BR Class 37

基本情報
運用者 イギリス国鉄
コーラスレール
DBシェンカー
ダイレクトレールサービス(DRS)
ウエストコーストレイルウェィ
製造所 イングリッシュエレクトリック社
ヴァルカンファウンドリー
ロバート・スティーブンソン・
アンド・ホーソーン社
形式 クラス37
車両番号 D6700~D6999
D6600~D6608
製造年 1960年~1965年
製造数 309両
愛称 トラクター
性能諸元
軸配置 Co-Co
軌間 1435mm
全長 61 ft 6in(18.75 m)
全幅 8 ft 10 1⁄2in(2.71 m)
全高 12 ft 9in(3.89 m)
機関車重量 100L/T(102t)~105L/T(107)
37/7・37/9:120L/T(122t)
台車間距離 50 ft 8 in (15.44 m)
車輪径 3 ft 9 in (1.143 m)
軸重クラス RA 5
37/7・37/9:RA 7
燃料搭載量 890英ガロン(4,000L)
1,690英ガロン(7,700L)(更新車)
動力伝達方式 電気式
機関 イングリッシュエレクトリック 12CSVT
37/9:マーリーズ MB275T
37/9:Ruston RK270T
機関出力 1,750 bhp (1,775PS 1,325kW)
発電機 ・原型
主:イングリッシュエレクトリックEE822
補助:イングリッシュエレクトリックEE911/5C
・更新車
主:ブラッシュBA1005A
補助:Brush BA606A
ブレーキ方式 真空・エアー・デュアル
保安装置 AWS
最高速度 90 mph (140 km/h)
・ギヤ比変更のCP7型台車装備車
80 mph (130 km/h)
MUワーキング記号 青星印
暖房装置 37/0:蒸気暖房
37/4:ETH
BR Class 37(イギリス国鉄 クラス37)とはイングリッシュエレクトリック・タイプ3としても知られる、電気式ディーゼル機関車である。イギリス国鉄近代化計画の一環として製造された。イギリス全土でみることができ、特にイーストアングリア地方とスコットランドではインターシティーの主力として活躍したほか、支線や地域間の近郊列車(インターリージョナル)でも長年にわたり活躍している。ファンからは特徴的なエンジン音から"トラクター"という愛称で親しまれている。

概要

登場までの経緯

イギリス国鉄近代化計画の無煙化を達成するためには出力1,500 hp(1,100 kW)から1,999 hp(1,491 kW)のタイプ3機関車が必要であった。すでにタイプ1・タイプ4の機関車を受注、製造していたイングリッシュエレクトリック社には東アフリカ向けに同等の出力の機関車があり、その機関車を基に汎用機関車として設計がなされた。最初はイースタンリージョンにて運用を開始した。

製造

試作車の製造はなく、1959年1月に最初の42両の発注をおこなっている。その後1960年11月に出場し、同年12月2日より運用を開始した。D6700~D6999とD6600~D6608の計309両が製造され、最終出場車は1965年11月9日にウエスタンリージョンにて運用を開始した。イングリッシュエレクトリック社はニュートンルウィロウにあるヴァルカンファウンドリーとダーリントンのロバート・スティーブンソン・アンド・ホーソーン社の2か所で製造を行っている。車体はイングリッシュエレクトリック社がほかに製造したクラス40やクラス23"ベビーデルティック"などと似たものとなった。
7回の発注の詳細と製造場所は以下の通りである。
EE注文番号 発注日 発注数 車両番号 製造所
CCL 1031 1959年1月27日 42 D6700~D6741 ヴァルカンファウンドリー
CCM 1114 1960年2月5日 37 D6742~D6768
D6769~D6778
ヴァルカンファウンドリー
ロバート・スティーブンソン・アンド・ホーソーン社
CCN 1239 1961年4月27日 17 D6779~D6795 ロバート・スティーブンソン・アンド・ホーソーン社
CCP 1267 1961年12月13日 23 D6796~D6818 ヴァルカンファウンドリー
CCP 1304 1962年7月 100 D6819~D6828
D6829~D6918
ロバート・スティーブンソン・アンド・ホーソーン社
ヴァルカンファウンドリー
CCR 1320 1964年1月 20 D6919~D6938 ヴァルカンファウンドリー
CCS 1362 1964年2月 70 D6939~D6999,D6600~D6608 ヴァルカンファウンドリー

運用

クラス37は客貨両用として、旅客列車や貨物列車で運用され、多くの機関車にSGが取り付けられていた。D6700-6754とD6758・D6775・D6781~D6818・D6875~D6892には新製時よりSGが装備された。D6960~6968にはD6701~6709よりSGの移設が1967年から1968年にかけて行われた。そのほか37 247は1977年にSGが設置されている。1980年代に入りタイプ2・タイプ3の多くの機関車が運用を離脱していくなか、クラス37はタイプ3の標準型に選ばれ、1990年代以降も使用できるようオーバーホール・更新を行う延命工事が実施された。また1980年代にはいくつかの車両にETHが装備され他の機関車と同じくサブクラス/4(400番台)に分類された。当初はスコットランドのウェストハイランドラインとファーノースラインで運用されたが、後年は北部・中部ウェールズで、また時にはウェストカントリー(南西イングランド)で使用された。

改造

新型のクラス38貨物機関車開発にあたり、マーリーズおよびラストンのエンジンの可用性を評価するために1980年代後半にクラス37/9へと改造された。これら「スラグス(なめくじ)」には牽引力を強化するために非常に重い死重が搭載され、優れた荷物運搬能力を備えていた。しかしクラス38(クラス58やクラス88電気機関車に近いモジュラー型機関車の基礎となったものとして知られている)は製造されずに終わっている。

軸重

クラス37の軸重クラスのRAは5と、その大きさや牽引力に対して軸重が軽い。先述のように軽量なディーゼル機関車のほとんどが運用を離脱したためこのクラス37が重量に制限がある線区での唯一の本線用機関車となり、そのことから長年にわたりウェストハイランドラインやインバネス(ファーノースライン)の北の線区、ウェールズの一部の線区といった重量に制約のある路線の機関車牽引のほとんどの運用で使われた。ただしクラス37/7・37/9は牽引力増強用の死重によりRAは7となっている。

形態

ウェスタンリージョンのクラス37には"cow horns"(牛の角)と呼ばれる通常のランプブラケットとはちがう、L字型の板材がレールと平行方向に付けられた形のランプブラケットが取り付けられている。これは当時のイギリス国鉄では、グレートウエスタン鉄道から引き継がれたグレートウエスタンランプが使用され続けられていたことによるものである。リージョン別の違いにはノーズ端のヘッドコードによるものがある。これは初期の製造車がスプリットボックスというヘッドコードが左右に分割された構造をしていて、北イングランドとイーストアングリアに配置された。ヘッドコードがノーズの中心にあるセンターボックスのものは、ほぼすべて、ウェールズとサウスウェストに配置されている。しかし1980年代の転配で元の配置から逸脱しがちになった。
リージョンごとの装飾では、スコットランドのハイランド(インヴァネス)スタッグとよばれる鹿のシルエットや同じくイーストフィールドハイランドテリアという犬のイラストが描かれた車両があった。カーディフ・カントンTMDに所属する37/4はラージロゴ・ブルーに塗装され、運転席窓下にケルトドラゴン(ウェールズの象徴たるドラゴン)が描かれた。また一部のスコットランドの機関車にはスコットランドの発電所用のHAAホッパ同様にTOPSデータパネルまたはノーズ部分に小さなセント・アンドリュー・クロス旗(スコットランド旗)が描かれていた。

塗装

製造当初は緑色に塗装され、一般にレイトクレストといわれるフェレットとダーツボードの紋章とDを冠した通し番号が書かれていた。一部は小型の警戒パネルを設けた状態で落成し、その後既存の車両にも波及した。1960年代後半には警戒色はノーズ全体までのびている。
1970年代までには、すべての機関車がブリティッシュレールブルーの車体に正面ノーズ全体が警戒色となった塗装に変更され、1975年までにほとんど機関車がTOPS番号へと改番された。1970年代後半にはラージロゴブルーの塗装が採用されるまで塗装に変化はなかった。ラージロゴブルーは従来とベースの青はかわらないものの警戒色である黄色が乗務員室扉、フロントウインドウ上部まで広がり、側面全体に大きく描かれたダブルアローロゴが描かれたものとなった。ノーズ上部は反射光による幻惑防止の為黒く塗装され窓まわりも併せて黒くブラックフェイス様な塗装になった。貨物に割り当てらた車両にも同様の塗装が施されたが、レイルブルーではなくフレートグレーとなっている。1987年にはセクターが開始され、「3トーングレー」を組み込んだ新塗装が登場した。ボディー下部は明るいグレー、真ん中はそれより濃いグレーに、屋根は濃灰に塗り分けられ、明るいセクターのロゴ(石炭・金属・石油・流通(ディストリビューション)・建設)が表示された。これレールブルー・ラージロゴブルーとグレーとインターシティー塗装とリージョナルレイルウェイ塗装は1996年の民営化まで共存した。
民営化後各セクター会社の所属となった機関車は、3TG(3トーングレー)にトランジットレールロゴが書かれたり、ロードホールの機関車はオレンジと黒に塗装され、メインラインの機関車は"エアクラフト"ブルーにシルバーのストライプに塗装された。
保線部門の機関車は当初はグレー一色と警戒色で塗装されたが評判が悪く、のちに「オランダ」とよばれる、オランダ鉄道のような黄色と灰色の塗装に修正された。
特殊な塗装としては、37 093の「警察」機関車がある。1980年代のInterCity 125のCMでスピード違反のクラス43を止めるのに使用された。

サブクラス

1980年代に大規模な更新工事が行われている。37/0は更新されていないものを表す。37/3の台車交換の工事を除き、工事はすべてクルーのブリティッシュレールエンジニアリングリミテッド(BREL)で行われた。
サブクラス 説明
37/0 オリジナル
37/3 未更新車。台車の交換がされたもの。
37/4 更新車。イングリッシュエレクトリック社製発電機をブラッシュ製交流発電機に交換。ETSを装備した。
37/5 更新車。イングリッシュエレクトリック社製発電機をブラッシュ製交流発電機に交換。
37/6 37/5にETS及びRCHジャンパ栓の引き通し線を設けたもの。
37/7 更新車。イングリッシュエレクトリック社製発電機をGEC G564AZ又はブラッシュ製交流発電機に交換、死重を追加したもの。
37/9 更新車。イングリッシュエレクトリック社製発電機をブラッシュ製交流発電機に交換。エンジンをマーリーズ製MB275Ttまたはラストン製RK270Ttに交換。

37/0

当初、309両すべてがこのサブクラス37/0に属していた。多数の機関車が在籍していること、また製造も2社で行われていることから同じサブクラス内でも差異があった。目立つものとしては最初の119両は「スプリット」ヘッドコードボックス装備されていたことが挙げられる。これは4桁のトレインレポーティングナンバー(運行番号)の表示器を2桁づつ表示する分割型としその間に重連運転時に使用できる貫通路を設けたものである。その後の車両はヘッドコードボックスは中央に一つ配置されている。またノーズ内に設置されていたホーンも屋上へと移動されている。

37/3

37/3は様々な工場でギヤ比が変更された鋳造台車枠のCP7型台車(クラス55"デルティック"のもの。クラス37、クラス50は駆動装置を時速80マイル(130km/h)のものにすること、形式間で異なるステップの位置を変更することで交換が可能だった)に交換されたものである。余剰となっていたSG用の水タンクを流用し、燃料タンクとすることで、燃料タンク容量を2倍に拡大している。

37/4

37/4は従来からの蒸気暖房の客車が電気暖房へと変更されているのを受け、1985年から1986年にかけてイギリス国鉄クルー工場で施工された更新工事施工時にETHを追加装備したものである。ETH対応となったため、他形式と同様にサブクラス/4が割り当てられ37/4へと改番された。
更新工事としては、台車は先述のCP7型への交換、イングリッシュエレクトリック社製発電機のブラッシュ社製BA1005オルタネーターへの交換、再配線とラージロゴへの塗装変更が行われている。31両が更新され、最初の26両はスコットランドに、後の5両はウェールズへと配置され、これらの更新車は一年を通して旅客列車を運行することができた。

37/5

37/5は37/4と同様の更新工事を施工され、ETHが装備されなかった車両である。一部にはサンダイト(主に落ち葉による空転防止用の砂)ポートが装備された。スプリットヘッドコードボックスを持つ初期車の37 001~37 119を改造したものは37 501から順に附番され、37 120~37 308の後期車は37 699から降順で附番された。(37 601~37 612は後述の37/6で、このサブクラスではない。)

37/6

37/6はユーロスター(当時はヨーロピアンパッセンジャーサービス)が登場する予定だった国際寝台特急ナイトスターの非電化区間牽引用として12両の37/5改造したものである。改造の際には各所のオーバーホールをはじめ、駆動部の80mph対応化、総括制御装置の設置、ETSの引き通し線改造が実施された。しかしナイトスター計画は中止となったため、1997年に6両がDRSに、2000年にもさらに3両が譲渡され、3両が救援などに使用するために残されていたもののテンプルミルズの新車両基地への移転に伴い2007年にDRSへと譲渡された。

37/7

37/7は重貨物輸送用に改造された車両。ほかの区分と同様に1980年代に入り行われたクラス37への更新工事の一環として、貨物専用に44機のクラス37が改造された。37/5に外見は非常によく似ているが、車体中央部の窓が埋められてる点、南ウェールズ地方の金属輸送列車などのような重い貨物列車を牽引するための牽引力増強用の死重が搭載されている点に違いがある。附番方法はこちらも37/5と同じく2に分けて附番された。元来スプリットボックスを持つフェーズ1から改造の機関車は平滑なノーズに改造され、37701から順に附番された。一方中央にヘッドコードボックスを持っていたフェーズ2から改造の機関車はヘッドコードボックスを塞ぐ工事をした上で37899から降順に附番している。また、37796-37803には試験的にことなる電装機器が装備され、このサブクラスの他の機関車と機器が異なっている。

37/9

37/9は1986に150・148・249・124の4台のクラス37にクラス38の機器の試験用にマーリーズ製のMB275Tとブラッシュ社製のオルタネータを装備したものである。37901-37904と附番された。その後の1987年には37 136・206に同様にラストン社のRK270Tエンジンとゼネラルエレクトリック社のオルタネーターが装備され新たに37905・37906とされた。37/7と同様に台車の交換や牽引力増強のための死重搭載による車重120L/T(122t)化、側窓の埋め込み、ノーズのヘッドコードの埋め込み、4隅の消化器ポートの撤去が行われた。このクラスのみの違いとしては排気口の新設が行われたほか、37901-904は従来は曲面で構成されていた屋上部のパネルが平面で構成されたものとなっている。いずれもレールフレイト・グレー塗装であった。
当初はクラス38用として試験されていたものであったが、2種類の機器はクラス60用として検討され、マーリーズ製のMB275Tエンジンを大きくしたものが採用された。

外部リンク

最終更新:2018年01月26日 16:59