本編1282~1291

『光平、慎哉、優香、三人の友情と絆』-2

 作者・ティアラロイド
1282

原宿・竹下通り***


その日の休日の昼、沢渡優香はクラスメイトの瑠奈と柚希と共に
三人で原宿でのウィンドウショッピングを楽しんでいた。
屋外席で注文したクレープを口にしながら、
ガールズトークに花を咲かせる女の子たち3人。

瑠奈「アタシは断然ザ・ハーツ派よ!」
柚希「えーっ、私はANGELの方が好きだなあ」
瑠奈「なんでよ~!? 完成されたアイドルであるザ・ハーツに比べて
 ANGELはまだまだ発展途上って感じじゃない」
柚希「わかってないなあ瑠奈は。そこがまたこの先の成長の夢があって
 可愛いんじゃない! 特に疾風くんが!」
瑠奈「ザ・ハーツの藤丸くんの方が可愛いわよ!」
柚希「ねえ、優香はどう思う?」
優香「………」

瑠奈と柚希が互いの応援しているアイドル談義で夢中になる中、
さっきから優香はクレープ片手にずっとボーッとしていた。
クレープの中のアイスが溶け始めている事にも全く気付いていない様子である。

瑠奈「優香、話聞いてる?」
優香「……えっ! あ、ごめん。何の話だっけ?」
柚希「優香、最近元気ないみたいだよ。
 もしかして光平くんと喧嘩でもした?」
優香「そんなこと、ないけど……」

優香の自信なさげな返事に、瑠奈と柚希も
「あー、これは何かあったな」と女の勘ですぐに察した。

瑠奈「優香、こういう時は"当たって砕けろ"だよ」
柚希「光平くんと何があったかは知らないけどさ、
 いつまでもウジウジしててもしょうがない!」
瑠奈「思い切って光平くんに自分の思いをぶつけてみなよ」
優香「当たって砕けろ、か……」


江東区豊洲・住宅街 朝倉家前***


優香「瑠奈と柚希のアドバイスにも一理あるかも…。
 なんだか人の家を覗き見してるみたいでイヤだけど、
 こうして朝倉くん家を見張っていれば、そのうち
 何かわかるかもしれない…!」

その日の夜、優香は電柱の陰に隠れて
こっそり朝倉家の様子を監視した。
一方、その頃…。

1283

光平「――!!」

家の中では、光平が何かを感じ取ったかのように
突然立ち上がった。

慎哉「光平、行くのか?」
光平「…ああ、奴らが来た!
 ごめん慎哉、あとの事は頼む」

光平は2階のベランダへと上がると、
両腕を大きく動かし変身のポーズを取る。

光平「――翔着(シグ・トランス)!」

シグフェルの姿に変身した光平は、
目的の場所に向かって一目散に飛び立った。

慎哉「光平、気をつけてこいよ…」

心配しながらもシグフェルを見送る慎哉。
そんな時、1階の玄関のドアからチャイムが鳴る音がした。

慎哉「誰だろう、こんな時間に…??」

玄関を開けた慎哉は驚く。
目の前には沢渡優香が立っていたのだ。
優香の顔は、何か信じられないものを見たという、
凍りついたような困惑の表情をしている。

慎哉「…さ、沢渡!? お前、こんな時間に
 いったい何しに来たんだ!」
優香「朝倉くん、今のは…なに?」
慎哉「え…」

◇  ◇  ◇

現場作業員「ひ、ひええ~!! た、助けてくれええっ!!」
ホブゴブリンイーバ「グァァァァッ…!!」

下水道工事の現場作業員の男が、
トゲのついた鉄球で武装した怪物=ホブゴブリンイーバに襲われている。
以前に出現したゴブリンイーバを少し長身にしたような姿の、
新種のイーバである。

ちなみにこの現場作業員の男、実は以前にも同じ深夜の作業中に
偶然ショッカーの作戦行動を目撃してしまい、口封じに
怪人の溶解液で溶かされてしまったのだが、幸運にして
黄泉がえり現象で復活できた人物だった。

現場作業員「ちくしょー! この野郎!」

現場作業員の男は果敢にも鉄製のシャベルを片手に挑むが、
ホブゴブリンイーバにシャベルを簡単に叩き折られてしまう。

ホブゴブリンイーバ「グァァァァッ…!!」
現場作業員「ああ、もうダメだぁ~!
 ついてねえ…。せっかく生き返れたのに…。
 母ちゃん! 息子! また父ちゃんの先立つ不幸を
 許してくれ~!!」

現場作業員の男が諦めかけたその時、
颯爽と間に降り立ったのが、紅蓮の翼の戦士シグフェルだった!

ホブゴブリンイーバ「グァァァァッ…!?」
現場作業員「――な、なんだぁ!?」

シグフェルは現場作業員の男を庇うようにして
ホブゴブリンイーバと戦う。

シグフェル「早く逃げて!」
現場作業員「…だ、誰だか知らないが、恩に着るぜ!
 ありがとよっ!!」

現場作業員の男はお言葉に甘えるとばかり、
さっさとその場から逃げだした。

1284

ホブゴブリンイーバ「シィグゥフェェルゥゥッ…!!」

ホブゴブリンイーバは鉄球を振り回して襲ってくる。
それをものともしないシグフェルは、相手に対して左手で正拳突き、
そして右手で上段への正拳突きを行う。
斜め上空に吹っ飛ばされるホブゴブリンイーバ。

ホブゴブリンイーバ「グァァァァッ…!?」
シグフェル「今だ! くらえ!!」

シグフェルはジャンプすると、全身に灼熱の炎を纏って、
敵に対して強力な飛び膝蹴りをお見舞いした。

ホブゴブリンイーバ「グギャアアァァ――!!!!!」

ホブゴブリンイーバは木っ端微塵に爆発して果てたのだった。

シグフェル「小さい頃に沖縄のじいちゃんから習った
 琉球空手がこんなところで役に立つなんてな…」

普段の牧村光平の学校でのスポーツ部活動はテニス部だが、
父方の祖父が農業の傍ら琉球古武術の道場を開いていたこともあり、
以前から光平はそこそこの格闘技の心得も修得していた。
まだなんの武器も持っていないシグフェルにとって
戦闘での頼りとなるのは己の肉体と拳だけなのである。

――その時だった!
突然、シグフェルを周囲から幾つもの眩しい照明が照らしたのは…。

シグフェル「――!!」

気がつくと、いつの間にかシグフェルは軍の装甲車両と思しき部隊と、
赤いマフラーを身に付けた多数の兵士たちに包囲されていたのだ。
一人の兵士が銃口をシグフェルに向けようとするが、隊長らしき人物がそれを制止する。

剣持「よせ! 銃を向けるな!」
兵士「しかし剣持隊長…」
剣持「俺がいいと言うまで発砲は断じてならんぞ!」

剣持と呼ばれた隊長は、拡声器のマイクを取って
シグフェルに呼び掛ける。

剣持「シグフェルに告ぐ。我々は地球連邦軍国際平和部隊、
 レッドマフラーに所属する剣持隊だ。我々は君に危害を加える
 つもりは毛頭ない! 君とじっくり話がしたい!」
シグフェル「………」

だがシグフェルは、剣持の呼びかけを無視して
翼を広げてあっという間に夜空の彼方に飛び去ってしまった…。

村中「隊長、追わなくていいんですか?」
剣持「構わん。今日のところは挨拶だけでいい。
 シグフェル…奴さんとは長い追いかけっこになりそうだな」

1285

戦いが終わって朝倉家へと戻って来たシグフェル=光平は驚愕した。
何しろそこには、恋人の沢渡優香がいたのだから…。

光平「――優香!?」
慎哉「ごめん、光平…。沢渡に全部見られた…」
光平「………」

光平は目の前が真っ暗になった。
迂闊だった。まさか優香が家の近くまで来ていたとは…。
変身する際に、もう少し警戒するべきだった。
しかし、もう後の祭りだ。

優香「光平くん! どういうことなの! 説明して!!」
光平「優香……」

やむを得ず、光平は慎哉と共に、
優香を家の近くの公園まで連れだし、
全ての事情を包み隠さず説明した。

優香「そんな……!」

あの忌まわしい落雷事故があった日、
光平は自分の身代わりとなったばっかりに、
人間ではない異形の姿へと変貌してしまった。
本来であればそんな話はとても信じられない、
いや、信じたくなどないであろう。
しかし、目の前の現実を目の当たりにした以上、
全てを受け入れざるを得なかった。

優香「私のせいだわ…!
 私のせいで光平くんの身体が
 こんなことに!!」
光平「落ち着くんだ優香!
 あの時先に身代わりをと言いだしたのは
 俺の方じゃないか! 優香は決して
 何も悪くなんかないっ!!」
優香「でもっ…!でもっ…!」

話を聞いたショックでその場に崩れ落ち、
わっと泣き出した優香を懸命に慰めようとする光平。
だが、光平は次に意外な一言を言いだした。

光平「優香、落ち着いて聞いてくれ…」
優香「………」
光平「別れよう…」
優香「えっ…」

これには、優香のみならず、側にいた慎哉も
驚きの表情を隠せない。

慎哉「お前、いきなり何言い出すんだっ!!」
光平「もう俺はこんな肉体になっちゃったからさ…。
 今まで通り優香と付き合う事はできない。
 きっと優香には俺なんかよりもっと相応しい
 彼氏が見つかるよ」

光平の言葉に反応した優香は、ゆっくりと立ち上がる。

優香「そうだよね。私のせいで…そんな怪物みたいな
 身体になっちゃったんだもんね…。恨まれても
 仕方がないよね…」
光平「違う! そんなんじゃないんだ!
 俺はただ、お前を危険に巻き込みたくないだけで――」
優香「――さよならっ!!」

優香は泣きながら走り去っていった。
光平はその様子をただ茫然と見ながら立ち尽くすのみだった。

慎哉「なにボーッと突っ立ってんだ光平!!
 早く追いかけろよ!!」
光平「………」
慎哉「…見損なったぜ!」

慎哉は光平に対して吐き捨てるように言う。
それでも光平は、優香が走り去った方向を
ただ涙を流しながら見つめているしかできなかったのである。

1286

次の日の夕方、優香は自宅の近所の公園のブランコに
静かに佇んでいた。

優香「当たって、見事に砕けちゃったな……」

優香はうっすらと両眼に涙を浮かべながら、、
光平と初めて会った日の事を思い出す…。

◇  ◇  ◇

まだ中学三年生だったセーラー服姿の沢渡優香は、
模試会場へと向かう途中、苦しみうずくまっている老婦人と遭遇した。

優香「すみませーん! 誰か助けてください!!」
老婦人「ううっ…」

都会の雑踏の中、通行人たちは皆冷たいように無視して去っていく。

優香「……(どうしよう! 救急車を呼ぼうにも
 携帯を家に忘れてきちゃったし…!)」

そんな時、困り果てる優香に声をかけて来たのが、
学ラン姿の牧村光平だった。

光平「あの…どうしました?」
優香「このおばあさんが苦しそうなんです!」
光平「どれ、手を貸して!」

光平は老婦人を背負うと、近くの病院まで駆け込んだ。
ナースの話では、あともう少し病院に運ばれるのが
遅かったら、危なかったらしい。
光平と優香のおかげで老婦人は一命を取り留めたのだった。

優香「よかった…」

優香はホッと胸をなでおろす。

光平「じゃ、俺はこれで…」
優香「あっ、待ってください!」

せめて名前くらいは聞いておこうと、
優香は去ろうとする光平を慌てて呼びとめる。
振り返った光平を、優香はただじっと見つめている。

優香「………」
光平「なに? 俺の顔に何かついてる?」
優香「…あ、その、ごめんなさい。
 あなたの瞳がとってもきれいだったものだから」
光平「ああ、これか…」

光平は困ったように表情を曇らせて、目を逸らす。
日本人とアルジェリア人の混血である光平は、
生まれた時から瞳の色が翠色だった。
そのため周囲から偏見の目で見られ、
小さい歳から辛い思いをして育って来たのだ。

光平「気味が悪いだろ。日本人なのに
 両目が翠色なんてさ…」
優香「そんなことない! とってもきれいだよ!」
光平「えっ…」

光平にとっては初めて聞く言葉だった。

光平「初めてだな。女の子から
 そんな風に言われるなんて」
優香「私、沢渡優香と言います。あなたは?」
光平「牧村…光平…」

こうして二人の交流が始まった。
その日、光平は優香と同じ模試会場に向かっていたのだが、
揃って遅刻し、模試は欠席扱いの上不合格となった。
しかし受験で同じ海防大付属高を目指していた事が分かり、
二人は意気投合して徐々に仲良くなっていった。
そして海防大付属高に無事合格、晴れて同じ学校に通う
高校生となってから、二人は正式に交際を始めたのだった。

◇  ◇  ◇

慎哉「沢渡…」
優香「朝倉…くん?」

優香は慎哉がやって来た事に気づく。

慎哉「家の人に聞いたら、ここにいるって聞いたからさ…」
優香「そう…」

優香は力なく答える。

1287

慎哉「あいつの気持ちも解ってやってくれ。
 光平はこれからも妙な怪物と戦い続けなきゃならないんだ。
 だからお前を危険に巻き込みたくないんだよ!」
優香「そうだよね…。私なんか、もうただの
 足手まといだもんね…」
慎哉「そう言うお前の気持ちはどうなんだよ?」
優香「………」
慎哉「光平が鳥の化け物みたいな姿になっちまったから、
 もう…あいつのことが嫌いか?」
優香「――!!」

慎哉の問いに、思わず優香は激昂して反論する。

優香「そんな…そんなわけないじゃない!!
 私、今でも光平くんの事が好き! 大好きだよ!!
 たとえ怪物だろうが化け物だろうが関係ない!!
 光平くんは光平くんだよ!!」
慎哉「………」
優香「出来る事なら光平くんの力になりたい。
 その苦しみを分かち合いたい…!
 でも、今の光平くんになんて話しかけたらいいのか
 わかんないよ…」

慎哉はその言葉を待ってましたとばかりに、
ニヤリッと笑みを浮かべ、わざとらしく大声で叫ぶ。

慎哉「…だそうだ! 光平!!」
優香「えっ…!?」

驚いた優香が、慎哉が呼びかけた方向に視線を向けると、
滑り台の物陰から、申し訳なさそうな表情の光平が出て来た。

優香「光平くん!?」
慎哉「俺がアイツの首に紐をつけてここまで引っ張って来た」
光平「ごめん、優香。俺、お前の気持ちも考えずに
 勝手なこと言って…。俺が間違ってた」
優香「………」
光平「俺、今正直途方にくれてるんだ。
 こんな情けない俺だけど、助けてもらえるかな…?」

優香は嬉し涙を浮かべながら光平に飛びついた。
光平はそれをしっかりと抱きしめて離さない。

光平「好きだ、優香…!」
優香「私もだよ…」

慎哉はその光景を満足そうに眺めている。

慎哉「やれやれ、世話焼かせやがって…」

1288

朝倉家・リビングルーム***


優香「シグフェル…?」
慎哉「光平の変身した姿って、シグフェルって言うのか」
光平「うん…」

改めて朝倉家の居間に集合した三人は、今後の事を話し合う。

光平「あの怪物たちも、俺が遭遇した軍や警察の人たちも、
 みんな変身した俺の事を見てシグフェルって呼んでいたんだ…」
優香「それで、これからどうするの?」
光平「俺はとにかく、この変貌した自分の肉体の秘密を知りたい。
 もしかしたら俺が元の人間に戻れる方法がわかるかもしれない」
慎哉「それだったら、やっぱり東条寺の行方を探すのが第一じゃないか?」
優香「東条寺理乃…いったい今どこにいるのかしら?」

光平に謎の人体実験を施した張本人と思われる東条寺理乃は、
警察によって全国に指名手配されているが、今もまだ捕まってはいない。

光平「東条寺があの落雷事故で死んだとは、俺にはどうしても思えない。
 きっとあいつはまだ今もどこかで生きている…!」
優香「光平くん…」
慎哉「いいか、光平がシグフェルに変身できる事は
 ここにいる俺たち三人だけの秘密だ。約束だぞ!」
優香「うん、わかった!」
光平「ありがとう。慎哉! 優香!」

それぞれ右手を中心に差し出し、秘密を守る誓いを立てる三人。

今、世界は、正義のスーパーヒーロー軍団「ブレイバーズ
全宇宙制覇を狙う悪の組織大連合軍「Gショッカー」
地球至上主義者の連帯「ロゴス」など、
名だたる大勢力が群雄割拠している状況にある。
そこに新たに加わった、謎の怪物群=イーバ(EBE)の脅威。

そして今ここに、牧村光平、朝倉慎哉、沢渡優香という
たった三人の素人による高校生の同盟が、
戦いの列に名乗りを上げることとなったのだ。

1289

お台場イベント会場跡地***


すっかり寝静まった夜、妖魔ムーリドの事件以来
警察によって立ち入り禁止となっている区域に、
侵入した一人の男の姿があった
Gショッカー秘密警察長官アポロガイストの仮の姿である、
白いスーツの男である。

白いスーツの男「見たところ、別に不審な点は何も見当たらん。
 いったいここで何があったのだ…?」

じっくりと辺りを現場検証する白いスーツの男。
そこへ、何者かが近づく気配がした。

白いスーツの男「誰だ…?」

現れたのは、ダーク・キングダムの幹部・四天王のメンバーである、
ジェダイト、ゾイサイト、クンツァイトの三人だった。

白いスーツの男「これはこれは、ダーク・キングダム四天王のお歴々が
 こんな夜更けにわざわざ何の御用かな? もっとも、今は一人足りないようだが」
クンツァイト「………」
ゾイサイト「何の御用とはご挨拶ですわね…」
ジェダイト「この地は我らダーク・キングダムが任された作戦区域!
 いかに至高邪神直属の秘密警察といえども、勝手に人の縄張りを
 嗅ぎまわるのは感心せんな!」

ドルドラ「それは私たちからも言わせてもらう!」

白いスーツの男「…ん?」

さらにやって来たのは銀帝軍ゾーンの銀河博士ドルドラと
いつも連れている片腕の銀河の牙ザザだった。

ドルドラ「当方配下の銀河闘士モグラルギンは
 敵と正々堂々と戦っての戦死を遂げたのだ。
 秘密警察に要らぬ詮索をされるのは甚だ迷惑!」
ザザ「速やかにお引き取り願いましょう」
白いスーツの男「それにしてはモグラルギンの戦死時に
 ゴルリンが出動した形跡がないようだが?」
ドルドラ「うっ、それは…!」
白いスーツの男「そもそもそれはダーク・キングダムと銀帝軍ゾーンの
 組織としての正式な要請か? それともお前たちの背後にいる
 闇女王同盟の古狸のご老女方の思惑かな?」
ゾイサイト「なんですって…!」
白いスーツの男「まあいいだろう。自分たちの尻拭いは
 あくまで自分たちでするというのであれば、それもよかろう」

白いスーツの男は一瞥して立ち去って行った。

ゾイサイト「くっ…! おのれ言わせておけば!」
クンツァイト「やめぬか、ゾイサイト!」
ゾイサイト「しかしクンツァイト様!」
クンツァイト「今、表だって秘密警察と事を構えるのはマズイ。
 今日のところは引き揚げるのだ」
ドルドラ「ザザ、私たちも戻りましょう」
ザザ「ハッ」

1290

無幻城・秘密警察長官執務室***


無幻城へと戻ったアポロガイストを待ち受けていたのは、
思わぬ来客であった。

ゴメス「お待ちしておりましたよ、アポロガイスト殿」
アポロガイスト「キャプテンゴメス…」

キャプテンゴメス――元は世界中から恐れられた
プロ中のプロである国際テロリストで、ブレイン党の作戦指揮官。
巨人頭脳ブレインに反旗を翻した経緯から、今はブレインや
ハスラー教授のグループとは別行動を取っている身ではあるが、
その経歴が経歴だけに、Gショッカー秘密警察のブラックリストにも
不穏分子としてその名前が載っている。それは彼も当然承知であろうに、
自分の方から天敵ともいえる秘密警察を訪れるとは、
恐るべし厚顔ぶりである。

ゴメス「さしものキレ者の秘密警察長官殿も、
 組織の縦割りにはだいぶ難儀をされているご様子ですな」
アポロガイスト「ご用件は何かな?」
ゴメス「この男をご存じか?」

ゴメスはアポロガイストに一枚の写真を手渡す。

アポロガイスト「剣持保…。確か貴公とは因縁の間柄だったな」
ゴメス「その剣持が日本に戻ってきている」
アポロガイスト「ほぉ…」
ゴメス「今までアフリカにいた剣持が、突然日本へと
 呼び戻された。これはきっと何かある…」
アポロガイスト「それをわざわざ俺に知らせに来たのか?
 何を企んでいる」
ゴメス「企むなどとはとんでもない。長官閣下に
 耳寄りな情報ではとお知らせに伺ったまで。
 今後とも何とぞよしなに」

ゴメスはアポロガイストに恭しく一礼して退室した。
実は剣持の動きについては秘密警察の情報網も前々からキャッチしていた。
それを知らないようなキャプテンゴメスでもないはずである。
その行動の裏にはどんな真意があるのか、それを読み取るのが難しい厄介な男――
――それがキャプテンゴメスという男なのだ。

アポロガイスト「キャプテンゴメス、食えん男だ…」

1291

○剣持保→シグフェルに初の接触。今日は挨拶だけに留めるといい、あえて追跡せず。
○村中隊員→シグフェルに初の接触。
●アポロガイスト→妖魔ムーリドの戦死現場を検分に訪れるが、ダーク・キングダムと銀帝軍ゾーンから抗議される。
●クンツァイト→妖魔ムーリド戦死の状況を調査しているアポロガイストに不快感を示す。
●ゾイサイト→妖魔ムーリド戦死の状況を調査しているアポロガイストに不快感を示す。
●ジェダイト→妖魔ムーリド戦死の状況を調査しているアポロガイストに不快感を示す。
●銀河博士ドルドラ→銀河闘士モグラルギン戦死の状況を調査しているアポロガイストに不快感を示す。
●銀河の牙ザザ→銀河闘士モグラルギン戦死の状況を調査しているアポロガイストに不快感を示す。
●キャプテンゴメス→アポロガイストの執務室を訪問する。

○シグフェル/牧村光平→沢渡優香に変身の瞬間を見られ、事情を全て打ち明ける。
○朝倉慎哉→破局しそうになった牧村光平と沢渡優香の仲を取り持つ。改めて光平の秘密を守ると誓う。
○沢渡優香→牧村光平がシグフェルに変身する現場を目撃。光平の秘密を守ると誓う。
●ホブゴブリンイーバ→現場作業員の男を襲うが、シグフェルに倒される。

【今回の新規登場】
●ゾイサイト(美少女戦士セーラームーン)
 ダーク・キングダム四天王の一人。欧州支部長の肩書を持つ。
 オネエ口調で喋るオカマであり、クンツァイトとは相思相愛の仲である。
 ウェーブのかかった長い金髪を後ろに結んでいる。

●クンツァイト(美少女戦士セーラームーン)
 ダーク・キングダム四天王の筆頭格。中東支部長の肩書を持つ。
 ゾイサイトを背後から操り、邪魔者だったネフライトを謀殺した。
 ゾイサイトと愛し合っている仲。その実力は非常に高い。

●銀河博士ドルドラ(地球戦隊ファイブマン)
 銀帝軍ゾーンの冷酷な女科学者。兵器開発などを担当する作戦参謀的な存在。
 銀河皇帝メドーに絶対的な忠誠を誓っていたが、そのメドーの正体が
 バルガイヤーが作り出した虚像だったことを知った際には大きなショックを受け、
 バルガイヤーを「化け物」と罵って発狂。配下のザザと共に
 合身銀河闘士バラドルギンに改造され、スターファイブに倒され戦死した。

●銀河の牙ザザ(地球戦隊ファイブマン)
 銀河博士ドルドラの腹心。ドルドラの生体改造によって生み出された改造生命体で、
 自分の命を救ってくれたドルドラに絶対の忠誠を誓っている。
 メドーの正体を知ったショックで発狂したドルドラを蔓から救おうとして
 クリスナイフで蔓に切りつけていたところ、バルガイヤーのエネルギーを浴びて、
 ドルドラ共々バラドルギンに変えられてしまった。

●キャプテンゴメス(大鉄人17)
 国際テロリストとして悪事の限りをつくしてきた男。
 巨人頭脳ブレインに招かれ、ブレイン党の指揮官に任ぜられる。
 忠誠を誓いつつも、機会あらばブレイン支配を企む野心に溢れていた。
 ハスラー教授と手を組みブレインに挑戦するも教授の裏切りにあい、あえなく失敗する。
 その後、戦艦ロボットに搭乗し大鉄人17へ戦いを挑むも敗北。
 最後は部下のチーフキッドにまで裏切られ、戦艦ロボットと共に爆死した。

●ホブゴブリンイーバ(闘争の系統オリジナル)
 堕神の使徒で、ゴブリンイーバの上位種と思われる。
 ゴブリンイーバよりも細身長身でありマントを着用。
 鉄球のついたモーニングスターが武器。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2020年11月26日 10:12