ジェイムズ・P・ホーガン/池 央耿訳 『巨人たちの星』(創元SF文庫)1981

読書会れじゅめ 11/25 


1あらすじ

 2080年代。「巨人たちの星」目指してガニメアンたちが飛び立った旨を、巨人たちの星に向けて送信していたら返事があった。地球人語で。地球は監視されていた。ガニメアンの子孫に当るテューリアン人たち・・・に?。地球人との面会を求めてきた彼らと、大国間の思惑が絡まった国連の慎重過ぎる対応に業を煮やした合衆国が抜け駆けをし、ハント、グレッグらを引き込んで見事コンタクトに成功する。テューリアン人以外の知的生命体ジェヴレン人の存在とその企みが明らかにされていく中、ついに始まる架空戦争。大団円で事態は終結し、地球はテューリアン人たちとはじめての、シャピアロン号のガニメアンたちと二度目の対面を果たす。めでたしめでたし。


2 こーさつ

 この作品は『星を継ぐもの』、『ガニメデの優しい巨人』の続編で、三部作の解決編にあたる。
エンターメント性に優れていて、スペース・オペラっぽい感動がある。前二作にはほとんどなかった政治的な駆け引きが前面に押し出されていて、結局いい人だらけになる展開が笑って許せるなら政治サスペンスとしても楽しめる。
にしても、さすがのホーガンもソ連崩壊は予想できなかったか。軍縮して世界政府樹立もささやかれる世界でも無理だったか。現実は小説より希なり。

ジェヴレン人の陰謀?まあアメリカと張り合える勢力は必要だった。彼らがいないと、しょっぱなからの権謀術数渦巻きまくりの展開が不可能になってしまう。(ハントも科学者っぽいことできないし。)アメリカの独走態勢がうまくいってよかったよかった。・・・国連にどう報告したんだろう。

  SF的要素として今回持ち込まれたのは、なんといっても前作のゾラックをはるかに凌ぐスー パーコンピュータ・ヴィザーという人工知能と、それによるヴァーチャル・リアリティが挙げられる。惑星間を覆う巨大ネットワークの中で、人は居乍らにして仮想空間はもとより、何光年も離れた場所にいる人間をあたかも生身で接しているかのように知覚することができる。毎日月8個分のエネルギーを消費してそれを可能にするというヴィザーの登場に、「その内乗っ取られんじゃね?」「暴走したらどうなんの」「つーかもう最初から仮想現実」とかいう危機感やどんでん返しの予感を微塵も抱かせないあたりが、科学万能主義者ホーガンならではの持ち味といったところか。技術や道具はあくまでも使う側のためにある。それを楽観主義とご都合主義の産物として切って捨てるか、未来の希望的観測の一形態として楽しんでしまうかは読者の自由だが、後者で取っといたほうが幸せでない?悲観的作品なんて探すまでもなくありますし。余計ですか、済みません。


 地球人とテューリアン人が互いの得意分野で協力しあってジェヴレン陣を負かす、というストーリーは実に痛快でおもしろい。まず敵が非の打ち所がなく(?)悪くて、本当に都合のいいように動いてくれる。最後のほうはもう涙なしでは読めない済し崩しっぷりだ。ヴィザーとゾラックが大活躍するが、彼らはあくまでも人間に従い、強力にバックアップするに留まる。このあたりが、科学万(略)
 最後にミネルヴァにタイムスリップ(!)し、タイムループにとらわれたブローヒリオたちだが。気になるので早く翻訳でないかな。


3 キャスト

 ハント博士・・・・・・・・・原子物理学者。・・・便利屋になってる?リンとくっついた。
 ダンチェッカー博士・・生物学者。この人は前編通していいとこにいますね。
 コールドウェル・・・・・・国連宇宙軍本部長。戦闘指揮官。
 リン・・・・・・・・・・・・・・・コールドウェルの秘書。スパイっぽいことで大活躍。
 カレン・・・・・・・・・・・・・国連合衆国代表。やった!文型人間が活躍した!(あ、コールドウェルも
               か)
 ソブロスキン・・・・・・・・国連ソヴィエト代表。泣かせてくれたね。
 スヴェレンセン・・・・・・国連スウェーデン代表。ジェヴレン人。
 カラザー・・・・・・・・・・・テューリアン政府代表。
 ショウム・・・・・・・・・・・テューリアン女性大使。なかなかきつい性格。
 ブローヒリオ・・・・・・・・ジェヴレン連邦首相。悪の親玉?
 ガルース、シローヒンも出てくる。


4 ちょっと。

 カドリフレクサーについてですが。これちょっとひどくないですか。自分たちの生み出してしまった「悪魔の落とし子」の驚くべき成長を目の当たりにしたことであっさり身を引いた旧ガニメアンたちの謙虚さはどこへいった。太陽系セットで閉じ込めたとしても星には寿命がありますからね。100億年もすれば太陽すら死星になります。テューリアン人って意外と自己中?
科学的に可能かどうかなんて考えるのは無理です。すみません。


 テューリアン人って不老不死ということですけど。そのせいで諦めがよくなってしまって技術の発展が停滞したという記述がありましたが。こんな軽い扱いでいいんですか。むしろ上の説明のための設定ですか。ぜいたくだなぁ。

2018.12.02 Yahoo!ジオシティーズより移行
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なお、内容は執筆当時を反映し古い情報に基づいていることがあります by ちゃあしう
最終更新:2019年03月26日 00:03