エンデュランス/一ノ瀬薫がリビジョンの変った“The World”へ赴いたのは一重に執着の為だった。
喪ってしまった、ミアへの執着。
“再誕”したミアはある日突然彼の前を去って行った。
見えない力で宙に吊り上げられ――サルベージの名の下その因子を奪われた。
結果として彼女のPCは消滅してしまった。
――コロサレタ。ボクノミアミアがコロサレタ。
突然の別離。まるでそれは交通事故のように、呆気なく二人の関係を奪っていった。
後にチャップチョップ事件と呼ばれることになるその一件は、呪紋使いエルクを再起不能にするには十分だった。
それが彼にとっての“The World”の終焉だった。
仮想の中で抱いた想いは仮想だけに留まるに非ず。
その一件は現実のプレイヤー―― 一ノ瀬薫を失意に叩き落した。
現実の彼は言えに引きこもり、社会から断絶することを選ぶ。
代わりにエンデュランスは生まれ変わった“The World”に入り浸る。
そこにはミアのような何かが居た。猫のカタチをした何か。
それに触れている内はミアとの関係を取り戻せる気がしたから。
“君のために、たとえ世界を失うことがあっても、世界のために君を失いたくはない”
バイロンの詩の一片。
エンデュランスの座右の銘であり、彼の行動原理であった。
そうしてエンデュランスはミアに執着し続けた。物言わぬ猫を、かつての親友として愛でながら。
だがそれもまた幻に過ぎなかった。
AIDA。ハセヲとの戦いに敗れた彼が見たミアのような何かの本性。
自分が信じていたものが、愛していたものが、ただの幻影でしかないと気付いた時、彼は今度こそ廃人となりかけた。
彼に執着していた朔に囚われ、為すがままに死世所エルディ=ルーに身を落とす。
そんなところを救ったのが、ハセヲだった。
彼の強さに触れるうちにエンデュランスはミアへの、過去への執着を振り払うことに成功する。
喪ったものに囚われる自分はかつての、己のことしか考えていなかった自分と同じだ。
でも、ハセヲの隣に居るうちはあの時の――コルベニクに立ち向かった時の勇気を思い出せる気がしたから。
それ故に彼はハセヲと共に歩むことを選んだ。
G.U.のメンバーとして戦い、榊に懐柔を払いのけ、クビアとの決戦にも恐れることなく立ち向かうことができた。
かつての勇気を取り戻した。
その筈だった。
なのにエンデュランスは今再び迷っている。
己が何に迷っているのかも知らないまま。
@
その先に居たのは黒い斑点の塊だった。
膨れ上がったAIDAがグロテスクに蠢く。時節不気味な叫び声を上げつつ、その宿主をも巻き込んで膨れ上がっていく。
その核となるのは一つの魔剣だ。潜んでいたAIDAが真紅の魔剣から溢れるように流れてきた。
――喰ワセロ
肥大したAIDAが不気味な声を漏らした。
その表面はぼこぼこと膨れ上がっている。剣の持ち主であるアスナをも取り込んで、黒点の塊が蠢くように増殖していく。
「これは……!」
あの姿には覚えがあった。太白が一般PCを蹂躙していた際に見せたフィールドを覆い尽くす程の黒点。
マクスウェルに潜むAIDAの正体だ。魔剣に収まっていて奴らが、己の危機を察して表面にでてきたという訳か。
これは自分のミスだ。
データドレインを決めていればあのAIDAを駆除できたはずなのに、みすみすその機会を逃してしまった。
黒点の勢いは止まらない。点が線となり面となり球となり空間を侵食していく。
そしてその奥に半透明の核が見えた。AIDAの黒点に塗れその全容は見えないが巨大な形へと進化したということか。かつてのボルドーや天狼のように
「あ、エルク……」
「ミア!」
その身を貫かれたミアが苦悶の声を上げた。
エンデュランスは急いでその身を抱く。彼女は胸を押さえ辛そうにこちらを見上げている。
手の平の中のミアの身体はとても小さく、そして弱々しく見えた。
まるであの時みたいだ――
あの時のミアはゲーム上の“死”すら与えられなかった。
何か大切なものを奪われその身を消滅させた。その時の様がフラッシュバックする。
「違う!」
その光景を振り払うようにエンデュランスは叫びを上げた。
「あの時とは違うんだ……まだ守れる。まだ……」
言い終わらない内に、その姿を変貌させたAIDAの攻撃がやってきた。
喰ワセロ――原始的な衝動を含んだ叫び声を上げAIDAの黒点が猛然と襲いかかってきた
黒点が鳳仙花の実のように周りへはじけ飛んだかと思うと、曲線を描き一点、エンデュランスとミアの下へと集束していく。
咄嗟にエンデュランスはミアを抱きしめた。その背中に光線が撃ち込まれその身を焦がしていく。
その痛みは気にならない。ただミアを守れるのなら――
「エルク……君は」
「喋らないで、ミア。
言わなくても分かってる。殺しはしないよ。あの人も、君も……」
そう答えるとミアが笑ってくれた。表情が見えずとも分かる。言葉さえ要らない。
確かな“繋がり”があるから。
「……行くよ」
ミアを抱えながらエンデュランスは哀れな敵を見据えた。
AIDAに取り込まれたアスナは何も言わない。意識があるのかも怪しい。
マクスウェルを振るっていた筈の彼女は今や完全にその主導権を魔剣に奪われている。あるいはその感情を餌として食われているのか。
彼女をあんな姿にしてしまった責任の一端は自分にある。
元に戻し、今度はプレイヤーとして向き合うこと。それが自分がやるべきことだ。
ここで憑神を解除して彼女を解き放つ訳にはいかない。
手はある。
今一度データドレインを決めれば彼女からAIDAを取り除くことが出来る筈だ。
かつてハセヲがAIDAに縛られた彼を救って見せたように。
「ハセヲ……僕は君の隣に立ちつづけたい。だからこそ、ここで逃げ出す訳にはいかないんだ」
故にエンデュランスは戦うことを選ぶ。救う為に、ハセヲと共に歩む為に。
そして二対の存在が対峙した。
「もう一度、僕と踊ろう」
エンデュランス/マハはそう誘うように言い、空間に再び花弁をまき散らす。敵もまたAIDAを触手のように薙ぎ払う。
赤と黒。AIDAと花びらが空間に拮抗するように交わった。
向き合う二つの巨体、そして――激突。
「行くよ」
「――――」
AIDAが吐き出した黒の触手が猛然とマハへと迫る。その数は十を越えている。
花びらがそれを受け止め、零れた分はエンデュランス/マハその手で弾き返す。
間髪入れずAIDAが追い打ちを掛ける。今度は幾つもの触手を束ね極太の光線として放ってきた。
エンデュランスがギリギリのところで避けてみせると、ギギギとAIDAが悔しげな声を漏らした。
赤を侵さんと黒が空間を上塗りしていく。
もはやそこに元のゲームの名残はない。世界の理から外れた、完全にシステム外の一戦だった。
AIDAと憑神、そしてミア。
因縁深い存在同士の激突は、初め互角であったが、徐々に差が付き始める。
憑神・エンデュランス/マハが徐々に苦境に立たされていた。
このデスゲームが始まって以来、彼はあまりに自らの状態を顧みなかった。
ダスク・テイカ―との戦いの傷だってまだ癒えていない。愛に溺れ、愛に酔い、愛に呑まれひたすら会場を彷徨い続けた。
その消耗が、今になって彼を苦しめているのだ。
対する敵の方はプレイヤーの方はいざ知らず、マクスウェルに潜んでいたAIDAはほぼ完全な状態と言ってもいい。
加えてエンデュランスはミアを守りながら戦わなくてはならない。
瀕死の彼女を抱きしめ攻撃を庇わねばならない。それが彼を更に追い詰めていた。
「くっ……でも」
諦める訳にはいかない。
ハセヲを思い出す。彼は決して倒れはしなかった。
如何なる絶望があっても、歩みを止めることだけはしなかった。
黒い閃光がエンデュランス/マハの身体を貫く。
苦悶の声を漏らしつつも、彼は叫びを上げAIDAの塊へと迫っていた。
手の中のミアもまた苦しそうだった。
押されている。このままでは倒れるだけだろう。
何時かと同じように。力を手に入れた筈なのに。
(力だけじゃ駄目なのは分かっている――)
ミアを失い求めた力。守りたいと思った。守るものなど既に消え失せているのに、力がないと不安で仕方がなかったから。
だからエンデュランスはアリーナに固執した。力を示す為に。
でもそれは結局、自己満足に過ぎない。
(ハセヲ……君も、そのことを知ったんだね)
ハセヲ。
力を求め荒んでいた頃の彼もまた、エンデュランスは知っている。
深い事情までは知らなかった。それでも彼が何かの欠落を埋めんとするように力を求めていたのは見れば分かる。
そういう点で自分と彼は似た者同士だったのかもしれない。
(だからこそ、僕は君に惹かれたんだ)
しかしハセヲはそこから一歩踏み出した。それが無意味なことだと気付いたのだ。
その上でハセヲはエンデュランスに言った。お前が必要だと。それがエンデュランスにとって、最も欲していた言葉だと知った上で
自分と同じ道を歩みながら、自分には行くことのできなかった先を言って見せた彼を、エンデュランスは愛したのだ。
(だから、行くよ、ハセヲ。
君の下へ一歩でも近づく為に。
時間はかかるかもしれないけど、それでも歩みは止めない)
そしてエンデュランスは咆哮した。
――僕はここに居る。
決して自分を見失ったりはしない。
どんな“繋がり”の果てに自分が居るのかを、決して忘れはしない。
そう思いを込めて。
幾多の弾丸をその身に受けながらもエンデュランス/マハは敵の目前へとたどり着いた。
そして幾多の傷と痛みを上書きするように叫びを上げ、その身をコンバートする。
花を咲く。モルガナ因子が明滅し、そのチャージが始める。AIDAとて黙っては居ない。黒点を散弾のようにまき散らした。
「これで……!」
絶え間なく続く苦痛の最中、エンデュランスはその光を高めていく。
その光が頂点に達するのが、黒が自分を喰い尽くすのが先か、凄絶な戦いだった。
二つのイリーガルな力がぶつかり合い、そして――
「あ……」
――黒い力が競り勝った。
データドレインの発動より早く、憑神マハがプロテクトブレイクを起こしたのだ。
憑神を維持できなくなり、徐々にその身を崩していくマハ。抜けていく力。打ちのめされる心。猫の体躯がすうと消えていき、代わりに元のエンデュランスのPCが現れる。
その全てが、己の敗北を示していた。
「そんな……僕は、敗けたのか」
呆然と呟く彼の前にはダメージを受けつつも未だ健在なAIDAの姿があった。
黒点が膨らんでいく。あれが炸裂した時、今度こそ自分は倒れるだろう。
「ミア、ごめん。僕が……僕のせいで」
そう力なく言ってエンデュランスはミアを抱きしめた。
柔らかな温もりが伝わってくる。失っていた筈の過去、取り戻すチャンスを自分は不意にしてしまった。
そう思うと、哀しみより悔しさより、申し訳なさが胸を支配した。
「ははっ、気にすることはないよ。君だけのせいじゃない。元を辿れば僕のせいでもあるしね」
それでもミアはそう言ってくれた。こんな時だと言うのに、どこか悪戯っぽく、蠱惑的に。
そしてミアもまたエルクを抱きしめた。力強くぎゅっ、と。
「不思議だね。こんな時なのに、こうしていると落ち着くんだ。
今の君はエルクじゃないのに――姿形は全然違っても、そこに居るって分かっているからかな」
「うん、僕もだよ、ミア。これで満足なんて絶対にしてないし、認めたくもない。これがハッピーエンドだなんて絶対に思わない。
けれど、嬉しいんだ、僕は今間違いなくそう思っている」
顔を寄せ合い、二人は笑った。少しだけ、本当に少しだけ、二人はかつてのように笑い合った。
「ねえ、聞かせてよ。君の名前」
「え?」
「だって君はエルクじゃないんだろ? なら、先ずは自己紹介から始めないと。
そうでないと始まらない。今はまだ繋がっていないなら、これからまた繋がり直さないとね」
ミアの言葉にエンデュランスは切なげに息を漏らした。
何と嬉しい言葉だろう。何と素晴らしい言葉だろう。そう思えたからこそ、辛い。
これから始まる筈の関係がすぐに終わってしまうことが。
「うん、ミア。聞いて僕の名前はね――」
身を引き裂くような悲しみに襲われつつも、彼は己の名前を告げた。
一言一句はっきりと、切れていた“繋がり”をもう一度やり直す為にも。
その瞳からは涙が零れていたが、しかしそれでも彼は笑っていた。笑おうとしていた。
「エンデュランス、か。良い名前だね。僕はミアだよ、よろしく」
ミアもまたそう言って、ふふっと笑って見せた。抱き合う二人はそうして再び繋がり合う。
時を越え、彼らは巡り会ったのだ。
その感動の最中にも濁流のようにAIDAが押し寄せてくる。
二人の身体を押し寄せてきた黒点が包み込む。その舐めるような感触にエンデュランスは身体の芯から不快感を覚えた。
(コイツは僕とミアを喰ってしまおうというのか……!)
AIDAは憑神そして碑文に興味を抱いていた。
現にかつてアトリは第二相の碑文を奪われた。
今回は碑文使いの自分に加えミアも居る。彼女もまた碑文の基となった力をその身に宿しているのだ。
今の自分たちは奴らの餌という訳か。エンデュランスは屈辱に口元を歪めた。
二度目の別離がフラッシュバックする。
チャップチョップ。奪われたモルガナ因子。根こそぎ持っていかれ横たわるミア。
(そんなことを……!)
エンデュランスの身に感情の炎が烈火のごとく湧き上がる。
渡すものか。そんなことを認められるものか。その胸に激情を抱いたエンデュランスは黒点に取り込まれながらも反射的に動いていた。
ミアが持っていたレイピア――それは何よりも手に馴染む巫器――縁が引き寄せたその細剣を手に取り、彼は抱きしめていた彼女を背中から貫いた。
ミアは、笑った。
刃は彼女の身体越しにエンデュランスの身体に届いている。腹部に広がる痛みにエンデュランスもまた笑みを浮かべた。
これで自分たちは死ぬ。奴らに喰われるより早く、この世界から姿を消すことになるだろう。
それでいい。これで自分たちの“繋がり”は誰の手に渡ることもなくなる。
そして二人は今一度顔を寄せた。視線と視線が交錯する。永遠の時がやってきた。
もはや言葉は要らない。身も心も繋がっているのだから。死が二人を別つまで。
自分は時を越え“繋がり”を得た。時の鐘が鳴り渡る。終わりを告げるよ。繋ぐこの手永遠に――
(ハセヲ)
最期に、消えゆくエンデュランスは心の中で呼びかけた。今ならまだAIDAに取り込まれる前に逝ける。自分は自分のまま死ぬことができる。
だからせめて言葉を残そう。その消失の最中もう一人の最愛の人へ。
(結局僕は君のところには行けなかった。駄目だった。哀しいけど僕はここまでだ。
でも、君なら行けるよ……僕には分かる。分かるんだ……君のことなら……。
だから、たとえ何が起ころうとも、君にだけは足を止めないで欲しい。
僕は見ることができなかった道の先へと進み、未来を描くことが――)
@
アスナが目を覚ましたのは、全てが終わった後だった。
ふと目を明けると、そこには灰色のビルに取り囲まれた青空があった。
それをしばらくぼうっと眺めていると、次第にここで何があったのか思い出してきた。
(確かわたしは……ありすを追いかけてて、それであの猫と……)
思い出した途端、アスナは反射的に身を起こし魔剣を構えた。
そうだ自分は戦闘中だった筈だ。猫を追いかけた結果、変な男性キャラが現れ、おかしな空間に連れて行かれた。
その途中で記憶が切れている。確か自分は劣勢だった筈。途中で気絶してしまったのだろうか。
警戒しつつ辺りを見渡すが、しかしそこには誰も居なかった。
アスナは拍子抜けしきょとんとした顔を浮かべた。一体何があったのだろうか。
もしやあの戦いは全て夢のようなものだったのだろうか。覚醒直後の気だるさがそんなことすら思わせた。
(猫を追って変な世界に飛び込んで最後は夢オチなんて、これじゃ完全にアリスね)
ふと湧いて出たそんな考えに嫌悪感を覚えたアスナは思わず顔を顰め、頭を振ってその説を否定した。
確認がてらウィンドウを開く。ステータス画面を見るとHPが減っていた。あの戦いは確かにあった現実なのだ。
では敵はどこに行ったのだろうか。
そう思い周りを今一度見渡す。するとそこには様々なアイテムがカードの形態になって散乱していることに気付いた。
(ドロップアイテム……アイツらは倒されたってこと?
でもじゃあ誰に?)
自分ではない、と思う。
少なくともその記憶はない。しかし他に誰が居るのだろうか。
辺りを見渡してみたが他の参加者の影はない。
第三者の行いならドロップしたアイテムをこうしてそのままにしているのもおかしい。
善意あるものなら気絶した自分を放っていくこともしないだろう。
ならば考えられるのは敵の自滅だが、それも少し考えにくい。
(何が……あったの?)
不安に思ったアスナは、思わず魔剣を見た。
すっかり手に馴染んだ魔剣。もしやまたしてもこれに救われたか――何故かそんな考えが脳裏を過ったのだ。
(分からないけど……とにかくここに留まるのは危ないわよね)
アスナはそこで一度考えを打ち切った。
何時また敵に襲われるとも分からない。一度落ち着ける場所を探さなくては。
そう思いドロップしたアイテムを集めていると、気が付いた。
己の右腕に、黒くこびりつくグラフィック異常に。
(何これ……?)
それはひどく不気味だったが、どういう訳か恐怖は湧かなかった。
頼もしさすら湧いた。それが何を意味するのか、彼女はまだ知らない。
手に持った魔剣が、地面に擦れて乾いた金属音を響かせる――
【F-8/アメリカエリア/1日目・午前】
【アスナ@ソードアート・オンライン】
[ステータス]:HP30%、MP70% 、AIDA悪性変異
[装備]:魔剣・マクスウェル@.hack//G.U.
[アイテム]:基本支給品一式、死銃の刺剣@ソードアート・オンライン、クソみたいな世界@.hack//、誘惑スル薔薇ノ滴@.hack//G.U.、不明支給品2~5
[思考]
基本:この殺し合いを止め、無事にキリトと再会する
1:アリスを討つ
2:殺し合いに乗っていない人物を探し出し、一緒に行動する。
3:これはバグ……?
[AIDA]<????>
[備考]
※参戦時期は9巻、キリトから留学についてきてほしいという誘いを受けた直後です。
※榊は何らかの方法で、ALOのデータを丸侭手に入れていると考えています。
※会場の上空が、透明な障壁で覆われている事に気づきました。 横についても同様であると考えています。
※トリニティと互いの世界について情報を交換しました。
その結果、自分達が異世界から来たのではないかと考えています。
※AIDAの浸食度が高まりました。それによりPCの見た目が変わっています。
※マクスウェルのAIDAはアスナの意識がある内はAIDAが表層に出て来ることはありません。
こうしてミアとエンデュランスの“世界”は終わった。
アスナはその後疑問を抱えつつもドロップアイテムをストレージへと納めた。彼と彼女が持っていたアイテムは彼女のものになったのだ。
その際に彼女は知る由もない変化があった。
アイテムの中から彼らが持っていた筈のあるものがなくなっていたのだ。
このアメリカエリアでは現在一つのイベントが行われている。
“幸運の街”と名付けられたそのイベントにより、エリアでPKされたプレイヤーがドロップするアイテムが一定確率で変化する。
結果としてあるアイテムが変化していたのだった。
別にそれで何か影響がある訳でもないだろう。
支給アイテムの中でも、特に役立つことのないものだったのだから。
アスナがそれに気付いたとしても、何も思うことはなかった筈だ。
しかしそれに深い意味を見出す者も居たのだ。
そのアイテムは【エノコロ草】
エルクとミアの“繋がり”の象徴。エンデュランスとミアの新たな“繋がり”の道標。
そうしてそれは他の誰のものになることもなく、他の何ものに侵されることなく、唯一彼と彼女だけが持つものとしてこの世界から誰の手にも届かない場所へ消え去った。
何とも歪な形で、決して美しい訳でも幸福さに満ちている訳でもないだろうが、それでもきっとそれはこう呼ばれるに足るものだ。
永遠、と。
【エンデュランス@.hack//G.U. Delete】
【ミア@.hack// Delete】
最終更新:2014年01月15日 02:07