シャンバリン島紛争はシャンバリン島(S26)にて1932年7月から発生した紛争。やど箱EX最初のイベントでもある。
シャンバリン島のかねてからの主産業は良質のダイアモンド鉱山であった。
ヤーディシア大戦後の各国の工業技術が発展とともに工業用ダイアモンドの需要が高まると、ダイアモンド鉱山は単に綺麗な宝石鉱山というわけではなく、工作機械に無くてはならない資源へと変貌した。
良質な資源を安い価格で提供し莫大な利益を得るという一大資源ブームの到来は巨大な利権供給地となったが、そのためには労働者の人件費高騰というのはどうしても避けては通れない問題であった。
そこで過剰な人員削減と生産性向上、さらには賃金カットなどのコスト削減を行い、従来では考えられないような利益を叩き出すことに成功した。
しかしこれによりダイアモンド鉱山の利権を巡っては元地権者のメトラ教徒勢力と、実際の労働力である犬人労働者の対立が表面化。
当初は犬人の指導者であったマルッキオ・フェリシアーノら穏健派が主導権を握っており、団体交渉やストライキなどの合法的な戦術で経営層であるメトラ教徒たちに対抗していたが、これに対して暴力団を使った押さえ込みが公然と行われ、労働組合は解散させられ、合法的な戦術は事実上頓挫した。
また、以前から小競り合いが起きていた円十字教とメトラ教との対立も再燃したこともあり、宗教対立という要素も表面化するようになった。
フェリシアーノのやり方を手緩しとみたエル・バルデスら犬人の過激派勢力は犬人解放戦線(DLF)を結成し、島外から武器を調達。実力を持ってメトラ教徒を放逐することになった。
この際に犬人勢力は非戦闘員を含む大量殺人を実行した。
この時最も被害が大きかったのは南部の港湾都市カタスネトである。10月5日に行われたカタスネト大虐殺では、メトラの宗教施設への放火や、商店に対する略奪行為なども行われ、市内の30%が火災に見舞われた。
この都市のメトラ教徒は紛争以前は6000人以上いたが、この事件で200人以下にまで減少したと言われる。
メトラ側もただ黙って見ているわけではなかった。メトラ教徒勢力はこれに対しヤーディシア共同体に「紛争調停」を要請。
これに対して総会ではソフィア王国の強行案が提出されたものの、シテカ共和国代表が対案として提唱したタヴェリア共同軍案にディヴィーカと各国が同調した。
メトラ勢力の背後にはダイヤモンド鉱山で利益を上げているイクファターナ各国のメジャー企業(通称:ビッグシスターズ)が絡んでおり、同時にビッグシスターズ各社は列強各国政府のロビー団体としても有名であった。さらにこれらの企業群は3年前にハダカンボ王国を武力占領しようとしたドピゥ戦役(ハダカンボ戦争)を引き起こした企業も含まれており、現地メトラ教徒に恩を売り、事実上鉱山利権を直接支配しようという腹づもりであることは、財界では自明のこととして認識されていた。ドピゥ戦役のときは主権国家に対する明らかな侵略行為に直接介入に対して躊躇していた各国政府であったが、人道的検知からの介入という文言で圧力がかかった結果、重い腰を上げざるを得なかったのであった。
ディヴィーカとシテカ軍から構成されるタヴェリア共同軍は、シャンバリン島最大の港湾都市を電撃的に制圧した。共同軍の編成と出撃はヤーディシア共同体の採決以前から進められ、採決と同時に戦艦「カーリ・ゼブ」の艦砲射撃が開始された。
共同体首脳は採決直後のディヴィーカ代表の演説により初めて知ることになった。
共同体の緩慢でやる気の無さそうな議論から、犬人勢力はヤーディシア共同体の干渉を過小評価しており、激しくかつ短期的な抵抗の後、ゴルカナを放棄することになった。
以降ゴルカナ港にはタヴェリア共同軍の補給拠点として司令部が置かれた。
ゴルカナから上陸したタヴェリア共同軍は余勢を駆ってダイアモンド鉱山地帯の制圧に乗り出した。紛争資金の供給遮断のためという大義名分にて約八割の鉱山を制圧した。
鉱山利権は共同軍(ディヴィーカ・シテカ)によって独占され、メトラ系住人の元に戻ることはなかった。また、イクファターナ・ビックシスターズも閉め出された。
ダイアモンド鉱山地帯を手中に収めたタヴェリア共同軍だが、犬人勢力が体制を立て直すと兵員の損失が問題となり、本格的な軍事行動を行わなくなる。
兵員の補充のため、共同軍はメトラ系住民に対し「自衛、後方支援、治安維持、警備」と称して火器を提供。民兵の組織を支援した。これにより確かに共同軍の兵員の損失は押さえられたが、メトラ系民兵は報復として犬人の大量殺人事件を頻発させた。
シャンバリン島の混乱に目を付けたヤードゴニエ連邦は、シャンバリン島の赤化とタヴェリアへの進出の為にシャンバリン島に非合法工作部隊を派遣した。ヤードゴニエ連邦は、シャンバリン島の各軍事勢力は人心の獲得をおざなりにしていると分析しており、人心掌握を中心に作戦を開始。シャンバリン島での工作部隊は食料、医薬品などの人道支援、特殊部隊による治安維持活動と教育訓練を各地で展開した。
インフルエンザが大流行する。港湾都市ゴルカナにも感染は拡大し、タヴェリア共同軍の軍事行動に支障をきたすようになった。メトラ勢力圏、犬人勢力圏では地獄絵図が広がり、街中で多くの死体が放置された。海は枯れ、地は裂け、全ての生物が死滅したかのように見えた。だが、住民は死滅していなかった!暴力がすべてを支配する無法の世の中で、力なき民衆は苦悶の声を上げていた。
インフルエンザウィルスは現時点で発見されておらず、効果的な治療法は確立していない。発症すれば50%以上の致死率を示す。またこの世界では世界的感染拡大を経験していないため、危機感や感染防止のノウハウは蓄積されていない。まさしく人類の危機であるが、メトラと犬人勢力は事態ここに至っても殺し合いを止めようとしない。