本編1276~1281

『光平、慎哉、優香、三人の友情と絆』-1

 作者・ティアラロイド
1276

埼玉県内の某採石場 Gショッカー秘密基地***


ここは埼玉県の中心部から離れた採石場の地下に秘密裏に建設されていた、
Gショッカーの出先の秘密作戦基地である。

アポロガイスト「なんだこれは…」

アポロガイストは、目の前の戦闘員や科学者の死体の山に絶句する。

実はここ最近、関東地方各地に築かれた幾つかの前線基地において、
戦闘員や科学陣スタッフのうち何名かが連続して
何者かに襲われ変死するという事態が続発していた。
それも基地内にいた全員が皆殺しにされたのではなく、
まるで襲撃の際に選別でもしたかのように、
一定の数の基地要員が殺害されていたのである。

いずれのケースも監視カメラには何も映ってはおらず、
犯人の正体は未だ不明。そのため、こうしてGショッカー
秘密警察長官であるアポロガイストが自ら直々に
現場検証へと赴いてきたのであるが…。

アポロガイスト「警備隊長、生き残った戦闘員や科学者たちは
 全員検束してあるな?」
GP隊長「ハッ! その点は抜かりなく!」
アポロガイスト「死亡した戦闘員たちのリストをまとめて、
 至急、私のオフィスまで持ってこい!」


無幻城・秘密警察長官執務室***


部下に命じて取り寄せた被害者リスト全てに
丹念に目を通しているアポロガイスト。

アポロガイスト「やはりそうか…間違いない。今回の件でも
 襲われたのは、黄泉がえり現象で生き返った後に、
 Gショッカーに再合流した者たちばかりだ。
 いったいどこの何者がそんな手の込んだ真似を…」

普通、外見だけで「黄泉がえり現象で生き返った者」を見分けるのは
まず難しい。無理と考えてもいいだろう。わざわざそんな
手間のかかる真似までして、黄泉還った組織構成員ばかりを
襲うとは、いったい犯人にどんな利益があるのだろうか…?

灰色の老人「お取り込み中かの?」
アポロガイスト「…貴様か?」

秘密警察長官の執務室に入って来た、
灰色の顔に、よれよれの黒いモーニングコートを着込んだ老人。
この老人こそ、Gショッカー秘密警察に所属し、
今は地球遠征軍本部であるこの無幻城の警備主任を務める、
GOD神話怪人・死神クロノスの仮の姿である。

アポロガイスト「銀帝軍ゾーンの銀河闘士モグラルギンと、
 ダーク・キングダムの妖魔ムーリドの不審死について、
 その後何か解ったか?」
灰色の老人「モグラルギンとムーリドの二名が
 それぞれブレイバーズに倒され戦死したのは
 確かなようじゃ。ただ……」
アポロガイスト「ただ…何だ?」
灰色の老人「この両件について、なぜかブレイバーズは
 厳重な情報統制を敷いておる」
アポロガイスト「情報統制だと…?」
灰色の老人「妙だとは思わんか?」

常日頃から「自由」や「平和」を口癖のように標榜する
ブレイバーズにしては、徹底した情報統制などという、
まるで専制国家のような手段をとるとは、確かに奇妙な話である。
しかもモグラルギンもムーリドも戦死している以上、
この件はもう終わっているのである。

アポロガイスト「なるほど。確かに普段からの連中にしては妙だな…」
灰色の老人「奴ら、よほど我らGショッカーに知られたくない事が
 あると見た方がよさそうじゃな」
アポロガイスト「これは俺自らが現場まで赴かねばなるまい」

1277

一方、その頃…。

日本海溝・ブレイバーベース***


ブレイバーズの基地・ブレイバーベースでは、
謎の敵イーバ、そしてシグフェルに関する映像の分析が
昼夜問わず続けられていた。佐原博士の長女である千恵隊員と
OO3がコーヒーを差し入れに持ってくる。

千恵「お父さん、皆さんもお疲れでしょう」
003「熱いコーヒーをお持ちしました」
佐原「ああ、気がきくね…」
ギルモア「すまんのう。そこに置いておいてくれんか」

司令部前の扉の前では、レッドマフラーの隊員たちが警備していた。

海野「交代の時間だ」
村中「異常なし!」

村中隊員と持ち場を交代する海野隊員。
ところが持ち場に着いた途端、背後から何者かに
いきなり銃を突きつけられた!

海野「――!!」
???「騒ぐな! 声を立てれば射殺する!」

あっという間に司令部の中へと押しまくられた海野隊員は、
司令部への侵入を許してしまう。
突然現れた謎の侵入者に、その時中にいた者は一斉に
銃を構えて警戒するが…。

009「――何者だッ!?」
???「貴様たちの警備はなっておらん!
 もし私がGショッカーの破壊工作員だったら、
 ここにいた博士たちは全員殺されていたところだ!」

侵入者の男は、持っていた銃を人差し指で
西部劇のガンマンよろしく回転させて
腰のホルスターにしまう。

村中「…あ、あなたは!」
海野「隊長!!」
???「明日からお前たちを徹底的にトレーニングする!
 覚悟していたまえ!」
003「佐原博士、これはいったい?」
佐原「ハハハ、相変わらず荒っぽいご登場だね、剣持君」
009「剣持…??」

侵入者の男の顔を見た途端、村中隊員と海野隊員の表情から
緊張が一気に解け、また佐原博士も笑顔で男を出迎えた。
その場に居合わせたゼロゼロナンバーサイボーグたちは
全員チンプンカンプンといった表情をしている。

剣持「レッドマフラー隊隊長、剣持保中佐、
 ただ今着任しました!」

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剣持保――殉職した前隊長・中井の跡を継いで就任した、
国際平和部隊レッドマフラー隊の現隊長。
巨人頭脳ブレインとの激戦を見事勝利へと導いた功労者でもある。
まだロゴスの勢力が日本に巣食っていた頃、三輪防人に睨まれて
危険なアフリカ戦線の僻地へと飛ばされていたのだが、この度
佐原博士の招聘に応じて、ついに日本に帰国したのだった。
(その際に剣持は、佐原博士から大佐への昇格を打診されたが、
これを固く固辞している…。)

009「……(この人が佐原博士の懐刀と恐れられた
 カミソリ剣持か…)」
003「……(目的のためなら手段を選ばない人だと
 聞いているけれど…)」

009たちは緊張した視線で、じっと剣持を観察している。

佐原「すまないが、これから剣持隊長と二人きりで話がしたい。
 みんなは席を外してくれないか?」
村中「わかりました」

佐原博士は村中隊員や009たちに人払いを命じると、
剣持隊長と二人きりで本題に入った。

佐原「アフリカではいらぬ苦労をさせてしまったね」
剣持「いえ、とんでもありません。こちらこそ、
 まだ暫くはアフリカ戦線に留まりたいという
 私の我儘を聞き届けてくださり、博士には感謝しています」
佐原「早速だが君に見せたいものがある」

佐原博士はモニターのスイッチを入れると、
紅蓮に彩られた装甲と翼をもつ異形の戦士の姿が
映し出された。

剣持「これが例のシグフェルですか?」
佐原「そうだ。新たに現れたイーバと呼称される怪物群に対し、
 今現在のところ唯一対抗できる力を持つと見られる謎の戦士だ」
剣持「………」
佐原「今後ブレイバーズがイーバの脅威に対抗するためにも、
 シグフェルはなんとしても味方につけたい」
剣持「確かにその通りですな」
佐原「そこで剣持隊長、君にはこのシグフェルの追跡、
 及び捕獲のための任務に就いてもらいたい」
剣持「わかりました。ですが博士、もしそのシグフェルが
 我々の敵だと判明した場合はどうしますか?」
佐原「………」

剣持の問いに、佐原博士は暫しの間沈黙した後、
こう答えた。

佐原「その時は抹殺するしかないだろう…」

1279

海防大付属高校・校舎裏自転車置き場***


慎哉「なんだよ沢渡、話って…」
優香「ねえ朝倉くん、最近なにか光平くんに
 変わった事はない…?」

その日の放課後、部活の練習中に
沢渡優香はこっそり朝倉慎哉を校舎裏へ呼び出した。
慎哉は片手にラケットを持ったテニスウェア姿、
優香も陸上部のウェア姿である。

慎哉「何って…別に何も」
優香「そう、ならいいんだけど…」
慎哉「俺、部活の練習あるから、もう行くぜ」
優香「うん。急に呼び出したりして、ゴメンね」

その場は別れる二人。優香には、一週間前での
お台場で牧村光平とデートした日の夜、人のいない浜辺で
いきなり号泣していた光平に抱きつかれた記憶が
今も脳裏に残っていた。

優香「……(確かに今朝も通学路で会った光平くんは
 いつも通りだった。でも、どこか無理してるような
 気がする…)」


同校・男子硬式庭球部テニスコート***


部員たちが互いにサーブを撃ち合い練習している中、
慎哉がコートに戻って来た。

光平「…慎哉? どこ行ってたんだよ!
 主将(キャプテン)カンカンだぜ」
慎哉「今、沢渡に呼ばれていろいろ聞かれた…」
光平「えっ…」

慎哉から聞いた光平の表情が一瞬曇る。

慎哉「どうするんだ光平? いつまでも
 沢渡に隠し通してはおけないぜ」
光平「………」

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実は3日前の出来事である…。

◇  ◇  ◇

その日の夜更け。光平がまるで何かに導かれるように
密かに家を抜け出したことに偶然気がついた慎哉は、
その後を追った。

慎哉「光平のヤツ、いったいこんな夜遅くに
 どこまで行くんだ…?」

そこで見てしまったのである。
光平が大きな翼をもつ異形の戦士に姿を変え、
蜥蜴のような化け物と戦っている様子を…。

リザードマンイーバ「グギャアアァァッ―!!!!!」

その蜥蜴の怪物は、光平の変身した姿=シグフェルの灼熱の炎に焼かれ
苦痛の雄叫びを上げながら爆発四散したが、一部始終を見ていた慎哉は
当然の如く悲鳴を上げて腰を抜かした。その気配にシグフェルが気づいてしまう。

シグフェル「――慎哉!?」

シグフェルは慌てるように変身を解除し、元の光平の姿に戻る。
しかし時すでに遅く、全てを慎哉に見られてしまった後だった。
腰を抜かしたままの慎哉が、異形の姿に化身した自分を
奇異の目で見つめていることは、光平にもよく解っていた。
光平は悲しい表情を見せたまま、何も言わずに無言でその場を立ち去った。

慎哉「………」

一方の慎哉は事態を理解できず、しばらくは驚愕と恐怖のあまり、
一言も言葉を発せられず、ピクリとも動くことはできないでいた。
しかしそんな慎哉が思い直したのは、去り際の光平の悲しそうな目を見たからだった。
なんとか自分を奮い立たせ、急いで家へと戻る慎哉。
案の定、光平は荷物をまとめて朝倉家から出ていくところだった…。

慎哉「光平、お前どこ行く気だよ!」
光平「…慎哉? ごめん。やっぱりこんな化け物と
 一緒に暮らすのは嫌だよな…。出ていくよ。
 しばらくは沖縄のじいちゃんのところにでも
 身を寄せようと思う。今までありがとなっ…」
慎哉「バッキャロウウッッッ!!!!!」
光平「……うっ!?」

慎哉はいきなり光平にタックルをかます。

光平「…慎哉!?」
慎哉「ああそうだよ! 確かに今のお前は鳥の化け物かもしれない!
 でも人間だろうと化け物だろうと、光平は光平だろ!!」
光平「………」
慎哉「お前はうちの大事な居候だ!
 居候が家主に無断で勝手に出ていくな!」

光平は、慎哉に今までの事を全て打ち明けた。

慎哉「そんなことが…」
光平「どうやら東条寺は俺の肉体に何か細工をしたらしい。
 いや、本当は細工なんて生易しいもんじゃないのかもしれない」
慎哉「これからお前、どうするんだよ…?」
光平「俺の頭の中に響いて来るんだ。
 あの化け物たちを倒せって声が…」
慎哉「それでお前、これからもあの怪物たちと
 戦い続けるっていうのか!?」
光平「本能の赴くままに戦っていれば、
 いつかは俺の変わってしまった身体の秘密も
 わかるかもしれない…」
慎哉「………」
光平「それと慎哉、お願いがあるんだ」
慎哉「なんだよ?」
光平「優香にはこの事は黙っててくれ」
慎哉「えっ」
光平「優香がこの事を知ったら、
 きっと自分のせいだと負い目を感じる。
 俺は彼女にそんな辛い思いはさせたくない…!」

◇  ◇  ◇

3日前の夜の事を回想する光平と慎哉。

慎哉「なあ、やっぱり沢渡にもこの事は
 話した方がいいんじゃ…」
光平「ダメだっ! 優香にだけは
 絶対に知られたくはないんだ…!」
慎哉「光平……」

慎哉は、ただ黙って事態の推移を見守るしかできなかった…。

1281

○佐原正光→剣持隊長にシグフェルの追跡及び捕獲(場合によっては抹殺)を指示。
○剣持保→アフリカから日本に帰国。佐原博士からシグフェルの追跡及び捕獲(場合によっては抹殺)を指示される。
○村中隊員→剣持隊長と再会。
○海野隊員→剣持隊長と再会。
○佐原千恵→剣持隊長と再会。
○アイザック・ギルモア→シグフェルやイーバに関する分析を進める中、剣持隊長着任の場に居合わせる。
○009/島村ジョー→剣持隊長着任の場に居合わせる。
○003/フランソワーズ・アルヌール→剣持隊長着任の場に居合わせる。
●アポロガイスト→関東圏でのGショッカー構成員連続怪死事件の捜査を行う。
●死神クロノス→銀河闘士モグラルギンと妖魔ムーリドが戦死した状況について調査を行う。

○牧村光平→朝倉慎哉に変身を見られ、全ての事情を打ち明ける。
○朝倉慎哉→シグフェル変身の瞬間と戦いの現場を目撃。牧村光平から事情を全て打ち明けられる。
○沢渡優香→牧村光平を心配する。
●リザードマンイーバ→シグフェルに撃破される。尚、関東各地のGショッカー基地を
 襲っていたのは、この怪物の模様。

【今回の新規登場】
○佐原千恵(大鉄人17)
 佐原正光博士の長女。レッドマフラー隊員でもあり、主に通信班として活動する。
 剣持隊長の前任者であり戦死した前隊長・中井の婚約者だった。
 既にこの世を去っている母の代わりに佐原家の家事全般もこなしている。
 南三郎からは「千恵姉さん」と呼ばれることもある。

○村中隊員(大鉄人17)
 レッドマフラー隊の一員。剣持隊長が不在の際は、隊長代行を務める。
 幼いころ炎に巻かれて死にかけたことがあり、その時の恐怖がまだ残っていたが、
 後に克服した。また大学で未来科学を専攻し、佐原博士の助手を志願して
 レッドマフラー隊に入隊したことから、ワンセブンの体内に入り、
 修理を行なった経験もあり、佐原博士がワンエイトからサタン回路を
 取り外す際も助手を務めている。

○海野隊員(大鉄人17)
 レッドマフラー隊の一員。明るくお調子者で、
 南三郎に対しても面倒見の良い人物。
 岩山鉄五郎(ガンテツ)から「豆狸」と呼ばれている。

●リザードマンイーバ(闘争の系統オリジナル)
 堕神の使徒で、蜥蜴人間の姿にメカの装甲が融合したような姿をした怪物。

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最終更新:2020年11月26日 10:11