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寿司を食えばぶん屋が儲かる ◆devil5UFgA




全体を短く刈り込んだ髪に対して、浮くように右の前髪だけが頬にかかるほど異様な長さを持っている。
常として細められた目は、視界と呼べるものが存在するのか不思議に思うほど。
一見すると細身だが、骨格の芯の部分はがっしりとした長身の男。
チェ・グソン。
半島出身のその男は、昼時だというのに空席の目立つ回転寿司店のカウンター座席に座っていた。
レーンに流れる寿司に手を付けず、備え付けの安っぽい緑茶で喉を潤す。

「いらっしゃいませぇ」

数分すると、銀髪の男と和人形の如き見事な黒髪の少女が店内へと入ってきた。
店員の気のない声を浴びながら、その二人組は店内を一瞥する。
チェ・グソンと視線が交わる。
チェ・グソンは片手を軽く上げ、銀髪の男が軽く笑みを浮かべた。
そして、チェ・グソンの側まで大股で近づき、空いている隣のカウンター席に腰掛けた。

「どうも」
「少し遅くなったな」
「早速ですが、どうぞ」

チェ・グソンは足元の鞄から封筒を取り出す。
そして、隣りに座った銀髪の男――――直哉へと差し出した。
直哉は頷くだけで、その封筒を受け取る。
そこで会話は終わる。
すぐさま、不審なほどに直哉は席を立つ。
チェ・グソンは、おやおや、とせっかちを咎めるように軽く笑う。
二つ隣に座った童女は目を見開いて、不満の声を上げた。

「ちょ、ちょっと待て!ちょっと待て、お兄さんよぉ!」
「俺に妹は居ない」
「奇遇じゃん、ワシも兄貴は殺しといたからもう居ないんだよ」

艶やかな黒髪を棚引かせ、駄々をこねる童女。
しかし、この童女は単なる童女ではない。
その名を織田信長、偉大なる英雄の一人である。
英雄真実その一、織田信長は源義経と同じカテゴリーである。
そう、女なのだ。
童女の姿のまま、不満に声を上げる。

「そうじゃなくてさ、なんで流れてる切り身を眺めるだけで出る気満々なのさ!?
 ワシらただの間抜けかよ、なんで食い物を眺めるためにメシ屋に来るんだよ!」
「食いたいなら食いたいと言え」
「食いたい!」
「なら、食え」

直哉は一度上げた腰を下ろす。
信長は目を輝かせ、回る寿司と寿司と寿司と寿司を眺める。

「やっべ、なんか楽しい。寿司が回ってるよ、寿司なのに。
 見ろよマスター、おい、寿司が回ってるぞ」
「これが止まって見えるのならお前との契約を考えなおすところだ」

そう言いながら、直哉はレーンに流れる皿を取る。
マグロだ。
オーソドックスなネタと言える。
だが、その動作を見て信長は、へん、と笑ってみせた。

「いやいや、まずはタマゴじゃろ?
 タマゴの味でその店の味がわかる、ワシは詳しいんだ」
「漫画の知識ばかりが溜まっていくな、お前は」

直哉の素っ気ない態度に信長は不満気に鼻を鳴らし、周囲を見渡す。
そして、一つの蛇口を見つけた。
お湯、とだけ書かれた蛇口だ。
おしぼりは回転レーンの屋根に当たる部分に置かれているが、背の低い信長には見つけることが出来ない。
信長は、うん、うん、と頷いた。

「へぇ、便利なもんじゃん……手洗いは大事じゃしな」

そう言って、信長は黒いゴムに包まれたボタンへ右手を押し付ける。
あっ、と。
チェ・グソンが声を上げようとする。
だが、すでに遅い。
緑茶のために置かれた熱湯が信長の小さな手に直接掛かった。

「熱ぅっぃわぁ!」

奇声を発して右手を素早く引っ込める信長。
そして、左手で手元の冷水を取り、安っぽい紙のおしぼりで包んだ右手に浴びせかける。
ふぅ、ふぅ、と、息を吹きかけながら額に青筋を立てている。
このままでは店へと向かって間抜けなクレームを付けかねない。
チェ・グソンは呆れたように二つ隣の席に座った童女を宥めようとする。
だが、隣に座る直哉に制される。

「ふっ……」

直哉は信長の淡い唇に指を立て、ニヒルに笑ってみせた。
そのまま、レーンの屋根に置かれた湯のみを手に取り、醤油の隣に置かれた緑茶の粉末をすくう。
粉末を湯のみに入れて、湯のみを黒いゴムに包まれたボタンへと押し付けた。
湯のみの中にお湯が注がれる。
ポカン、と。
口を『お』の字に開けたまま固まる。
直哉はそんな信長を無視し、一巻目のマグロを口に運んだ。
たっぷり数分は固まっていた信長は、やがて直哉へと怒鳴りつけるように口を開いた。

「分かってたのなら教えろよな、テメー!」
「そこまで間抜けだとは思わなくてな」

二貫目のマグロを口につける。
わなわなと震える信長を嘲笑いながら、安っぽいマグロを味わう。
そして、空になった皿を手に取り、レーンに載せてみせた。
当然、チェ・グソンはその空になった皿を取り、直哉へと差し出した。

「旦那、皿は戻さないようにね」
「……」

空気が固まった。
その空気を壊したのは、腹を抱えてみせた信長だ。

「バッカでー!!!」
「……黙れ」
「わっかんだろ、普っ通さぁ! どうやって会計すんだよ!
 いやぁ、そこまで間抜けだとは思わなかったわ!」

単純にして鋭い罵声を浴びせる。
わなわな、と、直哉は震えた。
からから、と、信長は笑った。






『回って食べる寿司』
うた:カイン(世紀前イスラエル出身、戦中日本暮らし)&織田信長(室町時代尾張出身、英霊の座暮らし)



◇知らなきゃいけないことが 今の俺達には多すぎる

◆テレビにも ラジオにも慣れた

◇ウォッシュレットが トイレの屋根を濡らすこともない

◆そして俺達は現代人になり 東京都民へとなってみせたわ

◇ここの寿司屋は日本一

◆小柱みたいにちっちゃな自尊心

◇俺のサーヴァントは卵が好き

◆やるせないじゃない、戦争は大トロ



◆◇まわって まわって まわって

◆◇まわって まわって まわって

◆◇まわって まわって まわって

◆◇食べて 食べて

◆◇食べて 食べる



◆◇まわって まわって まわって

◆◇まわって まわって まわって

◆◇まわって まわって まわって

◆◇食べて 食べて

◆◇食べて 食べる






直哉と信長の騒動を眺めている影があった。
一人は白いシャツと黒いズボンの、野暮ったい黒髪をした体格の良い男。
もう一人はTシャツの胸部に書かれた『踊り子号』という文字を豊満な胸が押し出している、早熟の体型をした少女だ。

「……間違いないのか」
「間違い、ゴクン、ない……な。
 いや、あそこ、まで……ックン、あからさまだと、逆に、何かの罠かも……ゲフ、ゲフン、ゲフン!」
「食べながら喋るのは辞めた方がいいな」
「………………………………」
「すまん、言い方が悪かった。大事なことだから、食事はやめてくれ」

ボックス席で食事をしていた狡噛慎也と、そのサーヴァントのアサシン・焔だ。
焔が凝視する先には、信長の姿。
曰く、あの童女はサーヴァントである、とのこと。
騒がしい三人組に目を向けていた狡噛は、瞬時に気を張り詰めた。

(しかし、なんだ……あれが、『英霊』というのか?)

ただ、その張り詰めた気もすぐに途切れそうになる。
間抜け丸出しに笑い声を上げている、それこそ童女としか見ることが出来ない影。
アレが偉業を成し遂げ、超常の存在たる英霊だというのだろうか。
隣を見る。
黙々と寿司を食べている少女の影。
食べれるときに食べる、と言った行動理念だそうだ。
英霊とは、そんなものなのかもしれない。

「……っん。間違いない、アレはサーヴァントだ。
 プンプンと臭う、気配を遮断する気もなくこうも大っぴらに動くとは、豪快なことだ」

そう言った焔は、『サーヴァントとしての気配』を遮断している。
戦闘行為へと映らない、あるいは、サーヴァントとしての超常の力の片鱗を使用しない限り。
焔は、周囲からただの少女として認識される。

――――『忍ぶ者』と書いて忍者だからな。『草』としての教育も受けている。

彼女の気配遮断の技術には、『一般人になり切る』というものもあった。
すなわち、民衆の中に溶け込んで情報を得るための技術だ。
生前に生活苦のあまり、仲間たちと共にアルバイトでその日その日を凌いでいたという逸話もある。

「……」
「どうする……っと、席を立ったぞ」

信長の首の根っこを掴んで立ち去っていく直哉。
カウンター席には銀行の封筒が見える。
現金だろう。

「……今は、放っておく。それよりも気になるのは――――」
「あっ、おい、マスター!」

そう言って、狡噛は席を立った。
焔は慌てて立ち上がろうとする、が。
それを遮るように、両手で盆を持った店員が現れた。
盆の中心には、ゆるやかに湯気を見せる丼がある。

「お待たせしました、きつねうどんです」
「えっ、あっ、えっ…………あっ…………いただきます」





「隣をいいか」
「どうぞ」

巻物を口に運んでいたチェ・グソンは、突然現れた男・狡噛慎也に薄い頬を釣り上げて笑いかける。
狡噛は、先程まで直哉が座っていた席とは逆隣に腰掛ける。

「アンタ、情報屋だろ」
「フリーライターですよ。
 『噂屋』とも呼ばれてますが、情報屋だなんてカッコイイもんじゃありません」

照れたように笑う。
しかし、狡噛は油断なくチェ・グソンを見つめる。
先ほど見えた、直哉に差し出した封筒。
そして、直哉が置いていった銀行の封筒の厚み。
単なる食事をしただけとは思えない。

「噂屋、か……なら、『ジョーカー』のことを知らないか?」

しかし、チェ・グソンが『噂屋』という立場を気取るならば、それに合わせてやる必要がある。
狡噛は途端に気安さを見せて、チェ・グソンへと笑いかけた。

「『ジョーカー』……? 『JOKER様』のことですかい?」
「……ジョーカー様?」
「おっと、別のことでしたか?」
「いや、教えてくれ……金がいるのか?」
「ハハ、金なんているわけ無いですよ……こんな旬も過ぎそうなメジャーなネタで金をとっちゃ、舐められちまうからね」

チェ・グソンは軽く笑ってみせた。
『旬も過ぎたメジャーなネタ』も知らない狡噛としては、曖昧に笑ってみせるしかなかった。

「旦那も携帯電話ぐらい持ってるでしょ?
 自分の携帯電話で自分での携帯電話の番号にかけるんですよ」
「……いや、そんなことしても通じないだろ?
 あっ、いや、話の流れからすると――――」
「ええ、『JOKER様』に通じるんですよ。
 正確に言えば、『自分の気に入らない人物を殺してくれる』JOKER様に、ね」
「……物騒なもんだ」
「バイオレンスでクレイジーな創作は、日常の良いスパイスになるもんですよ」

やはり、笑ってみせた。
言っているチェ・グソン自身がこんな話を信じていないのだろう。
しかし、狡噛にとってはそれは真実に近い話だと感じている。
なにせ、サーヴァントという存在を知っているのだ。
宝具、スキル、あるいはサーヴァントとしての在り方そのものと関わっている可能性は高い。
いや、その『JOKER様』こそが討伐令をだされたバーサーカーのマスター『ジョーカー』である可能性がある。

「JOKER様の隣には、狂ったような奴は居ないのか?
 そいつがジョーカーを名乗る怪人と一緒に人を殺してるはずなんだが……いや、事実じゃなくて、そういう噂だよ」
「……ああ、そいつは『ピエロと赤ん坊のサーカス団』ですかい?」
「多分それだ」
「そいつはJOKER様とは別口の話ですよ、有名な都市伝説ですがね。
 もっとも、こっちは噂によっちゃ実在の事件じゃないかって話ですけどね。
 ……ハハ、『噂話』のことについて『噂によっちゃ』なんて、シャレになっちまいましたね」

『ツボ』にハマってしまったように、チェ・グソンは先ほどまでの愛想笑いとは違う笑みを浮かべた。
狡噛も合わせるように笑い、しかし、すぐに言葉を繋ぐ。


「そいつについて――――」
「これぐらいになりますね」

だが、チェ・グソンは狡噛が言葉を言い切る前に自身の携帯端末を小気味良く叩いてみせた。
金額だ。
狡噛は顔をしかめ、チェ・グソンは笑った。

「こいつは『噂屋』としてではなくて、『フリーライター』としての飯の種になりますからね。
 さっきは噂によっちゃなんて言いましたが、警察も動いてるんですよ。
 『ピエロの犯罪者』については、ね」
「そいつを、金も取らずに言っちまっていいのか?」
「旦那もとっくの昔に知ってることでしょうが」

チェ・グソンは相変わらず笑っている。
狡噛は少し考え、頷いてみせる。

「ピエロについての情報を頼む。
 恐らく、連続殺人鬼だ。
 殺害方法までは知らないが、あからさまに目立つ、『ジョーカー』を自称する怪人について調べてくれ」
「毎度……このアカウントでそれらしいつぶやきをしますから、この店にもう一度来てください」

そう言って、チェ・グソンは懐から別の携帯端末を取り出す。
そのアカウントを見、狡噛は自身の携帯端末を取り出した。

「……はい、っと。それじゃ、近日中には」
「明日にも連絡をくれ」
「気が早いね、旦那」
「近日中に、この事件は終わるだろうからな」

狡噛はそう言い残して、席を立った。
いつの間にか、『踊り子号』と書かれたTシャツを着た豊満な胸の少女が居た。
本当にいつの間にか背後に立っていた少女に、一瞬、作り笑いも忘れるほどの驚きを覚える。
少女、焔は手に持った席札を狡噛へと手渡す。
ちらり、と。
狡噛は元々居たボックス席に視線を移す。
想定よりも、多少、多い。
焔が中々の量を食している。
わずかにため息をつき、会計へと向かった。






チェ・グソンは、しかし、と思った。


この短期間に『全く同じやりとりで』『全く同じ依頼』を受けることになるとは。
先ほど、銀髪の男に渡した情報もまた『ジョーカーを名乗る犯罪者』の情報。
つまり、渡そうと思えば、今すぐにでも目付きの鋭い男に情報を渡すことも出来た。
それをしなかったのは、単なる渋りだ。
頼めばすぐに情報が出てくると思われても困るし、すぐに出せるのならばもっと値段を抑えろと値切りを初められても困る。
チェ・グソンは寿司を口に運んだ。
腹はそこそこに膨れた。

「ごちそうさま」

ちらり、と。
店内に備え付けられたテレビを見ると、爆破事件のニュースが行われていた。
最近、何かと物騒だ。



【A-1/回転寿司店周辺/1日目 昼】



【直哉(カイン)@女神異聞録デビルサバイバー】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]不明
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れ、ベルの王ア・ベルを完成させ、唯一神を殺す。
1:試しに、『第六天魔王』の信仰を作ってみる。
2:ジョーカーの討伐についてはじっくりと様子を見る。
[備考]
※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。
ジョーカー&バーサーカー組の情報を把握しました。
※『ガイア教』という悪魔崇拝の宗教の集団の中核に存在しています。

※チェ・グソンからジョーカーの情報を受け取りました。

【『魔人』アーチャー(織田信長)@Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚】
[状態] 健康、満腹
[装備]圧切長谷部、火縄銃
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れ、日本を危機から救う。
1:試しに神様になってみる。
2:ジョーカーの討伐とかも正直面白そうだよね。
[備考]
※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。
※ジョーカー&バーサーカー組の情報を把握しました。
※信仰されれば強さが増すということにいまいちピンと来ていません。


【狡噛慎也@PSYCHO-PASS】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]普通(一人暮らしができる程度)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を中断させ、聖杯を打倒する
1.ジョーカーを討伐する気はない。
 そのかわりジョーカーを討伐した者と、聖杯およびその使いとの接触現場を押さえ、聖杯攻略の足がかりとする。
2.ジョーカー捜索は焔に一任。単独ではアルバイトの時以外、外出しないようにする。
[備考]
※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。
※ジョーカー&バーサーカー組の情報を把握しました。
 情報の精度については、後続の書き手さんにお任せします。
※運送業者の倉庫で、日払いのアルバイトをしています。
※インターネットの通販で、いくつかの武器を購入しています。遅くとも2日目までには届く予定です。

※チェ・グソンにジョーカーの情報収集を依頼しました。


【アサシン(焔)@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]健康、満腹
[装備]『いざ、紅蓮の如く舞い散れ(えんげつか)』、刀×6
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:狡噛に協力する
1.しばらくは単独で市街を巡り、他のマスターを探す。特にジョーカーが最優先。
2.何かあったら狡噛に念話を送り、指示を仰ぐ。
[備考]
※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。
※ジョーカー&バーサーカー組の情報を把握しました。
 情報の精度については、後続の書き手さんにお任せします。



019:GOSSIP→PERSONA 投下順 021:学校であった怖い話。
019:GOSSIP→PERSONA 時系列順 021:学校であった怖い話。

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001:追うべき獲物は 狡噛慎也&アサシン( :[[]]
009:誓いの爪痕 直哉(カイン)&『魔人』アーチャー(織田信長 023:Fate /occult survivor

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最終更新:2015年10月25日 00:46