注意
この話はけいおん!原作漫画とアニメの最終回が混合しています。
卒業式はアニメ版で、後日談は漫画版です。
よって、憂と純は軽音部に入部したことになっています。
これまでの、けいおん!!は……。
「もう……部室片付けなくても……、お茶ばっかり飲んでいても叱らないから……」
「卒業……しないでよ……」
「花びら、5枚……。私達みたいだね!」
「でもね、会えたよ……。素敵な天使に……」
「……大好きを、ありがとう」
「あんまりうまくないですね!」
「えっ!?」
「……」
あれからすぐに新学期が始まった。
憂と純が入部してくれたおかげで、あと1人勧誘すれば廃部は免れる。
ビラ配りも頑張ったし、まだ新歓ライブもある。チャンスはまだ……!
「けど……」
この部室、こんなに広かったかな……。
私は独り思った。
前まではあんなに賑やかで、そして明るかった。
先輩がいない。それがこんなに堪えるものとは思わなかった。
「先輩……」
部員を引っ張っていける、あなた達の力が欲しいです……。
形見とは言いたくないけど、あの日もらった写真と桜を握りしめている。
見返すたびに忘れられない楽しい
思い出が甦る。
だからなのかな。今でも先輩がそばにいるような気がしてならない。
ガチャ……。
「あの……」
「はい?」
部室に知らない人が来るのは何だか不思議だ。リボンの色から新入生らしいことはわかった。
「入部希望なんですけど……」
入部……希望……?
「本当に!?」
「は、はい……」
……遂に、遂に来たんだ!
「か、確保ぉ~!」
「う、うわああぁ!」
~Hにさよなら / この部室にギターの旋律を~
「ご、ごめんなさい……」
「いえ……」
あぁ、あのとき律先輩みたいに飛びついてしまった……。
我ながら恥ずかしいです。
「それで、名前は?」
「青山 昌です」
「昌ちゃんね? 楽器は何をしてるの?」
「ドラムを少々……」
「おぉ! うちは今ドラマーがいなかったから助かるよ」
これで、一応部員は4人になったから廃部じゃなくなる!
「そういえば、ほかの部員の方は今どこに?」
「あ、あぁ。もうすぐ来ると思うから」
「そうですか」
そして少しの沈黙、間が持たないよ。何か話題は……。
「あ、お茶淹れるね?」
「お茶ですか?」
「あ……、いや、何か飲むかなって」
「いや、大丈夫ですから」
「そう……、私、ちょっと買いに行ってくるね」
私は間を持たせられなくて、部室から出て行った。
「はぁ……」
何しているのかな……、私。
「お茶……か」
咄嗟に昌ちゃんにお茶を飲むかと聞いた自分がおかしくて笑った。
「あれだけだらけないで下さいって言っていたのにさ……」
あの時、部室でお茶会を毎日していたことが嘘のようだ。
普通なら考えられないことだけど、それが私にとっての軽音部の光景だった。
ムギ先輩がお茶を持ってきて、律先輩がだらけて、澪先輩がそれを叱って……。
唯先輩が私に抱きつく……。
「……」
少し寂しくなった背中と首周りをなでながら、私は自販機に行った。
大して欲しくもなかったけど、紅茶を買って戻る。
部室のドアの前、何となく入りづらいなぁ……。
「……あずにゃ~ん」
「……!」
この声は……!
「唯先輩!」
急いでドアを開けて中に入った。
「あ、梓ちゃん……」
「どうしたんですか?」
部室には憂と昌ちゃんしかいない。
「ずっと気配がしていたからもしやと思いましたが……。唯先輩、どこですか? どこに……」
散々見回してみても、2人しか見当たらない。
「……どこ、どこに……?」
「あ、あのね、梓ちゃん」
申し訳なさそうに憂が話しかけてきた。
「何?」
「さっきのは……昌ちゃんにお姉ちゃんのことを聞かれて……、それで、ちょっと真似を……」
「……え?」
……そうか。あれは憂だったのか。
……そうだよね、唯先輩がこんなところにいる訳ないよね。
「ご、ごめんね!? 梓ちゃん。本当にごめん……」
私は、もう何も言う気力は無かった。
「……怒らないの?」
私がここで踏ん張らないと……。こんなに依存していたら、先輩に笑われちゃうよ……。
私は物置に入ると、静かにドアを閉めた。
─部長、唯先輩がいなかっただけなのにあんなに落ち込んでいるんですか?─
─……!─
─だって、大学に行ったぐらいで……─
─でもね、お姉ちゃんは梓ちゃんの大事なパートナーだったんだよ─
─2人でいるのが当たり前なぐらい、仲良しだったんだよ─
─……そうなんですか─
物置はずいぶん広くなっている。
あの着ぐるみも、ぬいぐるみも、ギターも、いろんなものが今では無い。
「……持って帰ってって言ったのに」
ふと見ると、隅の方にケロがいた。今思えば、どうやってここまで持ってきたのか不思議だ。
首には小さなホワイトボードが掛けられ、独特な落書きが施されている。
「唯先輩……」
傷心の私だけど、そんなことに構っていられるほど暇じゃない。
まだ、新歓ライブが残っている。
昌ちゃんが入部してくれると言ってくれたから廃部はもう無いけど、軽音部をもっとすごくしたい。
あの時以上に活気あふれて、練習に打ち込む部活にしたい。
「じゃあ、憂、純、行こう!」
「うん、頑張ろう!」
「私の本気、見せちゃうぞ!」
純ったら……。でも、少し落ち着けた。こういう所、頼りになるな。
「それでは、軽音部の発表です」
そして、私達はステージに出る。新入生の歓声に迎えられて、何だか緊張してきた……。
やってやるです……!
そして、演奏が始まった……。
最初はうまく行っていたけど、中盤に差し掛かると緊張のせいかミスが目立ち始めた。
「ま、まずい……!」
「純、落ち着いて。まだ修正がきくから!」
「わかった……!」
何とかフォローしあい、演奏を続ける。
絶対成功させる……! 絶対に!
バツン!
「な、何!?」
しかし、それも急に終わった。
目の前が真っ暗になり、音が途切れた。
「みなさん、落ち着いてください! 機材のトラブルです。もうすぐ復旧しますのでお待ちください」
こんな時に、トラブル……!?
「あ、梓!」
「落ち着いて。とりあえず、待つしかないよ……」
完ぺきとは言えない演奏。そして、このトラブル。状況は最悪だ……。
こんなんじゃ、こんなんじゃ……。
「……大丈夫だよ。私たちなら」
憂が自信を持って言ってくれた。
「私たちなら、何とか出来るよ!」
「そうだよ。私たちなら!」
純もそう言ってくれた。
「……そうだね!」
そして、ステージに光が戻った。
「うっ……!」
そして、演奏を再開しようと2人を見た時、あることに気がついた。
「う、憂……。そのギターは……?」
何故か、憂の腕にはギー太があった。確かステージに上がった時は持っていなかったはずだ。
「うふふ……」
にっこりと笑う憂。何? 何がどうなっているの?
訳が分からずに首をかしげると、憂がステージの脇を指差した。
「……先輩達!?」
そこには軽音部のみんながいた。
「律先輩に、澪先輩、ムギ先輩まで……?」
そして、何故か先輩達の横に憂がいた。
……憂がいる?
憂が2人いる!?
「じゃあ、あなたは……」
ステージで私の隣にいるこの人は……!
「やぁ、
あずにゃん」
「な、何で……!」
「今日は大学が早く終わったから、みんなで様子を見に来たんだ」
「学校をまわりながら、私はずっとあずにゃんのこと見てたんだ」
「気のせいじゃなかったんだ……!」
「あたし、聞いてない……」
純が驚きと感動の言葉をつぶやいた。
「何だかこんなことになって、居ても立ってもいられなくなってさわちゃんに頼んでステージに……」
「……唯せんぱあああぁい!」
「うおぅ!」
私は泣きながら唯先輩に抱きついていた。
「相変わらず、小さくてかわいいねぇ」
よしよしと私の頭をなでる唯先輩。
この感じ、久しぶりだ……。
「本当に唯の行動は予測不可能だな」
「澪だって出て行きたかったんじゃないの?」
「ちょっとな……」
「でも、梓ちゃん、唯ちゃんに会えてうれしそうね」
「本当にお姉ちゃんは梓ちゃんのこと好きなんだね」
「さて、思わぬアクシデントもありましたが、軽音部の発表を続けさせていただきます」
司会の人がそう言った。どうやら演奏が再開できるようだ。
「おっと、あずにゃん分の補給はこのあたりにして……」
唯先輩が私をやさしく放した。
「始めようか!」
「はい!」
「じゃあ、頑張ってね! 梓」
純がステージの横に行き始めた。
「ちょっと、純!」
「2人の方がいいでしょ?」
軽くウィンクをして、先輩達の横に並ぶ。
もう……、純ったら。
「行くよ、あずにゃん!」
「はい!」
それからの演奏はもう不思議なくらい楽しかった。
演奏が上手とか、そういう問題じゃない。
心から音楽が楽しいと思える演奏だった。
「じゃーん……」
演奏が終わった途端、一斉に歓声と拍手の嵐が起こった。
「唯先輩、今日はありがとうございました!」
「いえいえ、卒業生なのにステージに上がってごめんね?」
「そんな、とても助かりました」
唯先輩が来てくれたからここまで立て直せた。
本当にこの人はすごい。さすが、私の先輩です!
「じゃあ、最後の締めにいきますか!」
「はい!」
「「さぁ、君も軽音部に入部しませんか?」」
これで終わりだ!
END
おまけ!
ニコニコ動画の【けいおん!!】 『さあ、おまえの
放課後を数えろ!』 【仮面ライダーW】
これのタグに感化されて作った仮面ライダーW風サブタイトル
Yの入部 / 部活動は4人で1つ
Yの入部 / 財布を泣かせるもの
Tに手を出すな / 満点の取り方
Tに手を出すな / 一夜漬けで勝負
女性…S / 先生は軽音部
女性…S / 衣装の代償
Mを探せ / 澪はそれを我慢できない
Mを探せ / トレーニングキャンプ
Nな旋律 / 新入部員は見た!
Nな旋律 / ジャズプレイヤーの娘
復活のV / 嫉妬
復活のV / 仲直り
ライブでC / 忘れられたギー太
ライブでC / 軽音大パニック
Wの残光 / 鍋パーティ
Wの残光 / 絆を取り戻せ
さらばUよ / ガールズバンド
さらばUよ / 友は演奏と共に
Pが止まらない / 奴の名はむったん
Pが止まらない / ギタリストの流儀
還ってきたD / 律には向かない楽器
還ってきたD / 諦めない女子
旅行にKへ / スクールトリップ
旅行にKへ / お土産はこれだ
Jの遊戯 / 純は手癖が悪い
Jの遊戯 / 梓オン・ザ・ラン
Fが見ていた / 進路マジカルレディ
Fが見ていた / 決死のティーパーティ
悪夢なE / 眠り姫のユウウツ
悪夢なE / 相棒は誰だ?
風が呼ぶG / 先生追うべし
風が呼ぶG / 今、ステージの上で
Iの悲劇 / すずしさを探す女子
Iの悲劇 / あねいもうと
Lの彼方に / やがて熱気という名の雨
Lの彼方に / 全てを振り切れ
来訪者X / お祭りの夜
来訪者X / 暑中お見舞いの名のもとに
Rの可能性 / バッドマラソンパラダイス
Rの可能性 / ビリが許せない
Bの迷宮 / 不思議な彼女
Bの迷宮 / パイプラインは傷ついて
Oの連鎖 / 大根役者
Oの連鎖 / ジュリエットの告白
Kが求めたもの / 唯の前髪
Kが求めたもの / 最後の演奏
残されたA / 梓からの願い
残されたA / 永遠の先輩
Hにさよなら / この部室にギターの旋律を
- なるほど、あずにゃんが切り札ですか。実に興味深い -- (名無しさん) 2010-12-09 12:25:38
- エッチにさよならと読んだ俺をどうにかしてくれ -- (名無しさん) 2010-12-10 07:12:07
- ↑当然、メモリブレイクだ -- (名無しさん) 2010-12-13 13:31:21
- さりげなくサブタイトルが秀逸だな。Wとけいおん!どっちもいい感じで混ざってる。 -- (名無しさん) 2010-12-13 20:43:43
最終更新:2010年12月08日 09:40