カーム調査の為にブリガンティの酒場を出発した
セイバーら一行は魔族の妖しい影を感じながらも
国境の要所、オリフィスの門へと辿り着いた。
『開門!』―― セイバーの声が門前で響き、堅く閉じられた分厚い装甲板が開かれていく…
――その刹那、セイバーたちに衝撃が走る。
門の中で待っていたもの― 歓迎の為に整えられた王国兵らの姿ではなく一体の悪魔だった。
獣の如き血に飢えた鋭い爪、巨大な蝙蝠を思わせる悪の翼、そして兇悪なまでに醜く澱んだ
漆黒の双眸がセイバーらを睨みつけていた。
銅(あか)のバルダー― 魔界の将・ガーランドが送り込んだ刺客だったのだ。
突然過ぎる出来事にセイバー、リヒター、シェゾ、
ナターリャの四人は動揺する暇もなく本能的に
戦闘体勢に入っていた。城門内はこの物騒な来訪に対し混乱しつつ同僚が次々と虐殺される
事に憎しみの刃を向けるが、魔界の差し金たるバルダーの魔術による奇襲の前には成す術が無い。
セイバーらは本格的な魔族との対峙に戦慄を覚えながらもシェゾやナターリャの魔法の威力を借り、
またリヒターの渾身の投擲による攻撃で徐々に優勢に立とうとしていた。
が、その時だった―! 『ナァーッハッハッハッハッハ!この役立たずめ!』 ―一筋の豪雷が
バルダーを撃つ。セイバーたちの前に立ちはだかったのは他でもない魔界の魔騎将・ガーランドだった。
ガーランドは追い詰められるバルダーに腹を立て、自分の配下を容赦なく打ち据えたのだ。
部下に対する行き過ぎた仕打ちに激昂するセイバー、リヒター、シェゾ。
だが、ガーランドはこれらに対し一蹴。さらに『惰弱なヒューム』とセイバーら人間に対する見下しきった
言葉を連呼し、一行に襲い掛かる。
バルダーを追い詰めた事によって勢いづいたセイバーたちだったがガーランドの戦闘能力はバルダーの
それと比較にならないほど圧倒的だった。剣戟により弾かれるセイバー、膨大な魔力攻撃により結界ごと
吹き飛ばされるシェゾ、そしてガーランドが呼び出した魔界の触手はナターリャの全身に絡みつき、弄んだ。
一転して窮地に追い込まれる一行。 ―シェゾは最終手段に出るしかなかった。
挑発によるガーランドとの一対一の対峙、そして陽動…一行を助けるにはこれしかなかったのだ。
果たして彼らの運命は……?
最終更新:2007年02月09日 20:10