726 :ex17落とさないでね :2006/11/11(土) 21:16:47.81 ID:ZKVl9elI0
VIP復活おめでとうございます。
ところで「空気」って、なんて読むんですか? からけ?
VIP復活おめでとうございます。
ところで「空気」って、なんて読むんですか? からけ?
ラジオのお時間
こんにちは! 天空の淑女あらため、全開少女イーグリードでっす!
みなさん御存知の通り、テレビ「竜巻!お悩み相談室」の放送時間なのですが……
テレビ局さんの都合で、お休みになってしまいました!
かわりにラジオによる声のみの出演です~。えーん、しくしく。
テレビ局さんの都合で、お休みになってしまいました!
かわりにラジオによる声のみの出演です~。えーん、しくしく。
みんな、ごめんねー。ムカツク上司が居てさぁ……
あ、でもね、でもね、公開録画ですから。
HNKスタジオまで来て頂ければ、いつも通りの私が観られると思います。
HNKスタジオまで来て頂ければ、いつも通りの私が観られると思います。
それでは今日も、エネルギー全開で、いってみよー!
※
――この番組は、カプコン、
――鷲のマークのエネルギー回復、
――ネット時代を引きこもる、アーマー・ドット・ジェイピー、
――以上の提供でお送りします。
――鷲のマークのエネルギー回復、
――ネット時代を引きこもる、アーマー・ドット・ジェイピー、
――以上の提供でお送りします。
※
727 :ex17落とさないでね :2006/11/11(土) 21:17:21.59 ID:ZKVl9elI0
「プロデューサー! 抗議の電話が殺到してます!」
「あの女、まぎらわしい物言いしやがって! 文句はケインに言えよ!」
「……チクショウ、なんでこんな人気あるんだ!?」
「プロデューサー! 抗議の電話が殺到してます!」
「あの女、まぎらわしい物言いしやがって! 文句はケインに言えよ!」
「……チクショウ、なんでこんな人気あるんだ!?」
※
えー、それでは皆さんからのお便りを読んでいきまっしょ!
まずは……ペンネーム甲弾闘姫さん。常連ですねぇ。
まずは……ペンネーム甲弾闘姫さん。常連ですねぇ。
『イーグリードお姉ちゃん、こん○○は』
はい、こんにちはー。
はい、こんにちはー。
『すっかり寒くなってきました。お空を飛んでいるときとか、寒くないですか?
私は、弱点ってわけじゃないのに、寒さが苦手です。
お姉ちゃんも風邪とかひかないように、お部屋で暖かくしてくださいね』
私は、弱点ってわけじゃないのに、寒さが苦手です。
お姉ちゃんも風邪とかひかないように、お部屋で暖かくしてくださいね』
ありがとうございます。でもねぇ、寒いって感じること、少ないんですよ。
体質か、厚着してるせいか知らないけど。
甲弾闘姫さんは冷え性なのかな? 私みたいにマフラー巻くといいですよ。
体質か、厚着してるせいか知らないけど。
甲弾闘姫さんは冷え性なのかな? 私みたいにマフラー巻くといいですよ。
『あの、さ、最後に……私のこと、子猫ちゃんって呼んでくれませんか?』
えー? これ私が言うのー?(笑)
おっほん。それでは……ウォッホン! いきます!
おっほん。それでは……ウォッホン! いきます!
またね、子猫ちゃん。愛してるよ♥
732 :ex17落とさないでね :2006/11/11(土) 21:19:25.77 ID:ZKVl9elI0
ククっ……次のお便り……フヒヒっ……!
ごめんなさい、頭切り替えます。はい、時空の斬服鬼さんから頂きました。
ククっ……次のお便り……フヒヒっ……!
ごめんなさい、頭切り替えます。はい、時空の斬服鬼さんから頂きました。
『不不不……知っているかい?
ウルトラマンが殺したバルタン星人の数は、20億3000万人だよ。
殺しは良くないよね……不不不』
ウルトラマンが殺したバルタン星人の数は、20億3000万人だよ。
殺しは良くないよね……不不不』
知らなかったー!
私なんか今までに食べた幼j……パンの枚数おぼえてないですよ。
へー、すごい。きちんと数えてるなんて、さすがウルトラですねぇ。
私なんか今までに食べた幼j……パンの枚数おぼえてないですよ。
へー、すごい。きちんと数えてるなんて、さすがウルトラですねぇ。
次のお便り。ペンネーム……えっ? あははは、ヤダー。
ペンネーム深海のミントさん、だって。あはははは……
いかん、また放送事故って言われる。もう笑わないよ、うん。
ペンネーム深海のミントさん、だって。あはははは……
いかん、また放送事故って言われる。もう笑わないよ、うん。
『決して小さくはない全開"少女"さん、こんにちはですよー』
はい、ガタイは大きいほうです。
はい、ガタイは大きいほうです。
『最近ペットでも飼おうかと思うのですが、なにかオススメありますか?』
ミントさんがペット飼うんかい。(笑)
ミントさんがペット飼うんかい。(笑)
そうだね、私は忙しい人だから、散歩が必要ない動物を勧めるよ。
猫とか、夜一緒に寝るとあったかいな。
猫とか、夜一緒に寝るとあったかいな。
では、ここでCMです。
735 :ex17落とさないでね :2006/11/11(土) 21:21:08.35 ID:ZKVl9elI0
※
※
――いざというときのエネルギー補給に。
――鷲のマークのライフ回復【小】!
――お得な【大】サイズもあります。
――鷲のマークのライフ回復【小】!
――お得な【大】サイズもあります。
※
「竜巻!お悩み相談室」!
やってきました、本命のコーナー。
普段は電話とメール、半々の採用なんですが、今週はメールだけです。ごめんなさいっ!
普段は電話とメール、半々の採用なんですが、今週はメールだけです。ごめんなさいっ!
では一枚目は、この方っ!
ペンネーム…………ん? 灼熱、の、タン……ク? さんから頂きました。
ペンネーム…………ん? 灼熱、の、タン……ク? さんから頂きました。
……???
※
『⊇ωレニちレ£ T=〃 ξ〃ぅ』
「ちょっと! コレ読めない!」
「うわ! きったねえ字だな!」
「すみません、手違いがあったようです」
「ちょっと! コレ読めない!」
「うわ! きったねえ字だな!」
「すみません、手違いがあったようです」
※
738 :ex17落とさないでね :2006/11/11(土) 21:22:36.01 ID:ZKVl9elI0
もー。しっかりしてよー?
あ、いやいや、スタッフさんとの会話です。ちょっと手違いがありまして。
気にしないで! 放送事故って言われると、減給されちゃうから!(笑)
もー。しっかりしてよー?
あ、いやいや、スタッフさんとの会話です。ちょっと手違いがありまして。
気にしないで! 放送事故って言われると、減給されちゃうから!(笑)
気を取り直して、お便りを。
ペンネーム豪速拳の鬱王さんから。
ペンネーム豪速拳の鬱王さんから。
『最近、職場で孤立したので転職を考えてるんだ。
テレビの仕事って、しがらみとか少ないか?』
テレビの仕事って、しがらみとか少ないか?』
あらあら、深刻ですね。私は、しがらみとか無いですよー!
自由ですからね、こう、ぱたぱたーっと!
転職より空ですよ、飛んでみると気持ち変わりますよー!
自由ですからね、こう、ぱたぱたーっと!
転職より空ですよ、飛んでみると気持ち変わりますよー!
(キャー! イーグリードお姉さまー!)
あ。公開録画してるんで、ファンの方が集まってきたみたい。
やっほー、みんな楽しんでるー?
あ。公開録画してるんで、ファンの方が集まってきたみたい。
やっほー、みんな楽しんでるー?
(こっち見たわー! キャー、ワー!)
ありがとー。こんな感じでね、あっけらかんと生きてれば大丈夫!
全開少女が保証します!
ありがとー。こんな感じでね、あっけらかんと生きてれば大丈夫!
全開少女が保証します!
でもその場合、月の無い夜道には気をつけてね♥
740 :ex17落とさないでね :2006/11/11(土) 21:24:10.20 ID:ZKVl9elI0
次のお便り。ペンネーム雪原の女帝さんから。
次のお便り。ペンネーム雪原の女帝さんから。
『好きな人がいるんだけど、振り向いてくれません』
わー! わかる、その気持ち!
私もね、私もね、好きな人がいるんだけどさ!
カワイイの! ちっちゃくて! なのにお邪魔虫がいやがってね!
死ね! もう死ね! 私の恋路を阻むエヘン虫め!
のど飴で殺菌されて死ね!!
私もね、私もね、好きな人がいるんだけどさ!
カワイイの! ちっちゃくて! なのにお邪魔虫がいやがってね!
死ね! もう死ね! 私の恋路を阻むエヘン虫め!
のど飴で殺菌されて死ね!!
(打ち捨てられた葉書には
『彼との仲を邪魔しやがるバカ鳥を排除したい』
と、読まれなかった続きがある……)
『彼との仲を邪魔しやがるバカ鳥を排除したい』
と、読まれなかった続きがある……)
失礼、つい淑女にあるまじきエキサイトを。
次いきます、ペンネーム還暦の苦労人さんから。
次いきます、ペンネーム還暦の苦労人さんから。
『職場でとんでもない部下がいます』
ほうほう。
ほうほう。
『性格は最悪、素行も最悪、いつ裁判沙汰になってもおかしくない問題児です』
大変ですねえ。
大変ですねえ。
742 :>>737ギャル文字読めるとかスゴイwww :2006/11/11(土) 21:25:52.52 ID:ZKVl9elI0
『なのに顔が良く、テレビ出演やモデルなど目立つ仕事をするため、表立って叩けません』
そうですかー。
『なのに顔が良く、テレビ出演やモデルなど目立つ仕事をするため、表立って叩けません』
そうですかー。
『世の中、顔が全てなのでしょうか。あまりの理不尽に我慢も限界です』
あー、なるほどねー。
あー、なるほどねー。
居ますよ、むかつく上司。何かすると、片っ端から注意してくるの……
気が付くと、いつもこっちを見ているの。まるで監視されてるみたい。
気が付くと、いつもこっちを見ているの。まるで監視されてるみたい。
でもハンターの仕事は辞めません!
だって私はコメンテーターやモデルである前に、全開少女ストームイーグリードなのだから!
私は私のアイデンティティに賭けて、この道を貫きます!
だって私はコメンテーターやモデルである前に、全開少女ストームイーグリードなのだから!
私は私のアイデンティティに賭けて、この道を貫きます!
でも、月の無い夜道だけは気をつけるよ!
(キャー! わー!)
みんな、ありがとう!
みんな、ありがとう!
(キャー! いやー!)
(誰かー! 助けてー、痴女よー!)
……ん?
……ん?
(わーい! イーグリードの! 旦那!)
744 :ex17落とさないでね :2006/11/11(土) 21:26:53.82 ID:ZKVl9elI0
……こほん。それでは今日はこの辺で。
「竜巻!お悩み相談室」パーソナリティは、ストームイーグリードでした。
またねーっ!
……こほん。それでは今日はこの辺で。
「竜巻!お悩み相談室」パーソナリティは、ストームイーグリードでした。
またねーっ!
(あ、鷲が出てきた!
見て! 見て! バカには見えないお洋服!
クワンガーの旦那がくれたんだよ!!)
見て! 見て! バカには見えないお洋服!
クワンガーの旦那がくれたんだよ!!)
(そぉい!!)
※
――この番組は、カプコン、
――鷲のマークのエネルギー回復、
――ネットメディアも引きこもる、アーマー・ドット・ジェイピー
――以上の提供でお送りしました。
――鷲のマークのエネルギー回復、
――ネットメディアも引きこもる、アーマー・ドット・ジェイピー
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お使いお遣い
44 :お使いお遣い<再放送> :2006/11/12(日) 20:13:29.70 ID:43vmG7uE0
お使いお遣い
お使いお遣い
肌寒い朝の気温が、出勤する者、学校へ通う者の肌を突き刺す。
冷たさによって空気が白く濁り、道路へと靄のように広がった。
冷気の帳に覆われるのは、煙突のついた今時珍しい家。
冷たさによって空気が白く濁り、道路へと靄のように広がった。
冷気の帳に覆われるのは、煙突のついた今時珍しい家。
可愛らしい家の小さな庭に、二人の人影が立つ。
「ベル。朝からすまないが、買い物に行ってくれないか?」
新聞を手にする女が、犬を模したメットを被る少女の頭を撫でた。
薄紅のエプロンを身に付けた姿が腰を低くし、自分の目線を少女のに合わせる。
新聞を手にする女が、犬を模したメットを被る少女の頭を撫でた。
薄紅のエプロンを身に付けた姿が腰を低くし、自分の目線を少女のに合わせる。
「わふっ! 了解です。シグマ様」
一声、吼え、使いに了承するのは犬型レプリロイド――ベルガーダー。
一声、吼え、使いに了承するのは犬型レプリロイド――ベルガーダー。
寒さを感じないのか、ショーツの装飾にレースを使用した下着を穿いている。
ガーダーベルト以外は何も纏わず、胸部には包帯のような布を巻いていた。
ガーダーベルト以外は何も纏わず、胸部には包帯のような布を巻いていた。
46 :お使いお遣い :2006/11/12(日) 20:15:49.50 ID:43vmG7uE0
「残ったお釣りは、ベルの好きな物を買って良いからね」
シグマと呼ばれた女が、エプロンの衣嚢から小さな財布を取り出す。
小銭と一枚のお札を、少女の柔らかそうな掌に置いた。
シグマと呼ばれた女が、エプロンの衣嚢から小さな財布を取り出す。
小銭と一枚のお札を、少女の柔らかそうな掌に置いた。
「シグマ様に、感謝を」
主人の胸に鼻を摺り寄せ、ベルガーダーは喜びを表した。
嬉しそうに、その行為を受けるシグマ。耳だけが生体部品の、メットから溢れる髪をさらさらと撫で上げる。
主人の胸に鼻を摺り寄せ、ベルガーダーは喜びを表した。
嬉しそうに、その行為を受けるシグマ。耳だけが生体部品の、メットから溢れる髪をさらさらと撫で上げる。
「気をつけてな。――あ、これ」
シグマは優しくベルガーダーの身体を剥がし、ポケットから、今度は鈴の付いた首輪を引き抜いた。
シグマは優しくベルガーダーの身体を剥がし、ポケットから、今度は鈴の付いた首輪を引き抜いた。
少女の細い首にかけてやり、首輪中央のあるスイッチを押す。
羽虫のような音と軽い振動と共に、春のような清清しい暖かさが漏れ出た。
羽虫のような音と軽い振動と共に、春のような清清しい暖かさが漏れ出た。
体感温度と、その周囲を暖める場を作り出す首輪。
めっきり寒くなった気候。そして少女の、下着だけという薄着な服装。
めっきり寒くなった気候。そして少女の、下着だけという薄着な服装。
不憫に思ったシグマは、同僚に教えられた〝通信販売〟というサービスを使用し、これを購入したのだ。
コートや分厚い服を着れば解決する話なのだが、二人はそんな事など思いつかず、どこか抜けている。
コートや分厚い服を着れば解決する話なのだが、二人はそんな事など思いつかず、どこか抜けている。
「くぅーん。シグマ様、大好きです」
彼女の歳にしては、どこか幼さを感じさせる顔を喜びに歪め、ベルガーダーは主人に抱きついた。
彼女の歳にしては、どこか幼さを感じさせる顔を喜びに歪め、ベルガーダーは主人に抱きついた。
48 :お使いお遣い :2006/11/12(日) 20:19:56.12 ID:43vmG7uE0
二足で立つ犬が、手提げの鞄を右手に持ち、尻尾を揺らしながらマーケットへの道を進む。
シグマの優しい配慮に、ベルガーダーは機嫌良く鼻歌など歌った。
シグマの優しい配慮に、ベルガーダーは機嫌良く鼻歌など歌った。
アスファルトを埋めた車道を横にする、ガードレールで線を引かれた狭い歩道。
千切れるほど尻尾を揺らす少女の前方に、犬を連れたレプリロイドが現れた。
茶色の大型犬が、単眼メットの主人に付き添い、両者仲良く散歩をする。
茶色の大型犬が、単眼メットの主人に付き添い、両者仲良く散歩をする。
ベルガーダーは彼等が横切る姿を、微笑ましさに目を細めて眺めた。
だが――少女とレプリロイドの肩が触れるかの距離に狭まった時、大型犬がこちらに吼える。
主人はぎょっとし、リードを引く自分の犬を宥めようとするが、垂れ耳の彼は止まらない。
レプリロイドと生物という差はあるが、同じ種族というのを感じ取ったのだろう。
立ち止まり、少女の端整な面に威嚇の声を発し続ける。
レプリロイドと生物という差はあるが、同じ種族というのを感じ取ったのだろう。
立ち止まり、少女の端整な面に威嚇の声を発し続ける。
「わふっ! わふっ!」
――ベルガーダーの本能も、その声に我慢しきれず、喉を張り上げてしまう。
――ベルガーダーの本能も、その声に我慢しきれず、喉を張り上げてしまう。
単眼の光りを大きくし、再び驚愕するレプリロイド。
犬も驚き、尻尾を股に挟むと、主人を引きずるかのような速度で逃げ出した。
犬も驚き、尻尾を股に挟むと、主人を引きずるかのような速度で逃げ出した。
49 :お使いお遣い :2006/11/12(日) 20:22:58.46 ID:43vmG7uE0
「ふんっ。…………小物が」
鼻を鳴らし、ベルガーダーが吐き捨てる。
だが、自分が極めて躾の無い事をしたのだと、自己嫌悪に顔を翳らせた。
「ふんっ。…………小物が」
鼻を鳴らし、ベルガーダーが吐き捨てる。
だが、自分が極めて躾の無い事をしたのだと、自己嫌悪に顔を翳らせた。
首を振って、気を取り直す。ベルガーダーは、買い物への道を続けた。
マッケートの道中には、様々な光景がベルガーダーの視界に入る。
「なんて、はしたない雄だ……」
電柱に向けて、マーキング行為として放尿する犬。
ベルガーダーの白い頬が、ピンクに染まる。
電柱に向けて、マーキング行為として放尿する犬。
ベルガーダーの白い頬が、ピンクに染まる。
足を進めれば、繁殖期ではないのに、通りの影で交尾をするつがい。
顔が真っ赤になり、ベルガーダーは目を逸らした。
顔が真っ赤になり、ベルガーダーは目を逸らした。
時期はずれの〝春〟から足早に去るベルガーダーの前に、ゴミ箱を叩き落し、暴れまわる子犬たち。
青いポリバケツから、大量の残飯や、不必要となった存在が地面へ散らばる。
青いポリバケツから、大量の残飯や、不必要となった存在が地面へ散らばる。
腐敗の進んだ食物にありつく幼き犬と、彼らの足元で動く小さな影。
どこからか現れた、脂ぎった黒い甲虫の姿が少女の頬を引きつらせる。
どこからか現れた、脂ぎった黒い甲虫の姿が少女の頬を引きつらせる。
「……きゅーん。む、虫は苦手だ」
ベルガーダーの耳と尻尾が垂れ下がった。
ベルガーダーの耳と尻尾が垂れ下がった。
50 :お使いお遣い :2006/11/12(日) 20:26:17.40 ID:43vmG7uE0
「卵……牛乳……お肉……」
手にしたメモを口にしながら、商品をカゴの中に入れてゆく。
肉や野菜などは、ちゃんと鮮度やグラムを吟味し、良質な物を選んでいった。
手にしたメモを口にしながら、商品をカゴの中に入れてゆく。
肉や野菜などは、ちゃんと鮮度やグラムを吟味し、良質な物を選んでいった。
「シグマ様のシャンプーと……ノミ取り……シャンプーは……」
食品から、生活用品のレーンへ移動するベルガーダー。
食品から、生活用品のレーンへ移動するベルガーダー。
最近、動物型レプリロイドの身体を這う、ノミのメカニロイドが発生した。
元はある企業の、苔などを食べて下水路を掃除する商品だった。
しかし、いざ下水道で試験運転をすると、他社が開発する掃除用メカニロイドと一緒に暴走。
元はある企業の、苔などを食べて下水路を掃除する商品だった。
しかし、いざ下水道で試験運転をすると、他社が開発する掃除用メカニロイドと一緒に暴走。
通報を受けたハンターが出動したのだが、任務に就いたレプリロイドが、恐れをなして逃げ出すという珍事を起こす。
事件は解決せず、〝アメンホッパー〟と呼ばれたメカニロイドは下水施設を破壊し、ノミ型は都市全域に拡散するという被害を出した。
事件は解決せず、〝アメンホッパー〟と呼ばれたメカニロイドは下水施設を破壊し、ノミ型は都市全域に拡散するという被害を出した。
少女は、時折自分のボディに現れるノミ型が嫌う液体――シャンプーを内包する、薄緑のパッケージを手にしてカゴへ放り込んだ。
「くぅん。きゃんでぃー……」
紙片に書かれた内容を完遂し、犬耳の少女は菓子売り場に向かった。
主人の言い付け通り、自分の好きな物を購入しようとする。ベルガーダーが持つのは、赤い包みに包まれたスティック付きの飴だ。
紙片に書かれた内容を完遂し、犬耳の少女は菓子売り場に向かった。
主人の言い付け通り、自分の好きな物を購入しようとする。ベルガーダーが持つのは、赤い包みに包まれたスティック付きの飴だ。
「お、お饅頭……! 買いたい……だが、私は療養中だ……」
少女の横手で騒ぐレプリロイドが、頭をがくがくと上下させ悶える。
銀髪の人物に合わせて、両手で掴む和菓子のパックが震えた。
少女の横手で騒ぐレプリロイドが、頭をがくがくと上下させ悶える。
銀髪の人物に合わせて、両手で掴む和菓子のパックが震えた。
51 :お使いお遣い :2006/11/12(日) 20:29:40.72 ID:43vmG7uE0
「食べたい……あぁっ!! 食べたい!! なんたる……なんたる悲劇……!」
ベルガーダーは奇異な目で彼女を一瞥しながら、レジへと会計しに行った。
ベルガーダーは奇異な目で彼女を一瞥しながら、レジへと会計しに行った。
レジスターを打つ店員。少女の見覚えある、同じ職場のレプリロイドだった。
「貴様は……」
意外そうな目をするベルガーダーは、カゴを会計台に載せながら口を開く。
「貴様は……」
意外そうな目をするベルガーダーは、カゴを会計台に載せながら口を開く。
「いらっしゃいませー……あ。いぬっころ」
何の特徴もない制服を着る、桃色の頭髪を持つ女が驚きに目を見開いた。
何の特徴もない制服を着る、桃色の頭髪を持つ女が驚きに目を見開いた。
「あるばいと、と言うやつか」
ベルガーダーが挨拶として小さく頷き、女の副業を尋ねた。
女は少し困った顔をする。
ベルガーダーが挨拶として小さく頷き、女の副業を尋ねた。
女は少し困った顔をする。
「ん……まぁ、パートだ」
小首を傾げる犬型の少女に、歯切れ悪く答える。
ハンターは依頼や仕事を疎かにしなければ、副業を禁止はしないのだが、それでも推奨はしないと手引書には明記している。
女の同僚――自分より権限を持つレプリロイドに見られて、あまり気持ちが良いものではない。
小首を傾げる犬型の少女に、歯切れ悪く答える。
ハンターは依頼や仕事を疎かにしなければ、副業を禁止はしないのだが、それでも推奨はしないと手引書には明記している。
女の同僚――自分より権限を持つレプリロイドに見られて、あまり気持ちが良いものではない。
「ハンターの仕事があるだろう」
そんな彼女の心情など知らず、ベルガーダーは怪訝な顔をした。
そんな彼女の心情など知らず、ベルガーダーは怪訝な顔をした。
54 :お使いお遣い :2006/11/12(日) 20:33:32.84 ID:43vmG7uE0
「諸事情だ」
返ってくるのはつれない一言。
会計を待つ客はいないのだが、長話をする訳にもいかないので、女は顎で会計していいかと訴えた。
「諸事情だ」
返ってくるのはつれない一言。
会計を待つ客はいないのだが、長話をする訳にもいかないので、女は顎で会計していいかと訴えた。
「そうか。では、会計を依頼する」
ベルガーダーは気分を害さず、自分の質問の答えを特に気にしなかった。
ベルガーダーは気分を害さず、自分の質問の答えを特に気にしなかった。
両腕に買い物袋と手提げバックをぶら下げ、少女は帰路につく。
行きの道に、ベルガーダーは度々不快な思いをしたので、帰りは別の通りを選んだ。
行きの道に、ベルガーダーは度々不快な思いをしたので、帰りは別の通りを選んだ。
山から下りてきた水流が、海に向かって流入する。
小さな丘のような、段地となる道を歩くベルガーダーの前に、川の横手に空いた広場がひらける。
小さな丘のような、段地となる道を歩くベルガーダーの前に、川の横手に空いた広場がひらける。
下では、赤と青の少年少女が朝からフリスビーで遊んでいた。
少女が黄色の円盤を投げ、少年が飛び上がってそれを受け取る。そして、相手に投擲。
笑いあい、二人はその動作を繰り返し行っていた。
少女が黄色の円盤を投げ、少年が飛び上がってそれを受け取る。そして、相手に投擲。
笑いあい、二人はその動作を繰り返し行っていた。
他の者には何とも映らない光景だが、ベルガーダーの犬の血は、それを奪えとAIに言い放ち騒ぎ出す。
「そーれぇ!」
空と同じ色をした少年が、夕日より赤い少女に投げる。
空と同じ色をした少年が、夕日より赤い少女に投げる。
55 :お使いお遣い :2006/11/12(日) 20:35:11.96 ID:43vmG7uE0
宙を舞う円盤が、くるくると回転し、
「わふっ!」
牙によって受け止められた。
「わふっ!」
牙によって受け止められた。
二人の呆然とする視線を受けながら、ベルガーダーは綺麗に着地する。
「――失礼」
そして、羞恥の赤に頬を彩りながら、立ちすくむ少年の手にフリスビーを返した。
少女はお辞儀をすると、二人の前から逃げるように疾走する。
そして、羞恥の赤に頬を彩りながら、立ちすくむ少年の手にフリスビーを返した。
少女はお辞儀をすると、二人の前から逃げるように疾走する。
「……誰だ、あれ?」
「えと……シグマ隊長の家族……だったはず」
駆けるベルガーダーの背中で、少年たちの惚けた声が虚しく流れた。
「えと……シグマ隊長の家族……だったはず」
駆けるベルガーダーの背中で、少年たちの惚けた声が虚しく流れた。
「おかえり、ベル。道中、大丈夫だったか?」
玄関で出迎えた女の労いは、少女の胸に優しく染み渡る。
頭を撫で、シグマが買い物袋を受け取った。
玄関で出迎えた女の労いは、少女の胸に優しく染み渡る。
頭を撫で、シグマが買い物袋を受け取った。
57 :お使いお遣い :2006/11/12(日) 20:38:16.90 ID:43vmG7uE0
「わふっ! 問題ありません、シグマ様」
ベルガーダーは力強く吼え、主人の笑みを広げさせた。
ベルガーダーは力強く吼え、主人の笑みを広げさせた。
「さっ、寒いだろ。暖かくして、昨日借りてきた映画をみよう」
「わふっ! どこまでも、あなたに遣えます。シグマ様」
シグマは部屋の奥へと向かい、犬型の少女が続く。
軍人のように背筋を伸ばし、ベルガーダーは主人の後を追った。
「わふっ! どこまでも、あなたに遣えます。シグマ様」
シグマは部屋の奥へと向かい、犬型の少女が続く。
軍人のように背筋を伸ばし、ベルガーダーは主人の後を追った。
「ですが……お付き合いすると言っても……」
だが、リビングに入る時、少女はシグマに気づかれぬよう耳を垂らした。
だが、リビングに入る時、少女はシグマに気づかれぬよう耳を垂らした。
大型のテレビの前に位置する、ガラスで出来た小さなテーブルに、映像ディスクが置いてある。
ベルガーダーの双眸に、映画のタイトルが飛び込んだからだ。
ベルガーダーの双眸に、映画のタイトルが飛び込んだからだ。
「やっぱり……ホラー映画というのは、好きにはなれないのです。……きゅーん」
<了>