mizu0214|みずき
@bg file="white.jpg" time=700
[cm]
@bgm file="theH.ogg"
@texton
;;背景『雪景色プラス夜明けが理想。無理ならホワイトアウトか何かで』
;;BGM『Theヒロインズ』
「おお、雪だ雪だ! 雪祭りだよ、姉さん!」[lr]
廊下へ向かって叫ぶも、もちろん朝に弱い姉さんからの返答はない。いつものことだから俺も気にせず、もう一度眼下の光景を見下ろした。[lr]
白雪が推定五センチメートルは降り積もっている。雪だるま……OK。雪合戦……OK。[lr]
ここまでの雪は久しぶりだった。こたつで丸くなってる姉さんを無理やり外へ連れ出して、雪だるま作りや雪合戦に参加させたのも遠い昔。五年ぶりかもしれない。[lr]
午後は雪合戦決定。わくわくしながら見下ろしていると、向かいの家の庭から犬が吼えかかってきた。俺は不審者じゃないぞ、猫姉さんとは違って雪が大好きな同志だぞ。[pcm]
;;SE『風の音』
@playse storage="WindF@11.ogg"
@wait time=1000
@fadeoutse time=1000
「へっくしん!」[lr]
そういえば、まだ着替えていなかった。寒気で目を覚ましたくせ、カーテンと窓を開けて身を乗り出すとは、寝ぼけていたにもほどがあるだろう、俺![pcm]
;;背景『自室』
@stopse
@bg file="heya_m.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
慌てて体を引っ込めると、俺は等価原則的に考えて、ヤケクソに祈った。今日、何かいいことがありますように。とりあえず悪いことは一つあったし、何かないと割に合わない。[pcm]
[cm]
@bgm file="theH.ogg"
@texton
;;背景『雪景色プラス夜明けが理想。無理ならホワイトアウトか何かで』
;;BGM『Theヒロインズ』
「おお、雪だ雪だ! 雪祭りだよ、姉さん!」[lr]
廊下へ向かって叫ぶも、もちろん朝に弱い姉さんからの返答はない。いつものことだから俺も気にせず、もう一度眼下の光景を見下ろした。[lr]
白雪が推定五センチメートルは降り積もっている。雪だるま……OK。雪合戦……OK。[lr]
ここまでの雪は久しぶりだった。こたつで丸くなってる姉さんを無理やり外へ連れ出して、雪だるま作りや雪合戦に参加させたのも遠い昔。五年ぶりかもしれない。[lr]
午後は雪合戦決定。わくわくしながら見下ろしていると、向かいの家の庭から犬が吼えかかってきた。俺は不審者じゃないぞ、猫姉さんとは違って雪が大好きな同志だぞ。[pcm]
;;SE『風の音』
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「へっくしん!」[lr]
そういえば、まだ着替えていなかった。寒気で目を覚ましたくせ、カーテンと窓を開けて身を乗り出すとは、寝ぼけていたにもほどがあるだろう、俺![pcm]
;;背景『自室』
@stopse
@bg file="heya_m.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
慌てて体を引っ込めると、俺は等価原則的に考えて、ヤケクソに祈った。今日、何かいいことがありますように。とりあえず悪いことは一つあったし、何かないと割に合わない。[pcm]
;;背景『グラウンド。できれば雪が積もってるとよし』
;;BGM『Theヒロインズ』
;;SE『ショックな音』。桃太郎電鉄でボンビーな感じの。
@bg2 file="gra.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=1500
;;BGM『Theヒロインズ』
;;SE『ショックな音』。桃太郎電鉄でボンビーな感じの。
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@playse storage="ShockB@11.ogg"
@wait time=1000
@fadeoutse time=1000
意外に思わなかったといえば、嘘になる。けれど、まさか、あの長岡が……。[lr]
;;長岡(笑み)
「先輩のおかげで自分に自信が持てました!」[lr]
「どんな小さいおっぱいもおっぱいはおっぱい。気にすることはない、君は素晴らしいひんぬー星人なんだぞ」[lr]
チョコレートを受け取っているなんて! それもどう見ても本命のを![lr]
もう、真っ白に燃え尽きた。髪の毛が白くなったかもしれない。[lr]
;;毒男(泣き)
「稔ぅぅぅ!」[lr]
意識を取り戻したのは、足元が嘆いたからだった。飛び退いて見下ろすと、うねうねする毒男が一匹。[pcm]
「嘘だよな!? 俺が幻覚を見てるだけだよな! なぁ、そうだと言ってくれぇぇぇ!」[lr]
「いや、現実だ。潔く認めろよ」[lr]
長岡は確かにおっぱいおっぱいとうるさいが、下手に隠さないことで逆に女子には受け入れられている。性格もいいヤツだ。[lr]
;;長岡消し
溜め息をついて変態が足にしがみつくのを蹴り払う。[lr]
「確かに意外だけど、意外じゃないだろ」[lr]
「ア、ア、ア、ア、アイツは裏切り者だぁぁぁ! な、そうだろ!?」[lr]
「友人に恋人ができたんだから、素直に祝福してやろうぜ」[lr]
「ならん、ならんぞ! アイツは……アイツは!」[lr]
;;毒男消し
怒りの炎を燃やしながら、ぶつぶつと呪詛を呟き続ける。面倒くさがりのクセに、チョコだけは欲しがるとは都合が良すぎるだろうに。[pcm]
@wait time=1000
@fadeoutse time=1000
意外に思わなかったといえば、嘘になる。けれど、まさか、あの長岡が……。[lr]
;;長岡(笑み)
「先輩のおかげで自分に自信が持てました!」[lr]
「どんな小さいおっぱいもおっぱいはおっぱい。気にすることはない、君は素晴らしいひんぬー星人なんだぞ」[lr]
チョコレートを受け取っているなんて! それもどう見ても本命のを![lr]
もう、真っ白に燃え尽きた。髪の毛が白くなったかもしれない。[lr]
;;毒男(泣き)
「稔ぅぅぅ!」[lr]
意識を取り戻したのは、足元が嘆いたからだった。飛び退いて見下ろすと、うねうねする毒男が一匹。[pcm]
「嘘だよな!? 俺が幻覚を見てるだけだよな! なぁ、そうだと言ってくれぇぇぇ!」[lr]
「いや、現実だ。潔く認めろよ」[lr]
長岡は確かにおっぱいおっぱいとうるさいが、下手に隠さないことで逆に女子には受け入れられている。性格もいいヤツだ。[lr]
;;長岡消し
溜め息をついて変態が足にしがみつくのを蹴り払う。[lr]
「確かに意外だけど、意外じゃないだろ」[lr]
「ア、ア、ア、ア、アイツは裏切り者だぁぁぁ! な、そうだろ!?」[lr]
「友人に恋人ができたんだから、素直に祝福してやろうぜ」[lr]
「ならん、ならんぞ! アイツは……アイツは!」[lr]
;;毒男消し
怒りの炎を燃やしながら、ぶつぶつと呪詛を呟き続ける。面倒くさがりのクセに、チョコだけは欲しがるとは都合が良すぎるだろうに。[pcm]
;;背景『昇降口』。毒男(笑み)。
@bg file="syoukouguti.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@playse storage="Throw01@22.ogg"
「しかぁぁぁぁぁし!」[lr]
下駄箱の前までくると唐突に復活した。人差し指を槍の如く突き出す毒男。――どこかで見たことがあるような気のする仕草だ。[lr]
「俺たちにはまだ希望が残されている!」[lr]
指先を忠実にたどるものの、やっぱり下駄箱しかない。ついに狂ったか。[pcm]
「確かに長岡のように直接手渡しということはなかった。だが、逆に考えてみるんだ。可憐で純情で奥手と相場が決まっている女の子が、そんな白昼堂々と告白なんてできようか! いや、できはしない! とすれば、ここに可愛らしい思いがしたためられた便箋が入っているに違いないだろう! そして忘れてならないのは、ラッピングがちょっと下手な純度百パーセントの片思いの結晶! ちょっと不器用ながら努力の跡が存分に伺えるその出来栄え! そう、ハート型の本命チョコレートなのだぁぁぁぁ!」[lr]
長文ご苦労。言い終えて、ぜぇはぁと荒く息をつく毒男。[pcm]
;;毒男消し
ちょっとだけ高鳴る心臓を意識しながら、下駄箱を開ける。なんと可愛らしくラッピングされた包みがある! わけはない。[lr]
「……ん?」[lr]
真新しいとはいえ、やはり上履きは臭い。だが、悪臭の中に甘ったるい香気が混じっていたような気がした。[lr]
菓子のような……考えすぎか。[lr]
蓋を閉めようとすると、肩を叩かれた。[lr]
;;毒男(笑い)
「そうかそうか、お前もか」[lr]
「何のことだ」[lr]
「収穫。ゼロなんだろ?」[lr]
「…………」[pcm]
「隠したって分かるさ。お前が裏切ってないことくらい。おお、我が心の友よ!」[lr]
うんうんと頷きながら、負け犬の笑みを浮かべる毒男。[lr]
「お前と一緒にするな」[lr]
;;毒男(泣き)
「バレンタインなんてな、チョコレートの販売戦略の罠に過ぎないんだ。な、稔もそう思うだろ?」[lr]
精神防御のために、一時的にクールキャラへと転職したらしい。全くできてはいないが、いつものアホキャラはどうしたのやら。[lr]
;;凛々(冷たい目)
と、一人の女子が傍らを過ぎてゆくのに気づいた。冷ややかな眼差しが痛い。[pcm]
;;毒男(笑み)
半歩退いて道を空けた俺に対し、視線に臆さなかった毒男が道化のように胸へ手を当てた。[lr]
「おお、我が愛しのマドンナ白水凛々。今朝のご機嫌はいかが?」[lr]
「…………」[lr]
雪のように白く美しく、そして冷たい視線が、毒男を迎え撃った。もちろん、差し出されたエスコートの手は、全く眼中にない。[lr]
「し、白水、おはよう」[lr]
;;凛々(デフォルト)、毒男消し
「おはよう、藤宮」[lr]
俺もスルーされるのではないかと内心ひやひやしたが、そんなことはなく、白水は普通に挨拶を返してくれた。[pcm]
;;凛々いったん消しの後、再登場
いったんは通り過ぎようとしたものの、やっぱりといった感じで戻ってきた。[lr]
;;凛々(呆れ)
「藤宮、この際だから言っておくけど、付き合う友達は選んだ方がいいわよ?」[lr]
「……最近そう思い始めた」[lr]
「そう。なら早急にするよう勧めるわ」[lr]
汚物でも見るように毒男を見下す。それ以上は興味を失ったように首を振ると、艶やかな黒髪を揺らめかせながら、凛然と去っていった。[lr]
;;凛々消し、毒男(ショック)
後には、手の行く先を失って茫然と跪きつくす哀愁漂う背中がひとつ。[pcm]
「元気出せって」[lr]
「……ずるくね?」[lr]
ぽんぽんと肩を叩くと、怨々とした声が返ってきた。[lr]
;;毒男(怒り)
「ずるくねぇか!? マイマドンナの白水と仲良くお喋りしやがって! お前も裏切り者だ!」[lr]
そもそもマドンナといったところで、お前のそれは五指に余るだろうが。言いかけた台詞をぐっと呑み込む。[lr]
慣れてはいるものの、被害妄想と誇大妄想はコイツの悪い癖だ。長続きはしないので、大事になることは少ないのだが。[lr]
胸倉を掴んで喚き散らす。それくらいで気分が静まるのなら、別にちょっと愚痴を聞き流してやるくらいどうってことはない。[lr]
内容は違えど、みずき相手で慣れていることだ。[pcm]
;;みずき(制服 01,2A,02,00,00,00,M 片手肩に)
;;BGM『雪景色』
@fadeoutbgm time=2000
[ld pos=lc name="mizu" wear=u pose=1 b=2 e=2a m=2]
「おっはよー、みの、る……」[ld pos=lc name="mizu" wear=u pose=1 b=1 e=3a m=3][lr]
と噂をすれば影を差すといったところか。挨拶を返そうとするものの、毒男が邪魔で上手くできない。[lr]
@bgm file="yuki.ogg"
豹変した。[lr]
;;みずき(制服 03,9A,01,00,00,00,L 両手腰に)← みずきの拡大で病み目使わずに異常性と迫力を出せます?
;;画面揺れ 2回くらい
[ld pos=lc name="mizu" wear=u pose=2 b=3 e=3a m=11 y=b]
「みのるの邪魔しない!」[quake time=300][wq][lr]
びりびりと大気が震えた。鼓膜が痛む。激情を帯びるどころではなく、むしろまとう勢いのソプラノがほとばしった。[lr]
@cl pos=lc
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=2 b=3 e=3a m=9 y=b size=L]
;@cl pos=rc
;毒男(驚き)
怯んだ瞬間、みずきが間に割りこんで、俺と毒男を引き剥がす。いや、むしろ毒男を突き飛ばした。[pcm]
;;毒男(驚き)
「な、なんだよ。ちょっとふざけてただけだろ」[lr]
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=2 b=3 e=3a m=11 y=b size=L]
「みのるの邪魔、しない!」[lr]
忠犬が主人を守るかのように、怒りを込めて睨みつけていた。剣のように傘を喉へ突きつけ、それが本気なのだと知らせる。[lr]
小柄な体からは想像もつかないプレッシャー。気圧されたように毒男が後ずさった。[lr]
;;毒男(困り)
「お、おい、稔もなんとか言ってくれよ!」[lr]
弾かれたようにみずきがぱっと振り返った。[lr]
;;みずき(制服 07,5A,09,00,00,00,M 片手胸に)
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=3 b=5 e=3a m=10]
『迷惑だった?』、恐れを隠さないその表情。まるで小学生のときのような。[pcm]
考えた。毒男を庇えばみずきの行動をお節介にしてしまうし、みずきを庇えば、毒男は苛立つ。[lr]
――結局のところ、どちらかを犠牲にするしかない。なら答えは決まっていた。[lr]
「正直、邪魔だ」[lr]
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=3 b=1 e=2a m=8]
決然とした意志を込めて告げる。[lr]
ヘタレてなんかいられない。『誰も傷つけたくない』、そう考えて黙りこむことこそが、二人ともを傷つけることになる。[lr]
;;毒男(ショック)
「そう、か……」[lr]
――すまない。[lr]
心の中で謝りながら、俺はみずきの手を引いた。[pcm]
@bg file="syoukouguti.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@playse storage="Throw01@22.ogg"
「しかぁぁぁぁぁし!」[lr]
下駄箱の前までくると唐突に復活した。人差し指を槍の如く突き出す毒男。――どこかで見たことがあるような気のする仕草だ。[lr]
「俺たちにはまだ希望が残されている!」[lr]
指先を忠実にたどるものの、やっぱり下駄箱しかない。ついに狂ったか。[pcm]
「確かに長岡のように直接手渡しということはなかった。だが、逆に考えてみるんだ。可憐で純情で奥手と相場が決まっている女の子が、そんな白昼堂々と告白なんてできようか! いや、できはしない! とすれば、ここに可愛らしい思いがしたためられた便箋が入っているに違いないだろう! そして忘れてならないのは、ラッピングがちょっと下手な純度百パーセントの片思いの結晶! ちょっと不器用ながら努力の跡が存分に伺えるその出来栄え! そう、ハート型の本命チョコレートなのだぁぁぁぁ!」[lr]
長文ご苦労。言い終えて、ぜぇはぁと荒く息をつく毒男。[pcm]
;;毒男消し
ちょっとだけ高鳴る心臓を意識しながら、下駄箱を開ける。なんと可愛らしくラッピングされた包みがある! わけはない。[lr]
「……ん?」[lr]
真新しいとはいえ、やはり上履きは臭い。だが、悪臭の中に甘ったるい香気が混じっていたような気がした。[lr]
菓子のような……考えすぎか。[lr]
蓋を閉めようとすると、肩を叩かれた。[lr]
;;毒男(笑い)
「そうかそうか、お前もか」[lr]
「何のことだ」[lr]
「収穫。ゼロなんだろ?」[lr]
「…………」[pcm]
「隠したって分かるさ。お前が裏切ってないことくらい。おお、我が心の友よ!」[lr]
うんうんと頷きながら、負け犬の笑みを浮かべる毒男。[lr]
「お前と一緒にするな」[lr]
;;毒男(泣き)
「バレンタインなんてな、チョコレートの販売戦略の罠に過ぎないんだ。な、稔もそう思うだろ?」[lr]
精神防御のために、一時的にクールキャラへと転職したらしい。全くできてはいないが、いつものアホキャラはどうしたのやら。[lr]
;;凛々(冷たい目)
と、一人の女子が傍らを過ぎてゆくのに気づいた。冷ややかな眼差しが痛い。[pcm]
;;毒男(笑み)
半歩退いて道を空けた俺に対し、視線に臆さなかった毒男が道化のように胸へ手を当てた。[lr]
「おお、我が愛しのマドンナ白水凛々。今朝のご機嫌はいかが?」[lr]
「…………」[lr]
雪のように白く美しく、そして冷たい視線が、毒男を迎え撃った。もちろん、差し出されたエスコートの手は、全く眼中にない。[lr]
「し、白水、おはよう」[lr]
;;凛々(デフォルト)、毒男消し
「おはよう、藤宮」[lr]
俺もスルーされるのではないかと内心ひやひやしたが、そんなことはなく、白水は普通に挨拶を返してくれた。[pcm]
;;凛々いったん消しの後、再登場
いったんは通り過ぎようとしたものの、やっぱりといった感じで戻ってきた。[lr]
;;凛々(呆れ)
「藤宮、この際だから言っておくけど、付き合う友達は選んだ方がいいわよ?」[lr]
「……最近そう思い始めた」[lr]
「そう。なら早急にするよう勧めるわ」[lr]
汚物でも見るように毒男を見下す。それ以上は興味を失ったように首を振ると、艶やかな黒髪を揺らめかせながら、凛然と去っていった。[lr]
;;凛々消し、毒男(ショック)
後には、手の行く先を失って茫然と跪きつくす哀愁漂う背中がひとつ。[pcm]
「元気出せって」[lr]
「……ずるくね?」[lr]
ぽんぽんと肩を叩くと、怨々とした声が返ってきた。[lr]
;;毒男(怒り)
「ずるくねぇか!? マイマドンナの白水と仲良くお喋りしやがって! お前も裏切り者だ!」[lr]
そもそもマドンナといったところで、お前のそれは五指に余るだろうが。言いかけた台詞をぐっと呑み込む。[lr]
慣れてはいるものの、被害妄想と誇大妄想はコイツの悪い癖だ。長続きはしないので、大事になることは少ないのだが。[lr]
胸倉を掴んで喚き散らす。それくらいで気分が静まるのなら、別にちょっと愚痴を聞き流してやるくらいどうってことはない。[lr]
内容は違えど、みずき相手で慣れていることだ。[pcm]
;;みずき(制服 01,2A,02,00,00,00,M 片手肩に)
;;BGM『雪景色』
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と噂をすれば影を差すといったところか。挨拶を返そうとするものの、毒男が邪魔で上手くできない。[lr]
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豹変した。[lr]
;;みずき(制服 03,9A,01,00,00,00,L 両手腰に)← みずきの拡大で病み目使わずに異常性と迫力を出せます?
;;画面揺れ 2回くらい
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「みのるの邪魔しない!」[quake time=300][wq][lr]
びりびりと大気が震えた。鼓膜が痛む。激情を帯びるどころではなく、むしろまとう勢いのソプラノがほとばしった。[lr]
@cl pos=lc
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;毒男(驚き)
怯んだ瞬間、みずきが間に割りこんで、俺と毒男を引き剥がす。いや、むしろ毒男を突き飛ばした。[pcm]
;;毒男(驚き)
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「みのるの邪魔、しない!」[lr]
忠犬が主人を守るかのように、怒りを込めて睨みつけていた。剣のように傘を喉へ突きつけ、それが本気なのだと知らせる。[lr]
小柄な体からは想像もつかないプレッシャー。気圧されたように毒男が後ずさった。[lr]
;;毒男(困り)
「お、おい、稔もなんとか言ってくれよ!」[lr]
弾かれたようにみずきがぱっと振り返った。[lr]
;;みずき(制服 07,5A,09,00,00,00,M 片手胸に)
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『迷惑だった?』、恐れを隠さないその表情。まるで小学生のときのような。[pcm]
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――結局のところ、どちらかを犠牲にするしかない。なら答えは決まっていた。[lr]
「正直、邪魔だ」[lr]
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決然とした意志を込めて告げる。[lr]
ヘタレてなんかいられない。『誰も傷つけたくない』、そう考えて黙りこむことこそが、二人ともを傷つけることになる。[lr]
;;毒男(ショック)
「そう、か……」[lr]
――すまない。[lr]
心の中で謝りながら、俺はみずきの手を引いた。[pcm]
@cl
;;背景『廊下』、毒男消し
@bg file="rouka2.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
;;背景『廊下』、毒男消し
@bg file="rouka2.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
毒男は一人でも立てる。だが、みずきは――。[lr]
;;みずき(制服 06,3A,09,00,00,00,M 片手胸に)
;;BGM OUT 3秒 > 無音
@fadeoutbgm time=3000
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=3 b=6 e=3a m=9]
「みのる……?」[lr]
みずきの顔が高校生に戻り、ほっと息をつく。肩の力が抜けて、手が滑り落ちた。[lr]
「ありがとうな、助かったよ」[lr]
;;みずき(制服 02,2A,02,00,00,00,M 片手胸のまま)
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=3 b=2 e=2a m=2]
そっと頭を撫でてやる。きょとん、としながらもすぐに唇を綻ばせるみずき。[lr]
みずきの行動はすべてが善意に基づくもの。なら結果はどうあれ、俺だけは感謝してやろう。小学生のとき、胸に誓った。[pcm]
;;みずき(制服 02,7B,07,00,00,00,M 片手胸のまま)
;;BGM『兆候』
@bgm file="choukou.ogg"
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=3 b=2 e=7a m=7 y=b]
「誰かを傷つけても、いいんだ……」[lr]
「え?」[lr]
ハッとするとみずきの笑みはほどけていて、ようやくさっきの笑みのぎこちなさに気づいた。[lr]
;;みずき(制服 02,8A,09,00,00,00,M 両手胸元に)
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=4 b=2 e=3a m=9]
「ね、みのるはどう思う? 誰かのために誰かを犠牲にすること」[lr]
いつになく真剣でまっすぐな視線が眼底をえぐり、たまらず目を逸らした。[lr]
「……否定できないし、しない」[lr]
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=4 b=2 e=7a m=8 y=b]
「そう、否定しない。否定しない……」[lr]
だから気がつかなかった。みずきの瞳に、何か重大な決心の色が浮かんだことに。[pcm]
;;みずき 立ち絵消し
;;みずき(制服 06,3A,09,00,00,00,M 片手胸に)
;;BGM OUT 3秒 > 無音
@fadeoutbgm time=3000
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=3 b=6 e=3a m=9]
「みのる……?」[lr]
みずきの顔が高校生に戻り、ほっと息をつく。肩の力が抜けて、手が滑り落ちた。[lr]
「ありがとうな、助かったよ」[lr]
;;みずき(制服 02,2A,02,00,00,00,M 片手胸のまま)
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そっと頭を撫でてやる。きょとん、としながらもすぐに唇を綻ばせるみずき。[lr]
みずきの行動はすべてが善意に基づくもの。なら結果はどうあれ、俺だけは感謝してやろう。小学生のとき、胸に誓った。[pcm]
;;みずき(制服 02,7B,07,00,00,00,M 片手胸のまま)
;;BGM『兆候』
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「誰かを傷つけても、いいんだ……」[lr]
「え?」[lr]
ハッとするとみずきの笑みはほどけていて、ようやくさっきの笑みのぎこちなさに気づいた。[lr]
;;みずき(制服 02,8A,09,00,00,00,M 両手胸元に)
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「ね、みのるはどう思う? 誰かのために誰かを犠牲にすること」[lr]
いつになく真剣でまっすぐな視線が眼底をえぐり、たまらず目を逸らした。[lr]
「……否定できないし、しない」[lr]
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「そう、否定しない。否定しない……」[lr]
だから気がつかなかった。みずきの瞳に、何か重大な決心の色が浮かんだことに。[pcm]
;;みずき 立ち絵消し
;;SE『チャイム』。BGM『学校的風景其の一』
@fadeoutbgm time=1500
@cl
@bg2 file="kyousitu.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=1500
@bgm file="gakkou1.ogg"
@playse storage="tm2_chime001r.ogg"
@wait time=2000
@fadeoutse time=1000
@bg file="rouka1.jpg" rule="左下から右上へ" time=500
@bg file="kaidan2.jpg" rule="左下から右上へ" time=500
@bg file="syoukouguti.jpg" rule="左下から右上へ" time=500
@fadeoutbgm time=1500
@cl
@bg2 file="kyousitu.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=1500
@bgm file="gakkou1.ogg"
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毒男と会うのは、まだ気マズい。雪合戦は取りやめ、SHR(ショートホームルーム)が終わると足早に下駄箱へと向かった。[lr]
;;背景『昇降口』
無人の昇降口は物寂しい。かじかむ指先でのろのろと下駄箱を開けた。今度こそ綺麗にラッピングされた包みがある。わけはやっぱりなかった。[lr]
またしてもチョコレートのような甘い香りがしていた。しかし、あまり嗅いでいても未練がましい変態(毒男)にしか見られないだろう。[r]
;;背景『昇降口』
無人の昇降口は物寂しい。かじかむ指先でのろのろと下駄箱を開けた。今度こそ綺麗にラッピングされた包みがある。わけはやっぱりなかった。[lr]
またしてもチョコレートのような甘い香りがしていた。しかし、あまり嗅いでいても未練がましい変態(毒男)にしか見られないだろう。[r]
さっさと靴だけ出して、昇降口から出ようとしたところで、[lr]
;;背景『雪の降り積もったグラウンド』
@snowinit backvisible=true
@bg file="gra.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
「……ヴぇ」[lr]
大きなミスに気がついた。後悔先に立たず、とはよく言ったものだ。いったい何をしてたんだ、過去の俺。[pcm]
朝は晴れだったのに、今は余韻すらない。陽は黒雲に覆い隠され、細かな雪がちらほらと舞い、空気を白くけぶらせている。[lr]
@fadeoutbgm time=1500
制服の前を閉じるものの、凍った風は襟からも吹きこんできた。肌の感覚が薄くなってゆく。[lr]
;;『Theヒロインズ』
@bgm file="theH.ogg"
「ほい、やっぱりみのるはあたしがいないとダメだね~」[lr]
ふわり、と首に柔らかな布が絡みついた。優しい肌触りが滑らかになじむ。[lr]
振り向くと、誰もいない。しんしんという雪の降る微かな音が耳に心地いいだけだ。[lr]
どうやら声の主は背後に回って、マフラーを首に巻きつけようと奮闘しているらしい。[pcm]
;;背景『真っ暗』
@snowuninit
@bg file="black.jpg" rule="上から下へ"
「だ~れだ♪」[lr]
確かに声は目の前からするのだが、視えない。マフラーで目隠しをされていた。[lr]
思わず溜め息がこぼれるが、嘆息ではない。もっと穏やかで、思わず笑みしてしまうような息だ。[lr]
「うーん、誰だ?」[lr]
分からず悩んでいるフリをしてみる。[lr]
「んもー、分かんないの? お姉ちゃんだよ」[lr]
みずきお得意のモノマネか。バレバレなのだが、気づいていないのだろうか。[lr]
どうせならモノマネを返してみるとしよう。[pcm]
「おっぱいおっぱい!」[lr]
「…………」[lr]
「…………」[lr]
「…………」[lr]
見えないはずなのに。ぶんぶんと振った腕が、とめるタイミングを逃してむなしく振り子のように動き続ける。[lr]
ああ、空気が、白い……。[lr]
「いいよ、みのる。あたしがモノマネのレッスンしたげる」[lr]
「……いい。もう充分傷ついた」[lr]
慰めようとしてくれるみずきの心遣いが、傷に響く。[pcm]
@snowinit backvisible=true
@bg file="gra.jpg" rule="下から上へ"
どちらからともなく目隠しを外した。ようやく首に巻かれるマフラー。[lr]
全体としてつくりは緩い。けれど、なにやら紅茶色のしなやかな繊維が所々に編みこまれていて、きっちり補強されている。毛糸ではないが、何なのだろうか。[lr]
;;みずき(制服 02,2A,02,00,00,00,M 片手肩に)
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=1 b=2 e=2a m=2]
「傘、ないんでしょ? 一緒に帰るっ!」[lr]
@playse storage="tm2_umblera000.ogg"
@ws
霞む白の中に、ぽっと火が灯るように鮮やかな薄紅の傘が咲いた。[lr]
縁がなくても、今日はバレンタインだ。男が一人で歩いていれば、それだけで憐れみの視線を浴びる。そう考えれば、渡りに船だったが、[lr]
「お前、誰か待たなくていいのか?」[lr]
みずきも女の子なのだから、誰かにチョコを準備しているはずだった。[pcm]
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=4 b=6 e=1a m=10]
「ん? みのるを待ってたけど」[lr]
;;みずき(制服 04,8A,09,00,00,00,M 両手胸元に)
きょとん、と首をかしげるみずき。この状況はよくよく考えてみれば相合傘になるのだが、気にしないんだろうな。そもそもみずきの方から言ってきたことだし。[lr]
;;みずき(制服 02,2A,02,01,00,00,M 片手胸に)
ためらっていると、みずきが身をすり寄せてきた。[lr]
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=3 b=2 e=2a m=2 c=1 size=L]
「ね、あったかいでしょ~?」[lr]
確かに温かいが、ついでに柔らかい![lr]
「や、やめ……」[lr]
「遠慮しないの」[lr]
引き剥がそうとするものの、みずきは意地になって離れてくれない。むしろグラマラスな肢体を押しつけてくる始末。気がついてくれよ![lr]
結局、寄り添ったまま、グラウンドを抜けた。[pcm]
;;背景『グラウンド』
;校門では
@cl
@bg file="soto.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@fadeoutbgm time=3000
「み、みの! ……りん」[lr]
;;BGMフェードアウト 3秒。
校門を出ようとしたところで、背後から呼び止められた。この声は伊万里だろう。頬を緩ませながら振り返った。[lr]
@bgm file="yuki.ogg"
「なんだ、伊万……里?」[lr]
;;BGM『雪景色』。
;;伊万里(制服 05,3A,04,01,00,00,M)← 原文に立ち絵指定入ってますが、おそらくイベント絵に差し替え
;;みずき(制服 01,3A,09,00,00,00,M 片手肩に)
[ld pos=rc name="imar" wear=u pose=1 b=3 e=3a m=4 c=1]
[ld pos=lc name="mizu" wear=u pose=1 b=6 e=1a m=9]
その頬が固まった。[lr]
誰、だ。そんな疑問が脳裏をよぎった。[lr]
何か凄まじい重圧に、今にもおしつぶれされそうに縮こまっている。胸元へ引き寄せられた左腕は、どこかすがりつくようだった。[lr]
[ld pos=lc name="mizu" wear=u pose=1 b=1 e=3a m=9 y=b]
そして、右手は小さな包みを差し出している。リボンが所々で跳ねているものの、可愛らしいオレンジ色の包みだった。[pcm]
瞳は伏せられ、ときどき上目遣いにちらちらとこちらを見やるのみ。視線がぶつかるたびに、さっと伏せる。ほっそりとした肩はふるふると震えている。[lr]
それは寒さのためではないのだろう。だが、俺はどうしたらいいのか分からなかった。[lr]
「…………」[lr]
;;背景の明度を一気に上げていって、真っ白寸前まで。
@cl
@bg file="white.jpg"
頭の中に雪が降り積もってゆく。何も考えられない。[lr]
と、みずきに袖を引かれ、体が傾いだ。[lr]
……そのまま身を任せられたら。そんな甘い逃げの一手が脳裏を掠めたのは否定できない。[lr]
全身にありったけの力を込めながら、動きかけた一歩を止める。意に反して足は震えていた。[pcm]
;;イベント絵の明度を下げていって元に戻す。……いや、できればですけど。こんな演出できるかな?
@snowuninit
@bg file="black.jpg" rule="上から下へ"
落ち着いて、深呼吸。風が吹く一瞬前のような静けさで、みずきを袖に振った。[lr]
@snowinit backvisible=true
@bg file="soto.jpg" rule="下から上へ"
「あ……」[lr]
;;みずき(制服 04,5A,07,00,00,01,M) ← 一度、病み目(5B)にしてから、みずきの立ち絵だけ消し
[ld pos=lc name="mizu" wear=u pose=4 b=5 e=3a m=10]
[ld pos=lc name="mizu" wear=u pose=4 b=4 e=3a m=9 y=b]
@cl
茫然とした呟きを背に、一歩一歩、踏みしめるようにして伊万里へ歩み寄った。[lr]
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=5 e=3a m=4 c=1]
不恰好な包みをまじまじと見つめる。――なんだ、これは。[lr]
プレゼント。女から男へ。二月十四日。如月のイベント。バレンタイン……。[lr]
何も言えなかった。口を開いたのは、何か狂気めいたものに衝き動かされただけだ。[lr]
「…………」[lr]
だが、口は開いたまま固まった。[pcm]
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=4 e=5a m=7 c=1 s=1]
「へ、返事は!」[lr]
;;伊万里(制服 02,3A,05,01,00,01,M)
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=3 e=3a m=4 c=1]
伊万里の瞳に哀しげな色が揺れる。[lr]
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=5 e=3a m=5 c=1 t=1]
「いますぐでなくてもいいから……」[lr]
血を吐くような決死の叫び。手に包みが押しつけられた。[lr]
@cl
ハッと我に返ってほぞを噛む。――しくじった。[lr]
;;伊万里消し。
刹那、立ちすくんだ隙に、伊万里は駆け出して行ってしまっていた。猫か何かのように、あっという間に視界からいなくなる。[lr]
残された足跡を、細雪が優しくさらってゆく。開いたままの唇を撫ぜながら、俺は雪の中、立ち尽くしていた。[pcm]
@snowinit backvisible=true
@bg file="gra.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
「……ヴぇ」[lr]
大きなミスに気がついた。後悔先に立たず、とはよく言ったものだ。いったい何をしてたんだ、過去の俺。[pcm]
朝は晴れだったのに、今は余韻すらない。陽は黒雲に覆い隠され、細かな雪がちらほらと舞い、空気を白くけぶらせている。[lr]
@fadeoutbgm time=1500
制服の前を閉じるものの、凍った風は襟からも吹きこんできた。肌の感覚が薄くなってゆく。[lr]
;;『Theヒロインズ』
@bgm file="theH.ogg"
「ほい、やっぱりみのるはあたしがいないとダメだね~」[lr]
ふわり、と首に柔らかな布が絡みついた。優しい肌触りが滑らかになじむ。[lr]
振り向くと、誰もいない。しんしんという雪の降る微かな音が耳に心地いいだけだ。[lr]
どうやら声の主は背後に回って、マフラーを首に巻きつけようと奮闘しているらしい。[pcm]
;;背景『真っ暗』
@snowuninit
@bg file="black.jpg" rule="上から下へ"
「だ~れだ♪」[lr]
確かに声は目の前からするのだが、視えない。マフラーで目隠しをされていた。[lr]
思わず溜め息がこぼれるが、嘆息ではない。もっと穏やかで、思わず笑みしてしまうような息だ。[lr]
「うーん、誰だ?」[lr]
分からず悩んでいるフリをしてみる。[lr]
「んもー、分かんないの? お姉ちゃんだよ」[lr]
みずきお得意のモノマネか。バレバレなのだが、気づいていないのだろうか。[lr]
どうせならモノマネを返してみるとしよう。[pcm]
「おっぱいおっぱい!」[lr]
「…………」[lr]
「…………」[lr]
「…………」[lr]
見えないはずなのに。ぶんぶんと振った腕が、とめるタイミングを逃してむなしく振り子のように動き続ける。[lr]
ああ、空気が、白い……。[lr]
「いいよ、みのる。あたしがモノマネのレッスンしたげる」[lr]
「……いい。もう充分傷ついた」[lr]
慰めようとしてくれるみずきの心遣いが、傷に響く。[pcm]
@snowinit backvisible=true
@bg file="gra.jpg" rule="下から上へ"
どちらからともなく目隠しを外した。ようやく首に巻かれるマフラー。[lr]
全体としてつくりは緩い。けれど、なにやら紅茶色のしなやかな繊維が所々に編みこまれていて、きっちり補強されている。毛糸ではないが、何なのだろうか。[lr]
;;みずき(制服 02,2A,02,00,00,00,M 片手肩に)
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=1 b=2 e=2a m=2]
「傘、ないんでしょ? 一緒に帰るっ!」[lr]
@playse storage="tm2_umblera000.ogg"
@ws
霞む白の中に、ぽっと火が灯るように鮮やかな薄紅の傘が咲いた。[lr]
縁がなくても、今日はバレンタインだ。男が一人で歩いていれば、それだけで憐れみの視線を浴びる。そう考えれば、渡りに船だったが、[lr]
「お前、誰か待たなくていいのか?」[lr]
みずきも女の子なのだから、誰かにチョコを準備しているはずだった。[pcm]
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=4 b=6 e=1a m=10]
「ん? みのるを待ってたけど」[lr]
;;みずき(制服 04,8A,09,00,00,00,M 両手胸元に)
きょとん、と首をかしげるみずき。この状況はよくよく考えてみれば相合傘になるのだが、気にしないんだろうな。そもそもみずきの方から言ってきたことだし。[lr]
;;みずき(制服 02,2A,02,01,00,00,M 片手胸に)
ためらっていると、みずきが身をすり寄せてきた。[lr]
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=3 b=2 e=2a m=2 c=1 size=L]
「ね、あったかいでしょ~?」[lr]
確かに温かいが、ついでに柔らかい![lr]
「や、やめ……」[lr]
「遠慮しないの」[lr]
引き剥がそうとするものの、みずきは意地になって離れてくれない。むしろグラマラスな肢体を押しつけてくる始末。気がついてくれよ![lr]
結局、寄り添ったまま、グラウンドを抜けた。[pcm]
;;背景『グラウンド』
;校門では
@cl
@bg file="soto.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@fadeoutbgm time=3000
「み、みの! ……りん」[lr]
;;BGMフェードアウト 3秒。
校門を出ようとしたところで、背後から呼び止められた。この声は伊万里だろう。頬を緩ませながら振り返った。[lr]
@bgm file="yuki.ogg"
「なんだ、伊万……里?」[lr]
;;BGM『雪景色』。
;;伊万里(制服 05,3A,04,01,00,00,M)← 原文に立ち絵指定入ってますが、おそらくイベント絵に差し替え
;;みずき(制服 01,3A,09,00,00,00,M 片手肩に)
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[ld pos=lc name="mizu" wear=u pose=1 b=6 e=1a m=9]
その頬が固まった。[lr]
誰、だ。そんな疑問が脳裏をよぎった。[lr]
何か凄まじい重圧に、今にもおしつぶれされそうに縮こまっている。胸元へ引き寄せられた左腕は、どこかすがりつくようだった。[lr]
[ld pos=lc name="mizu" wear=u pose=1 b=1 e=3a m=9 y=b]
そして、右手は小さな包みを差し出している。リボンが所々で跳ねているものの、可愛らしいオレンジ色の包みだった。[pcm]
瞳は伏せられ、ときどき上目遣いにちらちらとこちらを見やるのみ。視線がぶつかるたびに、さっと伏せる。ほっそりとした肩はふるふると震えている。[lr]
それは寒さのためではないのだろう。だが、俺はどうしたらいいのか分からなかった。[lr]
「…………」[lr]
;;背景の明度を一気に上げていって、真っ白寸前まで。
@cl
@bg file="white.jpg"
頭の中に雪が降り積もってゆく。何も考えられない。[lr]
と、みずきに袖を引かれ、体が傾いだ。[lr]
……そのまま身を任せられたら。そんな甘い逃げの一手が脳裏を掠めたのは否定できない。[lr]
全身にありったけの力を込めながら、動きかけた一歩を止める。意に反して足は震えていた。[pcm]
;;イベント絵の明度を下げていって元に戻す。……いや、できればですけど。こんな演出できるかな?
@snowuninit
@bg file="black.jpg" rule="上から下へ"
落ち着いて、深呼吸。風が吹く一瞬前のような静けさで、みずきを袖に振った。[lr]
@snowinit backvisible=true
@bg file="soto.jpg" rule="下から上へ"
「あ……」[lr]
;;みずき(制服 04,5A,07,00,00,01,M) ← 一度、病み目(5B)にしてから、みずきの立ち絵だけ消し
[ld pos=lc name="mizu" wear=u pose=4 b=5 e=3a m=10]
[ld pos=lc name="mizu" wear=u pose=4 b=4 e=3a m=9 y=b]
@cl
茫然とした呟きを背に、一歩一歩、踏みしめるようにして伊万里へ歩み寄った。[lr]
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=5 e=3a m=4 c=1]
不恰好な包みをまじまじと見つめる。――なんだ、これは。[lr]
プレゼント。女から男へ。二月十四日。如月のイベント。バレンタイン……。[lr]
何も言えなかった。口を開いたのは、何か狂気めいたものに衝き動かされただけだ。[lr]
「…………」[lr]
だが、口は開いたまま固まった。[pcm]
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=4 e=5a m=7 c=1 s=1]
「へ、返事は!」[lr]
;;伊万里(制服 02,3A,05,01,00,01,M)
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=3 e=3a m=4 c=1]
伊万里の瞳に哀しげな色が揺れる。[lr]
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=5 e=3a m=5 c=1 t=1]
「いますぐでなくてもいいから……」[lr]
血を吐くような決死の叫び。手に包みが押しつけられた。[lr]
@cl
ハッと我に返ってほぞを噛む。――しくじった。[lr]
;;伊万里消し。
刹那、立ちすくんだ隙に、伊万里は駆け出して行ってしまっていた。猫か何かのように、あっという間に視界からいなくなる。[lr]
残された足跡を、細雪が優しくさらってゆく。開いたままの唇を撫ぜながら、俺は雪の中、立ち尽くしていた。[pcm]
;;背景『自室』
;;BGM『Lunatic Lovers~X-X』を三秒くらいしてから流し始め。それまで無音。
;;SE『扉の閉まる音』
@snowuninit
@fadeoutbgm time=1000
@bg2 file="heya_my.jpg" rule="波" time=1500
;;BGM『Lunatic Lovers~X-X』を三秒くらいしてから流し始め。それまで無音。
;;SE『扉の閉まる音』
@snowuninit
@fadeoutbgm time=1000
@bg2 file="heya_my.jpg" rule="波" time=1500
ハッと我に返ると、迷子みたく左右に視線をめぐらした。[lr]
変わったところはない。見慣れた自室だ。だが、俺はいつここに入ったんだ?[lr]
@bgm file="llxx.ogg"
記憶のフィルムを切り取られたみたいだった。駆け去ってゆく伊万里の後ろ姿を最後に、何も憶えていない。[lr]
あの後、俺はどうしたんだろう。みずきの傘に入れてもらって一緒に帰ったんだろうか。それとも一人、雪に降られながら帰路を急いだんだろうか。[lr]
分からない。思い出せない。記憶の空白。[lr]
幼馴染からの告白。言葉にするとあっけないが、現実に体験したそれは驚き、混乱、硬直、混沌、爆発、白……とても言葉では表せない。[lr]
そして……罪悪感。[lr]
制服を脱ぐのさえわずらわしく、そのままベッドへと倒れこんだ。脳裏では焼きついたそのままの像がむすばれてゆく。[pcm]
変わったところはない。見慣れた自室だ。だが、俺はいつここに入ったんだ?[lr]
@bgm file="llxx.ogg"
記憶のフィルムを切り取られたみたいだった。駆け去ってゆく伊万里の後ろ姿を最後に、何も憶えていない。[lr]
あの後、俺はどうしたんだろう。みずきの傘に入れてもらって一緒に帰ったんだろうか。それとも一人、雪に降られながら帰路を急いだんだろうか。[lr]
分からない。思い出せない。記憶の空白。[lr]
幼馴染からの告白。言葉にするとあっけないが、現実に体験したそれは驚き、混乱、硬直、混沌、爆発、白……とても言葉では表せない。[lr]
そして……罪悪感。[lr]
制服を脱ぐのさえわずらわしく、そのままベッドへと倒れこんだ。脳裏では焼きついたそのままの像がむすばれてゆく。[pcm]
;;ホワイトアウトの後、背景『雪景色』と『伊万里(制服 02,3A,05,01,00,01,M)』を回想のために再表示。
@bg file="black.jpg" rule="上から下へ"
@bg file="black.jpg" rule="上から下へ"
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=5 e=3a m=5 c=1 t=1]
アイツはいつから想っていたのだろう。気づかなかった気づいてやれなかった気づいてやるべきだったのに![lr]
俺はいつからアイツを苦しめていたんだ……?[lr]
俺の幼馴染は、震えていた。震えて、震えて、そして……。[lr]
アイツはいつから想っていたのだろう。気づかなかった気づいてやれなかった気づいてやるべきだったのに![lr]
俺はいつからアイツを苦しめていたんだ……?[lr]
俺の幼馴染は、震えていた。震えて、震えて、そして……。[lr]
;;背景の明度を上げて、回想がかすんで見えにくくなるように。
@cl
@bg file="white.jpg"
@cl
@bg file="white.jpg"
思い出せない。記憶がぼやけていた。像が結ばれてはほどけ、ほどけては結ばれる。そのたびに細部は曇り、曖昧になっていった。[pcm]
;;ブラックアウト。二秒間くらい空白。
;;背景『自室』。BGM『Lunatic Lovers~xxx』
@fadeoutbgm time=2000
@bg file="black.jpg"
@wb
@wait time=1000
@bg file="heya_my.jpg" rule="下から上へ"
@bgm file="llxxx.ogg"
;;背景『自室』。BGM『Lunatic Lovers~xxx』
@fadeoutbgm time=2000
@bg file="black.jpg"
@wb
@wait time=1000
@bg file="heya_my.jpg" rule="下から上へ"
@bgm file="llxxx.ogg"
頬に冷たいものが伝って目が覚めた。[lr]
骨を抜かれたように力が入らない。寝返りさえ億劫だった。[lr]
目覚めてから起き上がるまでに、どれだけの時間がかかったのかは憶えていない。[pcm]
骨を抜かれたように力が入らない。寝返りさえ億劫だった。[lr]
目覚めてから起き上がるまでに、どれだけの時間がかかったのかは憶えていない。[pcm]
;;背景『洗面台』
@bg2 file="bas_y.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@bg2 file="bas_y.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
気がつくと、洗面台へと向かっていた。鏡の中から血走った眼が見つめ返していた。[lr]
;;背景『洗面台』
;;SE『水音』
@playse storage="PailB@11.ogg"
@wait time=1500
@fadeoutse time=1500
わざと水滴を跳ね散らかしながら顔を洗った。こびりついた表情をこすり落とすように。[lr]
;;SE『水音』停止。きゅっと蛇口を閉める音とかあったらいいかも。BGM『雨ノ/降ル/街』へ移行。
@fadeoutbgm time=3000
夕飯は何にしようか。あえて事態から注意を逸らすようなことを考える。手を動かしている間は、悩みも忘れられるだろうから。[lr]
親は二人とも出張で家は留守だ。幼い頃からよくあることなので、もう慣れきっている。生活能力が皆無の姉さんに代わって、俺が家事をこなすだけのことだ。[pcm]
@stopse
;;背景『洗面台』
;;SE『水音』
@playse storage="PailB@11.ogg"
@wait time=1500
@fadeoutse time=1500
わざと水滴を跳ね散らかしながら顔を洗った。こびりついた表情をこすり落とすように。[lr]
;;SE『水音』停止。きゅっと蛇口を閉める音とかあったらいいかも。BGM『雨ノ/降ル/街』へ移行。
@fadeoutbgm time=3000
夕飯は何にしようか。あえて事態から注意を逸らすようなことを考える。手を動かしている間は、悩みも忘れられるだろうから。[lr]
親は二人とも出張で家は留守だ。幼い頃からよくあることなので、もう慣れきっている。生活能力が皆無の姉さんに代わって、俺が家事をこなすだけのことだ。[pcm]
@stopse
;;背景『居間』
@bg file="ribing_y.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@bgm file="amemati.ogg"
@bg file="ribing_y.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@bgm file="amemati.ogg"
「姉さん、遅れてごめ……」[lr]
;;三秒くらい停止。
声は虚空へ吸いこまれていった。こしらえた笑みが、ゆっくりとほどけてゆく。[lr]
自然と体の力が抜けていった。[lr]
――どうして気がつかなかった![lr]
居間には誰もいなかった。[lr]
いつも夕飯をねだってぐずる姉さんが、今日に限って何も言わない。そんなことは有り得ない。だというのに違和感を覚えるのが遅すぎた。[lr]
寒い。暖房がついていなかった。暖気の名残さえ残っていない。[lr]
今日、一度も家に戻ってきていないのだろうか。――まさか、何かトラブルにでも?[lr]
不吉な悪寒が背筋を駆け抜けた。[pcm]
;;SE『携帯のバイブレーション』。音量は大きめに。
@fadeoutbgm time=1500
@playse storage="Vibes08.ogg"
身を揺さぶるような騒音。音源が携帯であることを知るや飛びついた。[lr]
@stopse
;;背景『携帯のズーム』。
;;BGM『N-20 peace』
震える指でボタンを連打し、新着メールを呼び出す。[lr]
――『姉さん』。[lr]
@bgm file="n20.ogg"
送信者を確かめた途端、ほっとして腰が砕けた。フローリングが冷たいのもかまわず尻をつく。[lr]
『今日は帰らないよー。早紀のところに泊まるから』[lr]
まずは根回しから。返信する前に俺は先輩へメールをつくった。[pcm]
;;三秒くらい停止。
声は虚空へ吸いこまれていった。こしらえた笑みが、ゆっくりとほどけてゆく。[lr]
自然と体の力が抜けていった。[lr]
――どうして気がつかなかった![lr]
居間には誰もいなかった。[lr]
いつも夕飯をねだってぐずる姉さんが、今日に限って何も言わない。そんなことは有り得ない。だというのに違和感を覚えるのが遅すぎた。[lr]
寒い。暖房がついていなかった。暖気の名残さえ残っていない。[lr]
今日、一度も家に戻ってきていないのだろうか。――まさか、何かトラブルにでも?[lr]
不吉な悪寒が背筋を駆け抜けた。[pcm]
;;SE『携帯のバイブレーション』。音量は大きめに。
@fadeoutbgm time=1500
@playse storage="Vibes08.ogg"
身を揺さぶるような騒音。音源が携帯であることを知るや飛びついた。[lr]
@stopse
;;背景『携帯のズーム』。
;;BGM『N-20 peace』
震える指でボタンを連打し、新着メールを呼び出す。[lr]
――『姉さん』。[lr]
@bgm file="n20.ogg"
送信者を確かめた途端、ほっとして腰が砕けた。フローリングが冷たいのもかまわず尻をつく。[lr]
『今日は帰らないよー。早紀のところに泊まるから』[lr]
まずは根回しから。返信する前に俺は先輩へメールをつくった。[pcm]
;;背景『自室』。
@bg2 file="heya_my.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@bg2 file="heya_my.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
『うちの姉が迷惑かけてすみません。着替えなどはそっちに持って行ってますか? あと、姉さんは料理がダメで、朝食に肉が嫌いです。肉を出すと機嫌を損ないます。いい加減、好き嫌いを少しは減らして欲しいものですが、なかなか上手くいかなくて。そもそも姉さんを飼い慣らすのは、サーカスの一流調教師でも無理だと思います。あんなに気まぐれな猫なんて、普通いませんよ。先輩もうちの愚姉の我がまま迷惑っぷりに辟易するかと思いますが、どうか捨てないでやってください』[pcm]
自室に戻ってベッドに転がりながら、長文を打ち込み続ける。他にもあれやこれやと諸注意(送信してから愚痴がだいぶ入ってるのに気づいた)を送信すると、すぐに返信が来た。[lr]
『ふふ、仲が良いのね。でも、これ、ひめちゃんも見てるんだけど?』[lr]
――ヴぇえええええっ!?[lr]
『へー、稔くんってお姉ちゃんのことそんな風に思ってたんだ☆』[lr]
何なのだろうか、この星印。なぜか冷や汗が出てくる。[lr]
『じゃ、お姉ちゃんがいない間は、みずきちゃんに面倒見てもらってね』[pcm]
――はぁ!?[lr]
思わず何度も読み返した。しかし、いくら読んでも読んでも全く文面は変わらない。[lr]
「……電話するか」[lr]
姉さんの番号を電話帳から呼び出そうとすると、[lr]
;;SE『電話の鳴る音。稔の着メロとか不明なので、別にデフォルト設定のヤツでもいいのかな?』
@playse storage="Vibes08.ogg"
なんというバッドタイミング。ちょうどその瞬間に着信が入った。[pcm]
@stopse
;;背景真っ暗にして、みずき(私服 01,1A,01,00,00,00,M 片手肩に)
「みのる、早く準備準備!」[lr]
「なんだ、みずきか」[lr]
「今ね、お父さんが車呼んだから、あと三十分くらい~」[lr]
「おいい!?」[lr]
背筋を冷たいものが駆け上がる。イヤな予感がした。[lr]
「……まさか、もうそっちに連絡」[lr]
;;みずき(私服 02,2A,02,00,00,00,M 片手肩に)
「ひめさんがね、不束者ですが、うちの弟をよろしく頼みます、だって」[lr]
なんだ、その婿入りする弟みたいなシチュエーションは。ハンカチで涙を拭う(フリをしている)姉さんの顔が浮かぶ。[pcm]
;;みずき(私服 04,7A,09,00,00,00,M 片手胸に)
「……やっぱり、後二時間待ってて。ちょっと急用ができたみたい」[lr]
電話の口を抑える気配がした。くぐもった呻き声のようなものがかすかに聞こえてくる。[lr]
「お前の父さんも、その、大変なんだな」[lr]
まさか、酔っ払ってるのか、とは訊けない。[lr]
「お父さん? ……う、うん、お父さん忙しいみたい」[lr]
「だろ。歩いて行くよ」[lr]
;;みずき(私服 05,5A,05,00,00,00,M 両手胸元)
「ダ、ダメ!」[lr]
「けど……」[lr]
「い、いいからあたしに任せておきなさいっ!」[lr]
結局、押し切られてしまった。[pcm]
;;みずき 立ち絵消し
;;SE『電話のツーツー音』、BGMフェードアウト。背景『携帯のズーム』に戻す。
@fadeoutbgm time=3000
@playse storage="TelephoneA@08.ogg"
@wait time=2000
@fadeoutse time=1000
ツー、ツー、という音だけが響き、やがてそれも途絶えた。[lr]
姉さんがいないというだけで、あまりに静かすぎる。訪れた静寂の呪縛に音を立てられなかった。[lr]
「……誰も」[lr]
;;背景『居間』
辛うじて紡ぎだした言葉は静寂に吸われて消えていくだけだった。待っていても、誰も帰ってこない。[lr]
そして気がつくとカーテンから目を離せなかった。[lr]
伊万里の家はすぐ隣だ。今も向こうでは伊万里が覗いてるんじゃないか? こうしてる今も寒さに震えながら、こっちをずっと見つめている……。[lr]
視線を感じた。幻の伊万里、その責めるようにまっすぐな視線。[lr]
俺はどれだけ伊万里を支えにしてきたんだろうか。[pcm]
自室に戻ってベッドに転がりながら、長文を打ち込み続ける。他にもあれやこれやと諸注意(送信してから愚痴がだいぶ入ってるのに気づいた)を送信すると、すぐに返信が来た。[lr]
『ふふ、仲が良いのね。でも、これ、ひめちゃんも見てるんだけど?』[lr]
――ヴぇえええええっ!?[lr]
『へー、稔くんってお姉ちゃんのことそんな風に思ってたんだ☆』[lr]
何なのだろうか、この星印。なぜか冷や汗が出てくる。[lr]
『じゃ、お姉ちゃんがいない間は、みずきちゃんに面倒見てもらってね』[pcm]
――はぁ!?[lr]
思わず何度も読み返した。しかし、いくら読んでも読んでも全く文面は変わらない。[lr]
「……電話するか」[lr]
姉さんの番号を電話帳から呼び出そうとすると、[lr]
;;SE『電話の鳴る音。稔の着メロとか不明なので、別にデフォルト設定のヤツでもいいのかな?』
@playse storage="Vibes08.ogg"
なんというバッドタイミング。ちょうどその瞬間に着信が入った。[pcm]
@stopse
;;背景真っ暗にして、みずき(私服 01,1A,01,00,00,00,M 片手肩に)
「みのる、早く準備準備!」[lr]
「なんだ、みずきか」[lr]
「今ね、お父さんが車呼んだから、あと三十分くらい~」[lr]
「おいい!?」[lr]
背筋を冷たいものが駆け上がる。イヤな予感がした。[lr]
「……まさか、もうそっちに連絡」[lr]
;;みずき(私服 02,2A,02,00,00,00,M 片手肩に)
「ひめさんがね、不束者ですが、うちの弟をよろしく頼みます、だって」[lr]
なんだ、その婿入りする弟みたいなシチュエーションは。ハンカチで涙を拭う(フリをしている)姉さんの顔が浮かぶ。[pcm]
;;みずき(私服 04,7A,09,00,00,00,M 片手胸に)
「……やっぱり、後二時間待ってて。ちょっと急用ができたみたい」[lr]
電話の口を抑える気配がした。くぐもった呻き声のようなものがかすかに聞こえてくる。[lr]
「お前の父さんも、その、大変なんだな」[lr]
まさか、酔っ払ってるのか、とは訊けない。[lr]
「お父さん? ……う、うん、お父さん忙しいみたい」[lr]
「だろ。歩いて行くよ」[lr]
;;みずき(私服 05,5A,05,00,00,00,M 両手胸元)
「ダ、ダメ!」[lr]
「けど……」[lr]
「い、いいからあたしに任せておきなさいっ!」[lr]
結局、押し切られてしまった。[pcm]
;;みずき 立ち絵消し
;;SE『電話のツーツー音』、BGMフェードアウト。背景『携帯のズーム』に戻す。
@fadeoutbgm time=3000
@playse storage="TelephoneA@08.ogg"
@wait time=2000
@fadeoutse time=1000
ツー、ツー、という音だけが響き、やがてそれも途絶えた。[lr]
姉さんがいないというだけで、あまりに静かすぎる。訪れた静寂の呪縛に音を立てられなかった。[lr]
「……誰も」[lr]
;;背景『居間』
辛うじて紡ぎだした言葉は静寂に吸われて消えていくだけだった。待っていても、誰も帰ってこない。[lr]
そして気がつくとカーテンから目を離せなかった。[lr]
伊万里の家はすぐ隣だ。今も向こうでは伊万里が覗いてるんじゃないか? こうしてる今も寒さに震えながら、こっちをずっと見つめている……。[lr]
視線を感じた。幻の伊万里、その責めるようにまっすぐな視線。[lr]
俺はどれだけ伊万里を支えにしてきたんだろうか。[pcm]
静寂の呪縛。物音を立てることが恐ろしくてたまらない。[lr]
思いもかけなかった。姉さんがいないだけで、自分の他に誰もいないと言うだけで、こんなにも静かなんて。[lr]
音がないからといって、本当に何も聞こえなかったりはしない。無音であるからこそ、周りが静かであるからこそ、聞こえてしまう囁きがある。[lr]
静謐(せいひつ)は告げる。沈黙は語る。お前は独りぼっちなのだ、と。[pcm]
耐えられなかった。この魔の囁きを無視できるほど、俺は強くない。[lr]
独りっきりはなんて寂しいのだろう。せつないのだろう。苦しいのだろう。[lr]
自分の体を抱きしめながら、思う。こんなときに、誰かいてくれたら――。[lr]
だが、苦悩にさらなる拍車がかかる。気がつくとカーテンから目を離せなかった。[pcm]
思いもかけなかった。姉さんがいないだけで、自分の他に誰もいないと言うだけで、こんなにも静かなんて。[lr]
音がないからといって、本当に何も聞こえなかったりはしない。無音であるからこそ、周りが静かであるからこそ、聞こえてしまう囁きがある。[lr]
静謐(せいひつ)は告げる。沈黙は語る。お前は独りぼっちなのだ、と。[pcm]
耐えられなかった。この魔の囁きを無視できるほど、俺は強くない。[lr]
独りっきりはなんて寂しいのだろう。せつないのだろう。苦しいのだろう。[lr]
自分の体を抱きしめながら、思う。こんなときに、誰かいてくれたら――。[lr]
だが、苦悩にさらなる拍車がかかる。気がつくとカーテンから目を離せなかった。[pcm]
伊万里の家はすぐ隣。カーテンを閉め切っていても、向こうが覗いているのではと妄想にさいなまれる。[r]
こうしている今も、伊万里は身を凍えさせながら瞳の色を沈め、心の傷から新たな血を噴かせているのだ……。[lr]
視線を感じる。俺がつくりだした幻の伊万里、その責めるようにまっすぐな視線。[lr]
辛い。苦しめていたことが。[lr]
俺は今まで伊万里をどれだけ心の支えにしてきたのか。その答えがまざまざと実感を持って体に教えこまれる。[lr]
静謐は告げる。ちょっと関係が変わりかけただけで、泣いて取り乱す。どれだけ子どものままなのか。[lr]
沈黙は語る。みずきを支えている? 聞いて呆れる。今も電気さえ消せないくせに。[lr]
否定できない。囁きを論破できない。言葉のナイフが胸の奥に刺さってゆく。[pcm]
;;SE『衝撃音』。
@quake time=500
@playse storage="noise_11_monooto.ogg"
@wq
ベッドから転がり落ちた。よろよろと立ち上がる。ふらついてカーテンにすがりついた。ぐっと力を込める。指が震える。筋肉が膨れる。[lr]
爪が肌に喰いこむほどの力を込めても、手は動かなかった。カーテンを開けて、もし伊万里がいたら。向かいあう勇気はなかった。[lr]
「……っ!」[lr]
声にならない癇癪を叫びながら、カーテンを乱暴に薙ぎ払う。気づかないうちにひどく苛立っていた。[lr]
憎い対象が分かるから、なおさら憎い。己の不甲斐なさが不甲斐なかった。[pcm]
;;SE『衝撃音』
@quake time=300
@playse storage="DownA@11.ogg"
@wq
スポーツバッグを床へ叩きつけた。乱暴に着替えを詰めてゆく。[lr]
みずきが来るまでには、まだ少し余裕がある。だが、何かせずにはいられなかった。[lr]
頭が痛くて途中からは億劫だったが、なんとか荷物をまとめた。[pcm]
辛い。苦しめていたことが。[lr]
俺は今まで伊万里をどれだけ心の支えにしてきたのか。その答えがまざまざと実感を持って体に教えこまれる。[lr]
静謐は告げる。ちょっと関係が変わりかけただけで、泣いて取り乱す。どれだけ子どものままなのか。[lr]
沈黙は語る。みずきを支えている? 聞いて呆れる。今も電気さえ消せないくせに。[lr]
否定できない。囁きを論破できない。言葉のナイフが胸の奥に刺さってゆく。[pcm]
;;SE『衝撃音』。
@quake time=500
@playse storage="noise_11_monooto.ogg"
@wq
ベッドから転がり落ちた。よろよろと立ち上がる。ふらついてカーテンにすがりついた。ぐっと力を込める。指が震える。筋肉が膨れる。[lr]
爪が肌に喰いこむほどの力を込めても、手は動かなかった。カーテンを開けて、もし伊万里がいたら。向かいあう勇気はなかった。[lr]
「……っ!」[lr]
声にならない癇癪を叫びながら、カーテンを乱暴に薙ぎ払う。気づかないうちにひどく苛立っていた。[lr]
憎い対象が分かるから、なおさら憎い。己の不甲斐なさが不甲斐なかった。[pcm]
;;SE『衝撃音』
@quake time=300
@playse storage="DownA@11.ogg"
@wq
スポーツバッグを床へ叩きつけた。乱暴に着替えを詰めてゆく。[lr]
みずきが来るまでには、まだ少し余裕がある。だが、何かせずにはいられなかった。[lr]
頭が痛くて途中からは億劫だったが、なんとか荷物をまとめた。[pcm]
;;背景『玄関』
@bg file="genkan_y.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@bg file="genkan_y.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
ふらふらと家を出る。[pcm]
;;背景『自宅前』
;;SE『扉の開く音』
@bg file="ie_y.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@playse storage="Door03Close@11.ogg"
@ws
;;SE『扉の開く音』
@bg file="ie_y.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@playse storage="Door03Close@11.ogg"
@ws
玄関前の階段にへたりこむと、[lr]
;;伊万里(私服 02,2A,05,00,00,00,M)
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=2 e=2a m=5 s=1]
「あ……」[lr]
;;BGM『兆候』
@bgm file="choukou.ogg"
――バカな![lr]
このタイミングで、まさか。思わず運命とやらを呪いたくなる。[lr]
いくら家が隣だとは言え、ここで鉢合わせするとは、何か悪意めいたものを感じずにはいられない。[lr]
ましてや、それがついさっき告白してきた相手で、しかも返事をまだ保留にしているなど、これが『偶然』で片づけられるのだろうか。[lr]
;;伊万里(私服 03,4A,04,00,00,00,M)
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=3 e=4a m=4 s=1]
動けない。気まずい沈黙が漂う。[pcm]
;;SE『車のエンジン音』
@fadeoutbgm time=3000
@playse storage="car6@11.ogg"
@wait time=1500
@fadeoutse time=1500
夜気を震わせるエンジン音。耳に障らない力強さが徐々に近づいてくる。奇跡の足音のように聞こえた。闇を切り裂くヘッドライトが眩しい。[lr]
@stopse
滑らかかつ静かな停車だった。エンジンだけでなく、サスペンションも最高級なのだろう。[lr]
どっしりとした威圧感のあるボディは黒塗り。我が家の前に停められたのはメルセデス・ベンツだった。パワーウィンドウが無音で下りてゆく。[lr]
;;みずき(私服 02,2A,02,00,00,00,M 片手肩に)。BGM『雨ノ/降ル/街』
@bgm file="amemati.ogg"
[ld pos=l name="mizu" wear=u pose=1 b=2 e=2a m=2]
「ひゃっほー、みのる元気ぃ?」[lr]
びくり、と痙攣した。[pcm]
@cl pos=c
;;伊万里(私服 05,2A,11,00,01,00,M)
[ld pos=r name="imar" wear=u pose=1 b=5 e=2a m=11 s=1]
伊万里が。頬は引きつり、目は見張られ、唇は半開きに。油の差していない機械のように、ぎこちなくみずきから顔をそむけた。[lr]
みずきが窓から顔を覗かせた瞬間のことだった。あからさますぎるほどの狼狽。[lr]
本人としては、素早く逸らさないことでバレないようにしているつもりなのだろう。だが、逆にそれが不自然さを上塗りしていた。[lr]
「…………」[lr]
何だ? 何が伊万里を怯えさせた? 疑問符が頭を埋めつくす。[pcm]
@cl pos=r
みずきに見つからないよう、さっと身をひるがえす伊万里。思わず制止しようとして、しかしその背中に言葉をかけられなかった。[lr]
;;伊万里消し
そのまま伊万里は家へと駆け込んでしまった。伸ばした手がしばしさまよい、ふらりと落ちた。[lr]
;;SE『ドアが閉まる音』。鍵が閉まる音をつけてもいいかも。
@playse storage="Door03Close@11.ogg"
@ws
@playse storage="doorlock2.ogg"
@ws
鍵までしっかりと閉められる。そのころになって、よたり、と片足がようやく追いかけようとした。間抜けすぎる行動に、月光が冷たかった。[lr]
;;みずき(私服 05,1B,07,00,00,00,M 片手胸に)
@cl
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=3 b=5 e=1a m=7 y=b]
「どうしたの? みのる」[lr]
寂しげなみずきの声で、ハッと我に返った。何を考えていたのだろう。よく分からなかった。ただ、冷静さや思慮を欠いていることだけが、辛うじて理解できるのみだった。[pcm]
「……なんでもない」[lr]
こればかりは語れない。力なく首を振った。[lr]
;;みずき(私服 03,4A,04,00,00,00,M 両手腰に)
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=2 b=3 e=4a m=4]
「むー! 教えてくれたっていいじゃん」[lr]
不満げに膨らんだ頬。脳裏に光が閃いた。[lr]
――あれは、嫉妬、だったのかもしれない。[lr]
ワンフレーズにぞっとした。嫉妬。嫉妬。嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬。嫉妬![lr]
いや、まさか、有り得ない。伊万里に限って。だって、伊万里は、みずきの親友で……。[lr]
必死になって頭を振るものの、どこか冷静な部分が思考を紡ぎあげてゆく。[pcm]
伊万里がみずきを避けたのは、俺の知る限り、初めてのことだ。そしてあんなにも狼狽した姿なんて見たことがない。[lr]
告白を保留にしておきながら、バレンタイン、しかも夜に別の女と会っている……。[lr]
『嫉妬』しても不足はない。凝り固まった答えが胸に落ちてきた。[lr]
;;みずき(私服 07,8A,09,00,00,00,M 片手胸に)
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=3 b=7 e=8a m=9]
「ちょっとちょっと、みのるってば! あたしのこと見えてる?」[lr]
目の前で手を振ってみせるみずき。ああ、たまらなく哀しく愛しい。[lr]
今まで真にみずきの味方となりうるのは、俺と伊万里だけだった。けれども、伊万里は、もしかしたらみずきに嫉妬しているかもしれない。[pcm]
誤解だが、恐らく解けまい。今の俺には伊万里と向かい合う覚悟なんてないからだ。[lr]
とすれば、みずきはどうなるのだろう。考えてみるまでもない。理解者は俺だけになってしまう。[lr]
クラスメイトたちからは疎外され、教師たちからは嘲笑され、さらに理解者まで失ったら。みずきは壊れてしまう。狂ってしまう。[lr]
「みずき……」[lr]
;;みずき(私服 02,2A,02,00,00,00,M 片手肩に)
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=1 b=2 e=2a m=2]
「あ、やっと気がついた。荷物渡すっ!」[lr]
言い終わる頃には、スポーツバッグは車内に引きずり込まれていた。[pcm]
「早く乗るっ!」[lr]
言われるままに乗り込もうとして。[lr]
ふとためらって伊万里の家を見上げた。[lr]
カーテンはしっかりと閉じられている。揺れもしない。なのに窓越しの視線を感じる。幻の視線が見つめているような気がする。[lr]
;;SE『風の音』
@playse storage="WindF@11.ogg"
@wait time=1000
@fadeoutse time=1000
冬の夜風が体を芯まで凍らせてゆく。けれど、身震いは寒さのためだけではなかった。[lr]
白い溜め息をつくと、俺はベンツへ乗りこんだ。[pcm]
;;伊万里(私服 02,2A,05,00,00,00,M)
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=2 e=2a m=5 s=1]
「あ……」[lr]
;;BGM『兆候』
@bgm file="choukou.ogg"
――バカな![lr]
このタイミングで、まさか。思わず運命とやらを呪いたくなる。[lr]
いくら家が隣だとは言え、ここで鉢合わせするとは、何か悪意めいたものを感じずにはいられない。[lr]
ましてや、それがついさっき告白してきた相手で、しかも返事をまだ保留にしているなど、これが『偶然』で片づけられるのだろうか。[lr]
;;伊万里(私服 03,4A,04,00,00,00,M)
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=3 e=4a m=4 s=1]
動けない。気まずい沈黙が漂う。[pcm]
;;SE『車のエンジン音』
@fadeoutbgm time=3000
@playse storage="car6@11.ogg"
@wait time=1500
@fadeoutse time=1500
夜気を震わせるエンジン音。耳に障らない力強さが徐々に近づいてくる。奇跡の足音のように聞こえた。闇を切り裂くヘッドライトが眩しい。[lr]
@stopse
滑らかかつ静かな停車だった。エンジンだけでなく、サスペンションも最高級なのだろう。[lr]
どっしりとした威圧感のあるボディは黒塗り。我が家の前に停められたのはメルセデス・ベンツだった。パワーウィンドウが無音で下りてゆく。[lr]
;;みずき(私服 02,2A,02,00,00,00,M 片手肩に)。BGM『雨ノ/降ル/街』
@bgm file="amemati.ogg"
[ld pos=l name="mizu" wear=u pose=1 b=2 e=2a m=2]
「ひゃっほー、みのる元気ぃ?」[lr]
びくり、と痙攣した。[pcm]
@cl pos=c
;;伊万里(私服 05,2A,11,00,01,00,M)
[ld pos=r name="imar" wear=u pose=1 b=5 e=2a m=11 s=1]
伊万里が。頬は引きつり、目は見張られ、唇は半開きに。油の差していない機械のように、ぎこちなくみずきから顔をそむけた。[lr]
みずきが窓から顔を覗かせた瞬間のことだった。あからさますぎるほどの狼狽。[lr]
本人としては、素早く逸らさないことでバレないようにしているつもりなのだろう。だが、逆にそれが不自然さを上塗りしていた。[lr]
「…………」[lr]
何だ? 何が伊万里を怯えさせた? 疑問符が頭を埋めつくす。[pcm]
@cl pos=r
みずきに見つからないよう、さっと身をひるがえす伊万里。思わず制止しようとして、しかしその背中に言葉をかけられなかった。[lr]
;;伊万里消し
そのまま伊万里は家へと駆け込んでしまった。伸ばした手がしばしさまよい、ふらりと落ちた。[lr]
;;SE『ドアが閉まる音』。鍵が閉まる音をつけてもいいかも。
@playse storage="Door03Close@11.ogg"
@ws
@playse storage="doorlock2.ogg"
@ws
鍵までしっかりと閉められる。そのころになって、よたり、と片足がようやく追いかけようとした。間抜けすぎる行動に、月光が冷たかった。[lr]
;;みずき(私服 05,1B,07,00,00,00,M 片手胸に)
@cl
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=3 b=5 e=1a m=7 y=b]
「どうしたの? みのる」[lr]
寂しげなみずきの声で、ハッと我に返った。何を考えていたのだろう。よく分からなかった。ただ、冷静さや思慮を欠いていることだけが、辛うじて理解できるのみだった。[pcm]
「……なんでもない」[lr]
こればかりは語れない。力なく首を振った。[lr]
;;みずき(私服 03,4A,04,00,00,00,M 両手腰に)
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=2 b=3 e=4a m=4]
「むー! 教えてくれたっていいじゃん」[lr]
不満げに膨らんだ頬。脳裏に光が閃いた。[lr]
――あれは、嫉妬、だったのかもしれない。[lr]
ワンフレーズにぞっとした。嫉妬。嫉妬。嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬。嫉妬![lr]
いや、まさか、有り得ない。伊万里に限って。だって、伊万里は、みずきの親友で……。[lr]
必死になって頭を振るものの、どこか冷静な部分が思考を紡ぎあげてゆく。[pcm]
伊万里がみずきを避けたのは、俺の知る限り、初めてのことだ。そしてあんなにも狼狽した姿なんて見たことがない。[lr]
告白を保留にしておきながら、バレンタイン、しかも夜に別の女と会っている……。[lr]
『嫉妬』しても不足はない。凝り固まった答えが胸に落ちてきた。[lr]
;;みずき(私服 07,8A,09,00,00,00,M 片手胸に)
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=3 b=7 e=8a m=9]
「ちょっとちょっと、みのるってば! あたしのこと見えてる?」[lr]
目の前で手を振ってみせるみずき。ああ、たまらなく哀しく愛しい。[lr]
今まで真にみずきの味方となりうるのは、俺と伊万里だけだった。けれども、伊万里は、もしかしたらみずきに嫉妬しているかもしれない。[pcm]
誤解だが、恐らく解けまい。今の俺には伊万里と向かい合う覚悟なんてないからだ。[lr]
とすれば、みずきはどうなるのだろう。考えてみるまでもない。理解者は俺だけになってしまう。[lr]
クラスメイトたちからは疎外され、教師たちからは嘲笑され、さらに理解者まで失ったら。みずきは壊れてしまう。狂ってしまう。[lr]
「みずき……」[lr]
;;みずき(私服 02,2A,02,00,00,00,M 片手肩に)
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=1 b=2 e=2a m=2]
「あ、やっと気がついた。荷物渡すっ!」[lr]
言い終わる頃には、スポーツバッグは車内に引きずり込まれていた。[pcm]
「早く乗るっ!」[lr]
言われるままに乗り込もうとして。[lr]
ふとためらって伊万里の家を見上げた。[lr]
カーテンはしっかりと閉じられている。揺れもしない。なのに窓越しの視線を感じる。幻の視線が見つめているような気がする。[lr]
;;SE『風の音』
@playse storage="WindF@11.ogg"
@wait time=1000
@fadeoutse time=1000
冬の夜風が体を芯まで凍らせてゆく。けれど、身震いは寒さのためだけではなかった。[lr]
白い溜め息をつくと、俺はベンツへ乗りこんだ。[pcm]
;;背景『みずき宅の客人用の部屋。和室? イメージは襖で畳』。
@fadeoutbgm time=1500
@cl
@bg2 file="wafuu_kositu00.jpg" rule="波" time=1500
@fadeoutbgm time=1500
@cl
@bg2 file="wafuu_kositu00.jpg" rule="波" time=1500
ふっつりと記憶のフィルムが途切れている。今日だけで二度目だった。[lr]
体を受け止めているのは、慣れ親しんだベッドではなかった。我が家のベッドも身分不相応に高価だが、それにも勝る高級羽毛布団。みずきが令嬢であることを思い出させられる。[lr]
寝心地は快適だったが、何故か胸騒ぎがした。焦燥だった。途轍もなく喉が渇く。[lr]
警鐘めいた何かを聞いた。心臓が高鳴っていた。[lr]
糸に引きずられるように、布団を押しのけていた。暖房の静かな動作音が静寂を消してくれていて、それだけがありがたかった。[pcm]
体を受け止めているのは、慣れ親しんだベッドではなかった。我が家のベッドも身分不相応に高価だが、それにも勝る高級羽毛布団。みずきが令嬢であることを思い出させられる。[lr]
寝心地は快適だったが、何故か胸騒ぎがした。焦燥だった。途轍もなく喉が渇く。[lr]
警鐘めいた何かを聞いた。心臓が高鳴っていた。[lr]
糸に引きずられるように、布団を押しのけていた。暖房の静かな動作音が静寂を消してくれていて、それだけがありがたかった。[pcm]