resist break

resist break ◆30RBj585Is




ここは辺り一面の花畑。特に季節外れのヒマワリが目立っている。
何故自分はここにいるのだろうか。
冬の妖怪、レティ・ホワイトロックは、冬が終わり春が来ると眠りにつく。それは毎年のことで、今年もそのつもりだった。
だが、その直前に起きた突然の出来事にレティは戸惑っていた。

『お集まり頂いて光栄です。ただいまより皆様には、殺し合いを行っていただきます』
あの女は何がしたいのだろうか。
人間が一人、首輪の爆発によって死んだ。
普通の妖怪は目の前で人間が死んだくらいではなんとも思わないだろう。だが、あの人間の死に方はなんだか普通じゃない。
それに、自分の体が感じている違和感も気になる。なんだか力が抜けているような気がするのだ。
春だからなのだろう。レティはそう思い、あの女が言っていた『支給品』とやらが入っている袋を覗いてみた。

「これは・・・何かしら?」
袋にはあの女が言っていた食料や筆記用具といったものの他に、説明書付きの子供一人が入れそうな大きな袋があった。
その説明書にはこう記されていた。
『サニーミルクの使い方および注意事項
①光の屈折を利用して姿を隠すことが出来ます。詳しいことは本人に聞きましょう
②使いすぎるとエネルギー切れします。太陽の光を当てて充電しましょう
③首輪にある稼動スイッチのON、OFFにより能力が機能します
④抵抗して暴れるようなら、首輪にある拘束スイッチで自由を奪うことが出来ます
⑤口うるさくて堪らないときは、首輪にある沈黙スイッチで黙らせることが出来ます
⑥要らなくなったら首輪にある自爆スイッチで爆発させ処分できます
⑦迷子にさせないようにしましょう。参加者からある程度離れると支給品が爆発します
⑧戦闘能力は無いので、戦わせるならば武器を持たせましょう
⑨バカ
主催者:八意永琳より』
「何、これ?まるで生き物のような扱いね。それにサニーミルクって・・・」
サニーミルクといえば光の三妖精の一人で、光の屈折を操る程度の能力を持つ。
参加者の名簿には書かれていないため参加者ではないようだが、まるで居るかのような扱いにまさかと思い、大きな袋を破く。

すると案の上、サニーミルクが入っていた。
しかし、説明書に書いてあるスイッチの所為だろうか。動くことも喋ることもせず、おびえた表情をしている。
このままでは可哀想なので、スイッチの拘束と沈黙を解いてやった。だが、
「大丈夫かしら?・・・えーと、サニーちゃん?」
「あわわわわ・・・・・・」
まだおびえている。体の自由を奪われ、袋に突っ込まれたのだから無理も無いだろう。レティはサニーミルクを落ち着かせるため、今の状況を説明することにした。


―――少女(?)説明中
「えっと、その、嘘・・・だよね?
っていうか、殺し合いをやれなんて訳分かんないよぉ!」
「私もそう思ってたんだけど・・・。やっぱり、実感は沸かないでしょうね。
でも、あの人間の死に様は普通じゃなかったわ。って、あなたは見てないから分からないかも」
レティはこれまでのことを一通り説明した。だが、自分自身でもよく分からない状態であるため、あいまいな気がした。
サニーも、三妖精の(自称)頭脳担当で少なくとも説明書に書いてあった⑨ではないかもしれないが
レティの説明ではいまいち自分の立場が理解できず、本人はいつも食らっている悪戯のしっぺ返し程度にしか思っていない。
そんなサニーの様子を見て、レティ自身も自分が殺し合いの場に置かれている自覚が薄れつつあった。
その瞬間、

「春ですよーーーーーーー!!!」
ドカン!ドカン!ドカン!!
突然の叫び声と同時に飛んできた謎の弾幕が周囲の花を吹き飛ばした。
「「きゃあっ!?」」
周囲を破壊する弾幕に気づき、その発生源を見る。
正体は・・・振り向くまでもなく、分かる。その春を告げる声とともに攻撃を仕掛ける者は知る限り一人しか居ない。
「冬っぽいあなたに春を告げに来ました!」
春を告げる妖精、リリーホワイトである。

ドカン!ドカン!ドカン!!
「ひえぇ~!」
「全く、相変わらずね・・・。しかも、こんな夜遅くになんて、迷惑を考えないのかしら」
春を聞いてもらう相手を見つけたリリーホワイトはあの出来事をすっかり忘れたかのようないつもの調子で弾幕攻撃をする。
その相手が冬気の塊のようなレティであるためか気合が入っており、弾幕はマシンガンのようだ。

「ど、どうするの!?しかも、春のリリーホワイト相手に!」
サニーはリリーと何かあったのだろうか、必要以上におびえている。
「あなたは下がってなさい。あれを落ち着かせてあげるわ」
だが、レティは仕方ないなという感じでサニーを引っ込め、フラワーウィザラウェイのカードを準備した。

しかし、そうしてる間でも弾幕は飛んでくる。もはやこれは完全に避けろといわれると難しいだろう。
いつもの弾幕ごっこならば、よほどのことが無い限り死にはしない。
また、周囲の花の壊れ具合から、威力はいつもの弾幕と大差ない。
これで殺し合いをしろというのだろうか、馬鹿馬鹿しい。
一、二発くらいなら当たっても問題ないだろう。そんな気持ちで、リリーの弾幕を避け、スペルカードの準備をした。
しかし、それが間違いだったことを思い知ることになる。

ビスウッ!
「!!?痛っ・・・・・・」
足に一発かすってしまった。それ自体は問題ないのだが、その直後に発生した激痛が問題だった。
普通はかすった程度では痛くないはずが、今回は違う。
かすった部分がナイフで切られたように傷つき、血が流れていたのだ。
傷自体は大したことは無いとはいえ、予想もしなかった事態により、レティは思わず膝をついた。

「え、ええ?だ、大丈夫!?」
サニーは思わずレティの元に駆け出した。サニーも弾幕ごっこは見たことはあるが、こんなんじゃなかったはずだ。
「・・・大丈夫よ。でも・・・」
この程度の弾幕で怪我を負った?やっぱり何かおかしい。
ここでレティは自分が感じている力が抜けるような違和感を思い出した。春だからという理由だけなのか?
しかし、今はそんなことを考えるよりも退くことが大事だ。
「と、とりあえず、隠れるよ!」
「どこに隠れろっていうのよ・・・」
周囲は花に囲まれているため、動きがとりづらい。足を取る程度の高さなので妖精でも隠れることは出来ないはず。
      • だが

「あれぇ、どこに行ったんですかー?」
リリーホワイトは標的を見失った様子である。本当は目の前にレティたちが居るのだが・・・
(ふう、うまくいったぁ・・・)
(へぇ、妖精なのにすごい能力を持ってるのね)
そう。サニーの能力により、姿を消したのだ。話では聞いたことがあるが、侮れないものだ。
これでうまくいけば、このままやり過ごすことが出来るのだが・・・

(あ、あれ?もう限界が近いんだけど・・・?)
(え・・・もう?)
これが説明書で言うエネルギー切れだろうか。真夜中だからとはいえ、いくらなんでも速すぎないか?
(仕方ないわ。私のスペルカードで攻撃するしかないようね)
そう思い、レティはスペルカードを構える。準備時間はたっぷりあった。
ならばここで、とフラワーウィザラウェイを発動し、リリーホワイトを狙った。

「え、えぇ?いきなり何ですか~!?」
リリーには何も無いところからレーザーが飛んできたように見えたのだろう。
完全な不意打ちにリリーは対応できず、そのままレーザーは腹部を貫通し、力なく地面に倒れた。


激しくないようで激しい弾幕戦は終わった。
「ふぅ、何とかなったわね。手加減はしたから大丈夫だと思うけど」
「お花畑を滅茶苦茶にしといて、よく言うわね・・・」
「しょうがないでしょ。広範囲な弾幕だもの」
もちろん、レティは最初からリリーを殺すつもりは無く、黙ってもらうつもりで攻撃した。
相手は妖精とはいえ、手加減はしたし、時期は春だから普通ならば大丈夫なはずである。
だが、一向に動き出す気配が無いリリーを見て、二人は疑問に思う。
この時、レティが頭によぎった言葉が・・・
『お集まり頂いて光栄です。ただいまより皆様には、殺し合いを行っていただきます』
「・・・まさか!」
嫌な胸騒ぎがしたレティはすぐさま倒れたリリーの元に駆けつける。
すると、リリーの腹部には

「嘘・・・血が・・・こんなにも・・・?」
レーザーによる風穴が空いていて、そこから血がだらだらと流れていた。
「あ、あのさぁ。弾幕ごっこってさ、こ・・・こんななの?」
「そんなわけないわよ!
 ちょっと!目を開けなさい!」
レティは動かぬリリーを揺さぶるが、返事は無い。
すでに絶命していることは明らかである。
「殺し合いってこういうことだったのね・・・」
いつも何処かで必ずといっていいほど行われている弾幕ごっこ。それが死のゲームへと変貌していたのだ。

「ごめんね・・・」
リリーの亡骸を見つめながらレティはつぶやいた。
そんな重苦しい空気の中、サニーは尋ねた。
「ねぇ・・・私たち、これからどうなっちゃうの?」
「・・・さぁ」
正直、考えたくない。だが、分かったことはある。
力が抜けたかのような違和感。それは弾幕の抵抗力が弱くなる事だったのだ。
最初は春だから抵抗力が無くなったのだと思った。
しかし、それは自分だけでなく絶好調であるはずのリリーも、おそらく参加者全員に起きていることなのだろう。
だからあの女は弾幕ごっこを中心とした殺し合いをさせたのか?
よく分からないが、これでレティそして支給品扱いとはいえサニーも自分が殺し合いの場に置かれていることを痛感したのだった。


【B‐6 太陽の畑・一日目 深夜】
【レティ・ホワイトロック】
[状態]健康(足に軽いケガ)
[装備]なし
[道具]支給品一式×2(リリーの分含む)、不明アイテム×1(リリーの分)、サニーミルク
[思考・状況]殺し合いに乗る気は無い。でも、何をすればいいかは分からない


【リリーホワイト 死亡】

【残り 53人】


01:悲しき盲目の信頼 時系列順 03:19年前の歌声の日
01:悲しき盲目の信頼 投下順 03:19年前の歌声の日
レティ・ホワイトロック 35:盗まれた夢/Theft of Dreams
リリー・ホワイト 死亡


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最終更新:2009年04月01日 05:07
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