『地球至上主義者の台頭』-2
作者・大魔女グランディーヌ
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フェニックスネスト・総監室***
ここは
GUYS JAPAN基地であるフェニックスネストである。
その総監室に、日本政府・国家安全保障局から
数人の人間たちが乗り込んで来ていた。
シキ「サコミズ総監、ご同行願います」
ミサキ「お待ちくださいシキ査察官、令状は!?」
サコミズを連行しに現れたシキの前にして、
ミサキ総監代行が逮捕状の提示を求めて抵抗する。
シキ「周囲の目もありますので、この場は任意同行ということで」
サコミズ「わかりました。参りましょう」
ミサキ「――総監!?」
サコミズ「大丈夫。疑いはすぐに晴れる。
私が留守の間、
GUYS JAPANの事をよろしく頼みます」
ミサキ「わかりました。お帰りをお待ちしています…」
総監服姿のサコミズは任意同行の求めに素直に従い、
シキら国家安全保障局の男達に伴われてフェニックスネストを後にした。
東京・赤坂 某代議士の別邸***
南「先生、吉報です。たった今
GUYS JAPAN総監の
サコミズ・シンゴが逮捕されました」
???「ご苦労だった南君。これで全ては我々の予想通りに
進んでいるようだな」
南と呼ばれた警察の制服姿(それも身につけている階級章からは、
警察内部でもかなり上位に位置すると思われる)の男から
報告を受ける謎の人物…。
南「これで
GUYS JAPAN総監は空席になりましたが、
後任には三輪長官に兼任させるのですか?」
???「いや、
GUYSニューヨーク本部から
岸田長官が暫定の総監として赴任してくる手筈だ」
南「…岸田長官をですか? しかし彼は我々
ロゴスの同志ではありません。
岸田長官よりも我らの正式な同志でもある高倉司令官の方が
よろしいのでは?」
???「構わん。上手くいけば岸田長官も
我々の同志に取り込む事が出来るかもしれん」
南「そこまでお考えでしたか…」
???「これで極東の連邦軍はほぼ我らの手中に収まった。
残るは日本の警察機構だが、そちらの方はどうなっているかね?」
南「ご安心を。まもなく警視庁も我々の掌中に落ちるでしょう。 ところで宇宙警察の地球署の方はいかがなさいますか?」
???「まだ宇宙警察を敵に回すには早い。 しばらくは放っておけ。仮に宇宙警察が我らの目論見に感づいたとしても、 アリエナイザー絡みの犯罪でもない限り、奴らには手は出せん」
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ニューヨーク沖・GUYSインターナショナル総本部***
タケナカ「ではブラッドマン卿には、
あくまでもサコミズ総監のスパイ容疑は明白であると言われるのか?」
ブラッドマン「さよう。かつて自身の部下であるGUY JAPANの隊員に異星人が潜り込んでいた事を 黙認していた事からしても、スパイの事実は歴然と申してよろしかろう」
ニューヨークのGUY本部にいるタケナカ最高総議長に、
日本でのサコミズ逮捕の一報を通告に現れたのはフィクス・ブラッドマン卿。
地球連邦政府及び軍の重鎮である。
タケナカ「お言葉だがその程度ではスパイの罪は歴然とはいえまい。
仮にもGUY JAPAN総監ほどの高い地位の人間を、確たる証拠もなしに――」
ブラッドマン「待たれい! この件には確たる証人がおる。
I.N.E.T.の来島副長官と米国政府のグラント国防長官の両名が
いつでも証言台に立つ用意があるそうだ。」
タケナカ「来島氏はともかく、ミスター・グラントと言えば
サンクフレシュ製薬との癒着の疑惑が取りざたされている人物ではないか。
そのような人物の証言を当局が取り上げるとは――」
ブラッドマン「タケナカ総議長、これも全ては地球連邦のため。
我々政治に携わる者は、清濁併せ呑む事もまた必要な事だ」
タケナカ「う、うぬぬ……!!」
フェニックスネスト***
サコミズ総監の逮捕から数日後、
GUYSニューヨーク本部から岸田長官が佐竹参謀を伴いフェニックスネストに姿を現した。
MATの岸田文夫隊員の叔父でもある岸田長官が
GUYS JAPANを訪れるのは、
極めて異例の事であった。
岸田「諸君、サコミズ・シンゴ君は承知の通り国家安全保障局によって先日逮捕された。
罪状はスパイ容疑。
恐らく、彼が再び総監の座に――いや、
GUYSに復帰する事はもうないだろう。
ニューヨークの
GUYS本部は今、彼の正式な追放処分を協議している所だ」
サコミズが
GUYSから完全に追放される――。
フェニックスネストに召集された
GUYS各部隊の隊長達は、
事態の深刻さを伝える岸田長官の言葉に揃って息を呑む。
伊吹「岸田長官、サコミズ総監の有罪はもう証明されたのですか?」
岸田「…いや、今はまだ取り調べの最中だ。
詳しい事はこれから分かって来るだろう」
日浦「でしたら、まずは真相を明らかにするのが先決ではないですか?
それが分かる前に追放処分というのは――」
岸田「日浦君、気持ちは分かる。
だが、既にサコミズ君の問題については憶測も含めた情報がマスコミに流れ、
世論は
GUYS JAPANの一大不祥事として騒ぎ始めてしまっている。
サコミズ君にかけられた疑惑の真偽がどうであれ、
このまま事を放置すれば、
GUYS JAPANの日本国民からの信頼は揺らぎかねん」
佐竹「地球平和守備隊の方でも近頃はスキャンダル疑惑が相次ぎ、
江戸川総司令らが異動になったばかりだ。
問題続きの極東支部に、世論は毅然とした対応を求めているのだよ」
日浦「そんな…」
ある雑誌記事を発端に過熱したマスコミ報道の多くが事実無根なのは、
極東支部の現場にいる人間なら皆よく分かっている。
それなのに、世間への体面だけのためにあの清廉なサコミズを切ろうとは…。
岸田「ついては、ニューヨークの
GUYS本部が正式な後任を発表するまで、
この私が
GUYS JAPANの新たな総監として指揮を執る」
佐竹「ちなみにトリヤマ補佐官とマル補佐官秘書の二人には
伊豆の地球連邦軍極東支部基地に出向してもらった。
諸君にはこれより、岸田新総監の指揮の下、
三輪防人長官の連邦軍極東支部並びに一条総司令指揮下の
地球平和守備隊関東管区とも共同して地球の防衛に励んでもらう事になる」
岸田「宇宙の果てから地球を狙う宇宙人は未だ多い。
既に宇宙人の一部はGショッカーなどの組織の一員として地球に潜り込み、
地球人を脅かす恐るべき侵略作戦を企てているんだ。
そしてもしかすると、それは
GUYSとて例外ではなかったのかも知れん。
なあ、アイハラ君?」
アイハラ「な――」
CREW
GUYS JAPANのアイハラ・リュウ隊長が絶句する。
M78星雲のウルトラ戦士としての正体を持ちながらかつて
GUYSに所属し戦っていた、
“彼”――。
ウルトラマンメビウス=ヒビノ・ミライ元隊員の事を岸田は暗に批判しているのだ。
アイハラ「ミライは――、
ウルトラマンメビウスは地球人の敵などではありません!」
岸田「今や宇宙の情勢は複雑怪奇。何が起こるか分からんという事だ。
いいか、地球の平和は地球人の手で守ってこそ価値がある。
諸君らには、かつてない地球の危機を自覚し、
これまで以上に気合を入れて任務に取り組んでもらいたい」
アイハラ(何てこった。今度の総監はウルトラの星まで敵だと疑っているのか?
かつてない地球の危機だからこそ、
またあの時のように地球人と宇宙人との絆が必要だってのに…)
伊吹(おかしい。岸田長官の言動が以前より地球ナショナリズムに傾いている。
さては三輪長官と同じく、岸田長官の、
いや、この一連の騒動全体の背後にティターンズの存在が――?)
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○サコミズ・シンゴ→国家安全保障局に逮捕される。
○タケナカ最高総議長→サコミズを擁護するが、ブラッドマンに押し切られる。
●フィクス・ブラッドマン→サコミズを弁護するタケナカの主張を押し切る。
●南雅彦→黒幕にサコミズ逮捕の一報を報告する。
△岸田長官→佐竹参謀を伴い、
GUYS JAPANの暫定新総監に就任。
○トリヤマ補佐官、マル補佐官秘書→佐竹参謀の発言から、
連邦軍極東支部の三輪長官の下に出向した事が判明。
【今回の新規登場】
○サコミズ・シンゴ(ウルトラマンメビウス)
CREW
GUYS前隊長にして
GUYS JAPAN総監。科学特捜隊時代の長期宇宙勤務の際の
ウラシマ効果のため若く見えるが、実はタケナカ最高総議長と同年代の年齢。
宇宙警備隊隊長ゾフィーが地球上で活動する際に、肉体を共有する存在でもある。
○ミサキ・ユキ(ウルトラマンメビウス)
GUYS JAPAN総監代行。怪獣が出現した際には、
総監に代わって作戦を直接
GUYSのメンバーに伝える。
△シキ査察官(ウルトラマンメビウス)
日本政府・国家安全保障局の人間。
○タケナカ最高総議長(ウルトラセブン/ウルトラマンメビウス)
連邦軍極東基地参謀時代は ウルトラ警備隊司令を兼任していた。
全世界の
GUYSを全て統率・指揮する立場にある。冷静な判断力で事件を度々解決に導く。
●フィクス・ブラッドマン中将(機動新世紀ガンダムX)
政府再建委員会の首班。新連邦軍総司令。
●南雅彦(仮面ライダー555)
警視庁の幹部で、対オルフェノク秘密組織の責任者。
"人にして人の心を失った男"である。
○伊吹竜(帰ってきたウルトラマン)
怪獣攻撃隊MAT日本支部の2代目隊長。
加藤勝一郎前隊長の元上官で、彼の後任としてニューヨーク本部から転任して来た。
実戦経験も豊富でパイロットの腕は一流。信州の実家に妻と一人娘がいる。
○日浦晴光(ウルトラマンコスモス)
国際的科学調査組織SRCの精鋭部隊・チームEYESの隊長。
SRCの研究員出身で、理系の頭脳と豪快な行動力を兼ね備え、
部下に慕われる大らかさの反面、断固として上層部に意見する果断さも持ち合わせる。
○アイハラ・リュウ(ウルトラマンメビウス)
サコミズ・シンゴ前隊長の後任として隊員から昇格したCREW
GUYS JAPAN隊長。
隊員時代から「地球は地球人の手で守る」という信念を強く持った熱血漢で、
ヒビノ・ミライ隊員=ウルトラマンメビウスとは初期の確執を越えて厚い友情で結ばれた。
△岸田長官(帰ってきたウルトラマン)
MATの岸田文夫隊員の叔父でもある地球防衛庁長官。
融通の利かない古風な軍人気質で、常に世論を気にして再三MATに解散を迫る。
△佐竹参謀(帰ってきたウルトラマン)
岸田長官の部下で地球防衛庁の参謀。
岸田と同じく常に世論を第一に考える傾向がある 。
最終更新:2020年10月29日 10:08