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***いつか、どこかであった、誰かの物語。 ---- ■壁画を展望できる、[[物語]]の中心へ。 >*【聖セラ神殿】 [建築物/ギルド] > >-ずぅっと昔の帝政時代。不思議な癒しの力を持った故初代セラは、「ジュノーの聖女」と呼ばれ、圧政による飢えや疫病に苦しんだ民衆の支持を集めていた。 >-(注釈:聖女が真に何者であったのかは、数世紀経った今となっては、もはやそれを知るすべはない。) >-やがて聖女は、武力による帝政打倒を目指す。しかし激しい戦いの末に成し遂げられず、没した。野心とは縁遠い人柄だったが、成り行きで追い詰められ、やむをえず武力蜂起したと伝わる。 >-時の皇帝が人心の安定のため故初代セラを皇帝と同等視=神格化。神話として主に自分の名を残すため、神殿を建立しセラを祀る。セラ神殿のはじまり。 >-「神々の戦い」の一幕として、皇帝とセラの戦が神話として語り継がれる。主な舞台は皇帝の祭事だったが、やがて民衆に伝播していく中で編纂が繰り返され、比較的傲慢に描かれていたセラの表現がやがて真実よりもさらに善の側に傾き、「聖セラ(St.Sera)の神話」として語られるように。 >-いつしか神殿も「聖セラ神殿」と呼称され、帝政に反感を持つ諸侯の後押しなどもあり、一時は他に例をみない栄華を誇る。 >-影響力を無視できなくなった時の皇帝は、民衆にまぎれていた10代目聖セラを捕獲、皇帝の一族として迎える。しかし、この頃から帝国の基盤は綻びはじめていた。 >-諸侯の反乱による帝政の崩壊。セラも処刑されるところだったが、聖セラ神殿に縁の深い、ある力のある領主の働きかけで赦されることに。流刑となった。 >-王権の成立。以後、過去の神話は邪教または異端と位置づけられ、古い時代の神殿などは教会勢力により破壊されていく。優美だった聖セラ神殿も本殿を含む大部分が失われ、後に残ったのは基礎や一部の小規模な建築物のみとなる。 >-長い空白の時代。一時乱れる事もあったが、王権は総じて安定していた。 >-もはや過去の遺跡と化し、ひっそりと郊外にたたずむ聖セラ神殿に、ある日2人の旅人が辿り着く。セラの血をひく姉妹…。 >-聖セラ神殿を人が暮らせるように復旧し、姉妹がひっそりと生活をはじめた。神殿は数世紀の永い眠りから、ついに醒めたのかもしれない。 > ---- >*【Sera's Ark (アーク)】 [人物/Wizard] > >セラの姉と名乗る女魔術師。耳が長く人間ではないと思われるのだが、真偽の程は定かではない…。 >セラがジュノーの僻地から旅をする道中、まるでセラの出生を全てお見通しといった様子で近付いてきた。以降、強引に旅を共にする。 >”わたしはセラに災いをもたらす者”と、「セラの棺(Sera's Ark)」を自ら名乗り、また時折まるで見てきたかのように遥か太古の話をすることがある。不思議な謎に包まれた人物。 >四大精霊の魔術に精通し、特に炎の壁を操る術をよく用いる。どんな敵の大群を前にしても、うっすらと笑みを浮かべたような表情を変えない度胸の持ち主。 >近年は神殿に住みつきながら、「アルカナ騎士団」のシーラ=クレリーの招きに応じて騎士団付魔術師を務めるが、旧時代の図書館の資料研究に夢中の様子で、ろくに戦場に姿を現していない。 > ---- >*【Pan-dora (パンドラ)】① [人物/Critical-Knight] > >或る日、聖セラ神殿で祈りを奉げていた弱々しい少女は、突然とその場に倒れ伏し、神の啓示を受けたと呟いた。 >いわく、 >『汝の萎えた脚に、どんな脅威にも怯まない勇気を与えよう』 >『その細い腕に、地上の全てを切り伏せる刃を与えよう』 >『その虚ろな瞳に、希望の光を与えよう』 >『漣の様に響く優しい声、銀色に輝くしなやかな髪、透き通る雪のような美しい肌を与えよう』 >『尽きない幸運と、枯れない若さを与えよう』 >気付くと、少女の手には白銀に輝く長剣があり、それは少女に挨拶をするかのように澄んだ音を鳴らせた。 >少女はうめいた。 >「あぁ神様。私の信心に応えてくださった。ただ神様、私は剣や若さよりも、優しい家族がほしい。それから名前も―私は孤児で、記憶すらありません。あぁなんということでしょう、いま私がどうしてここにいるのか、それすら忘れているのです」 >「せめて名前を思い出せるよう、こうして毎日祈っているのです…」 >『汝に家族を贈ろう。そはすぐにここへ現われる』 >『汝に記憶も返そう。我は汝に全てを贈る』 >声が言うと、少女はまた倒れ伏し、それまでの人生をなぞる夢を視た。それは、長い長い、悲しい夢であった…。 > ---- >*【Pan-dora (パンドラ)】② [人物/Critical-Knight] > >少女は長い長い夢を視て、色々なことを知った。 >家はやはり貧しく、父は大酒飲みで教養がなく、すぐに暴力を振るう男だったこと。母は信仰心はあったがやはり愚かで怒りっぽく、お世辞にも子供を大切にしているとは言い難く、どう褒め称えようとしても器量よしではなかったこと。 >父が持ち帰った最低の材料で母が作る料理の味が、だがそれでも堪らなく美味に感じられ待ち遠しかったこと。 >どれだけ虐げられていても家族が好きで、家計を助けるために首都に出て、よく花売りをしたこと。 >厚切りの贅沢なパンと引き換えに、命より大切だったはずの十字架を売ったこと。 >やがて病で母が死に、父がはじめて泣いたこと。泣きながら父が言ったこと―血がつながらない捨て子、”お前が来てからロクなことがない、呪われろ” >父から逃れるために神殿にやってきて、しかしそれでも見つかったこと…死ぬ寸前まで暴力を振るわれた末に捨てられ、傷口からくる高熱と空腹、例えようのない絶望感から、記憶と正気を失っていったこと。 >長い長い夢の中でも、ついに最後まで、少女は名無しだったこと。 >泣きながら目を覚ますと、声が言った。 >『我は汝にすべてを贈る。故に贈る名も、”パンドラ”』 >声はもう聴こえない。 >少女は気まぐれとも取れる「声」の御心が理解できない。が、しっかりと光を帯びた瞳で立ち上がった。 >白銀の剣を虚空に一振りする。この剣を胸に、生きて行こうと思った。 >後日、パンドラはある女剣士に出会う…。 > >(”Pan-dora”には、「すべての贈り物」という意味があります。) > ---- >*【MuRaMaSa (ムラマサ)】 [武器/Legendary-Blade] > >華奢なパンドラが携えるには、いささか不釣合いな白銀の長剣。(本来は日本刀のデザインですが、ここでは西洋剣です。イメージ優先v) >柄も刀身も非常に長く、控えめだが見る者を魅了する装飾と、判別ができないほど古い文字が刻まれている。 >両刃の直刀であるにもかかわらず湾刀のような鋭い切れ味で、闇雲に振り回すだけでも強い殺傷力を発揮する。また、ひとたび柄を握る者があると、まるで意思を持つかのように敵の急所に向かっていこうとするという。 >高名な剣士はこぞって所有したがったが、剣はごく限られた人間にのみその身を委ねた。選ばれない者が振っていると、時間を追うごとにまるで鉛のように重くなり、身動きが取れない呪いにかかる。 > >本来は非常に細身で、軽量。それでも女のパンドラが扱うには長大すぎ、両手を埋めても剣に振り回されるような様子だった。 >(パンドラは元々ただの村娘なので、十分な剣の修行を積んだ一般的な剣士さんよりも身体能力が劣ります。事実、この剣を手放した彼女は、まだまだ一人前と言えない駆け出し騎士さんと同等くらいの能力しか持たないでしょう。) >世界に数振り存在すると言われているが、パンドラが所有するものは比較的特殊な仕様のもの。 > ---- >* 【トライアンフ (Triumph)】① [人物/Vital-Crusader] > >アルトリアという名の少女は、ミッドガッツ王国内でも名の知れた貴族の生まれであった。生活には何も不自由なく、広大な宮殿の中で幼少期の殆どを過ごした。 >物心ついた年になると、好奇心の強い彼女は宮殿の外の世界に強く興味を示し始める。だが、父上や母上にお願いしようとも、召使いに命令しようとも、外界に出る事は叶わなかった。 >最初は悪戯心であった。外界がどんな所なのか、はやる気持ちを抑えられずに宮殿を抜け出しただけであった。だが、少女はその先で見た光景に息を呑む。 >荒み切った街並、食料を求める人々・・・少女には、そこに住む人々の生きる希望すら感じる事が出来なかった。 >その光景に少女は、ただただ恐怖した。早くこの場所から逃げ出したかった。少女は我を忘れて貧民街を逃げ惑った。 >どれ程走ったであろうか。気がつけば少女は、とある教会の前に立っていた。走り疲れた少女は中に入り、祀られた十字架の前で倒れ伏す。 >「あぁ、これが宮殿の外の世界・・・人々はなんて疲弊しているのでしょう・・・」 >それだけを口にし、少女の意識は闇へと沈んだ。 > >次に目を覚ましたのはベッドの上であった。どうやら教会の神父が介抱してくれたらしい。私は神父への感謝も忘れ、貧民街での出来事を話す。 >神父は、貴族が豊かで何不自由ない生活を送る一方で、他の市民が飢えに脅え、明日を生きる希望すら失っている事、そして我々は貧しい人々が救われる様に、毎日祈りを捧げている事を教えてくれた。 > >宮殿に帰ってからも、少女は疑問であった。自分はどうしてこんな豊かな暮らしに甘んじているのだろうか、宮殿の外では今も飢えた市民達が倒れ、死んでいっているというのに。少女の中で貴族に対する嫌悪感が生まれる。 >数日後、少女はまた宮殿を抜け出す。だがもう恐怖はない。一つの決意を胸に秘め、教会へと駆ける。 >教会の入り口に立ち、神父の前で少女は言い放つ。 >「私の名はトライアンフ、プロンテラ教会聖騎士団への入団を希望します。」 >少女は自分で市民の助けになる事を志し、貧富の差を排斥するという「勝利」を得るために。 >少女はアルトリアの名を、ここで捨てる事になる。 > > >tri・umph >【古ローマ】凱(がい)旋(式); 勝利; 偉業; 大成功(の喜び)(goo辞書より) > ---- >*【ランディー (Randy)】① [人物/Two-Swords-Asassin] > >「昔の事?そんな事覚えちゃいないねぇ」 >女は吐き捨てるように、そう呟いた。 > >白銀に輝く髪・均整の取れた体躯・少女から大人の女へと、可愛さから色気を帯びつつあったその顔立ち。その姿を見て、誰もが息を飲んだ。 >しかし、その羨望の眼差しはすぐに一変する事になる。 > >その体躯を包むのは、機能的にも極限まで無駄を省き、また闇に溶け込みそうな暗い色の装束。手に携えるは、殺傷能力を追求して完成された武器・カタール。しかも、的確に急所を突けるようになるという不思議な力を帯びた、「ソルジャースケルトンカード」と呼ばれる魔力の札を挿して、まさに一撃必殺の凶器に仕立て上げていた。 >そして、その身を包むのは、純然たる殺気。見る者はすべて、羨望から恐怖に慄くようになるのだった。 > >物心つく頃から天涯孤独。両親の顔も、家族の温かさも知らず、愛する事も愛される事も知らない。表面的には栄華を誇っていたミッドガルドの、その陰の中でその日その日を生き抜いていた。希望も何も無く、ただその日を生きていられた事だけに感謝するだけの、呪われた日々。 > >ランディーという名前は男名である。少女は身を男子にやつし、男名を名乗る事で、人身売買商人の目を眩ましていた。身寄りのない少女が捕らわれて、どのような末路を辿るかは、想像に難くないだろう。 > >そんな絶望の中で、少女は力を渇望した。力こそが、この呪われた自分を解放してくれる。そう信じて・・・。彼女は暗殺者になった。 > >暗殺者としての日々は、自分を解放してくれるはずも無かった。浴びる返り血が彼女の精神を蝕む。敵の息の根を止める時の断末魔が、彼女の心に狂気を生んだ。 > >呪われた日々に終止符を打つのは、自分の人生の終焉しかない。何時しか死に場所を求めるようになっていた。とある任務に失敗し、深手を負った彼女は、ひたすらに逃げた。いざ死に直面したとき、かつての生き抜こうという心理が働いたのかどうか定かではない。 > >「多くの命を奪った報いか・・・。」 > >自嘲的な呟きを残し、もはや自分の意志で動く事すらままならなくなった体をその場に横たえた。呪われた自分の終焉に相応しい、孤独で、静かな瞬間だった。 >その時、薄れ行く視界の先に人影を見た。その影は、真っ直ぐに自分の方に近づいてきた・・・。 > ---- >*【ランディー (Randy)】② [人物/Two-Swords-Asassin] > >私は夢を見ていた。それは、いつもいつも同じ夢。そして、いつもいつも同じ悪夢・・・。 > >どす黒いぬかるみの中にたたずむ自分。だがしかし、そのぬかるみから漂う匂い・・・血の匂いだった。幾度となく、その身に浴びた血の匂い。しかもその血の海は、ランディーを拘束するかのように纏わり付いた。重く、そして冷たい血の海だった。 >突然、その血の海が隆起した。ある塊は手の形を成し、ある塊は人間の顔を具現化した。その顔は・・・すべて自分が屠った者達だった。しかも一様に、絶命する直前、断末魔をあげる時の、苦痛に歪んだ顔だった。 >「や・・やめろぉおおおお!!」 >無数の手が、ランディーを血の海に引き倒す。手は数を増し、血の海でもがくランディーに襲い掛かった。 > >形容しがたい鈍い音が4回響いた。その音のがする度に、両椀・両肢が胴体から離れた・・・というよりも引きちぎられていた。 >「・・・・・!!!」 >もはやショックで声を出せなくなっていた喉元にも、その血塗られた手がかかり、そして・・・ > >「うわぁぁああ!!」 > >叫びとも悲鳴ともつかない声を出して、ランディーは目覚めた。 >「またか・・・。相変わらず、吐き気のする夢だ。」 >そういって、自分の手足を見、首をさする。無事なようだ。 >いつもいつも同じ悪夢。暗殺者になったときに鍛錬した、恐怖心のコントロールがなければ、もうすでに自我の崩壊に至っていたはずだ。自分に巣食う狂気が、確実に精神を蝕んでいるのを実感する瞬間だった。そして、今の自分にはそれを止める手段が無いという事も・・・。 > >脂汗にまみれて、身体にへばり付いていた下着を脱ぎ捨てる。とりあえず、今の自分の状況を確認してみる事にした。 >自分の記憶が確かならば、任務に失敗して、逃げ彷徨い力尽きたはずだ。それが今ベッドの上にいる。どこかの宿の一室らしいが・・・。 >「ぐぅっ」 >唐突に体に痛みが走る。体を確認すると、あちこち負傷していた。だが、重傷であったろうその傷は、適切な処置を施されていた。この分なら、傷が残る事もなさそうだ。幸いにも、何とか動く事はできそうだ。 >重い体を起こすと、部屋にある窓の傍に立って外を眺めた。 >「首都プロンテラ・・・」 >目の前に広がるのは、久方ぶりに見るプロンテラの街並みだった。 > >宿の主から、自分がもう一週間近くも眠りつづけていた事を知らされた。主に宿代を渡そうとしたが、すでに貰っているとの事だった。そして主は、私の宿代を立て替えた酔狂な人物を呼んできた。その人物を見るや、私の記憶が途絶える前に見た、人物の影と一致したのだった。 >「何だ貴様か・・・。」 >「何だとは挨拶だな。せっかく助けてやったというのに。」 >「助けてくれと言った覚えはないがな。」 >目の前の人物に、私は悪態をついてやった。まぁそいつも、はいはいといった感じで受け流していた。 > >聖職者と呼ばれるものに、神に祈祷する事で奇跡の力を行使するプリ―ストと呼ばれるものと、肉体を極限まで鍛え上げ、悪しき者を祓うモンクと呼ばれるものがある。その人物は後者の方で、逆立てた髪が印象深い男だった。 >ひょんな事で妙な縁が出来た。暗殺者と縁が出来るところをみると、そいつも聖職者とは怪しいものだと思うが。 >「偶然通りかかったんだが。まぁ、助けるつもりなんて無かったんだがなぁ・・・。」 >にやにやしながら私にそう言い放った。そして、こう続けた。 >「うわ言のように、死にたくないって言ってたからな。まぁ、気まぐれだ。」 >前言撤回。こいつは聖職者の欠片も無いな。とんだ破戒僧だ。 >「礼はいわんぞ。」 >礼の一つでも言ってやろうと思ったが、止めた。 > >とりあえず宿を払って、久方ぶりに首都の街並みに歩を進めた。表向きには活気に溢れているが、その裏にはどす黒い影がある事を私は知っている。皆いい気なものだ・・・。 >街の郊外まで来ると、人もまばらになってきた。頃合を見計らって、その逆毛のモンクに質問を投げかけてみた。 >「で、何で私を助けたんだ?」 >そう言うと、モンクはやれやれといった感じで >「だから、気まぐれだと言っただろうが・・・。でもまぁ、最近お前さんがどうも死に場所探してるような感じだったんでな。」 >見抜かれている・・・。なんとも食えない奴だ。 >「ただ犬死するよりは、いい場所紹介してやるよ。どうせ暫くは身を隠すつもりだったんだろ?なら都合がいいわ。」 >そのモンクは、またにやにやしながら歩き出した。取り敢えず私もその後を付いて行った。奴の言う、いい場所という所に・・・。 > ---- >*【ランディー (Randy)】③ [人物/Two-Swords-Asassin] > >石畳の上を歩く二人。モンクと暗殺者・・・なんとも奇妙な光景だが、誰も気にとめることはなかった。プロンテラとはそんな街だった。 > >ランディーは、モンクが言ったある事に思いを巡らせていた。 >(うわ言のように、死にたくないって言ってたからな) > >(死にたくない?私が?) >暗殺者になってから、例え命を落としても骸を野に晒す事を運命付けられ、ましてや自分が死に場所を求めているのというのに・・・。 >(心の奥底では、生を望んでいるというのか・・・) >このまま自分の終焉を迎えれば、それで終わりだった。にもかかわらず、目の前のモンクに生かされたのだ。 >やり場のない思いが胸に沸き起こる。これからどうすればいいか?その事だけを考えていた・・・。 > >「おい」 >その言葉で、ハッと我に返る。知らないうちに街の中心付近まで戻っていたようだ。 >「着いたぞ。ここだ。」 >どうやら、奴の言う「いい場所」って事らしいが・・・。 > >その場所には、数多の人間が集まっていた。騎士やクルセイダーをはじめ、おおよそ全ての戦闘職が網羅されていた。その中には、自分と同じ暗殺者らしきものも居た。 >同じ職種でも、王国直属の騎士団のように装備が統一されていなかった。ましてや、各々で歓談に勤しむ者、魔物狩りのパーティーを募る者と、統制なく皆自由に行動していた。 >「自由騎士団か・・・」 > >王国は、最近の魔物の増加による治安の悪化を懸念していた。すでに直属の騎士団で対応できるような状況では無かった。そこで、国中の腕利きの戦士達に、魔物を退治したときの戦利品を代償に魔物狩りを推奨したのだった。だが、辺境の地の調査が進むにつれ、奥深いダンジョンに巣食う凶悪な魔物も確認された。戦士達はそんな魔物に対抗すべく、同志を募り、(ギルド)と呼ばれるコミュニティーを形成していた。自由騎士団もその一つで、騎士団とは名ばかりの傭兵の集まりであった。 > >「ここが今俺が厄介になってるギルドだ。」 >この場所に幾つかある自由騎士団の中で、とある旗印を指差してモンクは言った。 >「アルカナ騎士団・・・」 >それが、私とアルカナ騎士団との出会いであった。 > >モンクは、こっちだといわんばかりに指をくぃっとさせると、私を騎士団の人間に引き合わせた。 >私は絶句した。ここに所属している人間は、傭兵でありながら一角の武人ばかりであった。王国に仕えれば、皆中核をなすであろう実力を備えている者達だった。どうしてこんな所に居るのかとすら思った。 >そんな中に抜きん出ている二人が居た。一人は常人では引き絞る事も難しいぐらいに強化した弓を携えた女性ハンター。華奢に見えるその腕は、強弓をいとも簡単に引き絞った。あれで何体の凶悪な魔物を撃ち落したか、想像も出来なかった。 >もう一人は、若いが才気溢れる青年騎士だった。幾つもの戦場を駆け抜けたのだろう、歳に似つかわしくない精悍な顔をしていた。 >ハンターは騎士団の副団長で、騎士はその補佐であるという。 > >唐突に、その2人が左右に下がった。うやうやしく2人が頭を下げるその間を縫って、その人物は現れた。 >長く美しい金髪。印象付けるのは、頭に被った山羊の角を模したマジェスティック・ゴートと呼ばれる装備品。先の傑物2人をして尊敬の念を抱かせる魅力の持ち主。それを鼻にかけない屈託の無い笑顔をする不思議な人物だった。 >彼女がこのアルカナ騎士団を束ねる団長である事は容易に判断できた。 >「ようこそ、アルカナ騎士団に。歓迎します。」 >満面の笑みを浮かべて、私を迎えてくれた。 >「訳ありなんで、暫く置いてやって欲しいんですがね」 >モンクが口添えする。 >「うちの騎士団は、訳ありの人間多いのよねぇ・・・」 >苦笑しながら団長は言う。なんかとんでもないところに来てしまったのかも知れない。私は少し後悔した。 >「申し訳ないが、騎士団に所属するつもりはない。」 >私はそう言った。いきなりといえばいきなりだし、今自分を支配する虚脱感を何とかするのが先決だ。とにかく一人で自分を見つめる時間が欲しかった・・・。 >「それでは、取り敢えず客分としていてもらうのはいかがですか?」 >せっかくの申し出を断る道理も無く、客分として、騎士団の末端に置いてもらうことにした。 >「それでは、新しい客人を迎える宴をしましょう」 >団長は嬉しそうだった。どうもこっちが目的では?と邪推してしまった・・・。 >その夜、宴は何時終わることなく続いた・・・。団長の酒豪ぶりに閉口してしまったが・・・・。 > >こうして、私のアルカナ騎士団での生活が始まった。この先どうなる事やら・・・。 > ---- >*【ランディー (Randy)】④ [人物/Two-Swords-Asassin] > >アルカナ騎士団に身を寄せて数日が経とうとしていた。王国からの依頼で魔物狩りに出たり、個別で任務をこなす以外は自由行動が許されていた。自由騎士団だけあって、最低限の規律を守りさえすればいいらしい。 > >私も客分とはいえ、一宿一飯の恩がある。何度か任務にも携わってもいた。他のギルド員も気のいい連中ばかりだったし・・・。 > >だが、もともと個人で活動するのを旨とする暗殺者である。そして、生き抜くためには他人を信じずただ己を信用する事を、過酷な幼少時代に悟っていた自分である。いつのまにか、騎士団の中でも孤立するようになっていた・・・。 > >プロンテラの街の南門を抜けると森がある。そこのとある木の上が私のお気に入りの場所。その上に腰を掛けては一人毎日空を眺めていた・・・。 > >「よぉ、ランディー」 >いつものように木の上に居ると、不意に下から声がする。 >「ああ、お前か・・・。」 >見慣れた面だった。あいつもこのアルカナ騎士団ではそれなりの地位に居るらしく精力的に行動していた。普段じゃ考えられないといっては悪いかな・・・。 >「また魔物狩りの人員を募ってるんだが、行かないか?」 >私はまた空を眺めていた・・・。そして、 >「そんな気分じゃないな。第一、騎士団の人間だけで事足りるだろ?」 >投げやりな返事。今の私の心を支配する虚無がそういわせたのだろうか?目的を失った暗殺者なんてこんなものだろうか・・・? >「そうか・・・わかった」 >モンクは肩をすくめると、プロンテラの街の方に帰っていった。 >(すまん・・・) >あいつなりに心配してくれてるのは痛いほど分かった。だが、今の自分には心の中で謝ることしか出来なかった・・・。 > >過ぎていく日々。満たされる事の無い心の虚無。今は平静であるが、侵食は止まる事の無い狂気。毎日が綱渡りだった。綱から落ちることは、自我の崩壊に等しい事は十分分かっていた。空でも眺めていたら少しは和らぐかと思っていた自分が愚かだったか・・・。それを知らずか、空は澄み渡る青空だった・・・。 > >ある日、自由騎士団の待機場所、通称「溜まり場」にふらりとやってきた。特に目的があるわけでもなく・・・。 >人の数がまばらだった。どうやら騎士団合同で魔物狩りにでも行ってるのだろうか・・・。 >「・・・・・・?」 >溜まり場の一角に、異質の気配を感じた。私はそちらに目をやった。 > >そこには、見ただけでかなりの年代を感じさせる書物・・・古文書みたいなものだろうか?そして、羊皮紙の巻物、スクロールが幾つも積まれていた。そして、その書物の山の中に、熱心に書物に目を通す人物が居た。 > >淑女を具現化したような容姿と端正な顔立ち。服装からしてウイザードであろうか?だが、私と同じような銀髪から覗かせる、小刀のように尖った長い耳が非常に特徴的で神秘的な人物だった。いや、人間とは違うのかもしれない・・・。 > >「あら、こんにちは」 >その魔道士は、読んでいた書物から顔を上げて、軽く会釈した。 >(ウソだろ?気配を消していたはずなのに・・・) >暗殺者の性だろうか、常に気配を消しているのだが、この人物はいともたやすく私の存在を確認したようだ。そして、彼女と目を合わせた瞬間、 >(何てことだ・・・私が恐怖してる?) >背筋に冷たいものを感じていた。先ほどから感じていた異質の気配が、急激に増大したからだ。もはやそれはプレッシャーとなって私を締め付けるような錯覚さえ覚えた。 >(まいったな・・・ここには魔女もいるのか・・・) >魔女・・・華奢な身体に秘めた絶大な魔力、それが私の恐怖の原因かもしれない。そう思った。 > >「こ・・・こんにちは」 >私は素っ頓狂な声を上げてしまった。完全にペースを崩されてしまった。 >「貴方がランディーさんですね?」 >手にもっていた本を閉じて山に戻しながら彼女は続けた。 >「アルカナ騎士団の居心地は如何かしら?」 >「あ、ああ。団長以下皆いい人たちばかりで。とても居心地いいですよ」 >銀髪の淑女は、スクロールの紐を解きながらにこやかに話した。だが、その目はなんと言うか・・・私の心の中を見透かすような感じがした。 >「その・・なんだか一人で居る事が多いから、遠慮でもなさっているのではないかと思ったのですけど・・・。」 >「いえ・・・そんな事は・・・無いですけど・・。」 >会話の主導権は、完全に向こうに行ってしまっている。複雑な心境だった。 >「ここは家みたいなもの。遠慮する事はないのですよ。」 >「家、ですか?」 >「そう、家。この騎士団には過去に色々ある者が多いのですが、団長はそれを気にすることも無く皆を受け入れてくれました。団員は仲間であり、家族のようなものなのですから・・・。」 >紐を解いたスクロールを広げながら、彼女はこう言った。 >「もうここは、貴方の家なのですよ。」 > >家・・・家族・・・。天涯孤独な自分にとって縁の無かったもの。そして、いつも飢え求めていたものだったのかもしれない。 >そして、彼女の言霊は私の心から失われていた、とある感情を呼び覚ましたのだった。 >「こ・・・これは・・・涙?」 >頬を伝う熱いもの。それは止め処なく溢れた。突然の事に私は困惑した。 >「し、失礼します」 >涙を見せないように顔を伏せながら、逃げるようにしてその場を離れた。 > >涙なんて、当の昔に枯れ果てたと思っていた。その日、ランディーは泣いた。乾ききった心を潤すかのように。ずっと、ずっと・・・。 > >そして、やっと見つけることが出来た家に、静かに、そして確実に危機がせまっていた・・・。 > ---- >*【ランディー (Randy)】⑤ [人物/Two-Swords-Asassin] > >以前、首都を賑わせたとある事件があった。 >「王国要人暗殺未遂事件」 > >彼の者は、王国貴族の中でも人望が抜きん出ていて、更に政治や統治の手腕に優れ、いずれ王国の重要な職位に就くことを誰もが疑いようの無い人物であった。 >当然ながら、同じ貴族の間でも彼の者を羨望の眼差しで見る者もいるが、疎ましく思う者もいた。 >そういった腐った根性の貴族連中は、自分の領民から搾取した金をばら撒いて、自分の目の上のタンコブになる者を醜聞(スキャンダル)で失脚させたりした。 >もっと直接的な方法として、「暗殺」もよく用いられているようだ。 > >暗殺者ギルドは裏世界の色が濃いため、王国非認可のギルドも多数存在していた。前述の腐った貴族の中には、自分がギルドのパトロンになっている、いわゆるお抱えギルドも存在していた。 > >暗殺者には正義も何も無い。例え相手が聖人君主であろうと、任務であれば躊躇なく消す。言うなれば、任務に忠実である事が、暗殺者の正義なのかも知れない。 >ランディーは、そんなギルドの一員であった。そして、彼女に任務が言い渡された。彼の者の暗殺である。 >当然相手は王国でも名の知れた人物だったので、その人となりは十分知っていた。 >(いつかはと思っていたが、やはり来たか・・・。宮廷内の腐敗もここまで来たのかねぇ・・・) >貴族間の権力争いにうんざりするかのようにため息をついて、 >(しかし、任務は任務だからな・・・) >ランディーの顔は、いつもの暗殺者の顔に戻っていた。 > >任務は2人で行動した。実質的任務は私が受け持ち、もう一人はその補佐と、お目付け役といったところか。あくまで暗殺するターゲットは一人だけである。無用な殺しはせず、薬物で護衛を無力化して、闇夜に乗じてターゲットの邸宅に侵入した。 > >彼の者は就寝していたが、武人としても一角の人物であったので、すぐに異変を察知したようだ。傍に置いてあった剣を片手に応戦してきた。 >とはいえ、寝起きの相手に暗殺者が遅れを取る事もなし。すぐに剣を叩き落すと、床に突き倒した。 >「おとなしくして頂きたい」 >ランディーは、相手に剣先を突きつけて言った。闇夜であったはずが何時の間にか少し月が顔を覗かせていた様だ。月の光が、剣を妖しく光らせていた。 >「貴方に恨みは無いが、任務の為、お命頂戴致します。お覚悟を・・・」 >突きつけた剣先が振り上げられる。相手も潔く、抵抗する素振りも見せず、月夜に照らされたランディーの顔をじっと見据えて言った。 >「私がここで倒れようとも、私の遺志を継ぐものはいる。任務とはいえ、無駄な事だ。」 >剣先は最高点に到達した。そこから振り下ろそうとした、その刹那だった。 > >「父様、どうされました?」 > >不意の声に手が止まる。その声の先には・・・ >「しまった、奴の娘に気づかれたか」 >ベッドの上で眼を擦る娘の姿があった。その傍には、妻の姿もあった。 >「まずいランディー!作戦変更だ」 >もう一人のアサシンが傍で耳打ちする。このようなケースは、ランディーにとっては初めての事だった。 > >「我らの存在を知られるわけにはいかない。皆殺しだ・・・」 >「・・・・!!」 >一瞬の油断が生じた。彼の者は床の上から身を翻した。 >「ちぃっ!!」 >不覚。相手に態勢を立て直す機会を与えてしまった。 > >だが、彼の者は、さっき床に叩き落された剣を拾う事をしなかった。ベッドの上で呆然とする娘と妻を庇うように抱きしめ、叫んだ。 >「私の命が目的なら、妻と娘は見逃してくれ!頼む!!」 >自らの保身を捨て、妻子の助命を願うその姿に、ランディーは困惑した。 >「何をしている!早くやれっ!!」 >もう一人のアサシンが叫ぶ。だが、いつまでたっても剣先が振り下ろされる事は無かった。 >「くそっ!この期に及んで躊躇するとは使えない奴だ!!」 >そのアサシンは短剣を抜くと、ランディーの背後からベッドの上の3人に躍りかかろうとした。 > >「ぐぅ・・・な、なぜだぁ・・・」 >鈍い呻き声を残したのは、飛び掛ろうとしたアサシンの方であった。その首元には、先ほどランディーが振りかざそうとした短剣が深々と突き刺さっていた。 >「う・・・裏切り・・者・・・」 >アサシンはそのまま絶命した。目の前の3人も、予想外の光景にただ呆然としていた。 >ランディーは天を仰ぐと、その場を飛ぶように去っていった・・・。 > >逃走を続けるランディーの背後に、数人の気配が現れた。追手が差し向けられたのだ。 >「目付け役は一人じゃなかったか・・・用意周到な事だ」 >ランディーはこの時理解した。この任務の後、自分が始末される段取りであったことを。暗殺の首謀者という罪を被せる為に・・・。 >「所詮は使い捨て、か・・・」 >次第に広がる、絶望的な戦力差。増える気配を数えながら、両手の短剣を握り締めた。 > > >これが、先に話したランディーの任務失敗の始終である。この後、モンクに救われ九死に一生を得るわけであるが、はたして、ギルドの追手はあきらめたのだろうか? > >否、奴らはそんなに甘くは無かった。アルカナの一員として行動している最中でも、監視されているような気配を感じていたからである。 >その数は、次第に増えていった。そして、ある日を境にそれがぱったりと消えた。 >(そろそろ・・・来るのかねぇ) >ランディーの想像が確信に変わるのに、それほど時間を要する事は無かった・・・。 > ---- >*【ランディー (Randy)】⑥ [人物/Two-Swords-Asassin] > >「おねえさん、おねえさん」 > >溜まり場近辺で屯しているランディーを呼び止める声。しかしそれは幼くて可愛らしい声であった。こう言う職業柄、呼び止められるのはロクでも無い相手の場合が殆どなのでめずらしかった。 >その声の主は、街の花売りの少女であった。ランディーは少女の傍まで寄ると、少女の目線の位置までしゃがみ込んだ。 >「どうしたの?」 >ランディーの問いかけに、少女はおずおずと手紙を差し出した。 >「これ、おねえさんに渡してって頼まれたの」 > >ランディーは、少女から手紙を受け取り、封を解いて手紙を読んだ。だが、すぐ手紙を懐に収めてしまった。 >「お使いありがとうね。お礼に花を一本頂けるかな?」 > >少女は、売り物の花束から選りすぐった花一輪をランディーに手渡した。懐から皮袋を取り出すと、中から金貨を数枚掴み取り、少女の手に握らせた。 >「こんなにたくさん貰っちゃ、売り物の花全部売ってもお釣りがきちゃうよ」 >あまりの大金に困惑している少女にランディーは、 >「余りはお駄賃ね。美味しいお菓子でも買うといいよ」 >思いがけない申し出に、嬉々として帰っていく少女を手を振って送り出すランディー。少女が街の雑踏に消えるのを見送ると、指先で先ほどの花一輪をくるくると回しながら、溜まり場へと歩き出した。 >しかし、その顔には先ほどのような笑顔は既に失せてしまっていた。 > >手紙には、ただ一文のみ記されていた。 >「裏切り者に、死の制裁を」 > >溜まり場は閑散としていた。アルカナ騎士団も、団長・副団長の姿はなかった。 >だが、珍しい光景があった。美女と野獣、ならぬ魔女とモンクの姿がそこにあった。何故にこの2人が揃っているのか?という疑問はあったが、取りあえず、 >「こんにちは。お2人さん」 >努めて平静を装った挨拶を交わす。魔女・・・銀髪の女魔道士はスクロールではなく、カードの束を手に持っていた。ジプシー達に伝わると言う、タロットカードであった。 >彼女は慣れた手つきで巧みにカードを捌き、法則でもあるのであろう、それを一枚一枚並べていく。 >「まぁ、戯れに占いをしているのです。本職に比べるべくもありませんけれども・・・」 >苦笑をしながら、また一枚とカードを並べていく。 >「戯れとはいえ、貴方の占いは恐ろしく的中するではないですか」 >モンクが横から口を添える。誉められたのが嬉しかったのか、彼女は笑みを浮かべた。 >「アルカナ騎士団も、このカードと同じ・・・」 >彼女はカードを手に取りながら続けた。 >「人は皆、このカードの様に一人一人違う運命を背負っているのです。それが重なり合い、一つの大きなうねりとなるのです・・・」 >手にもっているカードの束も少なくなってきている。一枚一枚、ゆっくりと並べていく。 >「ランディーさん」 >「あ、はい」 >急に自分の名を呼ばれ、困惑してしまった。どうもこの人と話すと自分の奥底まで見透かされているような気がしてならなかった。 >「貴方がここにいるのは偶然だとお思いでしょう?」 >まただ・・・その全てを見透かすような目で見つめられた。だが何故だか嫌な気分にはならなかった。 >「でも、運命が織り成す一つの大きなうねりの中で、貴方が今ここにいるのは必然だったのかも知れません。この並べられたカードの如く・・・」 >何時の間にか、全てのカードが並べられていた。彼女は静かに瞳を閉じ、呪文のようなものを呟きながら、並べられたカードの上に手をかざしていく。自分の魔力をカードに注ぎ込むかのように・・・。 > >「私は長い間そのうねりを見守り、数多の運命と向き合ってきたのです・・・」 > >「貴方は一体・・・?」 >ランディーの問いに、魔女はただ笑って答えるだけだった。占いの結果が見えたのであろう、慣れた手つきで並べられたカードを束に戻した。 >「それでは、今度はランディーさんを見て差し上げましょう」 >カードを手早くシャッフルし、先程とはまた違う配置でカードを並べていく。占いの作法も色々とあるみたいだ。 >「いえ、私はこれから出かけてきますので」 >「ん?また用事か?」 >並べられていくカードに見入っていたモンクが声をかける。 >「ああ、ちょっと野暮用。団長達に挨拶しとこうと思ってここに来ただけだから」 >そう言うと、モンクは肩をすくめながら >「団長と副団長は連れ立って城に行ってるよ。この前の騒動で色々動いているらしいからな」 >それを聞いて、自分の胸の中がざわめくのを感じた。その騒動の中心人物が自分であるのだから当然である。それを悟られないように、努めて冷静を保った。 >「そうか・・・まぁ、行ってくるよ」 >ランディーは踵を返すと、その場を離れていく。が、突然立ち止まり・・・ >「一つだけ団長に伝えて欲しい・・・」 >その後が続かない。暫くの沈黙。ランディーの背後で怪訝そうな顔をするモンク。そして、 > >「この用事が終わったら、正式に騎士団の末端にでも置いてもらいたいと・・・」 > >意を決するかのように、その言葉を吐き出した。モンクは少し唖然としていたが、 >「何を言い出すのかと思ったら・・・そんな事は用事を済まして自分で言え」 >無愛想な返事。でも、ランディーの顔が少し緩んだ。 >「そうだな。戻ってきたら自分で言うよ」 >手をヒラヒラと振りながら、ランディーはその場を後にした。 > > > >「・・・なんだ一体?変な奴だ」 >釈然としないモンクと、占いを続ける魔女だけがそこに残った。暫くして、全てのカードが並べられた。 >「お、そういやあいつの事を見るって言ってましたが、何て出ました?どうせつまらない事でも出たんでしょう?」 >茶化すように占いの結果を促すモンク。だが、並べたカードを見て、再び顔を上げた魔女の顔にはいつもの笑みは無く、緊迫の色が出ていた。 >「急いでランディーさんの後を追ってください!私は団長達を呼び戻し、後を追います」 >いつもと違う雰囲気に圧倒されつつ、 >「分かりました。すぐ追います!」 >モンクはその場を駆け出した。残された魔女は、囁くように短い呪文を唱えた。 >「テレポート・・・」 >その呪文を唱えるや否や、彼女の身体は一条の光に包まれ、その場から消えた。 > >そして、全てが動き出す。全てを知っているのは、その場に残された、並べられたタロットカードだけであった・・・。 ---- >*【リョウ・ニシムラ (Ryo・nishimura)】 [人物/Vital-Knight] >*【One for All】 [ギルド] > >暗闇の中、男は目を閉じていた。寝ているわけではない。回想していたのだ。彼自身のこれまでの道筋を――。 > >初めて冒険に出た日、己の道を決めたその時、迷いは無かった。Vit槍騎士-強靭な肉体に高い戦闘能力とスキル、人を守るのに適している職業なのだと信じて疑わなかった。その日、俺は人の盾になるのだと誓ったのだ。それがどれほど浅はかな思いであったかを今さらになって思い知っているわけだが――。 > >その後すぐのことだ。知人に紹介され、とあるギルドに入ったのだ。そこは人が多かったが、俺にとって居心地のいい所ではなかった。知らない人間ばかり・・・俺は一人で修練を積むようになった。それでも、時間が経つにつれ顔馴染みができてきた。徐々に居心地のいい場所に変わっていく最中、突然のギルマスの引退・・・。俺は居場所を失った。後を継ぐものはいたが、そこはもはや俺の居場所ではなかったのだ。 > >一人なったそのころ、俺は目標を見失っていた。守りを固めることに主軸を置いた俺は攻撃力が決定的に不足し、さらには充分な防具を持っていなかったために守りにおいてすらも何の力も持たなかったのだ。1人での狩りもPTでの狩りもままならないことへの不安。そして、騎士と言う職業への不審。そう、高い戦闘能力を手に入れた者達は決して志し高い者ばかりではなく、騎士はならず者の代名詞でもあったのだ。そんな折に出会ったギルド・・・。規模は小さく、数名しか居なかったものの、彼らはいつでもそこに居た。何より彼らは強かった。そこに、己を見失っていた俺は新しい目標を見出した。彼らに追いつくこと、彼らの役に立つ騎士となるのだと、俺は決めた。しかし、その願いが叶うことは無かった。新天地への移住・・・、それが再び俺から居場所を奪っていった。 > >そして三度、俺は居場所を手に入れることになる。異様に明るいウィザード、今では敬愛するその人に連れられ、俺は皆に出会った。そこは他の組織とも繋がり深く、色々な人との出会いを俺にもたらした。楽しかった。悩むことも苦しむこともあったが、そこは俺にとってとても居心地が良く、そんな日々がいつまでも続くかと思われた。しかし、そんな日々もあっさりと終わりを告げた。マスターの突然の音信不通、そして徐々に人は離れていき、敬愛するウィザードもギルドからいなくなった。それでも俺は必死になってギルドを盛り上げようとした。ひょっとしたら、いつかマスターが、ウィザードが、皆が戻ってきてくれると信じていたのかもしれない。いや、強く願っていたのだ。叶うことの無い願いと知りつつも・・・。 > >俺の願いは、俺の望んだ形とは全く違う形となって叶うこととなった。ウィザードの帰還・・・そして俺は彼から信じられない話を聞くことになる。ギルドに戻る気はないこと、そして―――ギルドを潰すつもりであること。彼は別の場所でマスターと共に一からやり直すことを望んでいたのだ。俺は今までしてきたことに虚しさを覚えた。俺のしてきたことは無駄だったのだ。そして俺は暗闇の中に一人取り残された。 > >暗闇の中、彼は目を開き、一つの結晶を取り出した。エンペリウム――彼にギルドマスターの資格を与えてくれる結晶だ。彼はそこに刻み込んだ。All for One―皆は1人のために―彼の望むギルドの姿を。そして己の命たる槍と盾に誓う。One for All―1人は皆のために―今度こそ皆の盾とならんことを。彼は理解したのだ。今まで自分が与えられるばかりだったこと、そして過去に囚われるばかりだった自分に。彼は暗闇の中歩き出す。今度こそ他の誰でもない自分が暖かいその場所を作るのだと・・・。 ---- >*【ルナ・ダイアル (Luna・Dial)】① [人物/Priest] > >過去の記憶を失っている謎のプリースト。ルナ・ダイアルは本名ではない。 >唯その身の振る舞いから裕福な家柄の出身であることが伺える。 >記憶を失う前のことを思い出そうとするがその度に激しい頭痛に襲われる。 >そのおぼろげな記憶には一面の氷の世界と血塗れた自分と誰かの声しか残っていない。 >彼はその氷の世界を練り歩き、力尽き倒れようとした時プロンテラ教会のシスターに助けられた。 >記憶を失ってしまった日、彼が持っていたのは6時18分で時を止めた懐中時計だけであった。 > > >記憶を失った彼は「失語症」を発症し、その治癒には2年もの年月がかかってしまった。 >彼はシスターの元でプリーストとなるべく修行を続けていたが、各地への巡礼の旅先で何者かの息のかかった刺客に命を狙われ続け、自身の記憶を知りたがるようになる。 >そして、彼がプリーストに転職した夜。命の恩人であるシスターの制止の声も聞かずに教会を飛び出ていった。失った記憶を取り戻すためだ。 >彼はシスターから貰った名前すら捨て自らを霞んだ記憶に残っている月と手掛かりでもある懐中時計にちなんで「ルナ.ダイアル(月時計)」と名乗った。 > > >そうして旅を続けていたある日、不意の隙をつかれ刺客囲まれてしまい窮地に陥ってしまった。 >防戦一方になってしまい徐々に追い詰められていき(もうダメか)と思った矢先自分の前に飛び出てくる影がひとつ・・・・ >彼は確認しようとするが限界だったのか意識が遠退いていくのと他人事のように感じた。 > > >次に目を覚ましたのはベッドの上であった。周りを見渡すとそこにいるのは美しいクルセイダーであった。 >「君が俺を助けてくれたのか?」と尋ねると、 >「そうよ。」と返事が返ってきた。 >「どうして襲われていたのか?」と彼女に問われて彼は自分の境遇を話した。 >彼女も自らのことを話し出した。 >話を聞けば彼女は貧困にあえぐ人々を助ける為に活動してるという。 >敬謙なプリーストである彼はその思いに共感して手伝いたいと申し出た。 >彼女は快くその申し出を受けてくれた。 >彼はそのまま彼女のGに所属することになり、人民救済の手助けをしつつ自らの記憶探しを再会した。 >彼の記憶の手掛かりは未だ何も掴めていない・・・・・・・・ > ---- >*【†神薙† (kannagi)】 [人物/Monk] >*【★ Top of Stars ★】 [ギルド] > >「力だけが全て。それ以外に信じられるものはない」彼女はそう信じていた。 > >「†神薙†」それはただの記号。「神の威にて薙ぎ払う」という意味を持ち、その役目を果たす者だけが受け継ぐ証である。その記号を手にしたときから、彼女は「しりる」という人の名前を捨て神罰の代行者になった・・・ > >彼女は孤児であった。誰からも必要とされず、誰の目にも留まらない。そのような存在が彼女の始まりである。そんな彼女を救ったのは先代の†神薙†である。先代にそのときのことを尋ねると苦笑まじりに「ただの気まぐれ・・・かな」と答えるだけであった。 > >先代は拾った少女に自分の技の全てを教え込んだ。気まぐれで拾った物のはずなのに、まるで自分の子であるようにもてる全てを伝えていった。自分の存在を残すかのように・・・ > >先代は強かった。たった独りであらゆるものを打ち倒していった。少女にとって先代は理想であり、強さの具現であった。少女はいつか私もあの強さを手にしたいと思い始めていた。初めて手にした居場所であり、少女は幸いを感じていた。その幸いがずっと続くと、少女は微塵も疑わなかった。しかし、終わりは唐突に訪れる・・・ > >先代の死、あれほど強かったのに、あれほど憧れていたのに、あれほど追いつきたかったのに、それはあっけなくやってきた。あらゆるものを打ち倒してきた先代も病には勝てなかった。病床でいつもの苦笑まじりに「迂闊だったかな。」とつぶやき、「あとは自分で決めなさい。あなたの生はあなただけのものだから」そういって動かなくなった。少女は迷わなかった。少女にはそれしかなかったのだから。そして少女は†神薙†の名を継いだ。 > >彼女は強さを追い続けた。強さだけが絶対の価値、それ以外に必要なものなど何もない。そう信じて戦い続けた。常に独り、傭兵としてギルドに所属しながらも彼女は変わらなかった。心は次第に冷めていった。永遠に変わることはない。これが私の生だから。そう思いながら。そんな彼女が変わり始めるのはある姉妹との出会いからである。 ---- ■壁画を展望できる、[[物語]]の中心へ。 ----
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