悪魔でなかったり、食べてるものがサイヤ人の肉じゃなければ微笑ましい光景なのだろう。
「さて、お腹も膨れたことだし。状況を整理しよう」
「作戦会議ね」
夕食後、悪魔の姿から人間の姿に戻ったサーフは研究者然とした白衣を纏い、瑞鶴とメーガナーダと共に今後を考える。
ここまでで瑞鶴の手によってウエムラたち、科学都市ニルヴァーナの生き残りは全滅。
彼のビデオレターは見た参加者であるバドも死亡を確認。
別行動を取っていたタバサも死んだため、自分たちの計画を知る者はいない。
仮にカオスロワちゃんねるに疑惑を持ったとしても、管理人が誰かまではわかっていないはずである。
掲示板の危険を承知してところで、サーフにとって都合の悪い情報はブロック・端末爆破・接続エラーを言い訳にした遮断で他の参加者に情報は伝わらないようにサーバーに予めプログラムされている。
大勢を変えるには
DMC狂信者並の大集団でない限りは不可能なのだ。
ハッキング技術を持つ熱斗のようなネットバトラーも死に、計画の露呈はないと見ていい。
次に各組織の動き。
モブを除くと8割近い参加者の首輪が外され盗聴はまともに行えなくなったが、それでもナノマシンから発せられるシグナルによって生存確認やどこにいるかぐらいは検知できる。
掲示板の情報やシグナルから読み取った動きを見ると……
今、自分たちが所属している
DMC狂信者。
一度狂信者と認められればビッグサイトほどの安全地帯はない。
少しでも魔力の心得がある者は、膨大な生体エネルギーが集中しているビッグサイトに強力すぎる遠距離攻撃を行うと、大爆発を起こして危険と気づくからだ。
多くの狂信者が対主催組織に挑んで返り討ちにされる一方で、本拠地攻め落とすには相応の戦力や戦略が必要なため、都庁同盟軍やイチリュウチームですら未だに攻略の糸口を掴んでいない。
おかげでサーフは裏方で計画を進めやすくなった。
それでもいつかは強対主催が殴り込んでくるだろうが、時間稼ぎとしては十分であった。
主催陣営は安倍から九州ロボを奪還したらしく、一方でアナキンは対主催へと潜伏。
ジャックたちは本拠地奪還が目的だろうから自然だが、アナキンの動きは気になる。
彼らの目的は
テラカオスを使った世界救済。
野球チームに接触したところからして救済の予言を完遂の手伝いをしようというのか?
祐一郎が作ったミヤザキ系の器たりえる巨像である九州ロボを保管してくれる分には嬉しいが、参加者となったアナキンの動きには留意すべきだろう。
拳王連合軍は誤解の火中にある。
戦い方いかんでは他の集団を滅ぼしうる力は持っているが、有力者の死と止まらない誤解のせいで対主催から狙われる対主催となっている。
本人たちもまた誤報をバラ撒き、ダイジョーブ博士との接触で都庁=ヘルヘイム情報をネットに拡散し、殺し合いを盛り上げてくれた。
ダイジョーブ博士は自分に関する余計な情報をバラまくかもしれないのでサーフが間接的に爆死させたが。
また本人たちは気づいていないようだがミヤザキの巫女である翔鶴を所持している。
都庁同盟軍。
ボロボロなれど底知れない集団だが、ダイジョーブ博士を介した拳王連合軍の情報によってヘルヘイム扱いされ、もはや誤解の払拭は不能。
同盟であるはずの小町が突然、都庁を裏切ってヒーロームーヴをしだしたように見えたが、シグナルが都庁の世界樹から動かないところからして、やはり裏切っていないようだ。
大方、ヘルヘイム絡みの混乱を収めるためにダオスかレストあたりをボスに仕立てあげて倒したフリをし、何も知らない一般人を安心させて騒動を一時的に止めるつもりなのだろう。
サーフとしては救済の予言の中にある器、古代グンマー産の器たりえる巨像であるフォレスト・セルがあるのが気になるところ。
聖帝軍。
シグナルの位置からして前述の都庁と手を組んだ可能性が濃厚。
きらりの
テラカオス反応が消えてしまったところからして、セルに浄化されてしまったらしい。
聖帝軍もホモどもの工作動画によって拳王軍・都庁軍同様に風評被害を受けた……それも立川破壊などの情報は事実のため、誤解を払拭することはできない。
テラカオス化に関するレスはネット規制で弾かれるようにできているので、大衆を納得させることはもうできない。
生存が目的なら都庁と手を組むのは必然であろう。
イチリュウチーム。
誤解を受けていない最後の対主催組織。
半数が首輪を外され戦闘力を増大させた一方でオシリスが狂信者に囚われ、多くのメンバーが狂信者の襲撃で死亡。
午後六時前現在も戦闘が続いている。
ゼクス組残党。
イチリュウチームに吸収されようとしているが、戦力的には特筆すべき点はない。
問題なのはテラカオス・ディーヴァの残滓がここにいる点であろう。
彼女はディーヴァ時代より遥かに弱体化しているが、その代わりにTCと
テラカオス因子を吸収して自分のものとする力を持っていることを確認した。
現状で最後に残った
テラカオスなので、注視していく必要がある。
こちらからの保護・捕獲は……少し、難しい。
彼女自身は弱いが回りが強すぎるためである。
沖縄に現れたシャドウだったもの。
蒼を纏っているところからして古代人タバサが言っていた黒き獣である可能性が濃厚。
対抗できるのは蒼を吸収できる
テラカオスのみであり、早急に貧乳歌姫以上の戦闘力を持つ
テラカオスを派遣する必要がありそうだ。
「こんな感じですかね」
「そして、僕らの持つカードは……」
テラカオスによって来たる大災害から世界を救うには、六つの鍵が必要である。
『儀式』――野球チームの優勝及び、それに伴う化身が持ちえない高潔な力を化身に注ぐ。
『歌』――殺し合いの犠牲者を悼み鎮める歌で死者の魂を安定させ、死者からも化身に力を注ぐよう協力させる。
『巫女』――後述の器の制御及び、器を操る力を持つ巫女自身も化身に力を注ぐ存在。
『器』――巫女以外に操れない規格外の力。内部に化身を入れて力を注がせる兵器。
『勇者』――争いの淀みから生まれてなお破壊衝動を抑え、大災害に立ち向かう意志を持つ特殊な存在。
『化身』――
テラカオス。
無論、殺し合いの発端となった大災害を引き起こしたサーフと言えど大災害で自分ごと世界が滅ぼされるのは望ましくない。
必然的にサーフも予言を叶える必要がある。
しかし、そこは計画者だけに予言に纏わる大半の準備を殺し合いが始まる前から済ませていた。
「巫女は言うまでもないね」
「ええ、私たち艦むすは人造の巫女。
特に五航戦姉妹は直接戦闘以上に巫女の力に特化させて作られてますからね」
サーフ自身が作り出した巫女、瑞鶴。
その巫女の素質はグンマーの巫女である鹿目まどかと同格である。
しかも機械なので改造である程度は力を拡張できるのだ。
「そして、器」
『インドラ~』
「……まさかメーガナーダが元々はフォレスト・セルの劣化コピーの一つだったなんてグンマーの奴らは思わないでしょうね」
「僕としても悪魔化ウィルスを興味本位で注入したらこうなるなんて思いもよらなかった……おかげで『器』としての機能を取り戻し、戦闘力もオリジナルに近いくらい取り戻したけど」
「言うなればミヤザキで改造したグンマー産の器ですね」
サーフと瑞鶴が従えていた人食いの悪魔メーガナーダ。
その正体はオリジナルのフォレスト・セルから生まれたクローンであった。
大災害の前に手に入れたサーフだったが、所詮は劣化コピーにすぎず、器としては弱すぎるぐらいのハズレと言ってもいい代物だった。
そこで悪魔化ウィルスを流し込むで悪魔として強化・新生。
元と比べると少々小ぶりになり、汚れどころか生き物ならなんでも食べてしまう悪食になってしまった代わりに器としての力と機能を取り戻した。
なお、暴走せずにしっかりとコントロールできているには巫女である瑞鶴の力によるものである。
「歌……テクノシャーマン19号……セラは死ぬ前に良い歌を残してくれたよ」
「良い歌ですね」
「ああ……肉体に守られているならともかく、魂だけになった存在でこの歌の支配に抗える存在はいない」
パソコンからDMC以外の歌が流れる。
それは少女が歌う、子守唄のようなレクイエムであった。
かつてニルヴァーナは神を知るための研究としてテクノシャーマンと呼ばれる神との交信者が作られた。
サーフは秘密裏にセラという一人のテクノシャーマンの少女に『蒼によって滅びたがっている』神と交信させて、どんな強固な魂でも逆らえない歌を作らせた。
「
聖帝軍みたいな多くの対主催がクラウザーやきらり
みたいな大衆を操る歌や歌い手が必要と勘違いしているが、それは違う。
答えは荒ぶる魂を縛り、抵抗を無力化させて統一するレクイエム……呪詛なのさ。
死者の魂を縛れるなら歌い手なんて機械音声でもなんでもいい」
ちなみに人の手によって生み出されたテクノシャーマンは寿命が短く、実験を繰り返す度に命の灯火は消えていく。
テクノシャーマンであるセラは大災害の日に、蒼の源泉を暴走させるための装置に組み込まれ死亡している……最期までサーフの悪しき野望に気づかずに。
「こうして巫女・器・歌は既にあるわけだが、勇者及び
テラカオス、野球選手だけは手元には入れられないな」
「勇者と
テラカオスは殺し合いの中で覚醒するものですから用意はできないですし、野球選手は強すぎて保護できないですからね」
「僕は今、サイヤ人並の力を持ってるとしても
イチローやラオウが九人ずついたら勝てる気はしない……ましてや捕獲ともなると、ね……」
勇者と
テラカオスだけは殺し合いが前提で生まれる存在であり、殺し合いより先に生み出したり見つけ出すことができない。
いちおう殺し合いが進行した現在ならパソコンのモニターに素体の時点でTC耐性を持ち、
テラカオス化しても狂わない者たちの名前がリストアップされている。
その中には未だに
テラカオス化していない者もおり、テラカオス・ディーヴァやその残滓である『ツバサ』の名前もあった。
だが戦闘力や拉致する手間を考えると確保は困難であろう。
そして野球選手は場合によっては勇者以上に確保が難しく、ただでさえ理不尽に強い者が集まりすぎてサーフと瑞鶴のたった二人では捕獲はまず不能。
第一、殺し合いが始まる前に野球選手を何チームも集めてしまうと主催や対主催に計画がバレてしまう危険があったので、自然に集まって徒党を組むのを待つしかなかった。
とはいえ、サーフも勇者や野球チーム、
テラカオスを生み出すために何もしていなかったわけではなく。
カオスロワちゃんねるの管理人として情報を操作し、誤解や風評被害に誇張を手綱にとって殺し合いを激化させた。
結果として多くの勇者候補や
テラカオスが生まれた。
野球チームに関してはフリーザ軍など野球で世界が救えるという『あえて中途半端にした』真実を吹聴することで戦士たちを野球選手に仕立て上げた。
誕生初期の
聖帝軍やオシリスが救済の予言の内、野球しか知らなかった起因である。
ちなみに十傑衆のボスであるビッグ・ファイアは殺し合いの前、冷凍睡眠から目覚める前に蒼の直撃で死亡しており、そこにつけ込んだサーフはボスを守りきれなかった諸葛孔明を脅迫することで十傑衆チームを無理やり作らせたのだ。
「まあいい、勇者や野球チームだけは手元にある必要がない。
一番大事なのは最後まで誰にも気づかれずに、参加者や主催たちに
テラカオスを作ってもらい、かつ救済の予言をなし得てもらうことだからね」
サーフとしては参加者から
テラカオスが生まれ、救済の予言をなし得てもらいたい。
それは強化プランを経てパワーアップした完成体……否、暴走した源泉から来る大量の蒼を吸って究極体となった
テラカオスを手に入れるためである。
テラカオス究極体を手にしたものは世界最高の権力を手に入れる仕組みである。
そのシステムとは――
「僕の先祖である提督……水無瀬 眞は本当に良いものを残してくれたよ。
テラカオスの自殺解除プログラムだけでなく、完成体の
テラカオスすら特定のナノマシンの持ち主に従わせられるプログラムもね。
カオスロワちゃんねるにも使っているサーバーに仕込ませてもらったよ」
サーフの先祖である水無瀬提督はいつしか自分の子孫が世界を牛耳れるように独自の研究により、目的を達成した
テラカオスの自殺プログラムの解除法を知り、特定のIDシグナルを持つナノマシンの持ち主を操れるプログラムさえ作り上げた。
テラカオスは完成した途端、特定のシグナルを持ったもの……現在ならサーフに従うようになってしまうのである。
ちなみに完成体の
テラカオスはプログラムの支配に抗うことはできない。
なぜならば完成体に近いほどナノマシンの依存度が高くなってしまうからだ。
ナノマシンもまた宿主に応じて進化するために
テラカオス自身の意思でぬぐい去ることはできない。
抗えるのは未完成体や候補者止まりの
テラカオスだけである。
また、直接吸収して栄養に変えてしまうセルや世界樹の浄化や、ハクメンによる秩序の力と同時に物理的攻撃力を叩き込んで殺処分する方法はともかく、ウルトラマンゼロなどによる光の力の広範囲浄化は効果が薄い。
これはナノマシン全体に仕組まれた防御プログラムとして、大規模範囲で浄化を感知するとナノマシンが「光」や「秩序」の属性を一時的に持ってやり過ごしてしまうため、ナノマシンを完全に消し去ることはできないのだ。
それでも近くにいた耐性を手に入れる前のサーシェスのように、ユーノぐらいは浄化されたかもしれないが……抗体を埋め込むことや殺害することはウルトラマンゼロにはできないので、結局後から
テラカオス化がぶり返すだけである。
すなわち、救済の予言を叶えた後の究極体
テラカオスが生まれた途端、サーフによる世界の統治が始まり、彼はこの殺し合いの『真の意味での』優勝者になるのだ。
参加者と主催者が
テラカオスを作り出し、救済の予言を完遂したところで、全ての成果はサーフに総取りされる。
そのようなシステムが殺し合いの水面下で作り上げられていたのだ。
「――とはいえ、
テラカオスの完成と救済の予言が成り立たないと、これまで努力した意味がないな」
「その両方を成し得ないと提督さんや私も大災害で死んでしまいますからね」
「特に狂信者や対主催の妨害によって、野球の試合は長いこと頓挫してる……必要なエネルギー総量からしてあとたったの二試合なんだが、これがなかなか届かない」
狂信者、
ホワイトベース組の襲来、サーシェスの襲来などによってどのチームも試合ができていない。
残ったチームは拳王連合軍、イチリュウチーム、
聖帝軍……後は全滅したか、他のチームの強さや狂信者の襲来に恐れおののきリタイア・解散した。
次の大災害が発生、または
テラカオス以外は戦いにもならない存在・黒き獣が本州に攻めてくる前に試合を終わらせる必要がある。
どのチームが優勝しようと構わない、とにかく早急に野球をさせる必要があった。
ではどうするべきかとサーフは思考を巡らせる。
「よし……こうしよう。
瑞鶴、これから拳王連合軍と接触して仲間として合流し試合をさせるように仕向けるんだ」
「翔鶴姉……ひいては祐一郎や熱斗がいた集団に?」
「表向きにだが僕は祐一郎と親交があった。
ダイジョーブも接触したし、思惑に気づかれずに接触できるハズだ。
都庁にいる
聖帝軍、イチリュウチーム、どちらからでも良いから先に攻めさせるんだ。
もちろん、僕が
テラカオスを使って世界を支配しようとしていることは内緒でね」
確かに拳王連合軍は今は亡き光親子が所属し、その光祐一郎とサーフはダイジョーブ博士の口によって親交があったと説明された。
今から裏で協力関係を結んでも違和感はない。
「僕については
DMC狂信者に潜伏している対主催という嘘を奴らに吹き込んでほしい。
対主催が攻め込ませやすくする準備をしているからビッグサイト攻撃は後回しにしてくれ、とね」
その嘘は自分が潜伏している安全地帯を攻撃されたら困るからだけではなく、いくら強いとはいえビッグサイトを攻略している間に時間を喰い、試合をするだけの時間的余裕を失ってしまうからだ。
世に都庁の世界樹がヘルヘイムと誤情報を打診し、イチリュウチームからの攻撃によって二チームとの敵対関係をもった以上、都庁及び
聖帝軍とイチリュウチームと戦う理由はある。
それを狂信者との戦いに向けさせるのはかなり勿体無い。
カオスロワ式野球自体もれっきとした殺し合いであり、
テラカオスの成長の促進にも役に立つので尚更だ。
「指令に異論はないですけど、ちょっと質問が……試合中に狂信者や他の参加者から妨害を受けると思うんですけど、その時はどうするんですか?」
瑞鶴の質問も最もである。
選手の敵は何も相手チームだけとは限らない、救済の予言など知ったことではない狂信者などが妨害を仕掛けてくる可能性がある。
拳王連合軍と
聖帝軍に至っては対主催も攻めてくるオマケ付きである。
「そうだな……じゃあ、これを渡そう」
「なにこのマシン?」
サーフは奇妙な形をしたスイッチ付きのマシンを瑞鶴に渡した。
「僕が神の知恵を奪って作った特注品だよ。
それを使えば周囲の参加者を異界……外の世界ではなく裏世界の球場にランダムで転送できる」
この世界の参加者は次元を犯すTCによって外の世界に出ることはできない。
一定以上の長距離ワープも不可能だ。
しかし鏡の中にあるミラーワールドなど、一部の裏世界はまだ生きている。
サーフはそれらを見つけ出し、野球ができる程度に安全かを精査して転送する手段を構築し、一つのマシンを作り上げたのだ。
「一度起動すればマシンを再起動するまでは誰も乱入することができない決闘場の出来上がりさ」
「裏世界で野球の試合をやっても、予言的には大丈夫なんですかね?」
「問題ない。マシンを介して発生したエネルギーは全て表世界にある無事な球場にリアルタイムで運ばれる。
……ただ、ひとつだけ問題があってね」
改まったように話すサーフと神妙に聞く瑞鶴。
「なんですか、問題って?」
「発見した裏世界のいくつかも蒼の影響で壊れかけているのか、表世界より不安定でね。
一度の試合に付き、平均三時間しか裏世界が持たないんだ」
「うう、なるほどタイムリミットは試合一回分ずつ、ということですね」
「使える回数もたったの二試合分だけ。
しかも、マシンの出力の都合上、負けたチームは試合中に生きていても崩壊する異世界に取り残されて死ぬ事になる。
試合さえしてくれれば誰が死のうが構わないが、瑞鶴も死地に飛び込ませることになってしまう。
いくら僕の手でも裏世界にいる間は手出しができない」
転送マシンは妨害を受けないという最大級のメリットと同時に、負ければ全滅が確定するという最大級のデメリットを持っていた。
万が一、拳王連合軍が試合に敗れたら最後、自分の作り上げた娘兼妻を失うことになる。
サーフはそれに対して悲しそうな顔をするが、瑞鶴はそんな彼に笑ってみせた。
「艦むすによる夢の未来を叶えるためにも、僕はまだ参加者たちに正体を悟られるわけにはいかない。
ビッグサイトからいきなり離れるわけにはいかないんだ」
「大丈夫ですよ、私はサーフ提督の最高傑作。負けることなんてありえません。あなたのために必ず生還しますよ」
「ああ、必ず拳王連合軍を優勝させて僕の下に戻ってきてくれ」
瑞鶴の中に死地に飛び込ませられる恐怖などなかった。
生きて帰る自信があったためであり、夫への愛のためならなんだってやれる気がするからだ。
「そうと決まれば、改造を行うぞ。
いくら強く巫女の力も成長しているとはいえ、他の拳王連合軍の面子に比べれば遥かに弱い。
だから改造して彼らにも並ぶ強さを与えよう」
「……はい、わかりました。
は、恥ずかしいからさっさと終えてください!」
サーフは手術代の上で瑞鶴の浴衣をひん剥いた。
少女を裸にしたが猥褻が目的ではない。
これから強化改造を行うために衣服が邪魔だったのだ。
そして瑞鶴の体に様々な機械や兵器が埋めこまれ……彼女は強化された。
「名づけて……瑞鶴 最終決戦仕様!!」
瑞鶴は以前のような巫女装束ではなく、侍の如き甲冑や着物を纏っていた。
そして髪型は少女らしいツインテールを下ろして凛とした黒の流れるような長髪になり、額には白い鉢巻をつけていた。
言うなれば白と赤を基調にした翔鶴を逆にしたような色合いを見せていた瑞鶴がそこにいた。
もちろん見た目だけでなく戦闘力も今の拳王連合軍メンバーと謙遜ないくらい強化されている。
「提督さん、なんだか凄まじい力を感じます」
「僕が愛情もって強化したからね。大量に課金させてもらったよ(ボーキサイトなどの材料代のこと)。
これで強さの面は問題ない……後は手土産として引き続きメーガナーダの同行とバトルチップ各種、一回で集団の傷を全回復する宝玉輪をやろう。
これだけ貢げば入れてもらえるハズだ」
「ありがとう、提督さん」
再びモンスターボールにしまわれたメーガナーダとネットバトラー御用達のチップ各種、貴重な回復アイテムである宝玉輪を手渡すサーフ。
チップの中には熱斗がずっと探していたプリズムとフォレストボムのチップもあった。
これにて瑞鶴の出発準備は整った。
サーフはパソコンを起動し、シグナムなどを回収・転送に使ったワープホールを瑞鶴の目の前に発生させた。
どうやらカオスロワちゃんねるのサーバーは掲示板の管理、
テラカオスの制御プログラムの他にもこのようなワープを自在に起こす万能マシンらしい。
「瑞鶴、今から君を拳王連合軍のいる横浜港の近くへ転送する、幸運を祈るよ」
「提督さん! 必ず生きて生還し、ミヤザキの巫女として……あなたの妻としての役目を果たします!
私と後で再会するまで絶対に生きていてくださいね! 瑞鶴、出撃します!」
瑞鶴は意気揚々と、サーフに勇ましい笑顔を向けながらワープホールの中へ飛び込んだ。
■ □ ◆ ◇ ● 〇
転送された先で瑞鶴は無事に横浜港近くの海に降り立った。
先の戦闘で高速艇と煉獄が沈んだせいかやたらと焦げ臭いが、戦闘自体は当に終わっているので横浜港は静かであった。
「よーし、やるぞお! あそこには翔鶴姉も待ってるしね!」
どこかウキウキ気分の瑞鶴だが、彼女は大好きな提督の役に立てるとは別に、拳王連合軍に接触できて嬉しいことが一つあった。
同じ艦むすにしてもう一人のミヤザキの巫女、姉である翔鶴に会えるからだ。
瑞鶴はサーフからもう一人の五航戦空母にして姉妹艦である翔鶴の存在を聞いていた。
サーフは作り出そうとしたが技術的都合と運によって生み出すことができなかった。
そこで祐一郎が翔鶴を復元に成功したと聞いた時は、心底喜んだ……サーフが目の敵にしている男が作り上げたということには複雑な心境になったが。
(でも、向こうの提督である祐一郎はもういない。息子の熱斗だって死んだ。翔鶴姉は光の手から解放されたんだ!
今は目的のために騙す形になるけど、艦むす愛がある提督さんなら翔鶴姉のことも気に入ってくれるハズ。
殺し合いが終わった後にでも艦むすの楽園で一緒に暮らすとかできるはずよ)
まだ見ぬ姉と出会い、いずれ仲間として引き込めることを期待する瑞鶴。
捕らぬ狸の皮算用もあるが、それだけ翔鶴に会いたいと彼女は願っていたのだ。
そんな彼女は会場をスケートを滑るようにスイスイと移動し、港に迫る。
その途中で
第六回放送というBGMを聞き流していたが、突然、放送とは違う怖気があがるような声が聞こえた。
「な、なにアレは……?」
声が聞こえた方角を見ると、拳王連合軍と
DMC狂信者に向けて死刑宣告を行った超巨大邪竜ギムレーの姿があった。
■ □ ◆ ◇ ● 〇
瑞鶴が去った後のサーフの研究室。
瑞鶴が消え去り、閉じたワープホールを見送ったサーフの表情はいつの間にか瑞鶴に見せた柔和で優しい夫の顔ではなく、悪魔のような、または悪魔より恐ろしく冷酷な微笑みを浮かべていた。
「艦むすの楽園……?
おママゴトのごっこ遊びだよ。くだらない感傷と自慰の産物だ。ヘドが出る!」
実のところ、サーフに艦むすへの愛情など欠片ほど抱いておらず、目的達成のための道具にしか思っていない。
遺跡で艦むすのことを知り、祐一郎と競ったコンペで敗北して艦むすを世に復活させられず挫折したのは本当であるが、それは野望のきっかけでしかない。
蒼の源泉を掌握した後に艦むすの楽園を作るなど、瑞鶴の士気を向上させるためのでっち上げでしかない。
艦むすには作った提督を盲信するプログラムがあるので本当のことを言っても瑞鶴は従うだろうが、サーフは必ず盲信することを利用して嘘の理想を吹き込んで、カタログスペック以上の仕事をさせたのだ。
実際、騙された瑞鶴はとても働いてくれた。
では瑞鶴は捨て駒でしかないのか?
いくら強いとは言え、
テラカオスに必須な『救済の予言』に必要な巫女なのに?
拳王軍に野球をさせるためとはいえ狙われ続ける者たちの場所に送るのか?
その答えはサーフが瑞鶴も知らない隠し部屋の鍵を開けたことで、「君たち」に明かされる。
そこにはズラリと並んだ、作りかけのミヤザキの巫女――艦むすの素体。
そして冷凍保存されている劣化フォレスト・セルの種があった。
「彼女は自分が特別だと思いこんでいるが、そんなことはない。
瑞鶴が失敗すれば、また次の艦むす、その艦むすが死ねばまた次の艦むすになるだけだ。
メーガナーダも、また新しく作ればいいだけだしね」
サーフは瑞鶴が失敗することも考慮して、あえて危険な任務を与えたのである。
この男にとって瑞鶴は愛する妻でもなんでもなく、道具にしか思っていないのだ。
「……しかし、悔しい。
後から作った祐一郎の方が僕より優秀な艦むすを作り上げるなんて認められるか!
瑞鶴を失った時の予備の巫女にする予定がなきゃ、僕が直接横浜港に乗り込んで壊しに行きたいくらいだ!」
翔鶴の巫女としてのエントロピーは、最新の時点で先に生まれた瑞鶴に並んでいる。
誕生から一日しか立っていないのにこの成長スピードは脅威である。
このまま行けば瑞鶴をも上回るであろう。
さらにロックマンと組んだ場合のエントロピーは、現グンマーの巫女であるまどかよりも上回っているときた。
サーフと祐一郎、技術者としての才能の差は歴然である。
「クソッ』
憎き祐一郎への嫉妬に狂ったサーフは体の一部分だけを悪魔化させ、腕に収納された骨の刀で壁に八つ当たりしようとする。
だが寸前に腕を抑え、平静に保とうとする。
「……お、落ち着け僕。
ここで暴れたら狂信者や他の連中に僕の正体を悟られる。
今はまだまずいんだ……』
なんとか落ち着き、悪魔化を解除するサーフ。
ここで下手に暴れるとディーらに計画がバレる危険が有る。
そうなると全ての参加者が敵となり、計画を妨害するか横取りを狙ってくる危険がある。
サーフは先ほどサイヤ人の肉を食べて格段にパワーアップしたが、莫大な力を持っていても迂闊な行動を取った結果、予想外の強者や格下にやられる可能性があることをユウキ=テルミ、安倍総理、ベジータが教えてくれたことを思い出す。
ここは慎重に行動し、イタリアンマフィアのボスのように正体は徹底的に隠すべきだろう……究極体の
テラカオスを手に入れる、勝利の瞬間までは。
「だが、祐一郎。おまえの作った艦むすとロックマンはガラクタになるまで徹底的に利用させてもらうぞ。
自分の最高傑作がグチャグチャになるさまをあの世で見てろ」
心だけは既に悪魔の領域に差し掛かっている男は、もはやこの世にいない祐一郎を嘲笑った。
ひょっとすると瑞鶴を拳王連合軍に送り込み、野球による戦争を促したのは彼なりの私怨が入っていたのかもしれない。
誰ひとりいない、誰も見ていない部屋でサーフはしばし笑っていたが、その時に六時の鐘代わりである
第六回放送が流れた。
「ふう……そろそろ仕事に戻るか。
ドリスコルがレアな物を拾ってきたし、少し忙しくなりそうだ」
ストレッチとして体を伸ばし、部屋を出たサーフ。
今の彼は表向きは
DMC狂信者に手を貸す支給品扱い。
狂信者は殺し合いを激化させて
テラカオスを強化しやすい環境を作ってくれるのでサーフもまた、やがて自分が手に入れる
テラカオスのためにも様々な兵器を生み出すのであった。
「ん? あれは……?」
その時、サーフは目撃した。
千葉県に現れた超巨大な邪竜ギムレーと、彼による拳王軍と狂信者への死刑宣告を。
【
二日目・18時05分/神奈川県 横浜港近くの海】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】
【状態】健康、最終決戦仕様
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型、違法改造スマホ、結婚指輪
【道具】モンスターボール(メーガナーダ@アバタールチューナー2入り)、宝玉輪@女神転生シリーズ
石ころ帽子、妨害電波発生装置、チップ各種(プリズム・フォレストボムは確定)、裏世界転送マシン
【思考】
基本:提督さん(サーフ)に従い、彼の理想である艦むすの楽園を築く
0:横浜港に向かい、正体を隠しながら拳王連合軍と合流する
1:拳王連合軍にイチリュウチームか
聖帝軍へ試合をするように仕向ける
2:拳王連合軍が優勝したらサーフと合流する
3:提督の目的の邪魔をする奴は容赦なく殺す
4:まだ見ぬ翔鶴姉に多大な期待
※サーフが生みだした艦むすです
※サーフとケッコンカッコカリ済みです
※『器』であるメーガナーダはミヤザキの『巫女』である瑞鶴か翔鶴にしか操れません
※裏世界転送マシンは二チームを野球ができる裏世界へ飛ばし、他参加者の妨害や乱入を防いで野球ができます
裏世界が崩壊するタイムリミットは最大三時間。使用も二回まで。
負けたチームは崩壊する裏世界に取り残され、死亡します。(移籍などのケースはどのように扱われるか不明)
※邪竜化したギムレーの宣言を聞きました
【
二日目・18時05分/東京・ビッグサイト 地下】
【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2】
【状態】健康、瑞鶴の提督、支給品扱いで首輪なし、全マントラ網羅、マスタキャンセラ常備(万能以外無効)
【装備】違法改造スマホ、四次元ポケット@
ドラえもん(ディパック代わり)
【道具】カオスロワちゃんねるのサーバー、カピラリア七光線銃、結婚指輪
深海棲艦イロハ級×200、深海棲艦鬼・姫級×10
【思考】
基本:蒼の源泉の力を手に入れる
0:今は狂信者のフリをしてディーに従う
1:瑞鶴を操り、拳王連合軍に野球の試合を早急にさせる
2:真実を知った者は消す、そして殺し合いを加速させるものを助長させる
3:年増女(セルベリア)とシスコン仮面(ルルーシュ)は特に警戒
4:狙われると面倒なのでギリギリまで正体は隠す、必要のない戦闘は避ける
5:死んだ祐一郎の才能に嫉妬。ロックマンと翔鶴は必ず使い潰す
※カオスロワちゃんねるの管理人です
※古代ミヤザキの末裔であり、蒼や蒼の源泉・
テラカオスなどについて全て知っています
ナノマシンに仕込まれたプログラムにより完成した
テラカオスならば乗っ取ることも可能
予言の中にある『歌』も所持
※悪魔化ウィルスによりリアルヴァルナへと変身可能
サイヤ人の肉を食べたことで全スキルを網羅し、戦闘力が大幅増加しました
※予言の中にある勇者についても参加者の内誰かが該当するか知っていますが、ツバサ以外の勇者は他の書き手氏にお任せします
※邪竜化したギムレーの宣言を聞きました
※テラカオス・ディーヴァの残滓(ツバサ)がキングストーンの力を継承したことをまだ知りません
また、都庁にノーデンスが現れ、真実を教えたことにも気づいていません
※殺し合いが始まる前から死亡済みのキャラ
【ビッグ・ファイア@ジャイアントロボ-地球が静止する日】
【セラフィータ@アバタールチューナー】
最終更新:2018年07月09日 11:17