序章・始まりの場所
眩しい。
太陽の眩しさに何度か瞬き、僕は腕で日差しを遮った。
夏の盛りだ。太陽は明るい。
華やかに咲いている背の高い向日葵が、真っ赤な太陽にじいっと熱い視線を送っている。太陽はきっと照れているのだ。だからあんなにもキラリキラリと暑く眩しく輝いているのだろう。愛しい人に想いを寄せる女性のように、向日葵はいつまでもいつまでも太陽を見つめ続ける。
ああ実に、この季節は実に清々しい。
この燃えるような暑ささえなければ、本当に素晴らしい季節だと思う。鳥も虫も、どの季節に見るよりもいきいきとしているように見える。木漏れ日の下など、日差しの届かないところから眺めているだけならば、全く、これほど美しい季節はない。生命の美しさを感じるには、最も適した季節であるといえるだろう。
僕はほうっと深く息を吐き、斜めに掛けた大きな鞄から、鍔のついた耳当て帽を取り出しきゅっと被った。小粋なブーツはカツンとひとつ音を立て、大きな木の前で立ち止まった。
太陽の眩しさに何度か瞬き、僕は腕で日差しを遮った。
夏の盛りだ。太陽は明るい。
華やかに咲いている背の高い向日葵が、真っ赤な太陽にじいっと熱い視線を送っている。太陽はきっと照れているのだ。だからあんなにもキラリキラリと暑く眩しく輝いているのだろう。愛しい人に想いを寄せる女性のように、向日葵はいつまでもいつまでも太陽を見つめ続ける。
ああ実に、この季節は実に清々しい。
この燃えるような暑ささえなければ、本当に素晴らしい季節だと思う。鳥も虫も、どの季節に見るよりもいきいきとしているように見える。木漏れ日の下など、日差しの届かないところから眺めているだけならば、全く、これほど美しい季節はない。生命の美しさを感じるには、最も適した季節であるといえるだろう。
僕はほうっと深く息を吐き、斜めに掛けた大きな鞄から、鍔のついた耳当て帽を取り出しきゅっと被った。小粋なブーツはカツンとひとつ音を立て、大きな木の前で立ち止まった。
「やあ、久しぶりだね」
木の上には逞しく張った枝に隠れて家がある。
かつてぶら下がっていた縄梯子はもう既に無くなっていた。
誰が住んでいる訳でもないけれど、僕はここに来るたびにこうして声を掛けるのだ。住む人の居ないこの廃れた場所で。木の上のくたびれた木造の家は、なんだか酷く、懐かしい。この場所へ来るたび、僕は酷く、悲しくなる。
泣き出しそうになるのを堪えて、僕は大きな木の幹にゆったりと背を預けた。旅に出たその日から、僕は泣くのを止めたから。
ひんやりと優しい木の冷たさに、僕はほうっと息を吐いた。
旅から旅の根無し草。
そんな僕が、年に一度、この為だけに帰ってくるのだ。
「今年も、たくさんの国を回ったよ」
一晩を掛けてたくさんの話をして、僕はまた旅に出る。
大きな鞄を斜めに掛けて、耳当て帽をきゅっと被って、小粋なブーツをカツンと言わせて、僕はまた一歩二歩と歩き出す。
旅から旅の根無し草。
この仕事が終わるまで、僕は一つ所には居られない。
おや、遠くに飛行機雲が。
ずうーっと真っ直ぐに、どこまでも長く遠くに続く飛行機雲。
一体何処まで続くのかと聞きたくなるような、一本の長い長い雲。ああ、まるで僕の旅路のようだ。
そう思って、僕はほんの少しだけ微笑んだ。年に一度のささやかな休息は、これで終わりだ。
一歩一歩着実に、ひとつひとつ確実に、進めていこう。
かつてぶら下がっていた縄梯子はもう既に無くなっていた。
誰が住んでいる訳でもないけれど、僕はここに来るたびにこうして声を掛けるのだ。住む人の居ないこの廃れた場所で。木の上のくたびれた木造の家は、なんだか酷く、懐かしい。この場所へ来るたび、僕は酷く、悲しくなる。
泣き出しそうになるのを堪えて、僕は大きな木の幹にゆったりと背を預けた。旅に出たその日から、僕は泣くのを止めたから。
ひんやりと優しい木の冷たさに、僕はほうっと息を吐いた。
旅から旅の根無し草。
そんな僕が、年に一度、この為だけに帰ってくるのだ。
「今年も、たくさんの国を回ったよ」
一晩を掛けてたくさんの話をして、僕はまた旅に出る。
大きな鞄を斜めに掛けて、耳当て帽をきゅっと被って、小粋なブーツをカツンと言わせて、僕はまた一歩二歩と歩き出す。
旅から旅の根無し草。
この仕事が終わるまで、僕は一つ所には居られない。
おや、遠くに飛行機雲が。
ずうーっと真っ直ぐに、どこまでも長く遠くに続く飛行機雲。
一体何処まで続くのかと聞きたくなるような、一本の長い長い雲。ああ、まるで僕の旅路のようだ。
そう思って、僕はほんの少しだけ微笑んだ。年に一度のささやかな休息は、これで終わりだ。
一歩一歩着実に、ひとつひとつ確実に、進めていこう。
期限は、あと一年。
第一章 御伽の国へ