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ジローさん……ごめんなさい。
私、いろいろうまくいかなくってちょっと弱気になってたんです。

『……うん。俺だって、小学生の頃から去年までずっと野球をやってたし、全力で頑張ってた。
だけど結局は甲子園に行けなかったし、プロになる実力もなかった。
やっとのことで就職した会社も倒産しちゃうしね。』

……。

『でも、後悔はしてない。確かに結果が出ないと意味が無い。
でも、頑張らない限り、絶対に良い結果は得られないよ。
だからレン、これからも俺と一緒に頑張っていこう』

ジローさん……ジローさんだって私と同じ気持ちを抱えてたんですね……。
やっぱりジローさんには叶わないです。
いつもこうやって助けてもらってばっかりで……。
私はなんの助けにもなってなくて……

『いや、俺だっていつもレンに助けてもらってるよ』

えっ、本当にですか?

『レンがこうやって側にいてくれるだけで俺は頑張れる。
もう俺には、レンがいない生活なんて、考えられないよ』

……。

『それに野球ゲームでだって、レンは主力で活躍してくれてるしね』

ジローさん……。
わかりました、私も頑張ります。
だからこれからも、ずっとずっと一緒にいて下さいね?

『もちろんだよ!』


(レンがチームに復帰しました!)


不眠症が治った!
やる気が1上がった!
レンの好感度が2上がった!
こころが5上がった!
信用度が1上がった!
体力が1上がった!
『剛球』が身に付いた!





気付いた時には彼女――浅井レンは一人だった。

気が付くと奇妙な、広い空間に立っていた。
空に月や雲はなく、代わりに灰色のノイズが走り、大地のあるべき場所も赤と黒の、不気味なパネルに埋め尽くされている。
これを奇妙と言わずどう表現し得ようか?

「ジローさん……」

アイテム画面を開き、MAPから現在位置を確認すると、ここは『ウラインターネット』というエリアだということが分かる。
犯罪者や無法者が集まり、強力なウィルスが出現する危険エリア。
その異様な雰囲気と、突然ワケの分からない殺し合いに放り込まれた恐怖。
なによりあの人が……自分と一緒に頑張ると言ってくれた恋人が傍にいない心細さ。

ぽたりと、黒いパネルの上に涙が落ちる。心細い。ジローさんに会いたい。
一人では気がおかしくなってしまう。
…だが誰もいない。今、自分の傍にジローさんはいない。

パネルの上にへたり込むと、その冷たさに不安が増す。
どうすればいいのか……、このまま殺されるのを待つか。
いやだ、死にたくない。あの人(キバオウ)のようにプログラムを犯され、消滅なんてしたくない。
……が、ここは空すらもノイズに覆われた異常空間。
とてもじゃないが、一人でここから動く勇気なんてない。

「会いたい……会いたいよ、ジローさん……!」

ジローさんに会いたい会いたいと、レンはパネルの上にへたり込んで泣いてばかりいた。
───どれくらいこうしていただろう?

ふと気がつく。
……熱い。パネルが発熱している。このまま座っていたらヤケドしてしまいそうだ。

「…なに? どういうこと…?」

周囲を見渡し、ようやくその変化に気がつく。
このエリアの至る所で火の手が上がっているのだ。
……このままではいけない、早く逃げなくては。
炎はまだここまで来てはいないが、この熱さだ。
すぐに火は回るだろう。
レンが涙を拭き、なんとか立ち上がろうとした時───それは現れた。



全身から激しい炎を噴出させた四足獣。いや、機械獣と形容すべきか。
正面についた丸い顔部分からは僅かながら愛嬌も感じ取れるが、全身の炎とは対称的にその眼だけが冷たくレンを見ている。

「ヴォオオオオ……」

その獣と同様の唸りから、この炎のアバターが見た目通りの知性しか有していないことが読み取れる。
───つまり、説得など通じない。
このアバターはレンのように思考などせず、ただ本能のままに行動している。

「いや、いや……! ジローさん、ジローさん!」

機械獣が静かな唸りを上げながら、口部に取り付けられた『砲』を展開する。
『ファイアブレス』───ネットナビ3体を一撃で灰燼に帰すフレイムマンの基本装備。
オペレーター・火野ケンイチが手塩にかけカスタマイズした、所有ナビ中最大火力を誇る炎。
全てを燃やし尽くすべく、ただ目の前の存在をデリートするため、パネルをも焼き払う火力が炸裂する。








───その直前、黒い閃光が疾走った。









黒い閃光───彼を表す渾名は数多い。
《攻略組》、《黒の剣士》、《鍍金の勇者》、《ビーター》

「……お前だな、この辺りに火を点けて周っているのは」

ソードアート・オンライン最強プレイヤー、桐ヶ谷和人。
プレイヤーネーム、『キリト』
彼はこのゲームに招かれてすぐに現在位置、ゲームルール、アイテムの確認に加え、
自身の動きがこれまでと遜色のないものかをチェックしていた。
その結果、このゲームがSAOと違い、レベル概念の無いプレイヤースキル重視のゲームであることをすぐに把握していた。


「えっ? あ、あなたは……」
「安心して。もう大丈夫だから。君を、助けに来たんだ」


結果的に襲われていた女の子───レンの救出はギリギリになってしまったが、自身のスピードなら確実に間に合うという自信があった。
それに加え、レンを抱え離脱する際キリトは、フレイムマンに対しすれ違い様、片手剣による一撃を与えていた。
自身の最高速度からの斬撃。かの『閃光のアスナ』には劣るものの、確実に手応えがあった。
……だと言うのに。

「ヴォ……オオオオ……?」

レンを抱え、片手剣を構える少年をフレイムマンは尚悠然と捕捉する。
突如現れた黒い剣士のスピードを脅威とは感じているようだが、ダメージを意にも介していない。

「効かない……か。 ただ耐久力が高いってだけじゃないようだな。
だとするなら、やっぱり原因はこれか」

【火剣・ガカク】
火の力を纏った剣であり、平凡な威力と平凡な重さを備える。
それゆえに決定打は無い物の、トリッキーな戦い方を可能とする。
カテゴリーは片手剣。使用可能職業は剣士(ブレイドユーザー)。

登場ゲーム:『The world』

予想はしていた。
属性による不利有利はMMORPGに置いても珍しくない設定だ。
キリトの装備する火剣・ガカクと同じく、あの炎を纏った四足獣は見た目通りの火属性なのだろう。
同じ属性ゆえに攻撃は半減、ないしは無効化されてしまっている。

「お前……何者だ」
「ヴォヴォ……フ゛レ゛イ゛ム゛マ゛ン゛……!」

火炎を噴出させる四足獣型ネットナビ・フレイムマン。
エネミーとしても、敵PCとしてもキリトが相対したことのない相手だ。
恐らく自身の知らない、まったく別のMMOに登場するPCの可能性が高い。
ならばキリトと同じように、フレイムマンを操作しているプレイヤーがいるはずだが───。




「まずいな……」

キリトは舌打ちする。
戦えない相手ではない。先ほど確認したが、ヤツの放つ炎は直線上に放射される。
ならば対角線状に動き続ければ封殺も可能だ。

だが状況が悪い。

キリトに支給された火剣・ガカクでは何度攻撃を加えようが致命打になることはないし、
救出した彼女、レンを抱え戦い続けるなど当然できない。
あの炎の獣を倒すには他の武器、可能ならば水属性の武器を用いるべきだ。
水が炎に対し相性が良いのは、どのゲームにおいても凡そ共通なのだから。

「ごめん、しっかり捕まってて」
「はぇっ?!」

即断即決。
生存を最優先し、レンを抱えたまま即座にその場を離脱する。
……追ってくる気配はない。
着いてこれるだけのスピードがないのか、もしくは最初から追う気はないのか。

「ち、違います!そっちじゃないです!北西に行ってください!」
「えっ、だけど向こうにはアイツが……」
「ジローさんが、ジローさんが球場にいるはずなんです!」

このゲームのMAPはいくつかに別れたエリアと、それを繋ぐ転移門により構成されている。
野球場はアメリカエリアに存在し、そこに繋がる転移門はすぐ近くだ。
だがその付近はフレイムマンが占拠しており、現状ヤツを排除する手段をキリトたちは持たない。

「無理だよ……諦め…」
「ジローさんがそこにいるんです!ジローさん、会いたいよジローさん……」

レンとジローが出会ったのは、彼がツナミネット内の野球チーム、『デンノーズ』のメンバーを確保するため、スカウトされたのがキッカケだった。
(現実世界での出会いはまた異なるが)

この会場内に、レンとジローを繋ぐものは野球場しかない。
無職でありながら野球を愛する彼ならば、必ず野球場に来てくれるはずだ。
そうレンは信じる。

「ぜったいに……ぜったいにいるんです──ジローさん……」

レンのアバターは、可能な限り現実の質感を再現したキリトとは異なり、SDクラスにまで頭身が下がっている。
現実の人間とは違う、まさにゲームキャラと言えるアバター。
だがキリトの腕の中で泣くレンは、真実恋人のことを想う一人の女の子だ。

「───わかった。必ず俺が、君をジローさんの所へ連れて行く」

そしてそんな女の子の泣いている姿に何も思わないほど、キリトは冷血ではない。
きっとこの子にとって、ジローという人はとても大事な人なのだろう。
ちょうど自分にとってのアスナが、そうであるように。



【B-10/ウラインターネットエリア/1日目・深夜】

【キリト@ソードアート・オンライン】
[ステータス]:健康
[装備]:火剣・ガカク@.hack//
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~2個(水系武器なし)
[思考・状況]
1:ひとまずこの場から離脱する。
2:フレイムマンのいるB-10を迂回し、A-9もしくはB-9のワープゲートからエリア移動する。
[備考]
※参戦時期は不明です。

支給品解説
【火剣・ガカク@.hack//】
火の力を纏った剣であり、平凡な威力と平凡な重さを備える。
それゆえに決定打は無い物の、トリッキーな戦い方を可能とする。
種別は片手剣。使用可能職業はKnight
登場ゲーム:『The World』



浅井蓮という女がいた───。
優秀なエンジニアの卵であり、人と同じような心を持つAIを作ることが夢だった彼女はある『ゲーム』に関わった。

世界的大企業、ツナミグループが運営する『ツナミネット』
そしてそこで開催される呪いの野球大会『ハッピースタジアム』

敗者は消えてしまうというこの呪いのゲームを解析した結果、独力で彼女はあるプログラムを開発した。

正式名称『レンちゃんver.1.00』

詳細な原理は不明だが、浅井蓮の髪の毛から取った遺伝情報をオカルトテクノロジーに組み込み、作り上げた自律型AI。
AIとしての反応はツナミネットのものに劣るものの、浅井蓮の意思をトレースしたかのようにこのAIは動き出した。


『ジローさんと一緒にいたい』


このただひとつの欲求を満たすため。
自身がAIという、仮想存在であることに気づかぬまま……。



【B-10/ウラインターネットエリア/1日目・深夜】

【レン@パワプロクンポケット12】
[ステータス]:健康
[装備]:
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~3個
[思考・状況]
1:ジローさんに会いたい。

[備考]
※『レン』でも、『浅井蓮』でもなく、自立型AI『レンちゃんver.1.00』です。
※参戦時期はレン恋人ルート、『レンちゃんver.1.00』開発後
※ネット世界だけでなく、現実世界で主人公と過ごした思い出も記憶されているようです。


【フレイムマン@ロックマンエグゼ3】
[ステータス]:健康
[装備]: 
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~3個
[思考・状況]
1:オレ、スベテ、モやす
2:いろんなところに、ヒ、ツケてモやす
3:そしたら、ヒノケンさま、よろこぶ
[備考]
※現在B-10にて火災が発生しています。

005:負けない愛がきっとある 投下順に読む 007:このままずっと行くのね嘘を積み重ねても
005:負けない愛がきっとある 時系列順に読む 007:このままずっと行くのね嘘を積み重ねても
初登場 キリト 037:Confrontation;衝突
初登場 レン 037:Confrontation;衝突
初登場 フレイムマン 025:Link

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最終更新:2014年11月10日 16:04