【フラン初めてのおつかい】

【フラン初めてのおつかい】



17 :フラン初めてのおつかい:2010/11/14(日) 22:16:40 ID:6MHaFo8U0
紅い紅い紅魔館廊下、パチュリーがのそのそと歩いていた。

咲夜 「あパチュリーさま、なにか探し物ですか」
パチュ「小悪魔見かけなかった?」
咲夜 「小悪魔さんなら妹様といっしょにリビングでテレビをご覧になってましたが」
パチュ「そう……私も少し休憩しようかしら」
咲夜 「あ、ならお茶を用意いたしますね」
パチュ「えぇ、よろしく」

 紅魔館リビング、テレビの前の絨毯にフランドールと子悪魔が座り込んで、画面を真剣に見つめている。
 その様子を物憂げに眺めるレミリアだったが、咲夜とパチュリーの入室を見て軽く手で挨拶を交わす。

レミ 「私にはいまいち面白さがわからないわ」
咲夜 「なにをご覧になっているのですか?」
レミ 「はじめてのおつかい。子供にお遣いを頼んで、その様子を見て楽しむ番組みたい」
パチュ「前に見たことあるわ」

 テレビ画面には、5歳ぐらいの子供二人が頼りなく歩いている様子が写されている。

ナレーション「魚屋の次は八百屋さん。おやおやケンくん、八百屋さんでロレックスのエクスプローラー?を見つけ
ちゃった!ケンくんロレックスはお母さんに頼まれてないよね?」
ケンくん 「1000円じゃ足りないや」
お姉ちゃん「それは頼まれてないよ、買うのは大根!」
ケンくん 「大根……大根ください」

フラン「ケンくんがんばれ!」
小悪魔「やった大根買えた!あとは帰るだけ!」

 ケンくんとお姉ちゃんの奮闘を、拳を握りながら見守るフランと子悪魔。二人の楽しそうな様子をレミリアは醒め
た目で見つめる。


18 :フラン初めてのおつかい:2010/11/14(日) 22:18:13 ID:6MHaFo8U0
咲夜 「子供かお母さんが楽しむ番組みたいですね」
レミ 「そうね、私には合わないわ」

 番組が終了し、興奮冷めやらぬフランと子悪魔は目を輝かせて笑いあっている。ふとレミリアと目が合うフラン。

フラン「お姉さま」
レミ 「ん?」
フラン「私もはじめてのおつかいがしたい!」

 空いた口が塞がらないままティーカップを取り落とすレミリア、それが床に落ちる前に咲夜が受け止めた。

 作戦会議

レミ 「フランを一人で外に出すのは不味くない?」
咲夜 「でも妹さまは本気ですよ。リュックサックを引っ張り出してましたし」
パチェ「念のため小悪魔を同行させるわ」
レミ 「だいたいお遣いっていっても、日が暮れてからじゃ魚屋も八百屋も閉まってるじゃん」
咲夜 「お遣いごっこでいいんですよ。霊夢さんに協力してもらいましょう」
レミ 「なんか心配だなぁ」
パチェ「私たちも離れて付いていけば問題ない」

 リュックサックを背負って目を輝かせるフラン、背中のリュックに咲夜が重箱を詰める。

咲夜 「その重箱を博麗神社の霊夢さんに届けてください。それではお願いしますよ妹さま」
フラン「なんか思ってたのと違うな……買い物とかしないんだ」
小悪魔「これも大事なお遣いですよ!」
フラン「うん、そうだね。じゃあ行ってきます」
咲夜 「はい、お気をつけて」


19 :フラン初めてのおつかい:2010/11/14(日) 22:19:36 ID:6MHaFo8U0
神社に向けて暗い夜道を元気よく歩くフラン、付かず離れず小悪魔が付いてくる。

小悪魔「暗い道って、なんだか少し心細くなってきますね」
フラン「そう?私は平気だけど」
小悪魔「物陰から変なのが出てくるんじゃないかと想像しちゃうと、不安なんです」
フラン「あぁほら、テレビでやってたよ。心細いときは歌いながら歩けばいいの」

 いつの間にか拾った小枝を振りながら歌いだすフラン。

フラン「どーれみふぁーそらしーどー」
ミスティア「ん?こんな夜道に歌声が聴こえるよ」

 フランの歌声に誘われて、ミスティアがふらふらとやって来た。

みすち「こんばんわお嬢さん、歌を唄ってご機嫌だね」
フラン「あ、歌のお姉さんだ」
小悪魔「歌のお姉さんですか?」
フラン「うん、クリスマスのパーティの時に歌を唄ってくれたんだよね」
みすち「あぁ誰かと思ったら、紅魔館のお嬢さんか。こんな時間にどうしたの?」
フラン「お遣いで、霊夢ところにお届け物なの」
みすち「神社まで?ふーん」
フラン「歌のお姉さんも一緒に行こうよ」
みすち「歌のお姉さんじゃなくて、私はミスティア。一人で歌うより二人で歌うほうが楽しいかな」
フラン「じゃあミスティア、行こ?」
みすち「うん、まぁヒマだから付いてくよ」


20 :フラン初めてのおつかい:2010/11/14(日) 22:20:23 ID:6MHaFo8U0
歌いながら夜道を歩く三人。しばらく進むと、道の真ん中に何者かが倒れていた。

フラン「誰か小さい子が倒れてるよ?」
小悪魔「子鬼ですね」
みすち「萃香だね」

 むにゃむにゃ言いながら道に突っ伏して寝てる萃香。近づいてきたフランがほっぺたを突付くと、むっくり起き上
がり周囲を見回す。

萃香 「んーここ何処だ?」
フラン「こんばんわ鬼さん」
萃香 「……誰だっけ」
みすち「この子は紅魔館のお嬢さん、妹のほう」
萃香 「会ったことあったかなぁ?」

 萃香はしばらく考えを巡らせるが、そのうちどうでもよくなって考えるのを止めた。

萃香 「まぁいいや、面白そうな奴だね、お酒呑む?」
フラン「お遣いの途中だから飲まないよ」
萃香 「こんな時間にお遣い?」
フラン「うん、霊夢にお届け物なの。鬼さんも一緒に行く?」
萃香 「鬼さんじゃなくて萃香って呼んで。そうだなーひさしぶりに霊夢の顔見に行くのも悪くないね」
フラン「じゃあ決まりね」

 夜の博麗神社、霊夢と魔理沙がコタツでごろごろしている。

フラン「こんばんわー、お届け物です」
霊夢 「あぁやっと来たわ、はいはい」

 コタツから這いずり出た霊夢が玄関に行くと、フランと子悪魔、その他二人ほどが賑やかに待っていた。


21 :フラン初めてのおつかい:2010/11/14(日) 22:22:32 ID:6MHaFo8U0
霊夢 「また随分と大勢だわね」
フラン「咲夜からコレを霊夢に渡すように言われました」

 フランは背中のリュックを下ろし、中の重箱を取り出す。

霊夢 「はいお遣いご苦労様。上出来よ」
フラン「じゃ、お遣い終わったんで帰ります」
霊夢 「あ、待って。帰らなくていいわ」
小悪魔「?」
霊夢 「この重箱は咲夜の作ったお弁当。今からみんなで宴会をすることになってるのよ」

博麗神社裏庭、ちょっと寒い。後から追いかけてフランを見守っていたレミ咲パチュも、ほどなく合流した。

魔理沙「しかしミスティアに萃香まで連れてくるとは、実に宴会向きだな」
霊夢 「何で紅魔館からの距離でそこまで増えるのかしら?」
フラン「大勢のが楽しいからいいの!」

 みんなが席について好き勝手に宴会を始めたのを見て、そろそろ頃合と魔理沙が何かスイッチを入れると
庭に生えていた椛の木がライトで照らされ、紅葉に色づいた姿を見せる。

小悪魔「わぁー綺麗!」
パチェ「なかなか考えたわね」
霊夢 「山の紅葉には流石に劣るけどね」
レミ 「でフラン、初めてのおつかいやってみて、どうだった?」
フラン「うーん、思ってたより呆気なかったかな?楽しかったけど」

 あまり外には出してもらえないけど、やっぱり自由に歩くのは楽しい。出会いがあったし初めての相手とも友達に
なれるかもしれない。口には出さなかったがフランはそう考えていた。

 おしまい



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最終更新:2012年04月16日 01:29
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