エルフ狩り
パーサの森を制圧した
ダークエルフ軍は、
ニューマックの命により
容赦ない
エルフ狩りを行っていた。
命令は文字通りすべての
エルフを捕らえるか、さもなければ殺せというもので、
子供たちも例外ではなかった。
ある夜、
エルフ狩りを終えた
ダークエルフ兵たちが、二人の幼い子供を連れて、
ニューマックが居城としているパーサの神殿に戻ってきた。
一人は男の子、一人は女の子だった。
まばゆいばかりの満月が、静まりかえったパーサの森に冷たい光を投げかけていた。
かつて
エルフが聖なる儀式のために用いていた祭壇を玉座として、
ニューマックが居並ぶ兵たちを見下ろしている。
その目の前に、
エルフの子供たちが並んで立っていた。
ニューマックは懐から銀のナイフを取り出すと、体を起こして男の子の首筋に切っ先を突きつけた。
「…死ぬのは怖いか?」
幼い
エルフは小刻みに震えながら、うなずいた。だが、
ニューマックはその目に、
強い意志の光が宿り、まっすぐに自分を見つめ返しているのを見てとった。
「…そうか…」
次の瞬間、ナイフが月の光を受けてきらめき、切り落とされた首が床を転がっていった。
もう一人の
エルフの娘は、恐怖のあまり声も出せず、震えて涙をこぼしながら
ニューマックを見上げている。
その頭に、
ニューマックは優しく手を乗せると、言葉をかけた。
「…おびえることはない…大丈夫だ」
沈黙が支配する闇の中で、そのまま長い時間が過ぎ、やがて
エルフの娘の表情がほんの少しゆるんだ、次の瞬間―
銀のナイフがその胸に突き刺さった。
刃が引き抜かれると、娘の亡骸は力なく崩れ落ちて、奇妙に捻じ曲がった格好で床に転がった。
ダークエルフ兵たちの口から、およそエルフには似つかわしくない下品な笑いが漏れる。
「…黙れ」
兵たちはたちまち静まりかえった。身動きひとつしない。
同胞であるはずの
ダークエルフでさえ、
ニューマックは恐怖によって支配していた。
ひとり、またひとりと、兵たちは音もなく去っていった。
冷たい瞳にうつろな光を宿したまま、
ダークエルフの王は子供たちの死体を見下ろしている。
「どうしたの、
ニューマック…」
祭壇の陰で一部始終を見ていた
エルラムが、静かに歩み出ると、
エルフの娘の亡骸のもとにそっと近づいて、
子供が大切なお人形に対してそうするように、優しく抱きかかえると、そのまま
ニューマックの隣に腰を下ろした。
優しく髪をなでるその手が、血で赤く黒く染まっていく。
「今日は月がとても嫌な光で輝いているの…
ふたりで一緒に逃げ出した、あの夜みたいに…」
「…そうだな…」
寄り添う
ふたりは、長い夜が明けるまでそのままでいた。その間に、血に染まった
エルフの子供を抱いて。
- これはかっこいいニューマック -- 名無しさん (2023-11-30 12:08:46)
最終更新:2023年11月30日 12:08