性欲とは種の保存のための遺伝子レヴェルのメッセージであるとか、人間の本能は壊れているからこそ性欲という意思が必要であるとか、様々な解釈を与えられてきた。エロ本やアダルトビデオは青少年の教育によくないので18歳未満には販売しない条例や、公共機関の片隅に設置されている「教育に良くない雑誌を入れましょう」というポストなど、わいせつな品々は不健全という暗黙の了解が社会に通用している。一方、少子化問題に直面している現状では、子供を安心して育てる環境を作ろうという労働に関する議論や制度は徐々に動き始めているが、そもそも、性欲をマスターベーションによって解消させることに慣れてしまっている男性(女性も?)たちにとって、子供を作るために性欲を発揮するという考え方は遠のき、生身の女性を必要としない、雑誌、アダルトビデオ、エロアニメ、エロサイトといった、オナニズムの対象が広がっている現状から、性欲=子作り、という種の保存と人類のアカルイミライのための新たな認識が必要なのではないだろうか。
オナニズムがひとり歩きしていく経緯には、核家族化によるひとり部屋を所有する思春期の子供、エロ本を販売するコンビニエンスストアの拡大、テレビやビデオデッキ、インターネットの普及、など、枚挙に暇がない。モノに原因を求めていくのは安直でわかりやすいことであるが、それ以上に、子孫を残す必要を感じない価値観の蔓延、知的なゆとりある生活思想の促進によって、手間のかかる乳幼児の世話と金を要する子供の教育への負担、異常者や犯罪者の情報過多による子供を育てたい社会ではないと思わせる不安、労働力として新たな子供を必要としない家の繁栄、自分から他者が生まれるという恐れ、など、あらゆる分野における要因が絡まりあって、子作りを忌み嫌いながらも持て余した性欲はオナニズムへと流れていくのではないか。
エロティシズムとは、禁忌と抑圧が生み出した奇形の概念である。オシャレな、セクシーな、ときにアンダーグラウンドで知的な思想には生殖の臭いがしない。しかし、想像力という脳を駆使したエロティシズムの戯れによって性欲は解消されるわけではない。このままオナニズムとエロティシズムに酔いしれる人口が増え続ければ、少子化対策に取り組む政府によって、健全な子作りの広報戦略が行われるかもしれない。コンドームの生産を規制されるかもしれない。なぜなら子供は未来の納税者。納税者なくして国は成り立たないからである。
そこで私が試みたいのは、後ろめたさを喚起させる性欲と、知的哲学として受け入れられているエロティシズムと、常識としてまかり通っているオナニズムの研究である。それらを乗り越えた上で、種の保存と社会の行方を探っていこうと思う。
- こういう個別の書き込みに対して反論とか同意とか意見を述べるやり取りを想定しています。
- しばらく(4月まで)は小生も、使い方とかよくわからんので、試行錯誤・意見交換しながら進めていく感じでいきませう。 -- 石井 (2006-03-21 23:08:17)
