四回裏
聖帝軍の攻撃です。
バッターボックスには四番サウザーが入ります。
「さっきはしくじったが、今度はそうはいかねえぞ!」
マウンドの上に立つMEIKOは二回裏でサウザーに得点を許していた。
同じ失敗は犯さないと、殺意を漲らせる。
四回表で得点王になると思われたプニキとハクメンが脱落していることも焦りを感じているようだ。
だからこそサウザーから得点はもちろん、命すら奪うつもりで戦いに臨む。
そしてお決まりの無限の回転を生み出すフォームから、殺人MEIKOボールが飛び出す――かに思われた。
「案ずるな。今度はバントで稼ぐ
みたいなチンケな真似はせんよ。 雷 霆 ッ ! !」
「ッ! 躱せMEI――」
サウザーはMEIKOが投げる寸前に、スカイツリーの戦いでカギ爪のヨロイにも穴を空けた雷を彼女の頭上に放つ。
投げるより先に攻撃することでフォームを崩す、紘太がとったものと同じ戦法である。
違いは足止めに留まった紘太と違い、雷は投げた直前のMEIKOでは避けられないほど、速く威力が高かったこと。
「うおぉおおおおおおお!!?」
「MEIKO!!」
「この球なら……ヒットは狙えるな!」
雷に打たれたことで黄金の回転、MEIKOボールはただのストレートになった。
サウザーは打つ。
その弾丸は、ライトにいるディオの足元に落ちて爆発した。
時を止めるザ・ワールドの発動が間に合わない速度での落下だった。
『ザ・ワー……ダメだぁ間に合わない!』
「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!?」
ディオの体が宙を舞ったと同時に、神速のサウザーは走り出す。
一塁にはロックマンを持つ翔鶴の姿がPETとダークチップを手に身構えていた。
『来るよ! サウザーを仕留めるためにダークサウンドを使うんだ!
これを使えばサウザーと言えど……』
「ええ、わかりました!」
サウザーは聖帝軍のリーダー。
倒せば確実に相手チームの戦力はガタ落ちする。
しかし熱斗には確実に劣る翔鶴のネットバトラー技量からして、どうしても普通のチップではサウザーを捉えられない。
そこで超性能であるダークチップを予め用意し、あとはスロットインするだけ……
――熱斗の死のきっかけを作ったハゲ頭を殺したくて殺したくてしょうがないんだ!!
――正義や優しさは辛うじて失われていないが、憎悪という悪の心が宿ったか……!』
――そんな……私のせいで彩斗さんを……あああ!」
「……しまッ!!」
『翔鶴?!』
かつてダークチップの弊害を知らずにロックマンの心にダメージを与えてしまった時のトラウマ。
それがスロットに入れる直前で蘇ってしまい、チップはスロットに入りそびれて地面に落ちてしまった。
(何かをやろうとして仕損じたのか? 命取りだな)
走るサウザーの視点から見ても今の翔鶴・ロックマンは隙だらけであった。
拳王連合軍でも主力であろう二人を葬るまたとないチャンスであった。
サウザーの容赦のない手刀が翔鶴の喉元まで迫る。
「あ……」
「翔鶴姉ッ!」
「極星十字拳」
「させるかッ! デュ―オーバーヘブン・ザ・ワールド!!!」
翔鶴の首が撥ねられるであろう直前、ディオは時を一分以上停止させるスタンドの奥の手を発動。
ボールを拾った直後にサウザーの下へ駆ける。
停止した時の中で動けるのはディオとデューオのみ。
サウザーの神速もここでは意味がない。
「二回裏の時は間に合わなかったが、今度はそうはいかん!
このまま、一回タッチすればアウトだがな……」
『サウザーを確実に倒せるまたとないチャンスだ』
ディオは狙っていた。
サウザーが再びバッターとして現れた時に倒せるように、いつでも奥の手のデュ―オーバーヘブンを温存し、発動の時を待っていた。
ザ・ワールドの九秒間だけでは間に合わない……しかも、時が停止しているせいで自分の投げた球を味方の誰もキャッチできない弊害があり、捕球したら一々歩いていくしかなく、距離によっては九秒でも間に合わない。
だが一分もあるならドームの端から端まで到達することも可能である。
「チップを借りるぞ、翔鶴。俺たちにとっての幸運の剣だ」
ディオは翔鶴から拝借したソードのチップをPSVITAに(無理矢理)挿入すると、腕から一本の光剣が伸びる。
そして溜めに溜めた後にサウザーの胸を刺す。
「チッ、流石南斗最強の男……鉄板みたいな胸板だ。
だが無駄だ、多少の時間をかければ無防備なおまえなど」
サウザーの胸筋は異常に硬かったが、ディオには時間がある。
あらん限りの力を込めて、剣はズブズブと胸に沈んでいく。
そして。
「無駄ァッ!!」
『一分経過・時間停止解除!』
スタンド能力の制限時間が来る直前に光の剣はサウザーの胸を貫いた。
「がはッ!!」
「サウザー!!」
「くッ……」
サウザーは左胸と口から血を吐き出し、地面に膝を折った。
ディオも奥の手使用による代償で消耗しクロスフュージョン解除と同時に倒れた。
何が起こったのかわからない翔鶴と、ベンチにいる闇の悲痛な叫びが聞こえた。
「フッ、やってやったぜ……」
『ディおじさん、ボクらを助けてくれたの?』
「勘違いするな、熱斗……はもういないが、最高のネットナビである貴様を倒すのはこのディオだ。
こんなところで妹共々無様に死ぬことは許さん」
「……ああ、惜しかったな」
『な……』
「なにぃ!?」
そのまま血を出しながら死んでいくと思われたサウザーは、生きており、再び立ち上がった。
驚愕と絶望の表情でディオはサウザーを見る。
「心臓を貫いたのに、なぜだ!?」
「残念だが俺の心臓は右にある。生まれついての特異体質なのだよ」
常人ならば左胸にあるべき心臓が右にある。
故に殺しきれなかったのだ。
「さて、これが普通の殺し合いなら動けなくなった貴様にトドメを刺すところだが」
『「……!」』
聖帝を打ち損じたディオとデューオは最期の時を覚悟する。
「俺は貴様にタッチされたからアウトだ。命拾いしたな」
「このディオが恐怖を感じるとは……不覚」
サウザーは既にアウトであり、これ以上攻撃はできない。
同時に周りにいる拳王連合軍の者もルール上攻撃はできないことも意味していた。
ディオはがくりと気絶し、サウザーは悠々とベンチに戻っていった。
「サウザー大丈夫ですか!?」
「痛たたたたたたたた……まさか時間停止できる奴がハクメンの他に複数いたなんて。
正直、死ぬかと思ったわ」
「こっちの心臓が止まるかと思いました。
犬牟田、応急処置をするので包帯をもってきてください」
拳王連合軍の前では余裕ぶってはいたが、実際はかなりの痛手である。
死なずとも胸部や肺に穴が開いているので重傷には違いない。
ぶっちゃけ心臓が無事なだけで常人ならとっくの昔に死んでいる傷だ。
「サウザー、怪我は浅くないです。五回表からはベンチで」
「いや、ダメだ。俺が負傷退場すれば拳王連合軍の士気を上げてしまう。
お師さんにヤワな鍛え方はされとらん。退かずに戦場に残るべきだ」
「サウザー……」
怪我は大きいがサウザーは試合に参加をし続けることにした。
彼の熱い想いを受け、聖帝軍も彼を止めはせず、応急処置に留めた。
一方の拳王連合軍は。
『ダメだ、ディオの疲労とダメージは限界だ。退場するしかない』
「MEIちゃんは無事か?」
「少し痺れたがなんとか……アルティメットアーマーはおしゃかになったがな」
ディオはベンチに運ばれ、MEIKOは負傷はしたが鎧が引き換えになったおかげで一命はとりとめていた。
とはいえ控えの選手がいないのでライトは空白になった状態で試合を続行しないといけない。
焦げて大破したアルティメットアーマーを脱ぎ捨て、マウンドに立った。
次の打者はイオリ。ただし、ガンダムにレイジと相乗りしているため、操縦桿を握る担当が変わることで打者になったという形で挑む。
イオリはサウザーや犬牟田からは無理して打たなくて良いから、とにかく自分たちの身と貴重なガンダムを守れと言われて立つ。
イオリ自身は実際に指示通り、スリーストライクになるまで打たず、防御に徹し、生き延びた。
ガンダムが受けたダメージも最低限度。
だが問題はMEIKOが投げるボールの方であった。
「なんだろうなイオリ、MEIKOの投げる球がさっきよりも遅く感じたんだが」
「うん、なんだか変な感じだった。僕の腕じゃ打つのはまだ大変だけど、避けるだけならなんとかなるレベルだった」
(どうしたというのだMEIちゃん? 受けた衝撃の量が明らかに減っているぞ)
MEIKOボールの威力減衰はバッテリーを組んでいるラオウさえ気づいていた。
そして次の打席にデストワイルダーが入る。
今度は先のようにデッドボールを狙うのではなく、正攻法で打つ戦いで挑むつもりであった。
そして投げられたMEIKOボール、だが、デストワイルダーはこれを打った。
打球は大きく右側に寄りすぎてファールボールになってしまったが、かなり大きい当たりであり、ホームランもあり得させる飛距離であった。
「……ッ!!」
『おい、どうした? さっきよりも明らかに弱いぞ?』
「チッ、吠えてろ猫。戦いはこれからだ!」
あまりにも力を失っているMEIKO。次の球もファールであった。
いったいどうしたものかと拳王連合軍も聖帝軍ベンチも騒然となる。
答えを最初に出したのはシャドーマンであった。
『なるほど、見えてきたぞ』
「何が?」
『いくつか複合的な理由があるが……
具体的には疲労と、アルティメットアーマーの喪失、感電ダメージだろう』
お館である上条にシャドーマンは持論を説く。
『我々拳王連合軍は先に相手チームの方が倒れてしまうので、短期の試合しかしたことがない。
MEIKOはここまで激しく長期の戦いはしたことがなく、慣れないタイプの試合で疲れが出ている』
「でも俺たちのはダイジョーブ博士のマシンでメジャーリーガー級の能力を……」
『体力とスタミナ管理は別だ。そんなものはペース配分を間違えれば簡単に崩れる』
『次にアルティメットアーマー……MEIKOは殺し合いが始まってから一度も脱いでない。
そんな馴染みきった「重さ」が急になくなった時、どうなると思う?』
「思ったように体を動かせないってことか」
『だが、先の二つまでならMEIKOの超人的センスならどうにかなっただろう』
「一番の問題は……サウザーにやられたダメージということか!」
『おそらくMEIKOは――感電が抜けきってない状態で投げている!』
「!」
『感電は肉体の神経系に打撃を与える。思ったように動けない程度にはな』
シャドーマンが上条にMEIKOの身に起こっている何かを説明したのち、聖帝軍ベンチでも遅れてMEIKOの異常の原因がわかったようだ。
「なるほど、MEIKOは疲労と鎧の消失、感電によって力がでないみたいだ」
「疲労はともかく鎧を剥がしてびりびり感電させた後、弱めるなんて単純だけど思いつかなかったぜ」
「しかも自分が点を取れなくとも後へと繋げる先見性の良さ。
流石はサウザー、天才最強であるアタイも見直したわ!」
「えッ…あ、うん。
恐れ入ったか、この聖帝軍の知略に~!(棒読み)」
(絶対深く考えずに放った攻撃が、たまたま相手の核心を突いただけだコレ……)
サウザーの活躍を褒め称える聖帝軍の面子と、褒められて久しぶりにイチゴ味モードで鼻が高くなるサウザー。
一番人となりを理解してるがために、ジト目で聖帝を見ている闇。
反対に焦るのは拳王連合軍の面子。
特に上条とシャドーマンであった。
「まずいぞ、早いとこMEIKOをピッチャーから交代させないと」
『感電も手伝ってMEIKO自身が自分の疲弊に気づいてない可能性もある。タイムの申請を――』
「MEIKOボール!!」
「待て、MEIちゃん!!」
「『しまったッ!?』」
イマジンスレイヤー、そしてラオウの制止が入るよりも早く、MEIKOボールは投げられてしまった。
それでも常人が無暗に打てば死ぬであろう文字通りの殺人球だったわけだが、デストワイルダーならば問題なく打てる球ではあった。
『俺の腕力を教えてやるよ』
洗練されてないMEIKOボールをデストワイルダーはフルスイングで打った。
『100t!! 高津の時のお返しだ!!』
打球はMEIKOの方向へまっすぐと飛んでいき、100t越えのそれは取ろうとした彼女の右腕を粉砕した。
MEIKOの右腕だった血と肉がマウンドの上に散らばる。
「ぐわああああああああああああああああああ!!!」
「MEIKO!」
MEIKOが倒れ、野球ボールは彼女の血肉に混ざって転がった。
ヒットを確認したのち、デストワイルダーは走り出す。
「よくも仲間をやってくれたわね!」
瑞鶴は弓矢から召喚した艦載機を飛ばして一塁へ向かうデストワイルダーを止めようとする。
しかし、デストワイルダーには秘策があった。
デストワイルダーはなんと地面に潜り込んだではないか。
「地面に潜り込んだ?」
『いったい何が……?』
翔鶴は警戒してチップをいつでも使える準備をしていたが、突如消えた相手に困惑。
だがデストワイルダーはすぐに姿を現すことになる。
彼女のすぐ真後ろ、腕だけが出して一塁ベースにタッチする。
「はっ!」
『これで一塁はOK』
すぐさま翔鶴はバトルチップ、ソードを向けようとするが、彼女が攻勢に入るより早くデストワイルダーは再び姿を消す。
「これはいったい……」
『よく見て! そこらに何かキラキラしたものが落ちてる』
「これは――鏡の破片!?」
翔鶴が鏡の破片を発見した直後、今度はデストワイルダーの腕は二塁に現れ、塁にタッチだけして鏡の破片に消えていく。
これはミラーモンスターが使える固有能力。
鏡の世界であるミラーワールドへの通行である。
デストワイルダーは攻守交替前にこっそりと鏡の破片をバラまいており、いざ自分が走る際に能力を活かせるように用意していたのだ。
『「アイエエエ……姿が出てこないと攻撃ができない!」』
イマジンスレイヤーが嘆くような声を出すのも無理はない。
鏡の世界にさえ潜ってしまえば、誰も攻撃はできない――ラオウやハクメンでさえそれは同じである。
そして誰にも攻撃されることなく、塁だけ触れて進軍しようというのだ。
「猫が……汚え真似をしやがって!」
右腕は粉砕されたものの、辛うじて生きていたMEIKOは意識を手放す前に左手でボールを拾って送球し、三塁にクロえもんに届けようとする。
「よし、これで……三塁への進軍は止めることが……」
イマジンスレイヤーはデストワイルダーの進行を止められたことに安堵する。
いくらな鏡の世界を移動してもルールはルールなので、セーフになる前にボールを送られた塁に進むことは許されない。
その一瞬の油断が、イマジンスレイヤーにとっての命取りとなった。
『お館様…後ろだ!!』
「なに!?」
三塁に行ったとばかり思われていたデストワイルダーは(ミラーワールド側の)二塁周辺に留まっており、背後から塁を守るイマジンスレイヤーにフェイント奇襲をかけたのだ。
これには聖帝軍側も驚く。
「待て、デストワイルダー!」
「そんな作戦じゃなかったハズ」
サウザーと闇の戸惑う声が聞こえるが、デストワイルダーはあえて無視した。
(この時をずっと待っていた……聖帝軍の皆には本当に申し訳ないが俺にとっては野球より仇討ちだ。
俺のご主人様である新城直衛を殺した恨み、ここで晴らさせてもらうぞ!)
デストワイルダーの目的は最初から聖帝軍に点を与えることではない。
真の目的は主を殺めたイマジンスレイヤー・上条とシャドーマンを葬ることであり、復讐の機会を文字通り虎視眈々と狙っていたのだ。
『「クソッ、ムラマサブレード!!」』
反応が遅れたイマジンスレイヤーもまた、咄嗟にチップをスロットインし、召喚した刀で反撃。
虎の二つの爪と忍者の刀が交差する。
黒猫がボールを受け取った瞬間と同時に、一つの因縁に決着がついた。
100tを越えた虎の爪の直撃は、イマジンスレイヤーに大打撃を与えた。
上条の胸に大きな爪痕が残り、血しぶきが飛び出す。
――しかし、皮一枚の差であるが殺すには至らなかった。
クロスフュージョンで生み出された甲冑が彼を致命傷から守ったのである。
だが。
「シャ、シャドーマン……」
『ガガ……申し訳ないお館様。拙者はここまでのようです……ガガガ――』
高いダメージはイマジンスレイヤーのクロスフュージョンを解除し、デストワイルダーはすかさず二撃目を叩き込んだ。
その結果、ネットバトラーである上条は直感的に躱したものの、避けそこなったPETには直撃し大破させた。
そうなればシャドーマンが命を失うのは自明の理であった。
『お館様、あなたとの旅と時間、誠に有意義なものでした……どうか生き延びて――サヨナラ!!』
ティウンティウン……――
シャドーマンの入ったPETは彼に遺言を残すだけの猶予を与えた後に、爆発四散した。
「そんな……シャドーマン……」
上条は親友を守れなかった後悔を覚えながら、地面に倒れて意識を失った。
『殺せたのは片割れだけか……』
シャドーマンを葬り上条を倒したデストワイルダーも無事ではなかった。
その胸には深々とムラマサブレードが刺さっており致命傷だ。
刺し違えたのである。
『すまない、主様、姐さん、ふなっしー、聖帝軍の皆……』
デストワイルダーは聖帝軍のベンチを一瞥し、謝罪の意味を含めた視線を向けた後に爆散してこの世から消えた。
拳王軍・聖帝軍、双方からの悲嘆の声が聞こえる。
その中でも特にロックマンは倒れた仲間やシャドーマンの死に大きな精神的打撃を受けていた。
『そんなシャドーマンが……せっかく大災害を生き延びたネットナビ仲間だったのに……!
ディおじさんやMEIKOおばさん、ジョジョまで傷つき倒れるなんて』
「…………」
兄の嘆きを間近で聞く翔鶴は、何も言えなかった。
「これ以上の損失は痛いわね……宝玉輪を使いましょう」
拳王軍一同がベンチに入った時、瑞鶴はダメージを追いすぎた拳王軍を集団全回復させることができる宝玉輪をディパックから取り出す。
ルール的に既に退場済みのハクメン・ディオは無理だが、今なら上条とMEIKOを戦線復帰させることも可能であると考えたからだ。
「待て、それはまだ使うな」
「どうして? 今もったいぶってる場合じゃないでしょ?」
だがラオウは使用をやめさせる。
不服な瑞鶴にラオウはその理由を解いた。
「聖帝軍側を見てみろ、応急手当以外は誰も回復していない。
傷を治す術や道具がないのだろう」
「それが?」
「ここで我らが傷を治したら対等の戦いができなくなる。
それでは面白くない。
人数もちょうど六対六、今ぐらいがちょうどいいではないか?」
一瞬、ラオウが何を言いたいか瑞鶴にはわからなかった。
「拳王さん、これはスポーツじゃないわ!殺し合いよ!」
「殺し合い以前に野球だ。
それに聖帝軍を倒した後には、ヘルヘイムに
イチローチームに
ドラゴンズも控えている。
聖帝軍は今まで戦った中で間違いなく最強の野球チームだが、同時に回復なしで挑まなければならぬ壁だ。
この壁を乗り越えられぬようでは、他の連中に勝つのも夢のまた夢」
「なんて……底抜けな野球脳なの」
「褒め言葉か?」
思わず本音が漏れしまうほどのラオウの野球脳ぶりに呆れる瑞鶴。
だが攻めのプニキ・守りのMEIKOを失ったりと拳王軍が不利なことには限らないので、何人かラオウに反対してくれれば回復を実行できたが。
「俺はラオウに賛成だ。
奴らも高津さんが死に、サウザーも負傷している。向こうもだいぶ疲れてるようだし十分やれるだろ」
『宝玉輪みたいな貴重な回復アイテムはせめて向こうが使ってくるまで温存した方が良いと思うね』
『瑞鶴の言いたいこともわかるんだが、敵も何か隠し種を残してないとも限らんしな』
「僕もラオウくんに賛成です。
イチローさんに勝つためには試練を自分たちに与えて
強くなる必要があると思いますから」
『インドラ(賛成)』
「ちょっと! なんでメーガナーダまでそっちにいるの!?」
残念ながら野球脳にすっかり侵されている武人気質な拳王軍のほとんどがラオウを支持。
命欲しさよりもプライドを選んだのだ。
これでは瑞鶴も諦めざるを得ない。
「わかったわ。でも相手が何かで回復したら使わせてもらいますからね!」
「よかろう」
「ビッグサイトで提督さんも待っているんだから、余計なプライドのせいで死ぬわけにはいかないんですからね!」
渋々退いた瑞鶴だったが、そんな彼女に翔鶴は一声かける。
「大丈夫よ瑞鶴」
「翔鶴、姉…?」
「勝つための手立てはこの手の中にあるから」
瑞鶴に表情を見せぬまま、翔鶴はバッターボックスに向かう。
次は5回表。拳王軍の攻撃だ。
二塁を担っていたデストワイルダーがいなくなってしまったため、聖帝軍は仕方なくここは空白とした。
中央の穴はセンターのガンダムに補ってもらうしかあるまい。
(む?さっきまでと雰囲気が違うぞ。この女)
(野球が得意な気はしなかかったですけど、この目つきは……こちらは二塁までいなくなってますし、警戒するに越したことはないですね)
纏うオーラが変わった翔鶴に、バッテリーを組んでいたサウザーと闇は特に警戒する。
そして闇はボールを投げる中、クロスフュージョンしているロックマンと翔鶴は、融合しているが故に周囲には聞くことのできない心の中の会話を交わす。
(……彩斗兄さん)
(翔鶴?)
(私がもしダークチップを使うことを躊躇わなければ、サウザーを轟沈させることができて、ディオさんやジョジョさんも傷つかず、シャドーマンさんも死ななかった。
でも、ダークチップを使いたくなかったのは兄さんが悪の心に染まってしまうのが怖かったから、どうしても手が震えていました)
一球目、乾いた音と共にワンストライク。
(……でも気づいてしまったんです。
仲間が傷つき倒れ、死んでいくことに悲しむ兄の表情は見たくないと。
悪の心を持たれるより悲しまれた方がずっとずっとココロが痛かったのです)
(翔鶴……)
二球目、緊張の中ツーストライク。
翔鶴に大きな動きはない。表向きは。
(だから仲間を守り、あなたを悲しませないためにダークチップを使わせてもらいます。
クロスフュージョンをしているなら、私も心に影響を受けるはず)
(一緒に悪に堕ちましょう、ロックマン)
(……ああ、二人でね)
三球目直前、翔鶴の目に漆黒の殺意が宿ったことを、敵味方共に確認した。
闇が投げる直前にダークチップをスロットインした所を目撃したベンチのデューオは声を荒げて止めに入ろうとするが、クロえもんに止められる。
『駄目だ、ダークチップを使うなんて』
「止めるんじゃねえデューオ!!」
『しかし……』
「あれは奴らの覚悟の上の行動だ。その覚悟を俺たちが踏みにじっちゃいけねえ!」
『「ダークサンダー!」』
翔鶴は電気玉を射出した。
闇は電気玉を避けてから投げようとするが。
「この電気玉、追尾してきて……きゃあああああああああ!!」
「闇ぃーッ!」
ダークサンダーにはホーミング性と、一定時間の感電麻痺効果を持っている。
そんな力の入りようがない体勢で打てば球速が出るわけもなく、翔鶴は遅くなった球を打とうとするが、その前にチルノは翔鶴の目の間に氷の壁を張って打つことを妨害しようとする。
「よくも闇を……打たせないよ!」
「無駄ですね、ダークソード!!」
「なん……だと!?」
翔鶴はバットから持ち替える形でダークソードを召喚し、その広い範囲と高い威力で氷の壁ごと、野球ボールを打った。
砕けた氷がチルノに襲い掛かる。
氷の要請なので氷属性の攻撃、しかも自分が生み出したものは効かないが、無数の氷の礫に紛れたボールをキャッチし損ねてしまう。
「しまった! ボールが!!」
「あれは俺たちが取りにいく!」
センターのガンダムがバーニアを吹かし、レフト側に落ちた打球を取りに向かった。
翔鶴はその隙に一塁へ走り出すが、今度は鎧武が迎撃態勢に入っている。
平等院をも殺害した仮面ライダー――簡単には通してはくれないだろう。
『「ダークステージ!!」』
「なんだ……足元が毒沼に!」
敵地をダメージトラップに返るチップの力により鎧武のいる一塁と周辺が一瞬で毒沼になった。
毒沼は酸をかけたように鎧武の具足を溶かしていく。
「あっ、足が……」
「止むを得ん、一塁を放棄しろ紘太!」
「すまない」
鎧武をジャンプをして一塁から離脱する。
その間、翔鶴は対大尉戦でも見せた飛行能力を駆使して毒沼の影響を受けずに通過。
毒沼にプカプカ浮いている一塁ベースに軽くタッチし二塁を目指す。
「うおおおおおお、させねえ!!」
二塁へ向かう途中、打球を拾ったガンダムがこちらを阻止するために向かってくるのが見えた。
球を握る手ににはプニキやハクメンと打倒したビルドナックルが輝いている。
翔鶴はまずダークサンダーを放つが、アブソーブシールドに吸収されて効かない。
『どうやらあの盾、エネルギー弾は吸収するシールドみたいだ』
「だったらこれはどうですか!ダークトルネード・スロットイン!」
突如翔鶴の周りに竜巻が発生し、ガンダムを避ける間も与えないまま呑み込んだ。
「わあああああああ」
「か、風は物理攻撃!アブソーブシールドじゃ吸収できない!」
コクピットの中でもみくちゃになるレイジとイオリ、情け容赦のない竜巻はガンダムの装甲をガリガリと削り、二塁の前でその巨体をズシンと倒した。
「プニキさんの仇です。ここでトドメを……くっ……!」
倒れたガンダムを討てるまたとない機会と思い、翔鶴は容赦なくトドメを刺そうとする。
しかし、次のチップを選ぼうとした瞬間、翔鶴の腕にずきりと痛みが走った。
「これがバグ…!」
ダークチップ使用を決断する前に兄であるロックマンから教えられたのだが、ダークチップは心を悪に染めるデメリットの他にダメージや挙動をおかしくするバグも存在する。
ダークソードなら勝手に前進。ダークバルカンなら混乱。
ダークサンダー、ダークトルネードならチップ選択時にダメージ。
ダークステージなら選べるチップが一枚減少する。
などという風に、ロックマン及び翔鶴自体もダメージを受けるのだ。
ちなみに一回使う度にHP上限が1ずつ減るというものもあったりするが、二人ともダイジョーブ博士の魔改造&裕一郎さんのぶっ飛んだ技術でHPがめちゃくちゃ高くなってるのでそんなに苦にはなってない。
「くっ、うおおおおおお!!」
「しまった!」
動揺で翔鶴の動きが止まったのを見て、レイジはコンソールを動かし、ビルドナックルを叩きつけた。
「ダメージなし!!? なんて硬さだよ!」
「防御されていたとはいえ、あんな細い体のどこにあんな力が!」
翔鶴は直撃を肩当てで防ぎダメージはなかったが、触れられてしまったのでアウトではあった。
「ふっ、私もまだまだですね」
『大丈夫、初使用でこれだけ使えたんだから、今度はもっと効率よく相手をいたぶれる』
「そうですね、敵を殲滅して皆殺しにできるぐらい、チップの使い方に慣れなくては」
さっそく、ダークチップによる心の汚染はロックマン、そして繋がっていら翔鶴に現れていた。
ことの深刻さに頭を悩ますデューオ、その横では瑞鶴がぼそりと呟いた。
「そう……それでいいのよ翔鶴姉……あなた自身が生き延びるためにも」
「大丈夫か、みんな!?」
「麻痺はもう抜けました…やれます」
「俺も大した怪我じゃない」
「俺もガンダムも動けるがイオリが……」
「死んだの!?」
「いや、僕はまだ生きてはいるよ……ただ、足の骨を折ったみたいで動けない」
「イオリは残念だが退場するしかあるまいな」
イオリは先の攻撃でコクピットの中で右足を折ったため、退場となった。
犬牟田に抱えられてベンチに戻る前にイオリは闇に野球ボールを渡した。
「闇さん、これを使って」
「これは……?」
「次のバッターは高津さんさえ容易く打たれたムネリンだ。そのボールはあの人への対抗策になる」
拳王軍側の次のバッターは川崎宗則。
この男は守備のみならず高津からも度々、打球を勝ち取った男でもある。
高津亡き後、技術では劣る闇がピッチャーでは勝てるハズがない。
……そう考えていた時が拳王軍にはありました。
結果だけ先に言ってしまうと、この回のムネリンは見逃し三振でバッターアウトになってしまった。
「おい! なんで打たなかった宗則!?」
「うてませぇーーーーん! だって相手の野球ボールには……」
某バナージみたいな絶叫を上げたムネリンが指をさしたのは闇が投げていたボール。
それはイチローの凛々しい笑顔をプリントされた野球ボールであった。
イチローラブのホモがこれを打ってしまうとイチローの顔に傷がつくと思って打てなかったのだ。
「聖帝軍の野郎ども汚え真似しやがって!
てかおまえ、殺してでもイチローを取り戻すんじゃなかったのか?」
「顔は別です!」
このあと、憤慨するクロえもんからげんこつをムネリンはもらうことになった。
「あれを見ているとやはり愛などいらんと思うわ」
「それに関しちゃ俺も同感だぜ、聖帝軍の大将さん」
あまりのホモホモしさに敵ながら呆れかえる聖帝と、バッターボックスに入ったクロえもん。
闇は五回表、三番目の打者であるクロえもんを相手に投球を投げた。
「さっきまでは高津さんに翻弄されたが、今後はそうはいかないぜ!」
クロえもんの打法は得意としているブラックホール打ち。
ただ、今度の打ち方は以前よりも早く真空が発生し、さらにチルノによるボールの周りに張られた氷の幕も剥がしていった。
「アタイの氷が!」
「同じ手法がいつまでも通用すると思うなよ!」
そしてクロえもんは打った。
彼の周辺が激しい暴風に襲われる。
元々が野球選手だけに制球力は抜群。
予測では横浜スタジアムの電光掲示板に直撃するコース
――そのはずであった。
「残念だったな」
「え? 畜生ーーーッ!!!」
打った直後にキャッチャーであるはずのサウザーが彼の目の前に回り込み、飛ぶはずだった彼の打球をキャッチしたのだ。
「ブラックホールによる吸い寄せによるホームランを狙うのは予測ができた。
後はバットの動きを見て俺が先に取れば良いだけのことよ」
「暴風はどうした!?」
「俺が風より早く動けば問題はない。先入観と打球自体の攻撃力が低かったのが貴様の敗因だな」
クロえもんの失敗は、サウザーが言った通りラオウやムネリンがやったような打球の攻撃力不足(決して低いという意味ではない)に、キャッチャーがバッターの後ろから動かないという先入観。
何よりもサウザーの異常な速さについてこれなかったことだろう。
これにてスリーアウトにより拳王軍五回表の攻撃は終わる。
次は聖帝軍の攻撃である五回裏だ。
聖帝軍側のベンチにて。
「はあはあ……」
「くッ……」
「みんな疲れが溜まっているようですね」
「頑張れみんな、あと一息だ。
次は五回裏。仮に一点でも勝ち取り六回表も防衛しきれば我らの勝利は確定になる!」
聖帝軍の疲労、消耗はピークに近づきつつあった。
もはや稼働できる選手は5人しかおらず、他は負傷退場か死亡している。
サウザーも元気にふるまっているが、胸の穴は簡素な応急処置で出血を防いでいるだけだ。
ならば拳王連合軍は余裕かと思えばそうではない。
拳王連合軍も動ける選手は一気に6人まで減り、ピッチャーであったMEIKOも負傷退場。
その他の選手はほぼ全員気絶している。
総合的な消耗具合は聖帝軍と大差がなくなってきている。
何より拳王軍が聖帝軍に対して危惧していることは。
「まずいですね、彼らは試合の中で急速に成長してきてます」
「さっきのサウザーの芸当……最初からやれば多くの打球も取られてただろうに、今まで使ってこなかった。」
「インドラ?」
「つまりねメーガナーダ、サウザーは今まで打った直後に取るなんて技はいままで使えなくて、成長によって今使えるようになったのよ」
聖帝軍の試合中の成長は凄まじく、消耗してなお強敵に感じるのだ。
「気を抜くな皆のもの、あと一息だ。
六回表までに聖帝軍が覆せぬほどの点をもぎ取れば我らの勝利は見えてくる」
「「おう!」」「インドラ!」
ラオウの言葉に残った4人と1匹は戦意を高める。
そしてチラリとベンチで眠るMEIKOを見た。
右腕を失った傷の痛みで苦しそうだが、眠っている。
「待っておれMEIちゃん、うぬが休んでいる間に必ず拳王軍を勝利させてみせる!」
それから聖帝軍側のベンチを見て、彼らと仲間たちに宣言した。
「さあ、天よ刮目せよ、本当の戦いはこれからだ!」
【シャドーマン@ロックマンエグゼ 死亡確認】
※デストワイルダーは支給品のため
死亡者リストに載りません
拳 2-2 聖
『拳王連合軍 布陣』
川崎宗則 1番ショート
クロえもん 2番サード
ラオウ 3番キャッチャー
瑞鶴 4番レフト
(考え中) 5番ピッチャー
メーガナーダ 6番センター
翔鶴(+ロックマン) 7番ファースト
8番セカンド
9番ライト
『聖帝軍 布陣』
1番ショート
葛葉紘太 2番ファースト
金色の闇 3番ピッチャー
サウザー 4番キャッチャー
5番ライト
6番セカンド
7番レフト
レイジ(+ガンダム) 8番センター
チルノ 9番サード
【
二日目・23時30分/神奈川県・異世界横浜スタジアム】
※あと30分で異世界は消滅。
それまでに点数が低いチームが消滅する異世界に閉じ込められるため、負けたチームは全員死亡します(移籍した場合は不明)
【聖帝軍】
【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
※負傷により退場
【拳王連合軍】
【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース
ドラえもん超野球外伝】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】
【ハクメン@BLAZBLUE】
※負傷により退場
また鎧に罅が入り、瑞鶴が持つ違法改造スマホで起動するリモコン式の爆弾を罅から入れこまれました
【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
※負傷・気絶等により退場
最終更新:2020年04月23日 00:47