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天体としての地球
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《│天体としての地球│》
天体としての地球
『UP』2007.12月号 「宇宙博物館24」より(写真は1月号)
渡辺潤一
(国立天文台准教授・天文学)
二年の連載の最終回として、我々が住む地球を紹介しよう。何をいまさら、と思うかもしれないが、「天体としての」地球を見直してみるのもおもしろいはずだ。
太陽系第三惑星、半径約六千四百キロメートル、宇宙を認識するようになった生命が進化した稀有な天体である。生命の発生はまだ謎に包まれているが、液体の水の存在は必須だろう。
惑星の表面温度は、太陽からの距離と、その大気で決まる。当然、太陽に近ければ近いほど暑く、遠ければ寒い。地球よりも一つ内側の惑星、金星は二酸化炭素の大気ということもあって、温室ガス効果が暴走し、表面温度は四百度を超えている。逆に地球の一つ外の火星では、大気が薄いこともあって、表面は平均マイナス五十度程度である。
地球は、ちょうどいい場所にあることに加え、ほぼ円に近い軌道で太陽を周回しているため、太陽から受け取る熱量が、ほぼ一定である。加えて適切な大気の存在が、ほどよい温室効果をもたらし、平均気温が十五度という穏やかなは惑星となっている。こうして、表面の七割を海が覆うほどの、水の惑星になっている。
また、その水は水蒸気になって大気中に放出され、それが凝結して雨となって陸地に降り注ぎ、陸を削り、地形を作りながら、川となって再び海に戻る循環を繰り返す。満々と水を湛えている惑星は、八つの惑星の内、現在は唯一、地球だけである。
このように恒星の周りで、惑星の表面に水が液体として存在するためには、ごく限られた範囲、すなわち恒星からの適切な距離と、適切な大気が必要である。こういった条件が実現される領域を「ハビタブル・ゾーン」(生命居住可能領域)と呼ぶ。地球は、たまたま太陽系で実現したハビタブル・ゾーン内の惑星だったといえるだろう。
果たして、他の惑星にも水の惑星はあるのか。広大な宇宙には、必ずあると天文学者は信じ、探し続けている