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< 【[[back>みずきSS 02]]】 【[[next>2/4パロディ]]】 > ・昼 先輩がつきっきりで稔のお世話フラグ 靴を履き替えて昇降口を出ると、見知った人に出くわした。 「あ、先輩」 「や、稔くん。どうしたの?」 「どうしたのって、俺は帰るところですけど……それより先輩。先輩が脇に抱えてるのって……」 「ん? 脚立だけど?」 いや、それは見れば分かりますって。 「……先輩、また誰かに何か頼まれたんですか?」 「うん。用務の尾綿さんにね、体育館のところの渡り廊下の蛍光灯を取り換えてくれーって頼まれたから、これから交換しに行くところなんだよ」 なぜか誇らしげに胸を張る先輩。 なんというか、けしからん。ただでさえ大きいのに凹凸が強調されて、とっっってもけしからん。 って、俺はジョルジュか。最近、アイツの嗜好と思考に染まりつつあるな……気をつけないと。 「いやいやいや、それ頼まれ事なんてレベルじゃないっすよ。どう考えても用務のおっさんのサボりじゃないですか」 廊下の蛍光灯の交換なんて、用務の人の仕事じゃないか。 それを人のいい先輩に押し付けるなんて間違ってる。 「先輩。そういうのはあの人たちの仕事ですよ。先輩がやるような事じゃないですって。  その脚立貸してください。俺、用務の人に突っ返してきますから」 無理矢理にでも先輩の腕から脚立をひったくろうとしたが、俺の手が届く寸前で先輩は身を翻した。 「ちょっ、先輩っ!」 ひょい。 ひょいひょい。 ひょいひょいひょい。 ――五分後―― な、なんでだ…… なんで捕まえられないっ!? 「ぜーはー……あんな……ぜーはー……重そうな……ぜーはー……のを抱えて……ぜーはー……いるの に……ぜーはー……どうして……ぜーはー」 しかも息一つ切れてないし。波紋法でも使ってんのか、あの人は? 「……んもう。駄目だよ、稔くん」 へたり込んだ俺の前に屈み、先輩は俺の鼻先を指でちょんと突いた。 「でも、あたしのこと思って言ってくれたんだよね。ありがと」 面と向かってお礼言われると物凄く照れるんだが……しかも、顔がすごく近い。 ウェーブのかかった先輩の髪から、若草のようないい香りがする。 「でもね。用務の尾綿さん、サボってるわけじゃないんだよ?  さっき持病のぎっくり腰が再発して動くに動けないから、あたしが代わりにお手伝いしてるだけなの」 「そ……そうですか……」 「うん、そういうこと。だから、ちょっと行ってくるね」 にこやかに微笑む先輩に俺は―― 1.だったら俺も手伝いますよ 2.駄目だ。疲れた…… ---- >1.だったら俺も手伝いますよ 「だったら俺も手伝いますよ」 「そ、それは悪いよ……だって、あたしが頼まれたんだし……」 「いや、妙な誤解して先輩の邪魔しちゃったし……  それに脚立って意外と安定性無いから、誰かが下で支えてる方が安全ですよ」 「あー……言われてみると、確かにそうかも……」 「あと、一人よりも二人の方が作業の能率が上がるし、重たいものは男の俺にでも持たせれば先輩は楽できますし」 「う~ん……あたしが頼まれた仕事だし……そう言ってくれるのは嬉しいんだけど……その……」 「お願いしますよ、先輩。俺にも手伝わせてくださいって」 「…………んもう。稔くんって強引なんだからぁ……」 (でも、あたしは、そういうの嫌いじゃないよ/小声で) 「え? 何か言いました?」 「ん? ううん。なんでもないよ~」 なんだろう? よく聞き取れなかったけど……まあ、いいか。 俺は先輩から脚立を受け取って肩に担いだ。 「おっ。なんだか、稔くんが男前だよ!  今にもスタント無しで悪人どもを必殺の脚立神拳で薙ぎ倒してくれそうな感じ!」 「何を言ってるんですか、先輩。  俺は前々からベンチに座っているだけで、トイレを探して走ってる予備校生に見つめられるほどの男前ですよ?」 野球部が練習をしているので、グラウンドの端っこを通ってゆく。 喋りながら歩いてるうちに、問題の渡り廊下に着いた。 「ああ、あの真ん中の蛍光灯か」 ジジジと点いたり消えたりを繰り返している蛍光灯は、校舎と体育館のちょうど中間地点にあった。 「んじゃ、ささっと取り替えましょうか」 「そうだね~」 渡り廊下の電灯のスイッチを切ってから、古びた蛍光灯の真下で脚立を組み立てる。 「じゃあ、稔くん。脚立支えてくれるかな?」 「あ、はい。いいですよ……っ!?」 い、いかん……この位置はマズい。 いや、何がマズいってその……某公国の真っ赤な大佐の言葉を借りるなら『見えるっ!私にも見えるぞ!』っていうシチュエーションが! ……先輩、今日はしましま、なんですね…… 「ねぇ、稔くん?」 「は、はいっ!? な、なんでしょうかサー!」 「古い蛍光灯取り外したから受け取ってくれる? ちょっと熱くなってるから気をつけてね」 ……よかった。さっきまでの俺がミラーマンならぬモロ見マンだったことは気付かれてないらしい。 俺は古い蛍光灯を受け取り、新しい蛍光灯を箱から出して先輩に手渡した。 先輩は手馴れた手つきで蛍光灯を嵌め込んだ。 「よし。後は、スイッチ入れてちゃんと点くかどうかだね」 「じゃあ、俺スイッチ入れてきますよ」 「うん。お願いね~」 俺は脚立から離れてスイッチを入れたが…… 交換したはずの蛍光灯が、全く点かなかった。 「あれ~? グローランプもおかしかったのかしら?」 脚立の上で小首をかしげる先輩。 そこへ―― カキーンッという独特の澄み通った金属音と共に―― ボールが―― 「きゃあっ!?」 野球部の誰かが打ったボールは、渡り廊下の屋根の手前に落ちて勢いよくバウンドし、取り替えたばか りの蛍光灯にぶち当たった。 蛍光灯の破片を浴び、悲鳴と共に先輩が身をよじる。 脚立の上で。 先輩の身体はバランスを崩し―― 「せんぱぁぁぁいッ!!」 考えるよりも早く、俺は身を投げ出していた。 ドスンッ 鈍い音と衝撃。 何かが抜けるような、砕けるような、そんな音。 そんなに大きな音じゃなかったはずなのに、なぜか鼓膜が痺れたように世界の音が遠い。 「し……しっか……して……みの……くん……っ!」 あぁ、先輩? よかった……無事だったんだ…… 「ちょ……稔……! ど……たの、ね……!?  早……! 一体何が……たのよッ!?」 あ、なんで……姉さんがここに……? てか、姉さん……先輩は悪くないんだ…… くそ……声が出な……すごく……意……しきが…… ■ ■ ■ 「――で、早紀を助けようとしてダイビングキャッチをしたまでは良かったけど、体重を支えきれなくて左肩脱臼に右腕複雑骨折?」 頭痛を抑えるように、こめかみに手を当てて、姉さんは深くため息をついた。 あの後、意識を失った俺は、先輩と騒ぎを聞きつけてやって来た姉さんが呼んだ救急車に乗って病院に 搬送され、そのまま入院となったのだった。 と言っても入院は今夜一晩だけで、明日には家に帰れるらしい。 肩は脱臼していたものの、左腕そのものには何の怪我も無かったのが退院可能の理由らしい。 姉さんと先輩はベッドサイドに置かれた丸椅子に腰掛けていた。 「あたしのせいで……ごめんね、稔くん……」 先輩が深々と、申し訳なさそうに頭を下げた。 「いや、そんなに謝らないでくださいよ。俺は先輩がかすり傷も無くて良かったって思ってるんですから」 「そうそう。ひめも早紀に怪我が無くて良かったと思ってるよ」 「ひめっち……」 「でもね、稔くんはダメだね。ダメダメ。  早紀一人の体重も支えられないんだもん。お姉ちゃんは稔くんを、そんな軟弱者に育てたつもりは無いのになー」 「……育てられた覚えも無いけどね」 「ていっ」 「のわあっ!? 叩くなっ! 痛えだろ! 殺す気か!」 「フンだ。お姉ちゃんに心配かけるような極悪非道の稔くんはいっぺん死んで生まれ変わって、お姉ちゃんの下僕になればいいんだー!」 何気に酷いこと言ってないかこの姉。 「でもまあ、頭とかに怪我無くて良かったよ。稔くんの悪い頭がこれ以上悪くならなくて済んだし」 「てか姉さん……人を労わるという優しいスキルは持ち合わせてないの? 俺、怪我人だよ?」 「でも、救急車の中のひめっちは凄かったよ」 と先輩が言った途端、姉さんはペンキでも塗りたくったかのように顔を紅潮させた。 慌てて先輩の口をふさごうとする。 「ちょ、ちょっと早紀ってばぁ!」 「ふふふ。どんなだったかは内緒だよ。ひめっちの名誉に関わることだからねー」 「うー!」 威嚇するように唸る姉さん。 野生動物か、あんたは。 「けどさ」 立ち直りの早いのもうちの姉さんの特徴だ。 「稔くん、右手使えないでしょ? 家の事、どうしようか?」 「あー、そうかぁ……」 家事のほとんどは俺がやってるんだった。 選択や掃除は姉さんに手伝ってもらうとしても、左手一本で料理は難しい。 「あの……そのことなんだけど……」 悩んでいる俺たち二人に、先輩がおずおずと言った。 「迷惑かけちゃったし、家事とかあたしに手伝わせてもらえないかな?」 ――こうして、俺と姉さんと先輩の奇妙な共同生活が始まるのだった。 ---- >2.駄目だ。疲れた…… 駄目だ。疲れた…… 「い、いってらっしゃ……い……」 「うん。じゃあ、またね!」 先輩は若草の香りがする笑みを見せて、颯爽と体育館の方に歩いていった。 そして俺はと言うと―― 「おい稔! しっかりしろ傷は浅いぞ!  ええい、衛生兵っ! おっぱいがお椀型でFカップ以上の衛生兵はいないのかっ!」 ジョルジュが通りかかるまで放置でした。 拝啓、お父さんお母さん。都会の風は冷たいです…… < 【[[back>みずきSS 02]]】 【[[next>2/4パロディ]]】 >
< 【[[back>みずきSS 02]]】 【[[next>早紀SS04]]】 > ・昼 先輩がつきっきりで稔のお世話フラグ 靴を履き替えて昇降口を出ると、見知った人に出くわした。 「あ、先輩」 「や、稔くん。どうしたの?」 「どうしたのって、俺は帰るところですけど……それより先輩。先輩が脇に抱えてるのって……」 「ん? 脚立だけど?」 いや、それは見れば分かりますって。 「……先輩、また誰かに何か頼まれたんですか?」 「うん。用務の尾綿さんにね、体育館のところの渡り廊下の蛍光灯を取り換えてくれーって頼まれたから、これから交換しに行くところなんだよ」 なぜか誇らしげに胸を張る先輩。 なんというか、けしからん。ただでさえ大きいのに凹凸が強調されて、とっっってもけしからん。 って、俺はジョルジュか。最近、アイツの嗜好と思考に染まりつつあるな……気をつけないと。 「いやいやいや、それ頼まれ事なんてレベルじゃないっすよ。どう考えても用務のおっさんのサボりじゃないですか」 廊下の蛍光灯の交換なんて、用務の人の仕事じゃないか。 それを人のいい先輩に押し付けるなんて間違ってる。 「先輩。そういうのはあの人たちの仕事ですよ。先輩がやるような事じゃないですって。  その脚立貸してください。俺、用務の人に突っ返してきますから」 無理矢理にでも先輩の腕から脚立をひったくろうとしたが、俺の手が届く寸前で先輩は身を翻した。 「ちょっ、先輩っ!」 ひょい。 ひょいひょい。 ひょいひょいひょい。 ――五分後―― な、なんでだ…… なんで捕まえられないっ!? 「ぜーはー……あんな……ぜーはー……重そうな……ぜーはー……のを抱えて……ぜーはー……いるの に……ぜーはー……どうして……ぜーはー」 しかも息一つ切れてないし。波紋法でも使ってんのか、あの人は? 「……んもう。駄目だよ、稔くん」 へたり込んだ俺の前に屈み、先輩は俺の鼻先を指でちょんと突いた。 「でも、あたしのこと思って言ってくれたんだよね。ありがと」 面と向かってお礼言われると物凄く照れるんだが……しかも、顔がすごく近い。 ウェーブのかかった先輩の髪から、若草のようないい香りがする。 「でもね。用務の尾綿さん、サボってるわけじゃないんだよ?  さっき持病のぎっくり腰が再発して動くに動けないから、あたしが代わりにお手伝いしてるだけなの」 「そ……そうですか……」 「うん、そういうこと。だから、ちょっと行ってくるね」 にこやかに微笑む先輩に俺は―― 1.だったら俺も手伝いますよ 2.駄目だ。疲れた…… ---- >1.だったら俺も手伝いますよ 「だったら俺も手伝いますよ」 「そ、それは悪いよ……だって、あたしが頼まれたんだし……」 「いや、妙な誤解して先輩の邪魔しちゃったし……  それに脚立って意外と安定性無いから、誰かが下で支えてる方が安全ですよ」 「あー……言われてみると、確かにそうかも……」 「あと、一人よりも二人の方が作業の能率が上がるし、重たいものは男の俺にでも持たせれば先輩は楽できますし」 「う~ん……あたしが頼まれた仕事だし……そう言ってくれるのは嬉しいんだけど……その……」 「お願いしますよ、先輩。俺にも手伝わせてくださいって」 「…………んもう。稔くんって強引なんだからぁ……」 (でも、あたしは、そういうの嫌いじゃないよ/小声で) 「え? 何か言いました?」 「ん? ううん。なんでもないよ~」 なんだろう? よく聞き取れなかったけど……まあ、いいか。 俺は先輩から脚立を受け取って肩に担いだ。 「おっ。なんだか、稔くんが男前だよ!  今にもスタント無しで悪人どもを必殺の脚立神拳で薙ぎ倒してくれそうな感じ!」 「何を言ってるんですか、先輩。  俺は前々からベンチに座っているだけで、トイレを探して走ってる予備校生に見つめられるほどの男前ですよ?」 野球部が練習をしているので、グラウンドの端っこを通ってゆく。 喋りながら歩いてるうちに、問題の渡り廊下に着いた。 「ああ、あの真ん中の蛍光灯か」 ジジジと点いたり消えたりを繰り返している蛍光灯は、校舎と体育館のちょうど中間地点にあった。 「んじゃ、ささっと取り替えましょうか」 「そうだね~」 渡り廊下の電灯のスイッチを切ってから、古びた蛍光灯の真下で脚立を組み立てる。 「じゃあ、稔くん。脚立支えてくれるかな?」 「あ、はい。いいですよ……っ!?」 い、いかん……この位置はマズい。 いや、何がマズいってその……某公国の真っ赤な大佐の言葉を借りるなら『見えるっ!私にも見えるぞ!』っていうシチュエーションが! ……先輩、今日はしましま、なんですね…… 「ねぇ、稔くん?」 「は、はいっ!? な、なんでしょうかサー!」 「古い蛍光灯取り外したから受け取ってくれる? ちょっと熱くなってるから気をつけてね」 ……よかった。さっきまでの俺がミラーマンならぬモロ見マンだったことは気付かれてないらしい。 俺は古い蛍光灯を受け取り、新しい蛍光灯を箱から出して先輩に手渡した。 先輩は手馴れた手つきで蛍光灯を嵌め込んだ。 「よし。後は、スイッチ入れてちゃんと点くかどうかだね」 「じゃあ、俺スイッチ入れてきますよ」 「うん。お願いね~」 俺は脚立から離れてスイッチを入れたが…… 交換したはずの蛍光灯が、全く点かなかった。 「あれ~? グローランプもおかしかったのかしら?」 脚立の上で小首をかしげる先輩。 そこへ―― カキーンッという独特の澄み通った金属音と共に―― ボールが―― 「きゃあっ!?」 野球部の誰かが打ったボールは、渡り廊下の屋根の手前に落ちて勢いよくバウンドし、取り替えたばか りの蛍光灯にぶち当たった。 蛍光灯の破片を浴び、悲鳴と共に先輩が身をよじる。 脚立の上で。 先輩の身体はバランスを崩し―― 「せんぱぁぁぁいッ!!」 考えるよりも早く、俺は身を投げ出していた。 ドスンッ 鈍い音と衝撃。 何かが抜けるような、砕けるような、そんな音。 そんなに大きな音じゃなかったはずなのに、なぜか鼓膜が痺れたように世界の音が遠い。 「し……しっか……して……みの……くん……っ!」 あぁ、先輩? よかった……無事だったんだ…… 「ちょ……稔……! ど……たの、ね……!?  早……! 一体何が……たのよッ!?」 あ、なんで……姉さんがここに……? てか、姉さん……先輩は悪くないんだ…… くそ……声が出な……すごく……意……しきが…… ■ ■ ■ 「――で、早紀を助けようとしてダイビングキャッチをしたまでは良かったけど、体重を支えきれなくて左肩脱臼に右腕複雑骨折?」 頭痛を抑えるように、こめかみに手を当てて、姉さんは深くため息をついた。 あの後、意識を失った俺は、先輩と騒ぎを聞きつけてやって来た姉さんが呼んだ救急車に乗って病院に 搬送され、そのまま入院となったのだった。 と言っても入院は今夜一晩だけで、明日には家に帰れるらしい。 肩は脱臼していたものの、左腕そのものには何の怪我も無かったのが退院可能の理由らしい。 姉さんと先輩はベッドサイドに置かれた丸椅子に腰掛けていた。 「あたしのせいで……ごめんね、稔くん……」 先輩が深々と、申し訳なさそうに頭を下げた。 「いや、そんなに謝らないでくださいよ。俺は先輩がかすり傷も無くて良かったって思ってるんですから」 「そうそう。ひめも早紀に怪我が無くて良かったと思ってるよ」 「ひめっち……」 「でもね、稔くんはダメだね。ダメダメ。  早紀一人の体重も支えられないんだもん。お姉ちゃんは稔くんを、そんな軟弱者に育てたつもりは無いのになー」 「……育てられた覚えも無いけどね」 「ていっ」 「のわあっ!? 叩くなっ! 痛えだろ! 殺す気か!」 「フンだ。お姉ちゃんに心配かけるような極悪非道の稔くんはいっぺん死んで生まれ変わって、お姉ちゃんの下僕になればいいんだー!」 何気に酷いこと言ってないかこの姉。 「でもまあ、頭とかに怪我無くて良かったよ。稔くんの悪い頭がこれ以上悪くならなくて済んだし」 「てか姉さん……人を労わるという優しいスキルは持ち合わせてないの? 俺、怪我人だよ?」 「でも、救急車の中のひめっちは凄かったよ」 と先輩が言った途端、姉さんはペンキでも塗りたくったかのように顔を紅潮させた。 慌てて先輩の口をふさごうとする。 「ちょ、ちょっと早紀ってばぁ!」 「ふふふ。どんなだったかは内緒だよ。ひめっちの名誉に関わることだからねー」 「うー!」 威嚇するように唸る姉さん。 野生動物か、あんたは。 「けどさ」 立ち直りの早いのもうちの姉さんの特徴だ。 「稔くん、右手使えないでしょ? 家の事、どうしようか?」 「あー、そうかぁ……」 家事のほとんどは俺がやってるんだった。 選択や掃除は姉さんに手伝ってもらうとしても、左手一本で料理は難しい。 「あの……そのことなんだけど……」 悩んでいる俺たち二人に、先輩がおずおずと言った。 「迷惑かけちゃったし、家事とかあたしに手伝わせてもらえないかな?」 ――こうして、俺と姉さんと先輩の奇妙な共同生活が始まるのだった。 ---- >2.駄目だ。疲れた…… 駄目だ。疲れた…… 「い、いってらっしゃ……い……」 「うん。じゃあ、またね!」 先輩は若草の香りがする笑みを見せて、颯爽と体育館の方に歩いていった。 そして俺はと言うと―― 「おい稔! しっかりしろ傷は浅いぞ!  ええい、衛生兵っ! おっぱいがお椀型でFカップ以上の衛生兵はいないのかっ!」 ジョルジュが通りかかるまで放置でした。 拝啓、お父さんお母さん。都会の風は冷たいです…… < 【[[back>みずきSS 02]]】 【[[next>早紀SS04]]】 >

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