timers   -TIME IS ……-

たすけてください。(10:00)

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──目覚めた時には、既にこの部屋だった。


 私は都内の会社に勤めるOLである。慣れないながらも受付に座って、訪れる人に笑顔を振りまいている。

 そんな私が今いる場所は、……どこなのかわからない。

 昨夜の出来事は、ある場面までは鮮明に覚えている。それは、ホテルのバーにいた時までだ。





 あの時は、夜10時にもかかわらず、客がまばらだった。
「ねぇ、マスター。なにか面白い話してよ」
 顔見知りのマスターに話しかけた時、私は酔っていた。先程までグラスに入っていたヘルメスも無くなっており、マスターからは「飲みすぎでは?」という言葉がかかる。
「話し相手がいないと、ずっと飲み続けているわよ、私」
 子供みたいなセリフを口にすると、明らかにマスターは困ったように苦笑いをした。
「そうじゃなきゃ、なにかおまかせで作って頂戴」
 やれやれ、といった感じでマスターがグラスを受け取ろうとした時、「お客様、でしたら」という声が聞こえた。マスターと私が見た方向には、笑顔の似合う女性バーテンがいた。
「シグレくん。来ていたのか」
 マスターが言う。シグレ、と呼ばれた彼女は暖かくも自信に満ちた笑顔で歩み寄る。
「はい。確か明日はマスターの大切な日でしたから」
「覚えてくれていたのか」
「早く店を閉めることはできないでしょうから、私が仕事を引き継ごうと」
「いや、これは済まない」
 マスターが頭を掻く。
「それより、お客様をお待たせしてはいけません」
「やっ、これは失礼」
 マスターは慌てて私を見たが、私は別に気分を害していたりはしなかった。むしろ、この突如現れた女性バーテンに興味を覚えていた。

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