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罪と償いの少女  ◆a2zhksM50w




「えーと、こういう時は……」

水銀燈は悩んでいた。
他の姉妹を探すのは良いが、何処に向かえば出会えるのか。
闇雲に歩くだけでは、そう見つからない。
せめて、何処か居そうな場所に検討を付けたいところだが、地図上にはそれらしき場所は無い。

「ま、待ってなさい……お姉ちゃんがすぐに行くから……」

アベコンベによって改変された偽りの人格。
されどその優しさは偽りなどではない。
それは、もしかしたら水銀燈の心の奥底に眠っていた愛情なのかもしれない。

「ふふ、どうしました? そんな焦った顔をして」

水銀燈の瞳に一人の女性が移る。
水色の髪に僧侶風の格好をしている事から聖職者だろうか。
ニコニコと笑いながら、こちらへと歩んでくる。

「え、えーと、その……」
「大丈夫、取って食べようて訳じゃありませんから」

第一印象は優しそうなお姉さん。
一応、水銀燈も長女なのだが、まあ今はそう感じても仕方ない。
自分と違い、何処か頼りになりそうな存在。
今の追い詰められた水銀燈が、警戒を解くのにそう時間は掛からなかった。

「私はフィリス、貴方のお名前は?」
「す、水銀燈って言います……」

互いに自己紹介。
まだ緊張している水銀燈の髪をそっとフィリスが撫でる。
猫の様に縮こまりながらも、嫌そうじゃない水銀燈を見てフィリスが微笑む。

「緊張しないで」
「……はい」

頬を赤らめ目をとろんとさせた水銀燈。
ただでさえ美しい容姿の彼女が、更にそんな表情を浮かべればどうなるか。
並みの男なら釘付けになるだろう。
それは男のみならず――

(ああ、痛めつけたい……///)

フィリスも同じ。
ただし彼女の場合その性癖の方向が歪みすぎているが。
実際、本当は出会い頭から殴ろうかとも思ったが、美少女とはいえ人形が動いているのには疑問が沸いた。
そこで最初は情報を引き出し、後にじっくり楽しむ予定だったのだが。

(駄目ですね。我慢出来そうに無い)

火照った体。湧き出る虐待癖。
血走る眼。止まらない手の震え。

「ねえ、貴女どうして人形なんですか?」
「ああ、やっぱり気になりますよね。……実は」

あまり思考が回らず。我ながら、単刀直入で変な聞き方をしてしまったと思ったが。
ペラペラと出てくるローゼンメイデン、アリスゲーム等の単語。
なるほど事情は分かった。ご丁寧に姉妹がここに来ていることや、名前と特徴まで言ってくれるとは。
この水銀燈というのは、よっぽど人に騙されやすい性質のようだ。

「一緒に探してくれるんですか!?」
「構いませんよ」

ここは姉妹を探してあげますとフィリスは答えた。
勿論、嘘じゃない。ただし見つけたら遊ばせて貰うが。

「ところで水銀燈さん、貴女綺麗な顔ですね」
「え?」

水銀燈の頭が上から手で固定され、身動きが取れなくなったと同時に顔に叩き込まれる膝蹴り。
潰れたガマ蛙のような悲鳴をあげ後方へと転がっていった。
何が起こったのか分からない。どうして殴られるのか分からない。
どうして自分がこんな目に合うのか。目の前の女性は味方じゃないのか。
湧き出る疑問と恐怖と顔は歪み震えた声が漏れる。

「……や、やめて――」

静止を呼びかける少女の声。
しかしそれは逆にフィリスの歪んだ性癖を更に燃え上がらせる。

「少しは頑丈でいて下さいよ?」

聖職者の皮を被った悪鬼。
その魔の手が穢れを知らぬ乙女の身体へと迫っていく。

「――おい、何してやがる?」

そこでフィリスの手は止まった。
この場では響くはずの無い男。それもあまり好みではないタイプの声の。
背後を振り返れば、そこには異形の腕に赤い拳を握り締め、髪を逆立てた青年。
更に後ろには青年の陰に隠れるように、小さな男の子がこちらを見つめていた。

「何って? 治療です。こう見えても私、治療は得意なんです」
「惚けてんじゃねえ。何処にガキを蹴り飛ばす治療があんだよ」

適当に誤魔化して、その場を凌ごうと思ったが簡単に看破された。
あまり頭で考えるのが苦手なタイプそうだと思ったが、やはりこれは無理があったか。

(誤魔化すのは無理。……仕方ない、殺そう)

ルビスの剣を携え胸を一突きにする為に駆け出す。
青年が反応するよりも早く先手を打てた。完璧な不意打ち。
しかし、激痛に苦声を漏らし、無様に地面を転がっていったのはフィリスの方だった。

「がっ……!?」

腹部に走る激痛、めり込む異形の右拳。
青年、カズマの方が何枚も上手だと気付くのが既に遅かった。

「こ、の!」

ルビスの剣を振るい雷を放つ。
それに対し、カズマは拳を前に構え加速する。
雷を前に拳一つで突っ込むなど愚の骨頂、しかしそれはカズマに限れば違う。
彼が取った行動は愚行ではなく、攻撃と防御を同時に行える最善手。

「衝撃のファーストブリット!!!!!」

右肩に生える三つの羽の内一つが消し飛び、かわりに虹色の粒子が射出される。
シェット噴射のように勢いの付いたカズマの拳が雷と激突した。

「なっ……!?」

拳は雷に感電するどころか雷を貫き、フィリスへと迫っていく。
ゆっくりと近づくカズマ。だがフィリスは動けない。
何故か、脳内がグルグルと様々な記憶を呼び起こし、思考が異常に早い。
これは走馬灯という奴なのだろうか。

しかし、拳がフィリスに触れようかというところで静止した。
一瞬、時間が止まったのかと思ったが、遅れて聞こえてきた銃声で我に返る。
見ればカズマ右腕を攻撃から防御のみに使い、盾のように間接を曲げている。
そしてフィリスから視線を外し、もっと後ろを睨んでいた。






走って、走って、走り続けて。柊かがみはやっと止まった。
足に残る疲労、深い息切れ。
かがみは手にある拳銃を見つめた。

――死のうかと思った。

一人の女性を殺した。
罪は償わねばならない。それが殺人ならば尚更だ。

なのに、撃てない。

怖い、死にたくない。湧き上がる生への渇望。
勝手だ、人の命を奪っておいて何と身勝手な事だろう。

でも、ここで死んだらつかさはどうなる?
こなたは? 自分の親友や家族はどうなる?

見なければ良かった。でも見てしまった。
ドラえもんに集められた、あの場所で二人の姿を。

「私は、死ねない……!」

あの二人は何が何でも守り通す。
だから既に血に染まったかがみが殺す。あの二人に危害を与えるもの全て。
あの二人は死なせないし、誰も殺させない。地獄に落ちるのは自分だけで良い。

『衝撃のファーストブリット!!!!!』

男の咆哮。
この感じはただごとではない気がする。
かがみは決意を固め、走り出した。




「てめェ、何しやがる」

最悪だ、とカズマは思った。
やる太を連れて、取りあえず適当にぶらついていたら殺し合いに乗った馬鹿が居たので、取りあえずボコる事にしたが
更に乱入してきた少女に銃を撃たれ邪魔された。
この様子は完全にこちらが悪者だと勘違いされている。

「助けて下さい! あの人に私、襲われて」
「あァ? チャラけた事抜かしてんじゃ……」
「動かないで!」

かがみは現状を見て、カズマが殺し合いに乗った参加者とほぼ断定していた。
先ずフェイリスが狡猾にも、自分が一方的に痛めつけられている演技をした事が功を為す。
パッと見、悪人面のカズマとフィリスでは、どうしても印象的にカズマが危険人物だと思えてしまう。

「ちょっと、ま、待ってこの人は……」
「そ、そうだお、カズマさんは」
「おいお前は出てくるんじゃ」
「あと、その女の子と男の子から離れなさい」

とはいえ、かがみも最初からカズマを殺し合いに乗っていると決め付けている訳じゃない。
一先ず、水銀燈とやる太をカズマから離れさせた後に、誰が危険人物なのか見極めるつもりだ。
だがカズマは気が長い性格じゃない。しかも、フィリスはかなり性質が悪いとも直感していた。
自分一人ならともかく、やる太も居る状態で、このままあの女のペースでは面倒な事になる。

「ちっ」
「!? 動かn――」

故に取ったのは撤退。
シェルブリットを地面に叩き付け土煙を巻き上げかがみとフィリスの目を眩ませる。
そしてやる太と、ついでに水銀燈を担ぎ上げ、離脱した。





「逃げたって事は……」
「ええ、そうですよ。あの人が私を襲ってきて……早く追いかけないと、攫われたあの子達が」

漫画みたいな馬鹿げた跳躍力を持って、この場から逃げたカズマの背をかがみは睨む。
もう銃が届く範囲ではないし、自分の身体能力がどうあっても追いつけない。
ここは見逃すしかなかった。

「貴女、大丈夫?」

色々腑に落ちない事は多かったが、今はこの女性から話を聞く事にしよう。
そう思いフィリスの方を向いて

「!? あああぁああああぁああああああぁああああああ!!!!!!!」

右目に剣を突き刺された。

「そうですよォ……もっと泣いて下さいよ!!!」

そのまま右目を抉るように剣を一回転させ更なる激痛を与える。
壊れた楽器のようにかがみは泣き叫ぶ。
そして理解した。自分は騙されたのだと。

「そうだぁ、目から雷を流すとどうなるんでしょう?」

グリグリと眼球を剣で潰しつつ脳髄に着くかどうかというところで軽く雷を放つ。

「――――――!!!!!!!」

脳に直に流される電撃はもはや悲鳴にすらならない叫びをあげさせる。

「まだまだぁ……もっと、もっとぉ……!!」

死ぬの? こんな場所で?
いや死ぬのは良い、だってこれは罰だから。

「アハハハハ!!!! ああ癒されますねえ、あの変な右腕の男に殴られた部分が癒えるみたいですよぉ!!」

でもね、こんな危険な奴を放っておいて、それでいて何も出来ないまま死ぬなんて――

「そん、なのは、御免よォ!!!!!」
「なn――」

死なない程度に加減してるとはいえ、頭に直に電撃を流しているのだ抵抗なんて出来ない筈。
なのにかがみの闘志は衰えるどころか、自らの命すらバネに更に燃え上がらせている。
異様な光景に思わず後ずさり、フィリスは胸部に違和感を抱いた。

「――は?」

かがみの手に握られた銃。
耳にはまだ鈍い銃声が残っていて、銃口からは煙が上がっている。

「痛、い?」

(ごめん、こなた、つかさ。私、もう――多分地獄に行くから二度と会えないと思う。
 でもアンタ達は……死んじゃ、駄目……よ?)

既にフィリスを撃った時にはかがみは死んでいた。
だが最後の最後に、全力を振り絞り敵を討った。

彼女の脳裏に浮かんだのは先程勘違いをしてしまった青年。
彼には悪いことをしてしまった。もっとも、あまり心配しなくても大丈夫だろうが。

そしてこなたとつかさ。
あの二人が死ぬはずが無い。そう大丈夫だから――そう信じかがみは永久の眠りに着く。

既につかさは死に、こなたは悪意ある参加者に利用されているとも知らずに。
因果応報と言うなら、これはやはりかがみの犯した罪の罰なのかも知れない。




【フィリス(女僧侶)@ドラゴンクエストシリーズ】死亡
【柊かがみ@らき☆すた】死亡




【E-8 橋 初日 黎明】


【カズマ@スクライド】
[状態]健康
[装備]シェルブリット第一形態(ファーストブリット使用済み)
[道具]支給品一式、特上桜弁当@Fate/EXTRA、ランダム支給品(0~3)
[思考]
基本:殺し合いを潰してさっさと帰る。
1:やる太と同行。
2:この場は逃げる。
[備考]
※参戦時期は9話でアルターの森に向かう最中です。シェルブリット第二形態は会得していません。

【やる太@やる夫派生】
[状態]健康、興奮、悲しみ
[装備]なし
[道具]支給品一式、ランダム支給品(0~2)
[思考]
基本:カズマと一緒に行動。殺し合いには乗らない。
1:カズマさんはかっこいいお!
2:殺し合いから脱出したらカズマにお金を払う。
[備考]
※OPで死んだのは自分の父親だと思っています。

【水銀燈@Rozen Maiden】
[状態]:銀ちゃん(残り数分でアベコンベの効果切れ)、健康、殺し合いに恐怖
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~2、アベコンベ@ドラえもん
[思考・状況]
[銀ちゃん状態の思考]基本:殺し合いはしたくない。
1:真紅を探す。
2:他の姉妹が居なければいいけど……。
[銀様状態の思考]基本:殺し合いからの脱出し、めぐを助ける。
1:力を使いすぎるような戦闘を避けつつ真紅と合流を目指す。
2:めぐ……。
※参戦時期は巻かなかった世界での雪華綺晶との戦いの途中からです。
※OPにて真紅の姿を確認しました。
※アベコンベにより今は銀ちゃんの状態です。



42:検事と妖怪とセーラー服と二丁拳銃と時々騎士王 時系列順に読む :[[]]
42:検事と妖怪とセーラー服と二丁拳銃と時々騎士王 投下順に読む :[[]]

05:野獣、死すべし 女僧侶(フィリス) 死亡
32:偶然と言う名の必然 柊かがみ 死亡
26:やる太はアルター使いと出会うようです カズマ [[]]
やる太 [[]]
27:水銀燈はアベコベなようです 水銀燈 [[]]


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最終更新:2013年07月28日 23:07