本編835~838

『正義の旗の下に その名はブレイバーズ』-6

 作者・ティアラロイド
835

地球・ジブラルタル基地***


イカロス基地での敵の襲撃をかわし、星間評議会からの特使一行と
それを護衛する宇宙艦隊は、その後何事もなく無事に地球へ入り、
イベリア半島のジブラルタル宇宙軍港へと到着していた。
無論、シン・アスカたちザフトのミネルバ隊も一緒である。

星野「プリンセス、しばらくこの基地に滞在して、
 長旅の疲れを癒されますか?」
火球皇女「先ほども申したとおり、わたくしたちにはゆっくりしている暇は
 ありません。受け入れ側の地球の皆さんにもお手数をかけますが、
 このまま真っ直ぐ地球連邦の首都へと向かいましょう」

ふと、火球皇女は、自分たちの歩く両脇を整列して
敬礼しながら見守る警備の兵士たちの中に、
シンたちミネルバ隊の姿に気づき、近寄って声をかける。

火球皇女「ザフトのミネルバ隊の方々ですね?」
シン「はい、副使閣下。ザフト軍ミネルバ隊所属、シン・アスカであります」
レイ「同じく、レイ・ザ・バレルであります」
ルナマリア「同じく、ルナマリア・ホークです」
火球皇女「イカロス基地でのあなた方の奮戦。とくと見させていただきました。
 お話はすでに聞き及んでいるとは思いますが、今、宇宙と地球の間で
 合同の特務組織の設立の準備が進んでいます」
レイ「その件は我々も存じております」
火球皇女「その設立の際には、あなた方にも何卒協力をお願いします」
大気「プリンセス、そろそろお時間が…」
火球皇女「…わかりました。それでは皆さん、ごきげんよう」

火球皇女はシンたち一礼して、用意されていた黒塗りの車へと乗り込み立ち去った。
星間評議会の特使からわざわざ声をかけられ、鼻高々で満面の笑みを浮かべるシンだが、
ルナマリアだけがなぜか一人浮かない顔をしている。

レイ「…どうした、ルナマリア?」
ルナマリア「あの皇女様のお付きのサングラスをかけた3人、
 どこかで見かけたことがあるのよねぇ…」
シン「なんだって?」
ルナマリア「よく思い出せないんだけど、
 以前に確かテレビか何かに出てたような…」
レイ「そんなはずはない。彼らは太陽系から離れた遠い異星の人間だ。
 地球のテレビに出演したことなどあるわけが…」
ルナマリア「それはそうなんだけれども…」
シン「………」

一方、火球皇女一行を乗せた、走行中の車の車中では…。

夜天「あのショートヘアの女の子、僕らの事に感づいてたみたいだね」
大気「解散したとはいえ、地球でのスリーライツの人気もまだまだ衰えてはいなかった
 ということでしょうか。悪い気はしません。星野、貴方はどう思います?」
星野「………」

大気の隣の席に座っている星野は、さっきからボーッとしたように
車窓の外をずっと見つめている。

大気「星野?」
星野「……え!? あ…すまん。ついボーッとしてた」
夜天「星野はどうせまた、あの地球のお団子頭のお姫様の事でも考えてたのさ」
星野「バカ言え。あんなお団子頭、ピーピー五月蝿いだけで
 顔を見ただけでもうんざりするよ。それに、彼女には立派な彼氏もいるしな…」
大気「またうさぎさんたちに会えるかもしれませんね」
星野「そういや夜天」
夜天「なんだよ?」
星野「イカロス基地で俺たちを襲ったテロリストの指揮官の機体だけどな。
 あれって名称は"夜天光"って言うらしいぜ!」

星野の一言に、夜天はムッとして顔を曇らせる。そして一言つぶやく。

夜天「……趣味悪いね」

836

地球連邦政府首都・ダカール***


西アフリカ・サハラ砂漠の西南端に位置するセネガル共和国の首都ダカール市。
この都市には地球連邦の大統領府と連邦議会も置かれており、
仮大統領府や諜報部プリベンター本部のあるブリュッセルや、マクロス・シティのあるアラスカ、地球国王の住む宮殿キングキャッスルの所在する中の都などと並び、
事実上地球連邦の首都機能の一翼を担っている。
過去にはシャア・アズナブルの演説の舞台ともなった場所である。

地球連邦・大統領官邸***


到着した星間評議会の全権特別使節団の持つ会談場へと急ぐ面々。
地球連邦大統領ロゼ・アプロヴァール、同外務次官リリーナ・ドーリアン
アレクサンドラ政府広報官、そして地球安全評議会のメンバーでもある
スーグニ・カットナル上院議員、他数名の政府スタッフたちである。

アレクサ「お急ぎください大統領。特使一行はすでに
 会談場所にてお待ちです」
カットナル「予定では明日のはずではなかったか?」
リリーナ「イカロス基地襲撃の件で、星間評議会側も
 焦っているのかもしれません」
ロゼ「………」

アプロヴァール大統領以下地球側メンバーは正面の大きなドアをくぐり
用意されていた会談場所へと入る。待っていた特使側は一斉に起立して出迎える。

リリーナ「皆様、お待たせいたしました。こちらが地球連邦大統領、
 ロゼ・アプロヴァール閣下です」
ロゼ「ロゼ・アプロヴァールである。なにぶんよしなに」
リリーナ「地球連邦を代表して、皆様を謹んで歓迎申し上げます」
アルマナ「お初にお目にかかります。星間評議会特別使節正使、
 アルマナ・ティクヴァーと申します」
火球皇女「同じく副使、火球皇女と申します。地球連邦大統領閣下に
 お会いでき、誠に光栄に存じます」
アルマナ「この度はご無理を申し上げ、会談の予定を前倒ししていただき
 申し訳ございません」
ロゼ「お気遣いはご無用。この度の会談の重要性は
 当方も充分に理解している」
アルマナ「つきましては、星間評議会最高議長、ユーガー王子殿下の親書に
 お目をお通しいただきたく」

そういうとアルマナはお付きの侍従に命じて、恭しく親書が収められた箱を取り出し、
それを地球側へと差し出す。

リリーナ「確かに受領いたします」

リリーナが侍従から箱を受け取り、丁寧に箱から親書を取り出して拡げ、
地球側メンバーが次々とじっくり回し読みしていく。

ロゼ「ご用向きの件、しかと承った」
カットナル「すでにこの件は剣日本国首相、ウィルソン米国大統領と宇宙警察機構との
 事前折衝も進んでいたこともあり、地球側としてもお申し出の儀に異存はない」
アルマナ「では直ちに共同声明に調印を――」
ロゼ「――その前に!」

アルマナの言葉を突然ロゼ・アプロヴァールが遮る。

ロゼ「その前に、確認しておきたい事がある」
アルマナ「………」
火球皇女「なんなりと」
ロゼ「現在、星間評議会では従来の宇宙警察機構や、サイバトロンの戦力を中心とする
 宇宙平和連合以外にも、独自の常備軍を創設するための動きが進められているという
 情報を当方は確認しているが、本当かい?」

地球側からの突然の意外な問いかけに、戸惑う特使側。
それは外宇宙の軍事的な勢いや思惑に地球人が飲み込まれ巻き込まれるのではないかという
地球側の当然の懸念でもあった。

火球皇女「確かに、現在星間評議会の一部にそのような主張をする者達がおります。
 ですが、それは星間評議会の総意ではなく、また、今回の計画とも一切関わりはございません」
アルマナ「何卒ご懸念なきよう」
ロゼ「わかった。両皇女殿下の言葉を信じよう。直ちに最高議長殿下への返書をしたため、
 共同声明に調印する」
アルマナ「ありがとうございます!」
火球皇女「感謝します。大統領閣下!」

アルマナも火球皇女も、会談の成功を受け一様に喜びの表情を浮かべる。

ロゼ「アレクサや」
アレクサ「はいここに、大統領閣下」
ロゼ「今夜の公式会見でマスメディアに向けて発表をしておくれ。
 地球と宇宙の平和を守る"勇気ある者たち"――ブレイバーズの創設を!」

837

地球と外宇宙による、種族・官民・専門分野を超えた合同防衛組織の設立。
そのビックニュースは瞬く間に地球上を駆け巡った。

日本・富士山麓 光子力研究所***


甲児「ブレイバーズ?」
弓「ああ、それが新しい部隊名だそうだ」

ニュースでの報道と、連邦政府からの通達を
弓教授から聞かされる兜甲児たち。

甲児「チェッ、今回は俺達に相談なしか。
 今度こそ"兜甲児と愉快な仲間達"にしようと思ってたのによぉ」
シロー「今回? 今度こそ?」
甲児「あ、いやいや…何でもねえ」
さやか「な~にが愉快な仲間達よ。そんなの言いにくくてしょうがないわ」


サイド1コロニー・ロンデニオン ロンド・ベル隊基地***


休憩室でコーヒーを片手に一服している最中に、
ブレイバーズ設立の報せに接したアムロたち。

エマ「アムロ大尉はどうです?」
アムロ「正直言って、俺は"ロンド・ベル隊"が馴染んでいてね。
 でも"ブレイバーズ"か…。悪くはないな」


ベルギー・ブリュッセル プリベンター本部***


カトル「"ブレイバーズ"ですか。なかなかシャレてて
 新しい部隊名としてはいいと思います。ちなみにヒイロや
 五飛は何か考えていましたか?」
ヒイロ「………"ゼロ"…」
デュオ「味気ねえ~! しかも、それ…お前の機体名だろうが。もう少しひねれよ、もう少し」
五飛「…(…"ナタク"…は言わないでおいた方がいいようだな)」


ブレイバーベース(日本海溝を移動中)***


今日という日のために密かに建造されていた、
超巨大海底移動要塞・新拠点『α』。
新部隊ブレイバーズの正式発足に伴い、
その名称を"ブレイバーベース"と改めた。
司令室を多くの科学陣スタッフたちが忙しく往来する中、
一人感慨深げに佇む総責任者・佐原博士。そこへギルモア博士が寄り添う。

ギルモア「ついにようやくこの日が来たのう」
佐原「いよいよだ。いよいよこれから本当の戦いが始まる!」

838

○正義側組織ブレイバーズが正式発足。
○星野光→地球に到着。
○夜天光→地球に到着。
○大気光→地球に到着。
○火球皇女→地球に到着。地球側首脳と会談。ブレイバーズを発足させる。
○シン・アスカ→地球に到着。
○ルナマリア・ホーク→地球に到着。
○レイ・ザ・バレル→地球に到着。
○アルマナ・ティクヴァー→地球に到着。地球側首脳と会談。ブレイバーズを発足させる。
○ロゼ・アプロヴァール→星間評議会特使と会談。ブレイバーズを発足させる。
○リリーナ・ドーリアン→星間評議会特使と会談。ブレイバーズを発足させる。
○スーグニ・カットナル→星間評議会特使と会談。ブレイバーズを発足させる。
○アレクサ→連邦政府広報官として、ブレイバーズ発足を全世界に向けて発表。
○兜甲児→ブレイバーズ設立の報せに接する。
○兜シロー→ブレイバーズ設立の報せに接する。
○弓弦之助→ブレイバーズ設立の報せに接する。
○弓さやか→ブレイバーズ設立の報せに接する。
○アムロ・レイ→ブレイバーズ設立の報せに接する。
○エマ・シーン→ブレイバーズ設立の報せに接する。
○ヒイロ・ユイ→ブレイバーズ設立の報せに接する。
○デュオ・マックスウェル→ブレイバーズ設立の報せに接する。
○カトル・ラバーバ・ウィナー→ブレイバーズ設立の報せに接する。
○張五飛→ブレイバーズ設立の報せに接する。
○アイザック・ギルモア→ブレイバーズ設立の報せに接する。
○佐原正光→ブレイバーズ設立の報せに接する。

【今回の新規登場】
○アレクサ(トランスフォーマー マイクロン伝説/同スーパーリンク)
 地球連邦政府広報官。ラッドの親友の一人。少女時代は勝ち気な性格で、
 大統領になるのが夢で勉強に励んでいた。 デストロンから脱隊した
 スタースクリームと最初に友情を結んだ。主に政府とサイバトロンとの
 間の連絡役を務める。ちなみに"アレクサ"はニックネームであり、
 本名は"アレクサンドラ"である。

○エマ・シーン中尉(機動戦士Zガンダム)
 エゥーゴの女性士官。元々はティターンズの一員だったが、やがてティターンズという組織に疑問を抱き、乗機のガンダムMk-IIごとエゥーゴに参加する。

初めはアーガマに乗艦していたが、後にラーディッシュに移る。
 生真面目さと短気さと気難しさが同居したような性格。

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最終更新:2020年11月19日 07:37