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夏の十字架 ◆gry038wOvE





 HELP! あ、兄さん ばあさん
 HELP! ありゃーゆうべの夜
 HELP! 夢が破れた
 HELP!!!

 あの子供の頃は 心配なことも──それほど恐ろしいことじゃなかった
 でも大人になって気づいたことは──危ない世界に暮らしてることさ

 HELP US ベイビー どんなときでも
 HELP US 君を愛しているから
 HELP US 傷つけたりしないで
 Won’t you Please HELP US?






 渋谷駅では、夜にもまだ少し活気が残っていた。
 それは、どちらかといえば、悪い活気だった。いかにも……な若者がうろついている。中には、いい年こいて何をやってんだか、って思ってしまうような派手なオッサンもいる。それが、普段の深夜の渋谷駅だった。
 七原秋也もそちら側の人間と言っていいかもしれない。こんな時間にこんな街でロックを奏でる中学生というのは、不良というレッテルを貼られて然るべき人間だ。

 ああ、しかし、七原には、それが心地よい。──自由を謳歌していられる。

 この自由な東京で、たった一人で路上ライブをする。七原にとっては、ギターケースを開いて街中でロックを歌うなんていうのは、夢のまた夢だった。しかも、渋谷にはそんなストリートミュージシャンで溢れてる。七原が夢の夢のそのまた夢くらいに見ていた、プロの音楽家ってやつを叶えようとしてる人たちだ。
 かれこれ十曲歌っても一銭も入らないが、それでも良い。空っぽでも、街中でエレキを取りだして、街中で堂々と歌えるって事が──それが、充分嬉しいんだ。

 こんな簡単な自由さえ、俺たちの世界は手に入れられないのか、と……七原は思った。

 ここには憲兵はいない。もっと、もっと平和でやかましくない警官ならやって来るかもしれないが、そんなのは七原にとっては相手にもならない。反権力、反体制、何を訴えても叫んでも良い。
 さっきも、七原が訴えかけたロックを聞いて、「良い歌だね~」となれなれしく微笑みながら、上手くご機嫌を取って補導を目論んだ警官がいた。そいつは、暴力を振るおうなんてつもりも怒鳴るつもりも一切なく、この反抗的な歌詞に共感さえしているようだった。職務だから捕まえないわけになんていかない、っていう程度の軽い意識。──歌われてる権力ってのは、あんたらの事なんだぜ?
 上手く取り繕って食い下がってやれば、「気を付けて」とこっちの身を案じて去ってくれる。あれは警官の中でも、良い警官だ。七原が反発してきた警官とは、つくりが違う。大東亜共和国は東西南北どこを探しても、あんな警官はいないのだ。

「なぁ、マスター」

 キャスター、操真晴人が、一曲の終わりと共に、横で七原に声をかける。まるで機を伺っていたようだった。キャスターは、いかにもロックが似合いそうな出で立ちでありながら、興味なさそうに手すりに寄りかかっている。その左手には紙袋が乗せられており、キャスターは中のドーナツをおいしそうに食べていた。
 ドーナツの味はプレーンシュガー。どちらかといえば、特徴の薄い顔立ちなキャスターにはぴったりだった。少し時間をかけて見てようやく美男子だとわかるような顔立ち。
 飄々としていて表情を作らないせいだろうか、雑踏の中に埋没する事もできてしまうほど、英霊らしからぬオーラだった。

 ……しかし、それはそれで好都合だ。
 問題は、七原の危機を救うのはこの男だというのに、それにしては随分と呑気な風にも見える事だろう。

「その歌、ビートルズのパクリじゃないの?」
「なんだ、今頃気づいたのか?」

 そんな七原の返答に、キャスターの口から自然と溜息が吐き出された。
 そう、これはれっきとしたビートルズのパクリだ。言わずと知れた、最初のロック。
 誰も気づかなかったらどうしようかと思っていた。

「そりゃね。気づかない方がおかしいよ」

 いや、しかし──この東京ではみんな知っているのだ。あの、ビートルズを。
 だから、ビートルズをコピーする人間なんて、本当に──これは誇大表現でも何でもなく、五万といて、七原もその一人として埋没している。七原のつきつけるメロディに心惹かれる人間はいない。金を払ってまで素人のビートルズを聴く人間はどこにもいない。
 そんなにまでビートルズが有名なのは、戦争のない世界、平和な世界が美徳だと、この国が教えたからだろう。

「だって、ビートルズの歌は、子供だって知ってる」

『操真晴人』の世界も、そうだった。
 少なくとも、この東京にいて違和感を覚えるほどおかしな世界には生きていない。
 規範となる現代社会に生きて、ビートルズも東京も渋谷も知っている。第二次世界大戦から先の分岐も、「大東亜共和国」も、「プログラム」もなかった。アメリカも敵性国家ではない。

「……でも、俺たちのいた国なら、気づく奴の方がおかしかったんだ。国中の大人が、世界一有名なミュージシャンの名前を教えてくれない。いや、隠してるんだ」

 キャスターの言葉を聞いて、七原は気が変になりそうだった。この東京にいる間中、ずっとそうだ。
 超人的な力を持って、魔法なんていうものまで持って、怪物と戦ってきたキャスターよりも、ずっと最悪な世界に自分は生きている。
 英霊の生きる世界の方が、ずっとマシな世の中──。

「オーケー、わかってる。狂ってるのは俺の世界なんだよ」

 狂った世界。言いたい事も言えない、やりたい事もやれないそんな世の中。それを変える為に戦う。それが七原の目的だ。
 イカレた世界を変える為に、またイカレた行動をしなきゃならない。
 キャスターは、彼らの住まう世界でジョン・レノンが誰と結婚したのか、思わず気になったが、そんなデリカシーの欠如した質問をする気にはなれなかった。

 七原の方が、表情を変えて、少し楽な気持ちになってから聞いた。

「で、キャスター。どうだったかな? 俺のパクリは。上手くパクれてたかな」
「Very good. You rock.(超いいね、最高)」

 最上級の褒め言葉を発しながらも、キャスターの態度はどこかそっけない。感嘆符がつかないような言い方しかできないのだろうか。
 キャスターは気取り屋なのだろう。わざわざ英語で返す皮肉っぽさも鼻につく。簡単な英語であったため、英語が苦手な七原もすぐ意味を理解できたが、却ってそれも鼻につく。

 しかし、許してやろう。
 こうして隣で、周囲を警戒して七原を守ってくれているのは、他ならぬキャスターだ。たとえば、先ほどの警官がもし「敵」だったなら、このキャスターがすぐに気づいて七原を庇ってくれただろう(いや、今のキャスターの態度だけ見るととてもそうは思えないが)。
 わざわざ真夜中に用もないのに出歩くのを許しているのは、このキャスターが融通の利く性格だからでもある。

「お世辞でも、ありがとう」
「お世辞じゃないさ。そうだ、ブルース・スプリングスティーンのBorn to Runのパクリは特に良かった」

 キャスターは、また表情を変えずに言った。
 しかし、具体的な曲名が出てくるという事は本心なのだろう。
 ただ……。

「……それさ、パクリのそのまたパクリなんだ。俺が訳したわけじゃない」
「ああ、なるほど。道理で出来が良いわけだ」

 率直な感想が返されて、七原は思わず笑った。
 所詮、中学生。そんな物だ。キャスターから見れば稚拙な曲かもしれない。
 とはいえ、キャスターにしてみれば、ちょっとした冗談のつもりで、その他の歌もちゃんと聞いて、それなりに評価してはいた。

「──気は済んだよ、キャスター。ちょっとは不安が晴れた」
「それは良かった」

 お世辞では、なかった。
 いや、もしかすればキャスターは見え透いたお世辞は言わない性格かもしれない。

「俺、明日も学校に行くよ。遅刻はするかもしれないけど」

 そう言う七原は、明日からの不登校を考えている身の上だった。それはできないとわかっていながら、まだ心にしこりが残っている。

 ある不安の種が七原の心に撒かれたのは、────先日の話だ。

 七原は気が付けば、いつもの学校にいた。普通に通学して、普通に自分のクラスに入る。その動作のどちらの間にも違和感があった。ノブが、三村が、杉村が、川田が、林田先生が……みんなが、いた。
 プログラムなんてなかった自由な世界の仲間が、いつもの日常を過ごしている。一緒に生きて帰った典子も、まるで何も知らないかのように過ごしてきた。
 キャスターに一度だけ促され、拒絶した「七原が叶えたい世界」。あのクソッたれゲームの事を忘れて、七原の愛する日常とクラスメイトが生きている世界。
 それは、七原が何度も見た夢とは違う。まぎれもない現実の光景だった。……しかし、夢にまで見た光景だというのに、七原の中に嬉しさがこみあげる事はなかった。

 七原の中に芽生えたのは、恐怖。
 少し前に死んだはずの人間がそこにいる。
 もっと言えば、殺し合っていたはずの人間である。同じように泣き、血を流し、叫び、恐怖し、裏切り、死んでいったクラスメイト──ただ楽しく日常を過ごしている姿を見ていても、素直に接する事なんてできやしない。
 いや、彼らが悪いって事はない。悪いのは、彼らじゃない。
 だって、彼らが悪いのなら──七原だって、この中の何人かを殺してるのだから。
 大木立道の顔を真っ直ぐ見る事ができない。ちゃんと出会う前の川田章吾との距離感が遠い(そういえば、川田は前のプログラムに来た設定なんだろうか?)。委員長たちのグループの何気ない会話の中にだって見えない棘を感じずにはいられないし、元木や織田みたいな「ちょっと嫌な奴」にだって、もっと本質的な嫌味を感じてしまう。

 そう、時が戻っても、他ならぬ七原自身が、日常に帰る事ができないのだ──。
 それをこの聖杯戦争の中で示された。やはり、世界のルールそのものを変えなきゃならない。──彼らが生きている世界に七原が連れて来られても、七原はそれを受け入れられない。
 どうしても、七原だけが狂った世界に取り残されてしまう。

 まるで、死人や典子を演じる機械のようにさえ見えた。
 だって、それは当たり前だ。彼らは世界にいてはならないのだから。
 彼らの死と、それに怒る七原の心が、あの政府が腐っている事の証明になる。それは奪われちゃいけない。彼はもう蘇らないからこそ、大東亜共和国がやった事は取り返しのつかない最低な独裁で、七原がそれをブッ潰す構図が出来上がらなきゃならない。
 だから、ここに彼らはいてはならないし、そんな理屈よりも前に、七原は──親友であるはずのノブや三村や杉村でさえ、何か「違和感」を齎し続けるのだ。

 それに、恐怖の種はもう一つある。この中に七原と同じ、「マスター」がいるかもしれない、という事だ。
 特に厄介なのは、桐山和雄だ。……もし、こいつだったら、どうする?
 七原は、あまりにも不安で、桐山の背中を追い続けた。桐山を監視し、彼が「マスター」でないか確認しておきたかった。結局、少し年上のお姉さんとぶつかって、桐山は見失ってしまったが……。
 もし、桐山和雄が敵だったら、──七原は、またこの怪物と戦えるのか?



 ────キャスターが訊く。

「マスター、遅刻は普段もしてたのかな」
「いや、そんなには、してなかった。優等生でもなかったけど」
「じゃあ、明日もしない方がいいかな」

 軽い口調に聞こえたが、表情は本気で七原の身を案じているように見えた。

「自分は普段と違う事をしている、ってクラスメイトに伝える事になる。それがただのクラスメイトなら問題ないけど、もし別のマスターがいた時の為にね」
「……そうだな」

 気づいて、七原は項垂れる。これからも、七原は普段通り、あの仮面学園に通い続けなければならない。それこそが一番堅実に生きる道であり、「戦法」なのだ。
 それがいかに息苦しい環境であっても、プログラムに巻き込まれなかったただの「七原秋也」を、あの中で演じ続けなければならない。

 あの渇いた偽物のクラスの中で、いつも通りノブや三村や杉村に接しなきゃならないのだ。

 だって、もし、あの中にマスターがいるとすれば、おそらく────「プログラム」を知っている。
 だから、こっちも敵に「あの七原」なのだと感づかれちゃいけない。プログラムを知らない素振りをして、普段と違う行動はせずに、あの中で浮いたり、あの中で誰かに疑問を持たれたりしないようにしながら、クラスメイトを──特に、桐山を疑わなければならない。
 いざっていう時は、それが川田でも三村でも杉村でもノブでも、あるいは典子サンでも──疑って、疑って、またあの時みたいにやっていかなきゃならない。

「辛いかもしれないけど、君が生きる為には仕方ない」
「わかってる。また、みんなを騙して、俺も自由を忘れて誰かを演じて、息を潜めるんだ。でっかい願いを叶える為なんだから、わがままは言えない」

 しっかりしてやがる、とキャスターは内心で独り言ちる。
 これが殺し合いを経験した中学生、か。本来ならば中学生というのはもう少し無邪気で可愛げがあって、生意気なものだが──いやはや、大人びている。
 それが良い事なのか悪い事なのかはわからない。キャスター自身もそんな責任感を持ち合わせて青春を送って来た共通項があったが、結局それが正しい精神なのかはわからぬ話である。ただ言えるのは、唯一、そんな彼にとって何の責任もない子供に戻れる瞬間が、キャスターにとってはサッカーで、おそらく七原にとっては軽音楽だという事である。
 そんな共感があるからこそ、こうしてリスクを冒してでも街中で路上ライブをさせるのを許したのだろう。

 七原は、加えてキャスターに一つ訊いた。

「なぁ、キャスター。一つだけ教えてくれ。俺が街中で桐山の背中を追いかけたのって、軽率だったのかな?」
「軽率」

 そのまま単語で返され、七原はたじろぐ。キャスターは、やはり、お世辞を言わない。

「でも安心しろよ。そいつには使い魔をつけておくし、万が一の時には俺の方が何とかする。ただ、次から、怪しい奴を見かけたら俺に言ってくれ」

 軽率だと言った割りには、キャスターはそれほど危機感を覚えていないように見えた。
 使い魔という便利な道具があるから、でもあるだろう。

 使い魔──別名を、プラモンスターという。
 聖杯戦争に伴ってキャスターの保有スキルとなった『ウィザードリング作成』を運用すれば、レッドガルーダやブルーユニコーンといった「使い魔」を召喚し、偵察をさせる事ができる。能力値としては、他のサーヴァントに攻撃をうければ──あるいは、マスターにさえ場合によっては──あっさり倒されてしまうほどだが、何体か用意すれば、七原の危険をキャスターに連絡をするツールにもなる。
 中学校内に潜入するには些か目立ちすぎるキャスターにとっては、ミニマムな使い魔たちが丁度良い。
 使い魔には悪いが、いざという時は七原の盾になってもらう事だってできるはずだ。少しは彼の安全も保障される。

「さて、そうとわかったら、さっさと片付けて帰ろう。昨日の事なんて振り返っても仕方ない。夜更かしは聖杯戦争の天敵、ってね」

 アンプやマイクなど、機材の類を片づけて帰る準備を始める事にした。
 一人分なのでそうそう時間はかからない。もう日付を回っているのだから、さっさと帰って明日の朝に備えなければならないだろう。元々、彼の部活は朝の練習がないようだし、この程度のロスは何とかなる。充分、遅刻もせず、何事もなく通学できるラインだ。
 元々、中学生程度なら日付を変更するまで遊びほうけていても何の違和感もないし、それこそ相馬光子や桐山和雄なんかは毎日そうして生きているかもしれない。

「あ、そうだ。はいコレ」

 後片付けの中で、脈絡なく、キャスターは紙袋からドーナツを一つ取りだし、それを七原に突き出した。

「何だよコレ」
「プレーンシュガー」
「それはわかってるけど……」
「うまいよ」

 そうキャスターが言うが、七原は口をつけない。
 なんでまた突然、こんな物を差し出してくるのかわからなかったからだ。

 それはただの差し入れとか、よくある半分こみたいな物かもしれないが、それでもやはり、「英霊」がドーナツを差し出してくる光景には裏を勘ぐる気持ちにもなってしまう。
 ドーナツには何か強い意味があるのだろうか。ドーナツが魔力や強さの秘訣? ──いや、そんなわけはないのだろうが。

「強いて言えば、さっきの曲のお代ってとこかな。自由で平和な世界に生きるあんたの、ロックシンガーとしての最初の報酬」

 そう、キャスターに言われると、七原も悪い心地はしなかった。薄くはにかみながら、ドーナツをかじる。

「うまっ」
「だろ?」

 準備を終えたところで、キャスターは堂々と『呪文詠う最後の希望(ウィザードライバー)』を発動し、『ウィザードリング作成』によってウィザードリングを装着した。
 宝具を発動し、魔力は微かにだけ消費される。

「んじゃま、バレないように」

 ──Connect──
 ──Please──

 魔法陣がキャスターの右側面に作りだされ、そこでキャスターのいる空間が、別の空間と「接続(コネクト)」された。
 アンプやマイクをそちらに放りこむと同時に、今度はキャスターの「愛馬」が召喚される。
 仮面ライダーウィザードが駆るバイク、マシンウィンガーである。──この雑踏がある渋谷の街で、あまりにも堂々とした行動だ。七原は開いた口が塞がらない。
 バレないように、と言うが、もしバレたらどうするのだろう?

「うっ……なんだ、俺は酔ってるのか?」

 会社員が通りすがり、こちらを凝視し、目を擦っていた。
 七原は、その瞬間、遂に「まずい」と思った。──見られた。しかも、よりによって、サーヴァントの迂闊な行為によって。相手がマスターだった場合、『殺す』しかない。いや、たとえマスターでなかったとしても──。

「いーや」

 しかし、当のキャスターの方は余裕たっぷりに言う。

「俺が魔法使いなだけ」
「ああ、なるほど……」

 納得して、狐に化かされたようにその場を歩いて行く会社員。
 しばらく後、全く納得できない理由だと思ってその会社員が振り向いた時には、そこに七原とキャスターの姿はなかった。
 その会社員は、疲れて変な夢を見ただけ、と自分を納得させただろう。この聖杯戦争のマスターでもない限りは、それくらいしか論理的な理由はなかった。






 七原はキャスターの背に凭れ、マシンウィンガーで公道を走っていた。目的地は、七原の寝泊りするあの施設である。
 そんな最中、七原の脳裏には、いや、もしかしてこのバイク──ナンバープレートがついていないのでは? とか、そんな疑問も浮かんでくる。
 今度は警官も許してはくれないだろう。未成年の深夜徘徊に比べると、結構大胆でレアな犯罪である。

 しかし、闇に紛れられるようで、時折大胆な行動もするこのキャスターという英霊。実に厄介な側面を持っている一方、却ってそれが、彼を闇に溶け込ませていた。
 あまりにも動じないもので、不自然な行為さえも自然に見せてしまう。あの会社員だって、あんな一言で納得してしまっているくらいである。
 あんな芸当は、やはり大物にしかできない。

「なあ、キャスター」
「何?」
「これって、あんたの方が軽率じゃないのか?」

 七原は大物ではなかったので、やや不安げに訊く。

「へへっ」

 まるで舌を出すように、キャスターは笑った。
 冷や冷やさせるようでもあるが、ある意味では──七原以上に、ロック。
 思わず、七原の方も釣られて笑ってしまうほどだ。

 今の様子を見てみろよ、そこまで臆病になる必要はない、安心してみせろよ、と。
 彼は教えてくれているようにも見えた。
 普段と違いすぎる行動をしてみせる事は、却って危険で、体にも心にも毒であると。

 それは、現代を魔法使いとして生きてきた男だからこその助言とも言えるだろう。





 ────魔法の指輪、ウィザードリング。今を生きる魔法使いは、その輝きを両手に宿し、絶望を希望に変える。





【A-3 渋谷・渋谷マークシティ付近/1日目 深夜】

【七原秋也@バトル・ロワイアル(原作小説版)】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]ベレッタM92F
[道具]エレキギター(メーカー指定なし)等
[所持金]少なめ(ただし、施設と中学で暮らしているので生活には困らない)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を得る。
0.今はこっそり帰宅する。その後、登校時間を守り通学。
1.クラスメイト(特に桐山和雄)に対して危機感を覚えている。
2.学校以外の時間は音楽で不満をぶつけていく。
[備考]
※桐山和雄と同じ中学校(少なくともクラスメイトの構成は城岩中学校3年B組と同一)のクラスメイトです。ただし、クラスメイトは全員、東京都民に改変されています。
※夜は施設を抜け出して駅前でストリートミュージシャンとしての小遣い稼ぎする事を目論んでいますが、初日の段階で一銭も入っていません。
※外出している為、まだジョーカー討伐クエストの連絡を受けていません。

【操真晴人(キャスター)@仮面ライダーウィザード】
[状態]健康
[装備] 『呪文詠う最後の希望(ウィザードライバー)』
[道具]プレーンシュガーのドーナツ
[一時的に召喚している道具]マシンウィンガー
[所持金]少しある?(小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:マスターの「最後の希望」になる。
0.七原を彼の住んでいる場所まで連れていく。
1.七原の学校生活には注意を向けておく。
[備考]
※外出している為、まだジョーカー討伐クエストの連絡を受けていません。
※七原の通う中学校に、「使い魔(プラモンスター)」を偵察させておく予定です。
 特に、警戒している桐山和雄の監視は学校外でも欠かさないようにするつもりです。


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最終更新:2015年04月18日 22:35