少年ガンガン2004/1月号増刊
───今回は「鋼」の登場キャラについて色々お聞きしたいと思います。
まず、主人公のエドワードですが。
荒川:少年マンガということで年齢は15歳にしました。世界観のイメージがヨーロッパ、イギリス辺りだったので金髪にして、三つ編みにしました。
───そういえばデビュー作にも三つ編みキャラがいましたね。
荒川:好きなんですよ、三つ編みのキャラが。
名前は大好きな映画、シザーハンズの主人公「エドワード」からきています。
───ジョニー・デップですね。
荒川:そうです。ティム・バートンの映画の世界観とかが大好きで。あとはイメージカラーとして赤、黒、黄色を決めて、キャラを作っていきました。
最初はエドはそんなにチビキャラという設定ではなかったんですよね?打ち合わせの段階で下村さんが、背の事に過敏に反応するチビキャラにしようと言ったのが始まりでしたね(笑)。
───ご、ごめんエド…。
荒川:でも、おかげで主人公としてキャラが強く立ったので、よかったですよ。
アルフォンスのポジションは最初、お父さんの予定でした。同じように人体錬成に失敗したため何故か、モモンガの身体に魂が入ったという設定で作ってました。でも少年誌ということで、兄弟という設定に変えました。アルは主人公(エド)の対比としてギャップを出そうと大きな鎧の姿で、やさしい兄思いの弟に。
───アニメもあの風貌から出る、可愛い声はすごいギャップがありますよね?
荒川:はい、まさにイメージ通りです。
アルフォンスの名前は、私の好きな画家のお父さんの名前なんです。
───ミュシャからじゃないんですね。
荒川:よく言われますが違います。
───さて、みなさんお待ちかねのロイ・マスタング大佐ですが、大佐のキャラは最初からできていましたよね?
荒川:そうですね。焔という二つ名を持った軍人で、主人公たちを冷静に大人の目線で見守るキャラということでイメージはできていました。
───大佐の初登場の回はガツンと人気が出ましたね。特に女性に大人気ですね。
荒川:どこがいいんでしょうか(笑)。あ、でも「無能」発言の回から大佐の事が好きになったという読者がたくさんいましたよ。
───むう、弱点があるような男がいいんでしょうか?完璧じゃなくどこかに隙のあるような(弱点だらけの担当編集)。
荒川:完璧な男はつまらないと思いますよ。弱点だらけもどうかと思いますが(笑)。
───ホークアイ中尉とも阿吽の呼吸ですね。
荒川:あの二人はイシュヴァール戦も共に戦い抜いています。強い絆がありそうですね。
───あーそうですか(つまんなそうに)。でもいいですねえ、ホークアイ中尉は。ホークアイさんについて色々聞きたいですなあ!
荒川:…それは担当的に?というか下村個人的に!?(笑)
───いやいや、読者を代表してです。男性ファンはみんなホークアイが好きですよ!
荒川:ああいう、お姉さんがいいんでしょうか?
───普段クールなんだけど、時おり見せるやさしさとかいいじゃないですか!!
「しょうがないわね」とか言って色々許してくれそうですし!叱られて、許してくれる!ブラックハヤテ号がうらやましいーっ!!(大興奮)
やっぱりホーク愛。
荒川:殴りますよ…。
───だいたいこのマンガ、女の子キャラが少ないんですよ。おやじとか多いし…。
荒川:戦う場に女性が出て行くのって抵抗あるじゃないですか。危ない目にあわせたくないっていうか。
───たしかにそうですね、わかります。リアルで痛々しいですもの。
荒川:でもこの後の展開で出てきますよ。女の子の新キャラが!
───楽しみですね!!いつですか!?(また興奮)
荒川:いや、もうちょっと先です。次は少佐です!!
───えーっ。あなたの大好きな?
荒川:大好きです!!アームストロング少佐も最初方出来ていたキャラです。ビジュアルから、ジェントルなああいう性格まで。
───画面からも生き生きとした感じが伝わってきます。嫌なくらいに(笑)。あー、描いてて楽しいんだろうなあって。でもいいキャラですよね。涙もろいし、人情味あって。外伝の妹のキャスリンの話もウケました。
荒川:キャスリンはいつも使ってるGペンじゃなくて、丸ペンで描いたんですよ。
───本当ですか!?細かいなあ(爆笑)
荒川:でも誰にも気付かれていない(笑)。
ヒューズ中佐は親バカで大佐を補佐する親友という設定は出来ていて、ビジュアルはあとから考えました。最初名前はフォッカーで考えていたんですよ。
───フォッカー!?それもカッコいいですね?
荒川:でも、その前にあのタッカーを先に出してしまったので、名前が似ているので慌てて変えました。
───なるほど、キャラクターの作り方にも色々あるんですね。魅力あるキャラクター達がどうやって作られたのか、知ることができて楽しかったです。最後に今後の鋼の錬金術師の展開について少し教えて下さい。
荒川:展開ですか、そうですねさっきも言いましたが新キャラの女の子が出てきます。あと、一緒に男の子も。それからエドたちの父親ですね、彼が出てきたらまた物語は大きく動き出します。期待してください。
ぱふ2004/4月号
■03年を振り返って
―――昨年はTVアニメ化やゲーム化などとあいまって、怒涛の"ハガレン旋風"が巻き起こり、現在もますます盛り上がりをみせています。
先生ご自身もその手応えを感じられてると思いますが、改めて03年を振り返ってどんな1年だったでしょうか。
荒川:どうもニブい性格のためか、渦中にいるという実感があまりないです…。でも仕事量は爆発的に増えましたね。本業のまんが描きがおろそかになってはいけないので、断ってしまった細かい仕事も多々ありまして、申し訳ないと思っています。
■「焔の錬金術師」裏話
―――「鋼の錬金術師」6巻の限定版コミックスについていた「焔の錬金術師」は大佐ファン必携のアイテムとなりましたが、このミニブック執筆にまつわる思い出があれば教えてください。
荒川:本編原稿と並行してミニブックの挿絵を描いていた時に、眠気でぼんやりしてて、マスタング大佐にまつげを描いてしまいました。あまりの気色悪さに「ギャー!!」と叫んで、アシさんにびびられました。
■変わらないものと変わったもの
―――デビュー当時と今とでまんがを描く上で変わらないもの、また変わったものがあれば教えてください。
荒川:デビュー作(アマチュア作)の「STRAY DOG」でまんが賞の大賞というでっかい賞をいただいてしまったので、プロになった今、常にそれを超えるもの(ストーリー、クオリティ等、何でもいい)を出さなければいけないと思っています。
これは変わったもの。
変わらないものは、ひとつは楽しく描くこと。
もうひとつは、読者の目線を忘れないこと。
■ゲームのキャラクターデザインについて
―――ゲーム「鋼の錬金術師――翔べない天使――」のキャラクターデザインをしてみての感想をお願いします。
荒川:キャラデザというのがどうにも苦手で、苦労しっぱなしです。ネムダみたいなショボいおっさんならすぐ描けるんですけどねぇ…。
■イラスト集について
―――初のイラスト集「FULLMETAL ALCHEMIST」が発売されましたが、こちらはどのような画集になっているのでしょうか?
荒川:「イラストレーターじゃないんだからやめようよぉ」という懇願も虚しく、出ることになってしまったので(苦笑)、どうせ見られるなら普通のイラストじゃ見られない所も見せてしまおうと、タチ切りの外まで丸ごと絵を載せてしまいました。
■大事にしていきたいこと
―――まんがを描いていく上で"大事にしていきたいこと"を教えてください。
荒川:自分の中の好奇心を絶やさないこと。