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練習用向けシナリオ

主人公を瀬方英子とし、一人称視点の思い出話形式です。
※現時点でまだメインストーリー部分しか考えておらず、ストーリー分岐その他は未定です。
※そしてまだ半分しか書き上がっていません。続きは早急に><



ひのきのぼう作
+ ※邪魔になるので折りたたんでます
 私が以前とある町工場に勤めていた時の話です。

 その町工場は何代か続いている老舗で建物も年代物…、つまりいつ崩れてもおかしくないほどのオンボロ工場でした。
 三階建てで一階が生産加工部、二階と三階が事務部で、私はその二階で、常日頃表計算ソフトと戦っている最中常に足下に階下から伝わってくる振動に、いつか床が抜けるのではないかと常に心配し続けていたものでした。

 そんなある日、私は宅配便から社長の佐山さん宛の荷物の段ボール箱を受け取っていたので、それを届けるために工場内をブラブラしていました。

 と言ってもこの荷物、正確にはその前の日に受け取った物だったりします。すぐに届ける気にならなくて丸一日放置してしまっていたのでした。

 なにしろこの佐山社長、これが仕事を全部専務に丸投げして一日中フラフラして所在が全くつかめない人物。
 また、この荷物も差出人は社長が後援会会長をつとめているどこかの売れない演歌歌手。
 荷物の大きさや振るとチャプチャプ音がするところからすると中身はたぶん一升瓶。
 激務に追われた専務にこんなふざけた物を社長に渡してもらうようにと預けるのは忍びなく…。
 また、その日は金曜だったのですが、金曜の休憩時間だけは必ず社長は三階の喫煙所に出没するので数少ない社長の身柄拘束のチャンスなのです。
 なにしろこの時間社長は職場の中で一番競馬に詳しい東城さんと「日曜どの馬にかけるべきか」と言う重要な会議を行う必要があるそうなので…。
 私がこの荷物をしばらく放置していたのは、そのチャンスを待っていたと言うのもあります。

 かくして私は、荷物を適当に振り回しながら三階の喫煙所に向かったのでした。

 ところで私はこの喫煙所を見るたび、情けないやら悲しいやら、とても複雑な気分にさせられるのです。
 なにしろこの工場の至る所が老朽化でいつ崩壊してもおかしくない中で、この喫煙所だけは社長の道楽で最新設備が完備されていて、ここだけまるで別の建築物のように見えてしまうのです。
 周囲がアクリル壁で守られ完全防音の室内の真ん中には吸煙テーブルが鎮座し、室内の空気は天井の空調で常に快適な環境に整えられた、無駄に高性能な空間。
 何度、「こんな金があるならせめて工場の外壁のひび割れぐらい埋めてくれー!!」と叫びそうになってしまった事か…。



 ところがその日の喫煙所は、何か様子がおかしいのです。
 私が喫煙所にたどり着くとちゃんと狙い通り佐山社長と東城さん、あと経理の清水さんが喫煙所内にいたのですが、これがどうも様子がおかしい。
 喫煙所の一カ所しかない透明な扉から一番遠い部屋の奥で、三人はガタガタ震えながら寄り添うように縮こまっていたのです。
 三人は入り口を凝視していて、私が来たことにもまるで気がついていない様子でした。

 …なーにをやってんじゃいい歳こいてこのアホどもは、と思いながら手に持った荷物でアクリルをコンコン叩くと、三人は驚いたようにこちらを向き、必死の形相で

【佐山】「・・・・・・・・・・・・・・・・!」(「来るな」的な内容)
【東城】「・・・・・・・・!・・・・・・・・!」(「助けを呼んできて欲しい」的な内容)
【清水】「・・・!・・・・・・・・・!・・・・!」(同室の二人に対し「うるさい黙れ」的な内容)

 と、口々に何かを訴えかけてきたのです。
 ただし、完全防音アクリル壁のせいで中で、何を言っているのかはこちらには全く届きません。
 この時その三人の必死な様子から私が思ったことはと言えば、

 …あー、これは「ドッキリ」だな。
 誰かここを通りがかった人を驚かせて遊んでやがるなコイツらは。

 残念ですが今日は花の金曜日。
 とっとと抱えてる仕事を片付けないと土曜出社なんてごめんなので、私はそんなノリに付き合うほど人間が出来ていないのです。そんな訳で、

【佐山】「・・・!・・・・!・・・・・・・・・!」(同上)
【東城】「・・・・・・・・!・・・・・・・・!」(同上)
【清水】「・・・!・・・・・!・・・・!」(同上)

 私は三人の必死の訴えが続く中、それを小馬鹿にするようにひらひらと小躍りしながら扉までむかい、開けて、中に踏み込みました。
 するとそれまで防音設備で遮られていた三人の言葉が私に襲いかかります。

【佐山】【東城】【清水】「開けるなーーー!!!」

 その声のあまりの音量にビックリした私は硬直してしまいました。

【東城】「なんで警告したのに入って来ちゃうの!」
【清水】「いいから早く扉しめてよ!何考えてるのこのXXXXX!」
【佐山】「早くこっちへ来なさい!すぐに扉締めてそこから離れて!」

【瀬方】「…なに?、なに?なんなんですか?」
 ただのドッキリのくせしてなんで必死なのこの人たちは。
 あまりにもすさまじい剣幕で怒鳴られたので、驚いた私は半泣きになってしまいました。
 それが少し腹が立ってしまったので、私はわざと扉を閉めずにズンズンと部屋の中へ入り、

【佐山】【東城】【清水】「扉ーーーーーー!!!」

 と叫ぶ三人の声を完全無視し前の吸煙テーブルの上に荷物をドンと置き、そのまま何も言わずに出て行こうとしたのでした。



―ところが、出口の方を振り向いた私は、そこで動けなくなってしまいました。

 喫煙所の扉の真ん前、私がここに入る前は確かに誰もいなかったはずのところに何かが立っていて、出入り口を完全に塞いでいるのです。
 その何かはカゲロウのように不確かな姿でゆらゆらうごめいて、二つの目だけがはっきりとこちらを睨み付けていました。
 私が硬直していると、そのカゲロウはゆっくりと体を動かし始め、半開きの扉から中へ入ってこようとしていました。

 え、なにこれ、ドッキリ?ドッキリじゃないの?CGとか映像投影とかそういう類のものじゃないの?
 私が微動だに出来ないうちにそのカゲロウは扉枠に手をかけ、ズルズルッとそのモヤのような体を部屋の中に押し込み始めています。

【東城】「どりゃああああああああ!」

 不意に私の背後で東城さんが叫びながら扉までダッシュし、そのカゲロウを押し出すように強引に閉めてしまいました。
 カゲロウは扉と枠の間に指(のようなもの?)だけが挟まれ、それは少しの間ピロピロと不思議な動きで暴れ、やがてサッと扉の向こうに引っ込んでいきました。
 扉もアクリル製で透明のため、扉の向こうのカゲロウの姿がまだはっきりと見えています。
 それはまるでゆっくり息をするように揺れ動き、じっと部屋の中を見つめていました。

ふと気がつくと私の体は地べたに座り込んでいて、ガタガタと震え始めていました。多分泣いてもいたと思います。

【瀬方】「なんですかー!なんなんですかあれー!ここ入ってくる時にはあんなのいなかったのにー!」
【東城】「知らないよ!オレが聞きたいよ!そもそも必死で止めたのに入ってきたバカが悪いんだろ!」
【清水】「もーうるさい!狭いところでギャーギャー叫ばないでよ!そんなところであんたらに暴れられるとアイツが何をどうしようとしてるのか見えないじゃない!」

 清水さんの「アイツが何をどうしようとしてるのか」と言う言葉にハッとなった私と東城さんが慌ててカゲロウの方を向くと、ソイツは指を挟まれた後もそこから微動だにせず、ただ扉の前に立ち続けているだけでした。
 その様子に、私以外の三人は胸をなで下ろしたようでした。

 私たちは、私がこの部屋に入る前に三人がやっていたように、カゲロウが塞いでいる出入り口から最も遠い位置に寄り集まり、ソイツが何をどうしたいのかを監視する事にしました。

【瀬方】「…あれ、なんですか?まさか幽霊とか…」
【清水】「(真っ青になりながら)やめてよ!幽霊とかそんなのいる訳無いに決まってるじゃない!誰かのイタズラに決まってる!」
【東城】「オレにもさっぱりだ。ただ、オレがここでタバコを吸っていたら、アイツがいつの間にかそこにいたんだ。」
【東城】「最初は透明な扉に最新設備のプロジェクターか何か仕込まれていて、社長がなにかイタズラを仕掛けてきたのかと思ったよ。」
【東城】「オレ、そういうの全然平気だから『スゲー!』とか言って最初は喜んで扉を小突き回して遊んでたんだよ。」
【東城】「そしたら、社長が来て何食わぬ顔で扉を開けたんだけど、その時アイツが映像ではなく扉の外に実際に立っているモノであることに気がついたんだ。」
【東城】「で、社長は社長で、まるでソイツの存在に気がつかないように体の中を通り抜けて入ってきたと思ったら、いきなり競馬の話を振ってきたんだ。」
【東城】「それでオレは確信した。これは社長のイタズラではないとね。この社長がこれだけ大がかりなイタズラを仕込んだなら、それに触れずにいきなり競馬話出来るような性格では無いだろ?絶対イタズラに関して大層な自慢話をしてくるはずだ。」
【佐山】「その話はやめてくれ!アレを通り抜けてたかと思うと気色悪い!」
【清水】「私もよ!もうそんなこと考えたくもない!」
【瀬方】「…え?『通り抜けてた』って…?…それって…」
【佐山】「…ああ…、さっきな、君もこの部屋に入る時に、アイツの体の中を思いっきり通り抜けて入ってきたんだ…。」
【瀬方】「・・・・・・!!(大驚愕)えー!ぎゃー!イヤー!」
【清水】「うるっさい!!耳痛いから騒ぐな!」
【清水】「…私がここの前を通りがかった時も、社長と東城さんが部屋の隅でガタガタ震えてて何やってるのよと思ったわよ。」
【清水】「で、知らないでここに入ってきてみれば、なんかキモいヤツの体の中を通り抜けたとか言われるし、振り向いたらあんなのがいるし、もう最悪よ!」
【瀬方】「(泣きながら)…え、じゃ、じゃあ私は…」
【佐山】「分かりやすく言うなら『第四の犠牲者』と言うところか?」
【瀬方】「そんなやだーーーーー!!」
【清水】「だからうるさいっての!放り出すよ!?」
【東城】「…そんな訳だから、オレらはかれこれ30分以上この部屋から出ることが出来ないでいる。外に連絡する手段もない。携帯持ってるか?多分圏外になってるはずだ。」
【瀬方】「…ホントだ、圏外…」
【清水】「もうなんで電波も通らない変な場所にしちゃったんですか社長!もう信じられない!」
【佐山】「いや、電波は入るようになってるよ!アンテナを通してあるから!圏外なのはアイツのせいに決まってる!」
【東城】「とにかく!…とにかくアイツの目的がなんなのかは全く分からないが、アイツはとにかく喫煙所の中からしか見ることが出来ない。どうにかしてこの事を外に知らせないと、また誰かがここに入って来て出られなくなってしまう。」
【瀬方】「じゃ、じゃあ誰かの服にメモを書いて見えるように広げておきましょうよ!」
【清水】「あんたペン持ってるの!?」
【瀬方】「無い…(半泣き)」

 それから何分経ったでしょうか。
 特に有効な方法を思いつかないまま、私たちはただ扉の前に立ちふさがっているその何かを監視し続けていました。
 扉の外のカゲロウのような幽霊のようなものはそれから一切微動だにせず、ただ私たちが部屋から出るのを防いでいるだけのようでした。
 部屋の中は最新の空気清浄機で常に快適にされているはずなんですが、心なしか気温が上がってきたような、少し焦げ臭い匂いがどこかから漂ってくるような、そんな気がし始めていました。

【東城】「おい、あれ…」

 東城さんが不意に声を上げ、階下に通じる階段口を指さします。
 そこから工員の相田さんと下尾くんが姿を現しました。
 彼らは私たちの姿を見つけると満面の笑みを浮かべながら喫煙所の方に向かって来てしまいます。

【瀬方】「だめー!来ちゃだめー!!」
【佐山】「来るなー!戻るんだー!」
【東城】「何かに閉じ込められているんだ!助けを呼んできてくれ!」
【清水】「だからうるさいっ!うるさいからワンワン叫ぶな!」

 …結局、彼ら二人は私たちの必死の説得も聞かず(聞こえる訳もなく)扉の前の幽霊の体を通り抜け、喫煙所内に入り込んできてしまいました。
 …私もあんな風にアイツの体をすり抜けてきたのかと思うと、今でも寒気がします…。

 ところが、彼ら二人の行動には、私たちと決定的に異なる部分がありました。
 私たちは全員扉の前の幽霊の存在に気がついてから異常に気付いたのですが、
 彼ら二人は、その存在に気付く前、というか喫煙所の中に入る前からすでに怯えきっていたのです。

【下尾】「ああ、良かった、良かった死ぬかと思った…」
【相田】「社長、ご無事で…。怪我は無ぇか下尾?」
【佐山】「死ぬ?怪我?…一体どういう事だ?」
【相田】「いや、それが言っても多分信じてもらえない事なんですが…」
【下尾】「ゆ、幽霊っす!幽霊がいっぱい襲ってきたっす!それで逃げて来たっす!」
【東城】「!!!!」


つまようじ。作 再構成版



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(二回目から表示)

なんでこんなに心地いいのだろう。
それは温かった。
それは柔らかかった。
まるで、母の胸の中のように。
なんでこんなに哀しいのだろう。
それは冷たかった。
まるで、北の大地に降り積もった雪のように。
なんでこんなに・・・
俺は悩んでいるのだろう。

一番最初に知ったから。
俺は知っていた。
あの日、あの場所で。
この悲劇が起きることを。
神様は許してくれた。
俺に最後の無茶をする機会を。
さて。
社長には競馬での借りもあるし。
 ・・・俺の最後の仕事を始めるか。



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清水「英子ちゃん、悪いんだけどこの荷物、佐山社長に届けてくれないかしら?」
派手な化粧、きつい香水。
この人は絶対水商売のほうが似合うと思う。
瀬方「私、自分の仕事で手一杯なんですけど。」
私は手元のPCを指差す。
清水「いいじゃない。そろそろお昼休みなんだしさぁ。
ねぇ、たのむわよぉ?」
瀬方「・・・仕方ない人ですね。わかりました。
この作業が片付いたら届けますんで、そのあたりに荷物を置いといてください。」
清水「やったぁ!ありがと!」
そう言って清水さんはご機嫌そうにどこかへ行ってしまった。
また厄介なものを任せられたなぁ・・・
中身はなんだろう?ちゃぷちゃぷ音がしてるから、
またお酒の類かな、こりゃ。
 ・・・そういえば、自己紹介が遅れましたね。
私の名前は瀬方英子といいます。
一応、何代か続いているらしい中小企業で二年ほど事務職をしているのですが。
 ・・・正直この会社は、いまいち。
私が働いているこの建物は年代物で、いたるところにがたが来ています。
三階建てで、一階が生産加工部、二階と三階が事務部。
私が二階で事務処理をしていると、下からの振動がもろに伝わってきます。
たまにギシっといやな音がしたりして、
いつかこの床が本当に抜けてしまうんじゃないかと思って、毎日ひやりとしています。
しかし、そんな現状を知っていて、
なおかつ私がいくらこの建物を建て替えようといっても、
社長はお金を渋って、会社の内装や外装なんかきちんとする気がありません。
その割にはこの間、三階に豪勢な喫煙所を作っていましたが・・・
なんでも社長にとってたばこは、会社内での唯一の娯楽なのだそうです。
私は何度も、そんなものを作る余裕があるなら、まず会社のリフォームを!
と言ったんですけどね。
さてと。
仕事も片付いたことだし、頼まれた荷物を届けなきゃかな。
あの人が社長室に居たためしなんかないから、
きっといつもどおり適当にどこかをうろついているんだろうけど・・・
どこから探そう?

選択肢
1 一階へ行く。
2 三階へ行く。

1の選択肢
 ・・・一階へ行ってみるかな。
私はPCを閉じてから、荷物片手に階段を下りた。
一階に下りると、やっぱり独特の油のにおい。
鉄を削る音やら機械の動く音やらで、
とてもじゃないけど私の声なんて届きそうにない。
仕方がないから、たまたま近くを通りがかった下尾くんに話しかける。
瀬方「あの、社長見ませんでしたか?」
下尾「あーん?きこえねーよー、なんか呼んだかー?」
やっぱりこの環境では、近い距離でも私の声は聞き取りづらいみたいだ。
私は出来る限り大きな声で言い直す。
瀬方「下尾くーん!社長見ませんでしたかあ!?」
下尾「俺ぁは見てないねー!きっと三階の喫煙所にでも居るんじゃない?」
下尾「今日は金曜だから、日曜かける馬について、東城さんと話し合ってると思うー」
瀬方「わかりましたぁ!ありがとうございます!」
この状況だと、どうしても大声でのやり取りになってしまう。
下尾「英子ちゃん、それより、今度一緒に遊び行かないー?」
瀬方「べーだー!死んでもいきませーん!」
下尾「つれないなぁ・・・」
下尾の口が動いたのは見えたが、周りがうるさくて聞き取れない。
瀬方「周りがうるさくて聞こえませーん!なんですかあ?」
下尾「なんでもないよー!」
瀬方「そうですかぁ!じゃあしつれいしましたぁ!」
どうやらこの時間、社長は三階の喫煙所にいるらしい。
そういえば、そんなことをいってたような気もするな・・・
私は三階の行くため、一度下ってきた階段を再びのぼり、一階をあとにしました。

2の選択肢
(やっぱり喫煙所にいるのかな?)
私は三階へ足を運んだのでした。

二回目以降表示

東城「ふう・・・」
仕事を黙々と続ける東城。
いつもなら、競馬会議のために喫煙所にいるのだが、今日はいつもより仕事が多く、
少しの間のこって仕事をしていたのだった。
ただそれだけ。
それだけのことが、東城の生死を決めたのだった。
東城「うわっ!?」
作業に使っていた機械が突然発火した。
それは、発火したというよりも、爆発と言っていいかもしれない。
その衝撃で東城は意識を失う。
そして、体を炎に包まれ―――
東城は死んだ。
もちろん、それに気付いた社員はいなかった。
機械のすぐそばに横たわる東城の姿に。


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 ・・・三階へつくと、ちょっと変な光景を目の当たりにしました。
喫煙所の外壁は透明なアクリルガラスで覆われていて、扉も同じアクリルで出来ています。
これについては、いつもとなんら変わりはないのですが・・・
中に居る社長と、清水さん、東城さんの三人が扉を凝視していて、
しかも三人は、扉から一番遠い部屋の奥で、がたがた震えながら縮こまっているのです。
三人は、私が来たことにもまったく気づく様子はありません。
瀬方「まったく、仕方がないなぁ」
とりあえず荷物を持ったまま扉の前へ。
アクリルの扉をノックすると、三人はようやくこちらに気づき、
必死の形相で何かを伝えようとしています。
しかし、無駄に金のかかったこの喫煙所は防音も完璧。
中からの声はぜーんぜん届きません。
いい年こいて、この人達は何をやっているんだろう。
私だって、そんなに暇なわけじゃないのに。
 ・・・しょうがないので、扉を開けて中に入り、ずかずかと乗り込む。
瀬方「荷物―――――」
佐山「なんで入ってきたんだ!!!!」
怒声。
そのあまりの気迫と声の大きさに、私はパニック。
瀬方「え、いや・・・その・・・」
清水「あんたって人は!!!」
佐山「なんであんなに必死に入って来ないように言ったのに入ってくるんだよ!!」
瀬方「だ、だって、ここ、防音だし・・・、それに・・・」
もう私は半泣き。
佐山「あぁ、もういいから早く扉を閉めて!!!」
瀬方「へっ!?」
佐山・清水・東城「扉!!!!!!!!!!」
瀬方「ひゃ、ひゃい!」
もう、何が起こっているんだかまったくわからず、
とにかく、三人の言葉に従おうと、扉の方に目を向けたのですが―――
そこで私は、動けなくなってしまいました。
瀬方「えっ、・・・なに・・・これ・・・」
あまりの衝撃に、荷物を投げ出して、その場に座り込んでしまう私。
大慌てで東城さんが扉を閉めに走る。
私が見たもの。
扉の向こうに、その何かは居ました・・・
それは、黒くて、だけども透けて見えるような、一言で言うなら、陽炎。
人の形をした陽炎が、確かに扉の向こうにまるで出口をふさぐようにたっているのです。
それが扉のわずかな隙間から、扉の内側へ、手を伸ばす。
そしてついには、その体までねじ込み始め―――
瀬方「ひっ・・・」
東城「どおおおりゃぁああああああ!!!」
東城さんは、扉の少し前で座り込んでいる私を飛び越え、
強引に、その陽炎を押し出すようにして扉を閉める!
陽炎は扉に、逃げ切れなかった指の一部を挟まれ、
それは少しの間うねうねと暴れたのち、やがてサッと扉の向こうへ引っ込んでいきました。
そして扉の向こうでは、何体もの陽炎が、まるで呼吸をするように揺らめいています。
その陽炎たちはまるでこの部屋の中を、じっと見つめているようにも取れました。
私の体はいつの間にかがたがたと震えていて、涙も止まりません。
それでも私は、少しでもこの状況を理解しようと、
疲れて扉の前に座り込んでいる東城さんに、無我夢中で問いかけました
瀬方「な、ななななんなんですか、あれぇ!?」
瀬方「ここに入ってくるときは、なにも居なかったですよぉ!?」
東城「俺だってわからないさ!」
東城さんは、鬼のような形相で続ける。
東城「だいたい!!」
東城「さっきも言ったけど、なんで俺たちが必死で止めたのに入ってくるんだよ!!」
東城「馬鹿なの!?死ぬの!?」
瀬方「だ、だって!それは―――」
清水「あぁもううるさい!!!!!!こんな狭いところでぎゃーぎゃー叫ばないでよ!」
清水「大体、あんたらがそんなところで騒いでると、」
清水「あいつらが何をしようとしてるか見えないじゃない!」
東城、瀬方「あっ・・・」
場の空気が一瞬凍りつき、私は扉に振り返る。
しかし幸いにして、陽炎たちに動きはありませんでした。
瀬方「よかった・・・」
私は胸をなでおろす。
そして、周りの皆も先ほどまでの緊張が解けたみたいです。
私たちは自然に、
陽炎が居る扉から、最も離れたこの壁に寄り集まっていました。
瀬方「ぐすっ・・・」
私の涙もようやく止まりました。
瀬方「・・・あれ、なんなんですか?」
私は一番の疑問を、吐き出したのでした。
瀬方「まさか幽霊、とかはありえないですよね?」
清水「ちょっと、そういう事言うの冗談でもやめてくれる!?」
清水「きっと、誰かのたちのわるいいたずらに決まってるじゃない!」
真っ青になりながら、否定する清水さん。
東城「幽霊ね・・・」
東城「とにかく俺にもあの黒いのの正体はさっぱり」
東城さんは、肩をすくめた。
東城「俺がここで一服してたらさ、いつの間にかそこに居たんだよ」
東城「俺は最初、そこに透明なプロジェクター的なものを社長が仕組んだんじゃないかと思ったんだ。」
身振り手振りをそえて説明を続ける東城さん。
東城「それでもって、俺、そういうのぜんぜん平気だったから、すげーとかいって喜んで扉を小突いたりして遊んでたわけよ」
東城「そしたら社長が来て、何食わぬ顔で扉を開けたんだよ!」
東城「どう考えてもおかしいとおもわないか!?」
東城「・・・ごめん、熱くなりすぎた」
東城さんは一度咳払いをしてから話に戻る。
東城「だから俺はそのとき、あの黒いのが映像じゃなくて、実際にそこに立っているんだって気がついたんだ」
東城「で、社長は社長で、まるでそいつの存在に気がつかないように体の中を通り抜けてこの部屋に入ってきたと思ったら、いきなり競馬の話を振ってきた」
佐山「その話はやめてくれ!アレをとおりぬけたかと思うと気味が悪い!」
清水「私も嫌だわ、その話・・・、だめ、また鳥肌が立ってきた・・・」
清水さんは、自分の肩を抱きこむ。
 ・・・
瀬方「あれを通り抜けたってどういうことですか?」
この二人の話が私にはわからなかった。・・・いったい、なんのこと?
東城「だから、君があの黒いのの中をこう、するっと・・・」
 ・・・え?黒いのの中を、するっと・・・
瀬方「いや!!!!!えっちょなんで言ってくれなかったんですかぁ!?」
私があれの中を通り抜けたってこと!?
瀬方「もういやぁああああああ!!!!!なんで私がこんな目にぃ?」
清水「あぁもううるさいわね!!!ここ響くんだからそんなに騒がないでよ!!」
清水さんは、口では怒鳴りつつも私を諭すような眼をこちらへ向けている。
 ・・・清水さんのこんな表情は初めてだった。
瀬方「・・・ぐす。だってぇ・・・」
清水「私たちだって同じ。・・・あの黒いのの中を通り抜けてこの中に入ってきたの。」
清水「過ぎたことを言ったって仕方がないの。」
清水さんは、・・・正直ちょっぴり気恥かしいのだろう。苦笑いを浮かべる。
清水「今はこれからどうするかを考えなきゃいけないのよ」
その表情は、何かを覚悟したような、しかしそれでもやさしいおだやかなものだった。
 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・
佐山「・・・やっぱり携帯はつながらんな。こんな時につながらないで何が携帯電話だ。」
佐山「アンテナは通してあるのに、やっぱりあいつのせいなんだろうな。」
鬱屈そうに社長は携帯を投げ捨てる。
清水「私の携帯も圏外。」
瀬方「あ、私もです。」
東城「・・・連絡手段は他にはないんですよね?」
佐山「あぁ・・・」
みんなして眉間にしわを寄せる。いったいどうしたものか・・・。
清水「誰か、ペンとか持ってない?それで周りと連絡がとれるかも!」
東城「今日に限って持ってない。いつもなら競馬用に一本持ってきてるんだが・・・」
佐山「俺も忘れちまった」
清水「英子ちゃんは!?」
瀬方「・・・私も、ないです」
清水「そっか。・・・はぁ、じゃあどうすんのよ、なにも外への連絡手段がないじゃない」
清水さんの言う通りだ。つまりここは、陸の孤島。
私たちは、何もできやしない。
 ・・・それから何分たったのだろう。
特に有効な手段も思いつかず、私たちは沈黙を保っていました。
もちろん陽炎も。
陽炎は、なにも動きを見せず、ただ私たちがここから出るのを防いでいるだけ。
そして、ここの空調設備が整っていたのは幸いでした。
こんな狭い中で小一時間この人数で閉じ込められれば、
ある程度の空気のよどみは覚悟していたのですが、
今のところ、全くそういう兆候はありません。
しかし。
私の鼻は、すこしずつ、変化を覚えていました。
瀬方「?」
 ・・・焦げ臭い?
周りのみんなは何も言わないので、私の勘違いでしょうか?
清水「英子ちゃん、どうしたの?」
私のそんな様子を見て、清水さんが話しかけてくれます。
瀬方「いえ、ちょっと―――」
東城「おい!あれ!!!」
東城さんは不意に声を上げ、階下に通じる階段を指さす。
そこにいたのは、工員の相田くんと下尾くん。
二人はここに人がいるのを見つけると、満面の笑みでこちらへ駆け寄ってきます。
 ・・・さっきの、東城さん、社長、清水さん、の気持ちがわかった気がします。
私たちはただ叫ぶしかありませんでした。
瀬方「だめ!来ちゃだめだって!!!」
佐山「来るな!!!!」
清水「うるさい!!!向こうに声が届かないのはわかってるでしょ!!!」
 ・・・そう、清水さんの言うとおり。
私たちの呼びかけは、
向こうから見たらただ歓迎してるようにしか映らなかったんだろう。
さっきよりも顔に喜色を浮かべ、すごい勢いで喫煙所の中へ。
 ・・・もちろんあいつの体をすり抜けて。
私も、あんな風にすり抜けてきたのか、なんてのんきに思っていると。
佐山「?」
私たちは、彼らの異変に気付きました。
彼らはまだ、あの陽炎を見てはいないはず、気づいてはいないはずなのに。
―――どうして彼らはこんなに怯えきっているのだろう?
下尾「あぁ・・・良かった、助かった・・・」
相田「社長、よくぞご無事で。怪我ぁねぇか?下尾」
佐山「死ぬ?怪我?一体どういうことだ?」
相田「いや、それがね。・・・言っても信じてもらえねぇと思うんですがね・・・」
下尾「幽霊っすよ!!幽霊がいっぱい、襲ってきたんです!!!!」
一同「!!!!!」
彼らの様子がおかしい理由はそれだったのか!
下尾「ひっ!!!!」
下尾くんは怯えた様子で扉のほうを確認すると、私たちに叫ぶ。
下尾「ほら!あそこにも!!!!もう駄目だ!!!!!殺される!!!!!!!」
清水「いいから落ち着けって!」
清水「そんなんだから英子にことごとく振られるんだよ!」
下尾「それとこれとは関係ないでしょうが!!!!だって、あそこに黒いのが!!!」
私たちが扉のほうを見ると、陽炎が確かに居ます。
でもそれは、さっきまでと同じ?・・・
いや、さっきまでとは明らかに違う!!!
東城「こいつはやばいな・・・!!」
清水「いやっ・・・来ないで!!」
陽炎たちは、徐々に数を増やし、この部屋を取り囲んでいきます。
今までとは違う攻撃的な、威嚇的な彼らの視線・・・!!
瀬方「これって・・・、っ!?」
焦げ臭い!?さっき感じたあれはかん違いなんかじゃなかった!?
佐山「これはやばいな・・・」
部屋の気温も徐々に上がっていってる!
換気扇からは依然、焼けた空気が流れ込んでくる。
下尾「もうだめだ!!殺されるんだ!!!!」
清水「いや!!!!死ぬのはいや!!!!!」
東城「どうしたらいいんだよっ・・・・!!!!」
東城「・・・・・・・俺がここで行くのは、決まってることなんだよな・・・・」
瀬方「えっ・・・?」
私には聞き取れなかったけど、東城さんはその一言で決意したみたいだった。
東城さんは立ち上がりみんなに告げる。
東城「もう嫌だ!!!!こんなところ!!!!」
東城「このままじゃ何もかわらない!!!だから俺が外に出て助けを呼んでくる!!!」
そう言いながら東城さんは扉へ突き進む。
清水「ちょっと!?」
佐山「東城くん、それはいくらなんでも!?」
口々にみんなは何かをつぶやく。」
私は・・・
瀬方「・・・」
私は、見ていることしかできなかった。
東城「・・・」
東城さんは扉の前に立ち、・・・一回深呼吸をしたように見えた。
東城「うらぁあああああああ!!!!!!!!!!」
扉を全力で開け、階段まで走り抜ける・・・と思ったら、途中で立ち止まってしまう。
私たちはその姿をただ、見ているだけだった。
東城さんの体が次第に黒い奴らに・・・!!
清水「いやぁあああ!!!!」
佐山「見ちゃだめだ!!!!!」
瀬方「・・・いやっ!」
黒い奴らに、浸食されていく。
足元から徐々に、奴らの手が東城さんの体を上っていく。
東城「・・・・・・・これでいい。」
東城「・・・・・・・みんなのためだから」
何を言っているか分からなかった。
ただ、東城さんの口元が動き、そして私たちにほほ笑んだ。
黒い手は、東城さんの頭まで上ってきて、そして・・・
瞬間。
東城さんの体は、一瞬にして燃えた。いや、燃え尽きた。
断末魔の叫びが、この部屋にこだまする。
口から炎をおう吐して。
目から炎を涙して。
東城さんは、燃え尽きた。
それは凄惨な光景であるとともに、どこか、・・・美しい光景でした。
下尾「うわぁああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
下尾くんは、ついに発狂した。
下尾「もう駄目だ死ぬんだ助けてくれ・・・もうこんなのは嫌だよ・・・」
下尾君は部屋の隅で縮こまってしまった。
私たちも似たようなものだった。
もう、この中に正常な判断ができる人なんていなかった。
相田「もう、俺たち死ぬのかいね・・・」
清水「そんなこと、・・・言わないでください」
この部屋の室温は上がり続けていて、まるで蒸し風呂のようになっていました。
私たちはもう軽い脱水症状をおこしているのかもしれない。
こんな中でまともな判断をしろというのも、無理な話でした。
黒いのは動きを止めず、次第にその熱でこのアクリルの壁を溶かし始めていました。
瀬方「ははっ、私たち、東城さんと同じように黒こげになって死ぬんですかね?」
清水「はっ・・・!私はまだ死ぬ気なんてないわよ・・・」
清水さんは周りから見れば強がりを言っているようにしか見えなかった。
でも、多少その言葉に救われた。
ガン!ガン!!!!!!!!
後ろの壁からも何かが来たようです。
 ・・・たぶんあの陽炎だろう。
私たちは、部屋の隅で怯えるだけでした。
 ・・・もう何もできやしない。
瀬方「助けて助けて助けて助けて助けて助けて・・・・」
ガン!!!!
 ・・・壁がどんどん崩れていく。
相田「社長、これで死んだら、一応殉職みたいな感じなんですかね?」
ガンガン!!!!
 ・・・もうこの壁も長くはもたないだろう。
佐山「ははは・・・、家族を残して死ぬなんて考えちゃいけないよ・・・」
ガンガンガン!!!!
 ・・・この壁が壊れたとき、私たちは殺される。
相田「あいにく家内も息子も、離婚して、もう十年はあってませんよ」
佐山「そう・・・だったな」
ガン!ガン!
壁に亀裂が入った。そしてそれが大きくなっていく。
相田「生きてここを出られたら、会いにいってやろうかな・・・」
佐山「そうしたほうがいい」
壁が割れ、やがてその隙間から黒い手が入りこんできた。
清水「いやだいやだいやだ・・・」
下尾「あぁ、もう俺たちは死ぬんだ・・・」
そしてまた、
ガン!!!!
ついに壁が壊れ、あいた穴から人が流れ込んでくる!!!
私たちは、各々に泣き叫びながらその場に泣き崩れた。
もう駄目だとだれもが思った、その時。
???「大丈夫ですか!?助けに来ました!!!!」
予想もしなかった出来事に、私たちは顔を上げた。
そこに立っていた銀服の男のもっていた斧をみてはじめは驚いたが、
やがてそれがこの壁を割るために用いられたものである気づく。
―――私は周りを見まわした。
アクリルの壁を一枚隔てた向こう側には、あの陽炎の姿はもうなく、
その代わりに、大きな炎が顔をのぞかせていていました。
このアクリルの中だけが、きれいにそのまま残っていたのです。
消防士「もう時間はありません、建物の崩壊が始まっています!」
消防士は自らが入ってきた穴をさらに大きく開け、そこから出るようにと社員に告げた。
消防士「さぁ早く!」
私は消防士に手を取られ、一番最後にこの部屋をあとにしたのだった。
助け出されビルの外に出ると、私の眼には、崩れていく、自分の会社が目に入った。
さっきまであの中にいたことが信じられないほど、建物は崩れていた。
そして私たちは、ただただそれを眺めることしかできませんでした。
―――後日談
あれから一週間がたって。
喫煙所居たものより先に避難した、あるいは助け出されたものによれば、
一階で機械が発火し、それが老朽化したビルのありとあらゆる場所へ、
あっというまに火の手が回り、多数の社員が火災の初期段階で亡くなった。
建物にはスプリンクラーが設置されていたが、作動しなかったらしいのです。
詳しいことはまだ調査段階なのだそうです。
業火の中で三階の喫煙所が、きれいなまま残っていたのは奇跡に等しく、
彼らを助け出した消防隊員いわく、
「誰かに守られているようだった」と。

二回目

そしてもう一つ。
東城さんの遺体が、三階ではなく、一階の火災発生場所から見つかりました。
でも、それは明らかにおかしいのです。
確かに私たちは、喫煙所の中で、東城さんとともに過ごして、
―――そして死ぬ姿を目の当たりにしたのだから。
たぶん、東城さんは死ぬ間際に、私たちを助けてくれたのです。
もしくは死んだあとに。
きっと、あの喫煙所を炎から守ってくれていたのです。
思えば、喫煙所に一番最初にいたのも東城さんでした。
私たちは信じたい、いや、信じます。
あの日、あの陽炎を私たちに見せたのは、東城さんだと。

オチが浮かばないんだorz
誰か頼む。







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最終更新:2010年01月06日 07:59