お久しぶりです。。。
はい、更新が遅れてしまってすみません…
高校生って中学生に比べて充実していますがその分忙しいです…
たんまりデータはたまってますからね。簡潔にスパッといきますよ。
この2013年10月の
活動報告 までのデータをまとめたものが
こちらのレジュメとパワポです。(現在HPにアップしている最新データです。
実験班_活動報告 のページにも同じデータがのっています)
Word
交差アルドール反応の効率化_HP用レジュメ.pdf
PowerPoint
交差アルドール反応の効率化_HP用.pdf
前置き
このページから考察の間違いを見つけた場合には、
サイト左側の「メールフォーム」から早実科学部にご連絡をいただけると幸いです。
実験手順
<実験手順>
この実験は学術論文Organic Syntheses(以下O/Sとする)を参考にしています。
i. 10または20%水酸化ナトリウム水溶液20または40mlと任意の溶媒32mlを加えよく混ぜる。(溶液①)
ii. アセトン1.474mL(0.02mol分)とベンズアルデヒド4.2mL(0.04mol +α分)を加えてよく混ぜる。(溶液②)
iii. 溶液①を溶液②に加える。直ちに反応が始まるので、スターラーで15分間激しくかき混ぜる。撹拌中はウォーターバス(水浴)下にする。水温は0~5℃・10~15℃・20~25℃・40~45℃にする。
iv. 過剰量の水を加え、軽く混ぜる(実験⑯、⑰のみ)。
v. 混合溶液を吸引ろ過。水で完全にすすぎ、余すことなく生成物をろ過。
vi. ろ紙上の結晶を3~4日放置し、完全に乾かす。(その後追乾燥を行った。)
vii. 乾燥して得られた粗結晶を酢酸エチルに溶かし、エバポレーターで再結晶。ナスフラスコに析出した結晶を酢酸エチルに再溶解させ、乾燥させる。針状結晶が生成。
viii. TLC(薄層クロマトグラフィー)で評価。溶媒の比率はヘキサン:酢酸エチル=1:1。
結果と考察
以下の反応条件を変えて実験を行いました。
温度(0~5℃、10~15℃、20~25℃、40~45℃)
溶媒(エタノール、プロパノール、ブタノール)
この実験による結果は表1のとおりです。
なお、本反応の主生成物であるジベンザルアセトンは一般に黄色の沈殿物 であることが知られています。
反応条件を変えると、黄色の沈殿物の他にも橙色の上澄み が生成しました。この上澄みを放置すると、黄色沈殿が更に生成しました。
さらなる黄色沈殿生成後の上澄みに薬品を滴下したところ、表2のような結果が得られました。
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図1 沈殿物と上澄みの分離
表2 上澄みの上澄みへの滴下
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[1]収率100%越えはなぜ起きたのか
実験⑪、実験⑫、実験⑬では、収率が100%を超えています(表1)。その原因は
(1)乾燥時の大気中の水蒸気圧 が高く、 主生成物が完全に乾燥しなかった為
(2)主生成物+副生成物 の質量が計測された為
以上2点と考えています。
(2)については次の[2]で説明します。
以下(1)について説明します。
本実験では吸引ろ過で沈殿生成物を得たのち、ドラフト内で自然乾燥をして粗結晶を得て、計量を行いました。
大気中の水蒸気圧が高かったために自然乾燥によって蒸発する水分の量が十分ではなく、
計量の際に粗結晶+水 の質量が測定された為、収率が100%を超えたと推測されます。
水蒸気圧と生成物の質量に明確な相関関係は無く、疑問点も多く残っています(表1)。
今後は水をほぼ完全に蒸発させるために、乾燥機、デシケーターを用いて粗結晶の乾燥を行い、水分量による誤差をなくしたいと思います。
表3 一日の平均水蒸気圧の平均(平均平均水蒸気圧)
[2]副反応についての考察
表2から、本反応は図2のように進んでいると考えています。
また、50%ベンズアルデヒド水溶液にBTB溶液を滴下したところ、黄色に呈色しました。
これは、ベンズアルデヒドが酸化して安息香酸が生成したことを示唆しています。
図2 反応模式図
また、本反応において以下の点が推測できます。(右であるほど主反応の良条件)
生成物の色と温度
橙色 黄色 白黄色
40~45℃<20~25℃≦0~5℃<10~15℃
溶媒
ブタノール<プロパノール<エタノール
H2Oの量が多いと、反応がよくすすむ
その他
副生成物と水および黄色沈殿物は平衡関係
TLCで4スポット=副生成物3種以上
副反応に安息香酸が関与している可能性あり
おわりに
(交差)アルドール反応は大変研究が盛んで、早稲田大学でもその研究が行われています。
本研究で着目したアルドール反応の特徴は
水酸化ナトリウム触媒
エタノール溶媒
ジベンザルアセトン生成
以上3点です。
これと同様の特徴を持つアルドール反応は、論文Organic Syntheses(1943)によると、20~25℃ の反応条件が推奨されています。
一方本研究の結果によると、平均反応効率(収率と反応にかかる時間)の観点から、10~15℃ の反応条件が本反応において最も優れていると推測できます。
もし本反応の反応条件が「20~25℃よりも10~15℃のほうが良い」と実証できれば、おそらく世界新発見 と思われます(今のところそのような記述のある論文が見つからないため)。
この推論がまだ実証できていない主な原因は粗結晶の純度が不明なためです。今後はエバポレーターを用いて再結晶して、純度が100%と言えるまで精製する作業に取り掛かりたいと思います。
現在、アルドール反応は、金属触媒を用いる高度な合成経路が開拓されています。水酸化ナトリウム触媒の本研究が企業で有効利用されるとは考えにくいです。
しかし、大学の基礎化学実験などでは高価な金属触媒は使われず、本研究と同様に水酸化ナトリウムなどの強塩基性触媒が用いられます。
もしかすると、本研究によって大学の基礎化学実験の実験方法が変わる日が来るのかもしれません…。
最終更新:2013年10月04日 23:12